陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

ブッシュ大統領の中東歴訪

2008-01-07 12:44:16 | 米国関係
 小ブッシュ大統領の任期も、あと1年になった。3800人もの米軍犠牲者、そして5年間で50兆円を越す膨大な出費を伴ったイラク占領も、現在小康状態を維持している。只今は、下院が余計な決議をして怒らせてしまったトルコの意向に配慮し、同国の越境侵攻を認めて北イラクに跋扈するPKK勢力を沈静化させ、争いによる流血を最小限にしたいと小ブッシュ大統領は考えているのだろう。

 最早ネガティブのイメージしかない小ブッシュ政権としては、イスラエルとパレスチナの和解と言う大プロジェクトを完遂出来れば、大きな成果になる。ライス国務長官はそれを狙い長い時間を掛けて「中東和平会議」(アナポリス)を画策した。これは、両者の和解を国連常任理事国、アラブの有力諸国が同席する中で何とか実現しようとするものであった。

 サウジアラビアがこの会議に出席したのは軽い驚きであったが、シリアの参加は多くの国に一種の衝撃を与えた。これは何かが起こるのかもしれないとの期待だ。でも結果は何も起こらず、イスラエルとパレスチナが真剣な協議を続けて、2008年中に和解へ進む努力を続けることを約束しただけであった。この1年間、米国は責任を持って両者の協議を促すことになった。

 それで、小ブッシュ大統領は近々中東を訪問し、両者の協議内容を聞くことになっている。当然、彼はサウジアラビア、エジプト、そしてイラクも訪問するのではないか。ここで、改めて「中東和平会議」の内容を振り返ることにする。

中東和平会議、来年末までの合意目指す 
2007.11.28
Web posted at: 10:21 JST- CNN/AP

米メリーランド州アナポリス──米国の仲介で40カ国以上が参加した中東和平会議が27日、当地の海軍兵学校で開かれた。イスラエルとパレスチナは二カ国共存に向けて、来月12日に和平交渉の作業部会に入り、来年末までの交渉決着を目指すことで合意した。ブッシュ米大統領が発表した。

パレスチナ自治政府のアッバス議長とイスラエルのオルメルト首相の共同声明によると、両首脳は来月12日の作業部会後、2週間に1度の割合で会談する。両首脳とブッシュ米大統領は、28日も会談する予定。

米国務省関係者によると、アッバス議長とオルメルト首相が27日午前にブッシュ大統領に面会した時、共同声明はまだなかった。ブッシュ大統領は双方の外相に対し、ライス米国務長官と協議して共同声明を取りまとめるよう要請。ブッシュ大統領が両首脳と個別会談している間に共同声明が作成されたという。

ブッシュ大統領によると、共同声明はイスラエルとパレスチナの争点となっている具体的な問題への言及を避け、「流血の事態を終結させる」「和平と非暴力の文化を広める」など、今後の交渉の指針となる原則を盛り込むことに焦点を絞った。

交渉で課題となるのは、ユダヤ人入植地や期限、エルサレムの帰属、アラブ諸国とパレスチナがイスラエルを「ユダヤ人国家」と認知するかなどの問題で、一部は2003年に合意された中東和平の行程表(ロードマップ)にも盛り込まれている。ブッシュ大統領は、アッバス議長とオルメルト首相が、ロードマップで定められた義務を直ちに履行することで合意したと述べた。

和平交渉が良い結果をもたらすかについては、パレスチナとイスラエルの双方に疑問視する向きがある。ヨルダン川西岸ヘブロンでは、パレスチナの指導者がイスラエルと妥協したと主張するデモ隊が警官隊と衝突し、警官隊の銃弾を受けたデモ参加者1人が死亡した。イスラム原理主義組織ハマスのハニヤ前首相もテレビ演説で、和平会議を非難し、結果を受け入れない姿勢を示した。

イスラエルでは、新聞が和平会議を「期待が低い首脳会議」との見出しで伝え、会議前夜にはエルサレムで抗議活動が行われた。ただ、イスラエル国民の一部は、国の選択肢がほとんどなかったことを認めている。
http://www.cnn.co.jp/usa/CNN200711280002.html


 アナポリスの後、昨年12月に行われた両者の会談は、まず互いの様子見に終始した。同時に、パレスチナ側では、ハマス勢力とアッバス議長の意見が食い違い、イスラエル側ではオルメルト首相に対する不信任が内閣の中から出た。と言うわけで、「中東和平会議」以前と現在は何も変わらぬ状況だ。

 結局は、小ブッシュ中東歴訪は、ライス女史任せの徒労に終わるのではないか。

 本当に中東和平を考えるなら、

(1)エルサレムをそっくりパレスチナへ渡し、ヨルダン川西岸からもイスラエルは撤退する。
(2)イスラエルの聖地は、改めて<マサダ砦>とし、その整備に関係諸国は協力する。
(3)イスラエルのユダヤ国家化(ユダヤ人中心)を周辺諸国が認める。

 最低米国は、これ位の譲歩をイスラエルへさせなければ話にならないだろう。米国は表立って年間5000億円の経済援助をイスラエルに与えているが、隠れた形では年間10兆円の援助をしている。この経済援助を停止する決意で、イスラエルに強く譲歩させなければ事態は進まない。

 紀元100年頃に、ユダヤ人がローマ帝国によって中東から追われて世界に散り、その後トルコの支配はあったけれども、1800年間もアラブ人が住んでいた所へ建国させれば、イスラエルが<ドラゴンの歯>になるのは当たり前だ。そうなる切っ掛けを英国が作り、第二次大戦後は米国がイスラエルを後押しして来たのだから、アングロ・サクソンは共同して自ら責任を取るべきである。会議など何回やっても、元の木阿弥になることは目に見えている。和解ロードマップは、将に机上の空論に過ぎない。

 ライス国務長官は、所詮<アナポリス・ゼミ>に拘る大学の優等生止まりと言うことなのだろうか。

(参考)

 イスラエルとパレスチナの会談が始まる

 「中東和平会議」は成立するのか

 イスラエルの異常な攻撃姿勢
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