現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

新井けいこ「しりとりボクシング」

2018-06-17 15:13:57 | 作品論
 学校の学年行事でしりとり大会をやることになった、四年生の男の子の話です。
 「しりとり」を題材にしてどこまで面白くなるのかなと思って読み始めたのですが、細かいルールや攻撃と防御の作戦などがあって、読んでいてなかなか盛り上がりました。
 しりとりだけでなく、辞書や動物図鑑などの面白い話題も随所に盛り込んでいるので、読者の知的好奇心が刺激されて、この本を読んだ後で実際に友達としりとりをしてみた子たちもたくさんいたことでしょう。
 友だち思いで成績もよさそうな主人公だけでなく、幼なじみでとろいのでクラスで軽んじられている(主人公はいつも助けているのですが、実はそれ自体が下に見ていたのではないかと、あとで気づかされます)動物好きの男の子、でしゃばりだが正義感のある学級委員の女の子、クラス一背の高い少年サッカーチームの守護神(ゴールキーパー)の男の子、主人公のライバルの成績の良い男の子などがバランスよく配されていて、お話がラストのしりとり大会の決勝戦(一騎打ちなのでまるでボクシングのようです)までスムーズに進みます。
 面白いお話なのに、その中に子ども同士の人間関係や気づきを自然な形で忍び込ませているのは、作者の腕前でしょう。

しりとりボクシング
クリエーター情報なし
小峰書店
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東山彰良「流」

2018-06-17 08:15:09 | 参考文献
 第153回直木賞の受賞作です。
 選評ではかなり評価が高かったのですが、読んでみたらそれほどとは思いませんでした。
 台湾を中心に、日本や中国も舞台にした作品で、青春小説、恋愛小説、ミステリー、歴史小説などをひとつにまとめたようなごった煮の小説です。
 1970年代の台湾の風俗や抗日戦争、国民党と共産党の内戦などがうまくちりばめてあって、スピーディに場面は展開されていくのですが、それらが作者の実体験に基づかないせいもあって、どこか上滑りな印象を受けました。
 また、上記の青春小説、恋愛小説、ミステリー、歴史小説の要素も、個々には中途半端だったように思えます。
 ただし、エンターテインメント作品なので、極端な設定、デフォルメされた登場人物、偶然の多用、ご都合主義なストーリー展開などは当然で、それら使って上記の様々な素材や要素を一冊にまとめあげる作者の剛腕は相当なもので、これからもヒット作品を量産していくことでしょう。

クリエーター情報なし
講談社
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする