ホトケの顔も三度まで

ノンフィクション作家、探検家角幡唯介のブログ

極夜の探検終了

2017年02月26日 10時05分56秒 | 探検・冒険
長らくブログを放置していたが、じつは昨年11月からグリーンランド・シオラパルクにわたり、この4年間準備をすすめてきた極夜の探検を実行していた。それが終わり、数日前に無事、人間界に帰還した。

村では何もする気が起きず、ただ飯を食ってゴロゴロしているだけの毎日だ。ブログの記事も書かなきゃ…と思いつつ面倒くさくて手をつける気がしないので、ひとまず関係者に送った報告文を転載してお茶を濁させていただきます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

皆さま

新年、あけましておめでとうございます。角幡です。
この4年間準備をすすめてきた極夜の探検が終了し、昨日、シオラパルクの村に戻ってきました。皆さんには心配をおかけしました。


計画では北極海を目指してカナダに渡り、4月に帰村する予定でしたが、中間地点に設置していたデポがすべて野生動物に食い荒されており、残念ながら予定より一カ月ほど早い帰村となりました。

ただ、計画した通りにはいきませんでしたが、80日間の暗黒界の放浪はとんでもなく得難い経験になったと思います。最初の氷河での猛烈なブリザード、荒れ狂う海水を浴びてベーリング海のカニ漁船の船員みたいに氷漬けになった夜、地吹雪でテントが埋没する恐怖と闘いながらの必死の7時間ぶっ通しの除雪作業、冬至の新月期間という究極の暗黒空間における視界ゼロの無茶なナビゲーション、その末に発見した小屋への正解ルート、そしてデポが完全に破壊されたときの絶望。

極夜世界。そこには絶望しかありませんでした。その後、なんとか旅を維持するため月明かりを頼りに大型動物の狩りに挑みましたが、しかし、昔のイヌイットでも困難を極めた暗闇のなかで狩猟に私なんかの半端者がうまくいくわけもなく、最後は犬を食べることを前提に村への撤退を決意しました。その後の思わぬ展開、そして厳冬期のブリザード荒れ狂う地獄のような氷床越え。ウサギ、キツネなどを食いつなぎ、気がつくと2か月分しかない食料で80日間も極夜界を放浪していました。あまりの無茶苦茶な展開の末に見た地吹雪のなかの太陽は巨大な火の玉となってギラギラと燃えており、思わず感極まりました。最後はマジで結構やばかったです。やっぱり、ああいうところに一人で出かけてはいけませんね。

今回の極夜の計画は2015年のデポ設置の段階からやることなすことうまくいかず、まったく計画通りにいきませんでした。ほとんど呪われた企画だったといっていいと思います。しかし、デポが破壊されていたことで、ある意味、計画以上に極夜を深いところまで探検できたとも思います。ツアンポー以来のすごい旅だったなというのが率直な実感です。やっぱり旅は計画通りいかないほうが面白い。その意味での物語性は最高でした。今はさっさと日本に帰って家族と一緒に野沢温泉にでも行きたいなと思ってます。

今のところ帰国は3月初旬を予定しておりますが、せっかく4月末まで仕事をキャンセルしているので、執筆再開は4月になってからにしようかと思ってます。まあ3月一杯は家族とスキーをしたり、本を読んだりしてゴロゴロするつもりです。

極夜の間は、もう二度と極地にはこないぞと思っていましたが、今は次の探検の企画で頭がいっぱいです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

とりあえずこんな感じの旅でした。。。
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『地図のない場所で眠りたい... | トップ | 『地球はもう温暖化していない』 »
最新の画像もっと見る

探検・冒険」カテゴリの最新記事