ホトケの顔も三度まで

ノンフィクション作家、探検家角幡唯介のブログ

甲斐駒ヶ岳赤石沢S状ルンゼ

2015年12月16日 00時08分40秒 | クライミング
以前から甲斐駒赤石沢源流部のルンゼが気になっていた。登山体系によると摩利支天ルンゼとS状ルンゼというのがあるようで、12月初めなら雪崩の心配もなくアイスを楽しめるのではないかとにらんでいた。どんなルートかは不明。しかしそこにこそ登山の醍醐味はある。ということで9~11日に、大部君と一緒にS状ルンゼから奥壁へ継続する計画で甲斐駒へ向かう。

アプローチは八合目岩小屋からBバンドを下って、Bフランケ基部からS状ルンゼへ取り付く計画だったが、散々まよってBバンドではなくAバンドを下ってきてしまう。赤石沢の対岸にはS状ルンゼが白く切れ込んでいるが、なにぶん異常気象の暖冬で、下部のナメ滝は氷結しているものの、真ん中の垂直の滝はカラカラに乾いてしまっている。

まちがってBフランケ基部ではなく、Aフランケ基部からアプローチしたため、赤石沢本流の40mチョックストーン滝を高巻くために、1ピッチ、面倒くさい垂直の藪バンドを登り、懸垂でS状ルンゼ取り付きにおりたった。ナメ滝をコンテ混じりで登り、垂直の滝へ。30m2ピッチ。垂直の壁のところどころにへばりついた土の塊にアックスを突き刺し、直径2センチの細木にランナーをかけて、じりじりと登る。ヴァーティカルな草付ダブルアックスのあとは、ブランクセクションが現れ、クラックにカムをつっこんで右へ振り子トラバース。灌木にアックスをひっかけて、垂直の藪壁を登って滝上に出た。草付グレードK5。あまりに暖かいため、滝どころか、草付も土も凍っておらず、目や耳のなかに植物の破片や土が入りこんできて非常に不快だった。アイスクライミングというより完全に農作業、ドライツーリングではなく土起こしの世界である。

滝の上には樋状の滝100mというのがあるはずだが、スラブの上に薄雪がかかっているだけで全然凍っていない。そのままラッセルで摩利支天と本峰のコルに出て登攀終了。計画では八丈バンドから奥壁へ継続の予定だったが、11日は朝から雨だというので、本峰経由で八合目に戻り、翌日、異様な高温と時折降りしきる雨のなか下山した。

S状ルンゼは凍れば奥壁に継続するのにいいルートかもしれないけど、わざわざ登りにいくところではないなあというルート。それより収穫はこの氷柱。



よくわからないが、奥壁右ルンゼの下部だろうか。この暖冬、異常高温状態で、これだけの氷ができるということは、3月の積雪の多い時期に冷え込んだタイミングを狙えば上までつなっているかも。右ルンゼだとしたら赤石沢の谷底から9合目あたりまでつづくロングアルパインアイスが楽しめる可能性がある。

しかしあらためて写真見ると、本当にこれ12月?という感じ。正月も冬山にはならないかもなあ。せっかく手術を延期したのに、本当に今年は終わっている。気象庁は6年ぶりの暖冬とか言っているけど、そのレベルじゃないでしょ。

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