
日本出張の合間に飛行機遊びをしてきた。しかも機体はパイパーマリブミラージュ(Piper Malibu Mirage / PA-46-350P)、350馬力のContinental TIO-540 Engineを搭載するシングルエンジンを積み、与圧機能のあるキャビンクラスの機体。
そんなマリブに乗れるということで、今回は本当に幸運な体験だと思う。 米国内でもパイパーマリブに乗った経験はない。何度も見た事があるが、機内に入ったこともない。正に興味津々だった。 八尾空港のエプロンに機体は停まっていた。早速機体を見て回る。ツルツルした主翼表面、腰高なギア、レシプロのシングルエンジンにしては異様に長いノーズ、グライダーのような翼長、全てが異質な感じ。機内に乗り込むと、さすが与圧機、しっかりした感じ。恐らく与圧機能を確保する為の密閉率なども剛性感に影響しているのだろうが、実際の剛性も高いのだと思う。今まで自分が操縦したり乗ったりしてきた他のパイパーとは違った世界がある。
コクピットへのアクセスは狭く、これでアメリカ人が乗り込めるのか?と思う程。体をくねらせてコクピットへ。コクピットに座ってしまうと十分な広さがある。パイパー社の機体は96年からコクピットのスイッチ配置などが現代的なものとなったが、このマリブも例に漏れず、整然とオーバーヘットスイッチが並ぶ。コクピットの作りは贅沢そのものだ。
この日、御一緒させて頂いたのはマリブオーナーのT会長、そして同窓同門の先輩のA先生。お二人とも大先輩パイロットになる。この日は八尾から岡南、そして北九州へと飛ぶ予定になっていた。
最初のレグはオーナーのT会長が右席、今回私は左席で飛ばさせてもらった。なんとも光栄なことだ。 ヘッドセットは防音機能なし、ただの大型旅客機用のヘッドセット。これでもATCが出来るくらいの機内は静寂性がある。このマリブは鼻先のエンジンとコクピットのファイアーウォールの間に貨物室があるのと、与圧機能の胴体が相まって消音効果が高いのだろう。エンジン始動、タクシー開始。この日は八尾空港のRwy27からの離陸となった。タクシーをすると、とんでもなくノーズギアが重い。機体が重い!というのじゃなく、ノーズギアが重い。あれだけ長い鼻先に大きなエンジンがあるのだから当然だ。
ランナップ後に離陸、私は操縦桿を握らせてもらった。85ktでローテーション、120ktで上昇という数字を教わった。離陸許可をもらった後に350馬力のエンジンを離陸出力へ、そして離陸滑走開始。6人乗りで与圧機能付きの機体がそこそこの重量があり、凄い加速をするというわけじゃない。ただ、スムーズに気持ちよく滑走が始まった。ローテーション85ktとのことだが、実際は70kt前後くらいから飛行機が飛びたそうな感じが伝わってきて、滑走の安定性が落ちる。年式が新しいのでASIの誤差は少ないはずで、実測よりも低めに表示されていることもないだろう。個体差などもあるのだろうが、あと5-10kt早めのタイミングでローテーションしたほうがしっくり来るのでは?!というのが最初の印象だった。
ローテーションしてからはピッチ変化に比較的敏感な機体で、層流翼の機体の特徴なのか?!などと感じていた。大きなピッチ変化がないので、350馬力のシングルエンジンながらLeft turning tendencyは然程強くなく、ラダートリムを中立に取っても右ラダーが重い!ということは無い。ある意味、高い出力をきちんと受け止める設計が最初からされているという証拠なのだろう。この機体の主翼強度を上げて500馬力のターボプロップを搭載したMalibu Meridianという機体があるが、正にもともとのマリブの設計が高い出力のエンジンを受け止められるようになっているということが実証されている。
この後、大阪八尾空港から岡山の岡南空港までひとっ飛びとなった。地上の景色やナビゲーションの事はあまり覚えていない。オートパイロットなど使わず、ひたすらマリブの操縦桿の感触を楽しんだ。景色もさほど楽しまず、この機体の計器などを眺めながら操縦を味わっていた。初めて乗る機体、Hand flyで味わいながら飛ばないと勿体ない。この日は基本的にずっと北からの風があり右10-15度のWind correction angleを取って飛行していた。計器が良く、操縦系もスムーズなので、これくらいの大きさの機体でも風が読み易い。岡南空港への着陸はオーナーのT会長が担当、何事もなくマリブを下ろしていいた。ここで機体を下り、いちど地元のそば屋へ向った。正に日本版の$100 Burgerといったところだが、実際にかかっているお金はアメリカの数倍、5万円蕎麦というのが日本流の呼び方になるだろう。
岡南空港から離陸し、ここからはIFRで北九州空港まで遊びにいった。このレグは私が右席、左席は先輩A先生。離陸した後からの操縦は基本的に私がやらせてもらい、先輩がナビと無線担当。またもやオートパイロット無しでマリブの操縦感を楽しんだ。このレグでは外の景色も楽しんだ。岡山、広島、山口の海岸線の景色を見ながら、”自分は意外と日本の地理をしらないものだな”と気付かされた。今はカリフォルニアの地図、地形の方が鮮明に頭に入っている気がする。 IFRでPublished full appraochは打たず、レーダーベクターで北九州空港に向かい、Rwy36へはRight base entryとなった。
着陸した後には空港南側の駐機スポットへ。そしてオーナーのT会長と先輩A先生が秘密の隠れ家と呼ぶ場所でお茶をした。ここにはパイロットのUさんとお会いした。この日は天気も良く、窓を開けていると気持ちがよい。窓からは空港タクシーウェイが見え、旅客機のタクシーや離着陸が見える。普通の人には騒音だろうが、パイロット4人の集まりには良い眺めに他ならない。 北九州空港から帰還、八尾空港まで一気に戻ることに。このレグはA先生が左席、私が右席に座らせてもらった。Rwy18から離陸、秘密の隠れ家からUさんが手を振っているのが見えた。
帰りは与圧機能をフルに活かして15000ftの高度を選択。ここでマリブの本領発揮。双発のような派手な上昇力はないが、淡々と上昇を続けてVSIの針が下がってこない。流石14対1のグライドレシオの翼にターボ350馬力だけあり、高度が上がってからは気持ちのよい飛び方をする。この飛行機は高い高度をクルーズしているのが良く似合う。どんどんと八尾が迫ってきて、素晴らしいクロカン性能の一環を感じた。
八尾ー岡南ー北九州ー八尾、この肯定を午後半日だけでこなせる機体マリブ。日本の国土を考えると、この機体には手狭なほどだ。 こういう豪華なレシプロシングルエンジンの機体はもう登場しないだろうと思う。セスナ414や421がレシプロエンジンの最高峰と呼ばれるが、レシプロシ ングルエンジンというカテゴリーではパイパーマリブが最高峰の機体だと思う。
そんなマリブに乗れるということで、今回は本当に幸運な体験だと思う。 米国内でもパイパーマリブに乗った経験はない。何度も見た事があるが、機内に入ったこともない。正に興味津々だった。 八尾空港のエプロンに機体は停まっていた。早速機体を見て回る。ツルツルした主翼表面、腰高なギア、レシプロのシングルエンジンにしては異様に長いノーズ、グライダーのような翼長、全てが異質な感じ。機内に乗り込むと、さすが与圧機、しっかりした感じ。恐らく与圧機能を確保する為の密閉率なども剛性感に影響しているのだろうが、実際の剛性も高いのだと思う。今まで自分が操縦したり乗ったりしてきた他のパイパーとは違った世界がある。
コクピットへのアクセスは狭く、これでアメリカ人が乗り込めるのか?と思う程。体をくねらせてコクピットへ。コクピットに座ってしまうと十分な広さがある。パイパー社の機体は96年からコクピットのスイッチ配置などが現代的なものとなったが、このマリブも例に漏れず、整然とオーバーヘットスイッチが並ぶ。コクピットの作りは贅沢そのものだ。
この日、御一緒させて頂いたのはマリブオーナーのT会長、そして同窓同門の先輩のA先生。お二人とも大先輩パイロットになる。この日は八尾から岡南、そして北九州へと飛ぶ予定になっていた。
最初のレグはオーナーのT会長が右席、今回私は左席で飛ばさせてもらった。なんとも光栄なことだ。 ヘッドセットは防音機能なし、ただの大型旅客機用のヘッドセット。これでもATCが出来るくらいの機内は静寂性がある。このマリブは鼻先のエンジンとコクピットのファイアーウォールの間に貨物室があるのと、与圧機能の胴体が相まって消音効果が高いのだろう。エンジン始動、タクシー開始。この日は八尾空港のRwy27からの離陸となった。タクシーをすると、とんでもなくノーズギアが重い。機体が重い!というのじゃなく、ノーズギアが重い。あれだけ長い鼻先に大きなエンジンがあるのだから当然だ。
ランナップ後に離陸、私は操縦桿を握らせてもらった。85ktでローテーション、120ktで上昇という数字を教わった。離陸許可をもらった後に350馬力のエンジンを離陸出力へ、そして離陸滑走開始。6人乗りで与圧機能付きの機体がそこそこの重量があり、凄い加速をするというわけじゃない。ただ、スムーズに気持ちよく滑走が始まった。ローテーション85ktとのことだが、実際は70kt前後くらいから飛行機が飛びたそうな感じが伝わってきて、滑走の安定性が落ちる。年式が新しいのでASIの誤差は少ないはずで、実測よりも低めに表示されていることもないだろう。個体差などもあるのだろうが、あと5-10kt早めのタイミングでローテーションしたほうがしっくり来るのでは?!というのが最初の印象だった。
ローテーションしてからはピッチ変化に比較的敏感な機体で、層流翼の機体の特徴なのか?!などと感じていた。大きなピッチ変化がないので、350馬力のシングルエンジンながらLeft turning tendencyは然程強くなく、ラダートリムを中立に取っても右ラダーが重い!ということは無い。ある意味、高い出力をきちんと受け止める設計が最初からされているという証拠なのだろう。この機体の主翼強度を上げて500馬力のターボプロップを搭載したMalibu Meridianという機体があるが、正にもともとのマリブの設計が高い出力のエンジンを受け止められるようになっているということが実証されている。
この後、大阪八尾空港から岡山の岡南空港までひとっ飛びとなった。地上の景色やナビゲーションの事はあまり覚えていない。オートパイロットなど使わず、ひたすらマリブの操縦桿の感触を楽しんだ。景色もさほど楽しまず、この機体の計器などを眺めながら操縦を味わっていた。初めて乗る機体、Hand flyで味わいながら飛ばないと勿体ない。この日は基本的にずっと北からの風があり右10-15度のWind correction angleを取って飛行していた。計器が良く、操縦系もスムーズなので、これくらいの大きさの機体でも風が読み易い。岡南空港への着陸はオーナーのT会長が担当、何事もなくマリブを下ろしていいた。ここで機体を下り、いちど地元のそば屋へ向った。正に日本版の$100 Burgerといったところだが、実際にかかっているお金はアメリカの数倍、5万円蕎麦というのが日本流の呼び方になるだろう。
岡南空港から離陸し、ここからはIFRで北九州空港まで遊びにいった。このレグは私が右席、左席は先輩A先生。離陸した後からの操縦は基本的に私がやらせてもらい、先輩がナビと無線担当。またもやオートパイロット無しでマリブの操縦感を楽しんだ。このレグでは外の景色も楽しんだ。岡山、広島、山口の海岸線の景色を見ながら、”自分は意外と日本の地理をしらないものだな”と気付かされた。今はカリフォルニアの地図、地形の方が鮮明に頭に入っている気がする。 IFRでPublished full appraochは打たず、レーダーベクターで北九州空港に向かい、Rwy36へはRight base entryとなった。
着陸した後には空港南側の駐機スポットへ。そしてオーナーのT会長と先輩A先生が秘密の隠れ家と呼ぶ場所でお茶をした。ここにはパイロットのUさんとお会いした。この日は天気も良く、窓を開けていると気持ちがよい。窓からは空港タクシーウェイが見え、旅客機のタクシーや離着陸が見える。普通の人には騒音だろうが、パイロット4人の集まりには良い眺めに他ならない。 北九州空港から帰還、八尾空港まで一気に戻ることに。このレグはA先生が左席、私が右席に座らせてもらった。Rwy18から離陸、秘密の隠れ家からUさんが手を振っているのが見えた。
帰りは与圧機能をフルに活かして15000ftの高度を選択。ここでマリブの本領発揮。双発のような派手な上昇力はないが、淡々と上昇を続けてVSIの針が下がってこない。流石14対1のグライドレシオの翼にターボ350馬力だけあり、高度が上がってからは気持ちのよい飛び方をする。この飛行機は高い高度をクルーズしているのが良く似合う。どんどんと八尾が迫ってきて、素晴らしいクロカン性能の一環を感じた。
八尾ー岡南ー北九州ー八尾、この肯定を午後半日だけでこなせる機体マリブ。日本の国土を考えると、この機体には手狭なほどだ。 こういう豪華なレシプロシングルエンジンの機体はもう登場しないだろうと思う。セスナ414や421がレシプロエンジンの最高峰と呼ばれるが、レシプロシ ングルエンジンというカテゴリーではパイパーマリブが最高峰の機体だと思う。
