村上春樹の6冊目。
阪神大震災その後、それぞれの人物達の物語。
読んでみた感想ですが、今までの村上春樹のイメージとは違い全体的に暗い・・・
喪失感漂う内容ですが人物達の深い洞察力と表現で流石、村上春樹って思った。
【UFOが釧路に降りる】
同僚に頼まれて釧路に届け物を頼まれた小村、同僚の妹が迎えに来た時にシマオという女性を紹介されて・・・
なんでしょうかこの展開は・・・新しい出会いが始まる話がこの作品集のプロローグなのかもしれません。
【アイロンのある風景】
この作品が一番ぐっときました・・・感傷的でいい話です。
【神の子どもたちはみな踊る】
表題作ですがなぜか印象が薄いです・・・正直な感想です。
【タイランド】
タイランドの医療学会に出席するために訪れた女医の思い出と後悔の気持ち。
旅行先で体験する出来事で人物の心の変化や決意、魂の昇華などストーリーとしては「滑らない話」
でも、やっぱりいいです、こういう小説は基本的に好きなので(笑)
【かえるくん、東京を救う】
夢か現実かわからない銀行員が体験するストーリー
ラストに銀行員が病院のベットにいたので夢?だったのかも・・・
地震によるトラウマとか心の闇を表現しているが、全体としてはファンタジーです。
【蜂蜜パイ】
三角関係の中にみる人間模様ですね、ラストに持ってくる短編として実に読みごたえがある作品でした。
実際は不倫やこういうドロドロとした恋愛模様は不幸になるのが多いのですけど。
村上春樹流のクールな表現でまとめているのでそれほど深刻にならない話でした。
喪失感が全体的に占めていてトラウマや絶望感のイメージが漂う作品集でした。
展開としては、その喪失感からの再生や希望を暗示する展開が少ないので
震災からそれほど時間がたっていないから、まだまだトラウマや心の傷が癒えない状況の人物達なのでしょう・・・
どうしていいかわからないので、ぼーっとして次の事が出来ないし、分からない主人公の苦悩の話でした。
次は長編作品にどっぷり浸かってみようと思います。