陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

米・中経済戦争と株価への影響

2007-08-11 05:40:35 | 米国関係
 米国における中共物産品への批判は、止まるところを知らないようだ。先日もヒラリー・クリントン上院議員は、大統領候補演説の中で「支那産の汚染食品を食べないし、危険な玩具で子供達に遊ばせたくない」とあからさまに述べた。一方、ワシントン・ポストは、露西亜で行われた自動車の衝突実験で、支那製自動車が安全配慮に欠けていることを生々しく動画で配信している。

 クリントン女史は、擬似ペッグ制でリンクしているドル・元レートに大変不満で、元高にする気がないならば、制裁報復関税を掛けることにも触れている。

 北京五輪を1年後に控えて、米国と事荒立てたくない中共だが、段々我慢が出来なくなったのか、貯め込んだ外貨の一部、米国債券の売却の可能性に触れ、恫喝し始めた。これは、米・中間の経済戦争勃発を思い起こさせる。


中国は外貨準備を米国との「駆け引き」に利用を-国務院研究所長(2)
8月9日(ブルームバーグ):
中国国務院発展研究センター金融研究所の夏斌所長は、一部の米議員が中国からの輸入品へ制裁関税を課す動きを見せたことを受け、中国の1兆3300億ドル(約158兆円)の外貨準備を米国との「駆け引きの材料」に使うことを検討すべきだとの考えを示した。

夏所長は9日までのインタビューに対し、外貨準備について触れ、「一部の愚かな米上院議員に対処するため、駆け引きの材料として使うことは考えられないことではない」と述べた。ただ、夏所長はこの考えは国務院の意見を代表しているわけではないとも語った。

ブッシュ米大統領は8日、4070億ドル相当の米国債を保有する中国が売りに回るのではないかとの観測を否定した。米国債の売却はドル安や中国が保有する米国資産の価値下落、人民元の上昇加速につながる恐れがある。

ABNアムロ・ホールディングの為替ストラテジスト、グレッグ・ギブス氏(シドニー在勤)は、「中国は自ら墓穴を掘ることになるだろう」と指摘した。

中国外務省の劉建超報道官は9日の定例記者会見で、中国が米国債を売却するかどうかについてコメントを拒否した。

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=infoseek_jp&sid=a2X2fGwynB9g

 これに関して、喜多龍之介氏のブログ<今日の覚書、集めてみました>でもテレグラフ紙の情報として取り扱われている。
http://blog.goo.ne.jp/kitaryunosuke/e/1329e1d19bf6782aaaaea37548c28af0

 米国債券については、1年前のデータであるが
 
外国勢の米証券保有高、06年6月末で7.78兆ドル=財務省(ロイター)
[ワシントン 31日 ロイター] 米財務省は31日、2006年6月末時点の外国勢による米証券保有高が7兆7780億ドルとなり、前年同期の6兆8640億ドルから13.3%増加したとを発表した。

 財務省と米連邦準備理事会(FRB)が実施した年次調査によると、外国の公的機関による米証券の保有高は2兆3010億ドルで、前年の1兆9380億ドルから増加した。

 米証券の最大保有国は日本で1兆1060億ドル、このうち長期債が8億2700万ドルだった。前年は1兆0910億ドル、そのうち長期債が8130億ドルだった。

 2位は中国で、保有高(香港とマカオを除く)は6990億ドル、このうち長期債が6780億ドル。当局が人民元高抑制を試みる中、中国の米証券保有は増加している。前年は5270億ドル、そのうち長期債が4850億ドルだった。3位は英国。

[ロイター:2007年06月01日09時08分]
http://cache.yahoofs.jp/search/cache?p=%E8%B2%A1%E5%8B%99%E7%9C%81%E8%A8%BC%E5%88%B8+%E4%BF%9D%E6%9C%89%E9%AB%98&tid=top_v2&ei=UTF-8&search_x=1&fr=top_v2&u=newsflash.nifty.com/news/topics/japan_china/te__reuters_JAPAN-262283.htm&w=%E8%B2%A1%E5%8B%99%E7%9C%81+vc%3A%E8%A8%BC%E5%88%B8+%E4%BF%9D+vc%3A%E6%9C%89%E9%AB%98&d=SXzb_uljPCjT&icp=1&.intl=jp

 上記記事で、日本の長期債保有を8億2700万ドルとしているが、8270億ドルの間違いだと思う。これは、約100兆円に相当する。またこの他に、短期債2000億ドル(=24兆円)を保有する。

と言うことで、中共は確かに外貨準備として、多額の米国債券を保有している。今年になって、米国債券をどんどん減らしてユーロ又は金へ変えているが、それでも約4000億ドル相当の米国債券を保有しているわけだ。

 中共がこれら米国債券を大量に売れば、債券価格は下がり、逆に債券金利が上がる。株式市場から債券市場にカネが多く移動し、株価は激しく下がる。同時にドル価格も下がる。欧州勢は米国債券を新たにまとめて買う気は無いし、日本も腹一杯ドルを溜め込んでいるから、これ以上中共の売り出す米国債を買えないだろう。

 こうして中共は米国金融ステムに大打撃を与えることが出来るが、自分達の上海株式市場や香港株式市場にもそれは跳ね返って、暴落が起きるかも知れぬ。今、中共の株式市場はバブルの真っ只中にあるから、これが暴落すれば世界中の株式市場に多大の影響を与える。その時は、日本も只では済まないはずだ。

 ゴールドマン・サックス証券の経営者であった支那通、ポールソン米財務長官が、今年になって何度も北京を訪れているのは、元高への誘導と併せて中共政府を宥める為だったのかも知れぬ。クリントン女史をはじめ、民主党の有力議員たちはその背景を知っていながら、中共の苛立つような事をしている。

 それでなくても、サブプライム・モーゲージで破裂しそうな住宅債券市場のあおりで、乱高下が激しくなったウオール街である。クレジット・クランチ(信用収縮)を防止するためFRBは昨日190億ドルの資金を金融市場に導入している。欧州では、欧州中央銀行が昨日だけで610億5000万ユーロと言う大きな金額を金融市場に注入した。これから中共が仕掛けるかもしれない債券戦争を、米国政府とFRBは上手く処置することが出来るのか、気になるところだ。
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2 コメント

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Unknown (muti)
2007-08-11 22:44:44
こんばんは、
 日本政府も「北京オリンピックをボイコットするかも」と臭わす位の軽い恫喝ができなくて、宣伝上手な中共に太刀打ちできますか。
 こと自国の利益誘導にかけては中共や韓国・北朝鮮のほうが正しい、なにせ日本を貶める日本人がいるのですから。
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国会議員は中共に乗せられ過ぎ (茶絽主)
2007-08-16 04:21:00
muti 様
コメントを有難うございます。
本当に国会議員の北京五輪支持者リストを見ると情けなくなりますね。河野洋平氏を始めとする媚中派には何も言いませんが、240名以上がリストに載っていては、日本は北京五輪ボイコットに反対なのだなと思われても仕方ありますまい。
米国債券売却のアナウンスは、中共トップの権力争いが原因との見方があるようです。いずれにしても、あらゆる事を交渉材料に使う支那人のこと、べたべたせずに間合いを取ることが大事と思うのですが。
今後とも、どうぞ宜しく。
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