ホトケの顔も三度まで

ノンフィクション作家、探検家角幡唯介のブログ

ケンブリッジベイ滞在中

2012年12月12日 02時59分01秒 | 探検・冒険
すっかりご無沙汰になってしまったが、現在、カナダ北極圏のケンブリッジベイという集落に滞在している。ここに来たのはもう二十日ちかく前になるだろうか。当地は随分前から太陽の昇らない極夜の世界に入っている。しかし昼間は思ったよりも明るい。太陽が昇らないと言っても、地平線下の太陽本体からの陽光がある程度は届くため、午前10時ぐらいから午後2時ぐらいまでは、普通に視界が開ける。寒さもまださほどではなく、大体マイナス32度ぐらいで推移している。マイナス50度ぐらいを予想していたので、少し拍子抜けだ。

しかし、一時的に明るくはなるものの、あっという間に暗くなるので、一日が異常に短く感じる。人間やっぱり暗くなると、いやーそろそろ夜だから、夜飯食って、日記でも書いて、寝るかという気分になるのだが、時計を見るとまだ午後4時で愕然としてしまう。一日が終わるまであと八時間もあるのか。いったい何をすればいいのだ!

とはいえ、装備の補強や、天測の訓練や、買い出しやらで時間があっという間に過ぎていき、全然遊んでいる暇がない。

昨日まで訓練のため、12、13キロほど離れたところで一週間ほどキャンプをしていた。寒さに慣れることや、持ち込んだ装備や燃料の消費量のチェックなどが目的で、昨日、村に帰ってきたところである。

キャンプ中にも装備関係でいろいろ課題が見つかり、これから対策を練らねばならない。食料のパッキングなどにも数日かかる。情報収集もしなくてはならない。出発は二十日ごろを予定しているが、準備に忙殺されそう。こんな予定ではなかったのが。

ちなみにこれからどこに行くかというと、まだ決めかねている。キャンプ中はもろもろの事情からクグルトゥックという村にしようかと思っていた。ケンブリッジベイからは、だいたい500キロ前後離れたところに、ジョアヘブン、クグルトゥック、ウルカクトゥックという三つの集落があり、出発前は現地でいろいろ情報を集めてから目的地を決めようと思っていたのだ。

しかし、昨日、ちょっと小耳にはさんだところによると、今年は海の結氷が遅いらしい。クグルトゥックに行くには海に氷が張らないと無理なので、もう少し待たねばらなないかもしれない。そうすると極夜が終わっちゃう。

ちなみに懸案だった天測であるが、いろいろ工夫した結果、かなり精度が増してきて、概ね実用に耐えうる技術を獲得したと自分では思っている。出発前は六分儀の扱い方と計算方法だけを習得しただけだったので、どうなることやらといった感じだったが、なんとかなりそうだ。冬の北極の旅は、星の世界の旅に他ならない。そのことを訓練キャンプ中に発見した。星を見て自分の行き先を決めることで、今まで知らなかった世界が開けそうな予感がして、ものすごく楽しみだ。

ちなみに写真はキャンプ中にがんがん作ったイグルー。一人でも三時間ちょいで作れるようになった。

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