現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

大学の児童文学サークルと児童文学研究

2018-06-04 08:48:00 | 考察
 高校二年の夏休みに、石井桃子たちの「子どもと文学」を読んで、大学では学部ではコンピューターサイエンスを、サークル活動では児童文学を研究しようと思いましたが、児童文学研究会に入会してその期待はあっさりと裏切られました。
「早大児文サークル史」を紹介する記事で、「児童文学研究会」が児童文学を研究する場でないことはすでに書きましたが、他の大学でも同様のようです。
 「日本児童文学2011年7-8月号」で、「学生の児童文学運動いまむかし」という特集がありました。
 そこでは、早稲田大学児童文学サークル(早大童話会、少年文学会、児童文学研究会)と東京学芸大学児童文学研究部の新旧会員による座談会が載っていますが、作家志望者はまだかろうじて残っているものの研究志向はまったくないようです。
 特集には、国学院大学児童文学会、東京大学児童文学を読む会、二松学舎大学児童文学研究会の紹介文ものっていますが、それらも含めてどこも研究会とは名ばかりで、好きな作家や作品について話したり、お話を作ったりする同好会的なサークルばかりのようです。
 あきらめが悪いようですが、念のために早稲田大学児童文学研究会の後輩に、児童文学研究をしたい学生がサークルにいるかどうかをきいてみました。
 予想通りに、児童文学をテーマに卒業論文を書くメンバーなどはいるものの、大学院に進んでまで児童文学研究を志す人はいないようでした。
 メンバーで児童書も含めて編集者を目指している人は多いようですが、彼らも大学院には進まずに(早稲田大学には編集者育成のための大学院の修士コースがあります)直接出版社に就職したいと就活をしているようです。
 それに、もし仮に大学院に進みたいと思っている人たちがいるとしたら、現状の児童文学研究会のレベルでは物足りないでしょう。
 現在の児童文学研究会には、児童文学に興味があって入る人よりも、小説が書きたかったり、たんに会の居心地がよくてという理由で入る人たちが多いようです(昔からそうでしたが)。
 また、児童文学研究会で一番共通に読まれている作家は会のOGの荻原規子で、その他では宮沢賢治、上橋菜穂子、梨木香歩などが人気なようですが、サークル員の全体数が増えたので、誰もが読んでいる作品を挙げることは難しいとのことです。
 そもそも「児童文学とはなにか」といったテーマ評論を行うぐらい、児童文学とYA(ヤングアダルト)、ライトノベルなどのジャンル分けがわからなくなっているようです。
 やはりここにも作家志望者はまだいるみたいですが(もう早稲田を卒業してから三十年近くもたつ、いとうひろしや荻原規子以降に、実際に専業の作家になった人がいるかどうかは知りませんが)、研究志向はますます弱くなっているようです。
 児童文学を専攻できる大学院は梅花女子大と白百合女子大(大学院は男性も入学できます)しかありませんし、他の大学の児童文学サークルもこのような現状ですから、児童文学を研究する場は本当に限られています。


日本児童文学 2011年 08月号 [雑誌]
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小峰書店
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