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ホトケの顔も三度まで

ノンフィクション作家、探検家角幡唯介のブログ

私はフェイスブックに登録してません

2013年06月05日 23時38分56秒 | 雑記
自意識過剰気味なところがある私は、しばしばグーグルの検索ボックスに自分の名前を入れて検索すてみることがあるのだが、その結果の中にひとつ気になるのがあった。

角幡唯介 Facebook

という検索結果だ。

私は現在、フェイスブックに登録していない。以前、まだフェイスブックがこれほど日本でユーザーを獲得するよりもはるか前、知り合いの一人からフェイスブックに登録しませんかみたいな勧誘のメールが来て、フェイスブックが何なのか知らないまま登録したことがあったが、その後、知りもしない人や、すでに友達になっている人から「友達リクエスト」が送られてきたり、いいね!とお互いにやたらめったら褒め合ったり、ページの右側に、この人は友達じゃありませんかとかいって、本当に友達が並んでいることに気持ちの悪さを感じ、かなり以前に登録を抹消した。

なのに、なぜ私の名前のページがあるのだろう。抹消し損ねていたのであろうか?

試しにメールアドレスと当時のパスワードを入れてみると、このアドレスは登録されていないと言われた。ということは赤の他人だろうか。まさかこんな名前で同姓同名という可能性はないだろう。私の父親によると角幡姓というのは日本で我が一族しかいないらしく、その父親が非常な努力を重ねて作った家系図には角幡唯介という人物は私しかいないのだから。

ということで、フェイスブックの角幡唯介は私ではありません。いいね!を押してくれている26人の方には申し訳ありませんが……。

まったくフェイスブックの実名制って野放図極まりないじゃないか。私はフェイスブックが嫌いなんだから、ザッカンバーグ、なんとかしてくれ。


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魂が引き裂かれそうな苦しみ2

2013年04月27日 12時05分32秒 | 雑記
先日、集英社のほうから一枚のはがきが届いた。何かと思って見てみると、なんと『空白の五マイル』の文庫本の増刷決まったという通知書だった。文庫のほうは発行直後に二刷が決まり、それ以降、ぱったり連絡が来なかったから、もうダメだと思っていたので、びっくりした。しかもけっこうな部数である。いったい何があったのだろう。自分の知らないところで角幡ブームが起きていて、突然売れに売れまくっているのだろうか?

とりあえずメールで担当者にお礼を申し上げると、すぐに電話がかかってきた。話をきくと、どうやら角幡ブームが来ているわけではないらしく、集英社の文庫のナツイチというフェアに取り上げられることが決まり、それに向けての増刷なのだという。別に本が売れているわけではないらしい。まあ、増刷してくれるんだから、それはそれで非常にありがとうことだ。しかし、フェアだからといって増刷するほど売り上げが変わるのだろうかと疑問に思っていると、担当者が「もうご存じかもしりませんが、今年のナツイチはAKBとコラボすることになりまして」などと、いささか不穏なことを話し始めた。まったく知らなかった私は、電話をしながらネットで検索してみると、なんとAKBのメンバーが読書感想文まで書くというのだ。アイドルが『空白の五マイル』を読んで感想文? 笑ってしまった。

当然誰が読むのか気になったので、聞いてみた。
「いや、まだ決まっていないんですが……」とのことである。
「大島優子がいいんだけど」
「いえ、まだ決まってませんが、大島優子ではありません」
なんで、そこだけ決まってるの?

AKBといえば、以前、このブログでも魂が引き裂かれそうな苦しみとかいうタイトルで下らない雑念を書いたうえ、それが単行本の中に収容されるという失態を演じたことがある。こんなことになるなら、あの時、もう少し彼女らを持ち上げておくべきだったろうか。いや別にけなしたわけではないけど、なんというか、言葉ですこし蹂躙したというか、いや違うな。そんないやらしい感じではない。

それにしても、自分の作品をきちんと読んでいただけるのか心配だ。ちょっと読みにくいところは直した方がいいかもしれない。増刷を期に全面的に加筆修正をほどこすか? また魂が引き裂かれそうだ。

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映画『コン・ティキ』とHONZレビュー『謎の独立国家ソマリランド』

2013年03月30日 09時27分40秒 | 雑記
6月29日に全国公開される映画『コン・ティキ』の試写会を昨日見てきた。

探検に興味のある方ならすぐに分かるだろうが、ノルウェーの人類学者で探検家トール・ヘイエルダールのコンティキ号による漂流を描いたものだ。探検の中身を簡単にまとめると、ポリネシアに人類が住みついたのは、南米から海を渡ってからではないかと考え付いたヘイエルダールは、その独自の学説を立証するため、ペルーから水に浮かぶバルサ材で筏を組み、はるばる八千キロを漂流して、本当にポリネシアにたどり着いた。その探検の模様をまとめた本は全世界で5千万部も売れた。日本では『コン・ティキ号探検記』としてちくま文庫から出ています(……と思ったら絶版みたいですね)。

コン・ティキ号探検記 (ちくま文庫)
トール・ヘイエルダール
筑摩書房


映画は素晴らしかった。この探検がどれだけ無茶苦茶だったかよく分かったし、コンティキ号があんなに大きかったことも知らなかった。本当の探検をできた時に感じる、自分と地球との対峙感も映像でうまく表現できている。何より自分の信念に一直線に突き進むヘイエルダールの魅力が伝わってきて感動した。必ずしもハッピーエンドでないところも含めてよかった。個人的には、やっぱり見境なく突き進むことが大事なんだな、という良いのか悪いのかよく分からない刺激を受けた。受けてしまった……。

探検に興味のない人でも十分に娯楽大作として楽しめるので、ぜひ多くの方に見てもらいたい。公開はだいぶ先ですが。下記はノルウェー大使館のHPです。

http://www.norway.or.jp/news_events/culture/literature/kontiki_ggnominate/

あとノンフィクション書評サイトHONZに高野さんの『謎の独立国家ソマリランド』の書評を書きました。

『ソマリランド』は本人も自負している通り、高野さんの久しぶりの会心作。無法と暴力が蔓延るアフリカ・ソマリアで平和と民主主義を達成しているソマリランドの探検記です。読み応え十分、一気読み必至。

謎の独立国家ソマリランド
高野秀行
本の雑誌社



実は4月から朝日新聞の書評委員をやることになっており、最初にこの本を取り上げたかったのだが、他の評者との競合にやぶれてしまった。週刊現代からも頼まれていたのだが、朝日で書くつもりだったので断った、という経緯があり、最終的にHONZで書かせてもらった。HONZはこちらです。

http://honz.jp/23795

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23日までは連絡取れます

2012年11月20日 10時09分35秒 | 雑記
主に仕事関係の方へご連絡です。
21日にイエローナイフに飛び、24日まで滞在する予定です。それまではネット環境が整っているので、連絡は問題なく取れるので、何かありましたらメールを送ってください。

イエローナイフの後はケンブリッジベイという村に向かい、それから先はあまり頻繁には連絡が取れなくなると思います。

こちらは毎日雨。冬のバンクーバーってこんなに天気が悪いんですね。町の中心部にはガラス張りのマンションが目立ちますが、冬になると太陽の光が射さず憂鬱症の人が増えてしまうため、法律だか条例だかで、一定割合以上、ガラス張りにしなければならないと決まっているそうです。

昨日から買い出しをしていますが、時差ボケがひどくて昼間はついつい寝てしまいます。昔は時差ボケなんて感じたことなかったのに。年を感じるなあ。

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バンクーバー

2012年11月19日 01時01分47秒 | 雑記
今年も北極探検のためにカナダにやって来た。
昨日、バンクーバーに到着。YWCAにチェックインした後、昨年、荻田君のつてで知り合いになった番場さんのお宅で夕食をごちそうになった。こちらはしとしとと雨ばかり。バンクーバーでは食糧や装備の買い出しをおこない、その後、イエローナイフから北極圏のケンブリッジベイという村に入る予定である。

今回の目的は極夜の北極を旅することだ。というか、旅できるかどうかを確かめることが目的である。

極夜、つまり太陽が昇らない世界は極地にしかない。極地を本当に体で感じるには、やはり太陽の昇らない冬に行かざるをえないだろう。しかもその極夜の世界をなるべく自力で旅をする。

極地で本当の極地性を感じるためには、衛星電話とGPSというハイテク装備はないほうがいい。昨年の旅ではそのことをつよく思った。『アグルーカ』の中でも書いたけど、衛星電話とGPSがあると、極地にいるにもかかわらず極地の自然から切り離された感じがしてしまう。きちんと自然のなかに入り込めていない感じがしてしまうのだ。

ということで、電話とGPSなしで極夜の北極を旅することが今の私のテーマなのだが、はたしてそんなことが可能なのか、とりあえず現地に行って訓練してみようというのが今回の旅の目的である。GPSがないとすると、現在位置を確認するには六分儀で天体を観測してそれをもとに計算するしかない。六分儀の使い方と計算方法はある程度学習したが、厳寒の北極でその通りできるかどうかは別問題だ。ケンブリッジベイでは天体観測の訓練や装備のチェック、イグルーの設営訓練なども行う予定で、できればその後、昨年おとずれたジョアヘブンか、あるいは別の村を星を見ながら歩いて旅したい。村はいずれも500キロ前後離れており、一カ月程度の行程になるだろう。

日本は衆院解散して大変のようですね。去年も北極にいる間に地震があり、日本を離れた時に必ず大きな出来事が発生する。選挙に投票できないのは残念ではあるが、でも実はすこしホッとした気持ちがないでもない。

なぜかというと、ここ最近ずっと、選挙になったらどこに投票しようか頭を悩ませてきたからだ。民主党政権はひどかったし、かといって自民党政権に戻って欲しくない。他の第三極の政党にも政策的に共感できるところは少ない。こりゃ投票先がないなあ、などと思っていたところに、いきなり解散して、その翌日、私はカナダにやって来た。いってみれば不可抗力的に投票できなくなったわけで、無責任なようだが、投票したくもない政党に投票しなくて済んだので、ホッとしているのである。


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取り返しのつかない失敗

2012年10月10日 14時43分08秒 | 雑記
近著『アグルーカの行方』の評判が全然みえてこず、最近、次のような不安に苛まされている。

それにしてもアマゾンにレビューがあがらないし、ブログで取り上げてくれる人もあまりいない。おかげでついつい頻繁にツイッターをチェックしてしまう。ありがたいことに重版が決まったので、売れ行きは順調のようなのだが、いったいどうしたことなのだろう?

全然面白くないのだろうか。

でも、服部さんからは珍しく、すげえ面白かったとのメールがきたし、地平線会議の江本さんからも電話でよかったとのお言葉をいただいた。その他にもわざわざ手紙で肯定的な感想を伝えてくれる方もいて、登山や冒険に理解の深い方からの反応は、これまでの作品以上にいいように感じるのだが……。とはいえ確かに中身はかなり堅い内容だ。それに人間とのやり取りがこれまでより少ないので、女性受けはしないだろうな。そうだ、この本は結局、冒険業界向けの本なのだ。分かる人には分かるのだ。いや、まてよ。ついこの前、自分の本は山岳コーナーにしか置かれていないとブーブー文句を言っていたではないか。言っていることがおかしいぞ。

普段はよく、本を書く時は読者にどう読まれるかなど考えていないし、読者受けするテーマを選んでいるわけでもない。自分が書きたいことを、書きたい表現で書いているだけなのだ、などと偉そうなことを言っているのに、実際に本が出るとこのありさまだ。完全に言行不一致である。滅茶苦茶、読者の視線を気にしているではないか。どういうことなのだ!

ネット社会の弊害ですね。

さて、話は変わり、最近の衝撃からひとつ。

実は八月に自宅を引っ越したのだが、その時のどさくさで、普段、原稿や写真をすべて記録している外付HDのACアダプターが見当たらなくなった。机の引き出しの中をごちょごちょ探していると、それっぽいのがあったので、これかなーなどと思いつつ、安易に接続してみたが、電源が入らない。しょうがないので、ヤマダ電器に持っていってみると、「それはパソコンのアダプターですよ」と言われた。

え、それってまずいんじゃないのか?

やばいと思い、家に帰って、また机の中をひっくり返すと、今度は正真正銘、外付けHDのアダプターが見つかった。ほっと一安心して接続すると、やはり電源がつかない。やはり、壊れてしまったのだろうか……。

慌ててメーカーに相談してみると、修理は無料で行えるという。よかったと一安心したのもつかの間、機械の修理はできるが、その場合、中の記録が消去されてしまうので、無くなって困るようなデータがあるなら、専門業者に依頼してデータを取り出してからでないといけないという。

「いくらぐらいかかるんですかね」と訊くと、
「かなり高いみたいですよ」とのこと。

そしてこの程、その専門業者からの見積もりが来た。結果は恐ろしいことになった。データの取り出しは、ファイルごとに指定して行い、その合計のデータ量で値段が決まるらしいのだが、最低価格、つまりどんなにとり出すデータが少なくても、なんと約15万円もかかるのだという。最大だと55万円である。

なんということだ! 安易にパソコンのアダプターを接続しただけで、車一台買える金額がかかるというのである。

HDの中には、過去の作品の全原稿の他、雑誌に書いたエッセイの原稿、ツアンポーや北極の写真、登山の写真などなど、私のここ3年ほどの活動の記録のすべて入っていた。そして他にバックアップをとっていなかった。

バックアップなしの旅が好きだからといって、何も普段のデータ管理でもそれを実行する必要はなかったのだが……。

まだ結論は下してないが、さすがにそんな金は払えない。
さよなら、ぼくの過去。さよなら、ヤルツアンポーの写真。さよなら、今まで決して人目にさらさなかったいくつかの秘密の文章。さよなら、あといろいろいっぱい。

ツアンポーに関していえば、主要な写真はパソコン本体に残っているので、それでよしとするか。でも、どうしよう。まだ迷ってます。


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天文航法

2012年10月03日 08時55分45秒 | 雑記
今年の冬は星を頼りに北極圏の暗闇を彷徨する計画である。『アグルーカ』の中でも書いたが、昨年、北極圏を長く旅した時に、GPSを使って位置確認をすると、どうも旅がつまらなくなってしまうと感じた。極地は山と違って、起伏のない平面がどこまでも広がっているだけなので、今自分がどこにいて、どちらに向かえばいいのかというナビゲーションをどうやるかがゲームとしての面白さだといえる。しかしGPSを使うと、ボタンをぽちっとおせばそれが分かってしまうので、その面白さがなくなってしまうのである。

探検や冒険の魅力は、無垢な自然の中に身体を入り込ませるところにある。特に極地に場合、人間世界から何百キロも離れたところを旅できる点が、他のフィールドでは体験できない特徴だ。やはり究極の自然の中を、自分の力だけで旅をしてみたいという欲求は抑えがたいものがある。そしてその舞台は太陽のない極夜が望ましい。太陽のない世界は極地独特のものだし、長い夜を経験することで本当の春を実感できるとかいうようなことを、確か星野道夫もどこかに書いていた。私も世界にそこにしかない春を感じてみたいのである。

ということで今年はGPSを使わず、天測で極夜を旅できないか、実験的に行ってみるつもりで、最近は家で一日中、『天文航法』という本を読みながら、天測について勉強している。

それにしても地球の時点と天体の動きの理屈が全然分からない。理系科目の特徴は、ある大きなシステムを極度に単純化したモデルを使用することで、複雑なシステムを容易に理解するところにあるわけだが、もちろん天文航法でもそれは同じで、自転する地球、天球に浮かぶ太陽や星々の動き、それに伴う時間の経過がモデル的に説明されているのだが、それが全然頭に入ってこないのだ。

そもそも理系科目は中学生の時以来、全然勉強していない。計算の方はまだ足し算、引き算しか出て来てないが、時間の計算が多く、多くが60進法なので、頭がこんがらがってしまう。昨日は、例えば6月3日AM2:35から16時間24分41秒を引いたら、何月何日何時何分になるかというような単純な計算がうまくできず、納得いくまでに2時間ほども要してしまった。こんなんで天測の基本をマスターできるのか、あやしいものである。

六分儀はまだ手に入れていないが、『雪男』の取材で知り合った、ヨットで世界一周の経験がある国重さんに相談したところ、すぐに友人から借りることができたと連絡が来た。ありがたいことである。入手し次第、海でキャンプを張り、星を眺めながら天測の習得に努めたい。いやー楽しみだ。

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衝撃的事実 しをん本解説

2012年09月08日 11時46分21秒 | 雑記
最近発覚した衝撃の事実からひとつ。

5、6年前に南アルプスでアイスクライミングをして凍傷に罹って以来、私の右足の親指の爪は黒ずみ、かさかさになり、外側に膨れ上がって、気持ち悪い感じになっている。その後もヤル・ツアンポーとか、北極とかで定期的に軽度の凍傷に罹り、爪の状態はしだいに悪化し、今ではカキの殻みたいになっている。放っておくとぼろぼろと崩れることもある。

最初は右足の親指だけだったのだが、何度も足に定期的にダメージを与えていたせいか、両の薬指の爪も内側から膨らみ始めている。爪と皮膚の組織が固い発泡スチロールのように変形し、外側に膨らんでいるような感じだ。ランニングする時には、この膨らんだ爪が靴に引っかかるのか、指先が水膨れになり、ひどく痛むこともある。

私はてっきりこの症状は凍傷でダメージが与えられて、爪が駄目になってしまったせいだと思っていた。夏場なんかはサンダル履きで、よく人から、「すごい爪ですね、どうしたんですか?」と訊ねられることも珍しくはなく、そんな時は、「いやー、昔、凍傷やっちゃって、それでこんなんなっちゃったんですよ」などと心持ち誇らしげに話していたものである。要は、自分の爪がひどいのは度重なる登山や探検による、いわば名誉の負傷みたいなもんだと思っていたわけだ。だから、治るわけがないとずーっと放置していた。そしてこれからも放置するつもりだった。

しかし先日、某山岳雑誌の取材で平ケ岳に行った時、カメラマンの西田君に、例によって「爪が最近ひどくてさ」と話すと、「それ、爪水虫じゃないですか?」と言われた。
「え、これ水虫なの?」
名誉の負傷だと思っていたのだが……。
「カイセンキンとかいうらしいですよ、確か。薬飲んだら治るらしいですが」
そんな簡単に治るのか!

帰宅して、爪水虫で検索して写真を見てみると、確かに私の爪の症状は、まさに爪水虫のそれである。そうだったのか……。凍傷とかヤル・ツアンポーとか北極は全然関係なかったんだ。ちなみにウィキペディアによると、菌の名称はカイセンキンではなく白癬菌だった。

ちょっとびっくりだが、治るのはよかった。今度、皮膚科に行こう。

   *   *


神去なあなあ日常 (徳間文庫)
三浦しをん
徳間書店



こんな話の後で恐縮だが、三浦しをんさんの『神去なあなあ日常』の文庫版が発売された。解説は、なぜか私が書いている。テーマは林業。非常に深い内容だと思うので、三浦ファンならずとも読んでみてください。林業だの、辞書編纂など、三浦さんの目のつけどころはとても面白い。大ベストセラー作家の尻馬に乗り、私の知名度もアップ、本の売り上げもアップ、となったら大変うれしい。

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ノンフィクション作家たちとの飲み会

2012年07月17日 19時36分36秒 | 雑記
ここ最近、自分と同じノンフィクションの書き手の方と酒席を共にすることが多い。私の本の書評をいつも書いてくださる稲泉連君を皮切りに、先週はポストの編集者に内澤旬子さんと石井光太さんを紹介していただいた。その二日後には、神楽坂の某酒場の仲立ちにより、同じ時に大宅賞をいただいた『ヤノマミ』の国分拓さんともお会いした。

石井さんは、本は魑魅魍魎的なところがあるが、本人はいたって人当りのいいニコニコした方だった。内澤さんはぶっ飛んでた。国分さんもその作風からは想像もできないほどひょうきんな方で、話も非常に面白かった。国分さんとの飲み会で残念だったのは、私が風邪を引き始めていたため、飲んでいる途中で熱が出てきてしまったことだ。女将が店をしめた後、私の弟が早稲田でやっている油そば屋に行こうと皆で盛り上がったのだが、私は体がだるくてつらかったので、先に帰宅させてもらった。

最近気づいたのだが、ノンフィクションの書き手というのは、どうも10歳ぐらい毎に固まって輩出する傾向があるように思われる。私に近い世代だと、石井さん、稲泉さん、あとは石川直樹君とか、開高賞の水谷竹秀さんも同世代だ。国分さんや内澤さんは10コほど上で、探検部の先輩の高野さんや、服部さんなんかと同世代だ。どういう背景があるのだろう。

さて、9月に発売される『アグルーカの行方』の改稿も終わり、たまっていた書評、エッセイの類もほぼ書き終え、書き物関係の仕事は大方一掃した。『探検家、36歳の憂鬱』の見本も先週届いた。本屋への配本は20日ごろだろうか。文藝春秋8月号の巻末についている同社のPR誌「本の話」8月号に「自著を語る」を書いているので、読んでみてください。

文藝春秋 2012年 08月号 [雑誌]
クリエーター情報なし
文藝春秋


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ハツラツ

2012年06月28日 16時23分00秒 | 雑記
今年の冬にまた北極に行こうと思っていて、五月から週に一回ほどトレーニングでボッカをしている。最近はクライミングも冬ばかりで、夏はあまりやらなくなった。クライミングの代わりのボッカをしているのだ。

これまでに行ったのは、浅間山、両神山、塔ノ岳、前白根山で、先週末に巻機山に登った。せっかくだからと百名山を中心に登っていて、そのうち『日本百ボッカ』という本を書こうと思っている。というのは、うそです。

ボッカといっても、正確には何キロ背負っているのか分からない。たぶん40キロか45キロぐらいだと思うのだが、体力が落ちていたのか、けっこう重く感じた。そこでこれは一度正確に測っておこうということで、先週、巻機山に行った時に体重計を持って行った。巻機山は頂上まで標高差が結構あるし、ちょっと軽めにしとこうかと思い、荷物の重さを35キロにして登ったのだが、これが軽い、軽い。とても快適に頂上まで登れた。いったい今まで何キロ背負っていたのだろう。塔ノ岳に上った時など、本当につらくて、大変だった。あれで30キロぐらいだったら、ちょっとショックで、北極に行くの、やめようかななんて思っていたのだが、たぶん45キロぐらいあったのだろう。

ということで35キロだと余裕をもって山に登れることが分かり、最近、私は元気です。エッセイ集のタイトルも『探検家、36歳のハツラツ』にしておけばよかったと後悔している。

『探検家、36歳の憂鬱』は7月中旬には店頭に並ぶと思います。

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ゲラとどく

2012年05月25日 18時31分35秒 | 雑記
7月に文藝春秋から発売されるエッセイ集のゲラが届いた。やっぱりゲラになると違うものだ。ワードで書き終わった時は、こんなもの、いったい誰が読むのだろうと不安になったが、ゲラになるとそれなりに自分でも読めるから不思議なものである。

ちなみにタイトルは『探検家、36歳の憂鬱』

こんなタイトルにしてしまって大丈夫なのだろうか。売れるのだろうか。非常に憂鬱である。

これはもう装丁のほうで頑張ってもらうしかないということで、昨日は文春で装丁を担当してください大久保さんと、装画を書いてくださるryoonoさんとの打ち合わせがあった。ryoonoさんは本の装画は初めてとのことで、一体どんなものに仕上がるのか、非常に楽しみである。もう、滅茶苦茶にしてもらいたいところである。

ちなみに、この本は原稿用紙で40~50枚程度のエッセイが7本と、あと短いのが1本並んだものだ。そのうちの4本は過去に雑誌に書いたものだが、大幅に加筆修正しており、中には似ても似つかないものになっている原稿もある。残りの4本は書下ろしである。

内容としては、雪崩に遭った時の話、探検部の思いで、富士山登頂記、北極の話、震災の話、熱気球の神田道夫さんの話、コンパの話、表現の話の8本である。

なお、この8本の間に、このブログの記事も挟まっている。しかも無修正。編集者の選によるものだが、いやー、あの一篇が入ってしまったかと、内心ひそかに魂が引き裂かれそうな苦しみを感じたりしている。

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テレビ効果?

2012年05月22日 15時10分52秒 | 雑記
昨日、NHKのエルムンドに出演したが、司会のアンディーさんの軽妙な話しぶりと、メイ・パグディさんの美しい容姿に助けられ、非常に楽しく話をすることができた。

告知では生と書いたが、正確に言うと半生で、放送の1時間ほど前に収録し、ほぼ生で放送するというスタイルだった。私は完全に生放送で、本番は午後11時からだと思い込んでいたので、9時45分ぐらいに、スタッフが「本番5分前でーす」と掛け声を出しても、何言ってんだろ?と首をひねるばかりで、あれよあれよといううちに、心の準備ができないまま本番が始まってしまい、内心あせっていた。

ところで、それはそれとして、今日、あるところに取材に行ってきて、その帰りに西武池袋線の改札内の小さな本屋に寄ったのだが、なんと驚いたことに、『雪男』が平積みになっていた。今まで、新刊で出たときも、賞をとった時も、『空白』も『雪男』も、この本やで自分の本が並んでいることは、ついぞお目にかかったことはなかったのだが、平積みになっている。しかも10冊近く(数えるのを忘れたが、それぐらいあった)。

テレビ効果だろうか。恐るべしエルムンド。恐るべしメイ・パグディさん。それにしても、俺の本って、こんなに在庫で眠ってたんだ……。

もしやと思い、東長崎駅前の某書店に寄ったが、こちらは全然効果なし。在庫に眠ったままのようだ。


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世界最古の洞窟壁画 忘れられた夢の記憶 などなど

2012年02月16日 22時21分48秒 | 雑記
どたばたと昨日、今日の報告を。

昨日は夕方から原宿で、石川直樹君とヴェルナー・ヘルツォーク監督の映画「世界最古の洞窟壁画 忘れられた夢の記憶」について対談した。この映画は1994年、フランスのショーヴェ洞窟で発見された三万年前の人類最古の洞窟壁画を、3Dで表現したものである。高松塚古墳でも問題になったが、こうした壁画遺跡は観光客などを入れると呼気などでカビが生えて保存環境が悪化するため、シューヴェでは政府が徹底した立ち入り禁止措置を取っている。フランス政府から洞窟内撮影を許可されたのは、この映画が初めてとのこと。

映像は素晴らしいの一言に尽きる。壁画に関してはずぶの素人だが、三万年前にこの場所に、この壁画を描いた人が生きていたのだ、と今まで感じたことのない、変な感動を覚えた。3D映画はアバター以来だが、洞窟という光と影が織りなす特殊な閉鎖空間が立体的に浮かび上がって来て、リアルな迫力がある。

映画は3月3日から、TOHOシネマズ日劇ほか、3週間限定で公開です。私も広告用の一言を書かせていただきました。
公式サイト http://www.hekiga3d.com/

対談の内容はそのうち、OPENERSというウェブマガジンで公開される予定なので、そちらを読んでほしい。私の場合、対談の依頼というのはほとんど来たことがなくて、これが四回目。一回目石川直樹、二回目高野秀行、三回目高野秀行、四回目石川直樹、と高野さんと石川君としか対談したことない。いいかげん、本谷有希子とか、優香とか、石原さとみあたりと対談したいのだが……。やっぱり無理なのだろうか。話がかみ合わないのだろうか……。

今日は水戸に行き、先週亡くなられた芳野満彦さんのご自宅に伺い、お線香を上げさせていただいた。芳野さんはかつて日本のロッククライミング界を引っ張った伝説の登山家で、新田次郎『栄光の岩壁』のモデルである。日本人で初めてマッターホルン北壁を登頂した。私は2008年に、芳野さんがダウラギリ4峰で見たという雪男の話を聞きに、ご自宅に伺ったことがある。その話の詳細は『雪男は向こうからやって来た』の中の第四章「登山家芳野満彦の見た雪男」の中にまとめさせていただいた。ニコニコと優しい笑顔で、昔話をいろいろと聞かせてもらいました。

月曜の葬儀に参列するつもりでいたが、実は唐沢岳幕岩の下山が遅れ、帰京が間に合わず、ご自宅に伺った次第である。謹んでご冥福をお祈りいたします。

水戸から成田空港へ直行。北極点へ向けた旅立つ荻田くんの見送りである。3月の早い時期にワードハント島から出発の予定だという。今年は去年に比べ氷の氷結状態がいいので、たぶん大丈夫でしょう。







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311

2012年02月09日 10時23分21秒 | 雑記
昨日、ドキュメンタリージャパンの清水さんに誘われ、「第三回座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル」を見に行った。夜は森達也セレクションの『311』。森さん、綿井健陽さん、松林要樹さん、安岡卓治さんの四人が、東日本大震災の被災地に訪れた時の映像を作品化したものである。

最初に原発の30キロ圏内に入るところから始まり、その後、津波の被害地に行くという六日間の旅をつづったものだ。現場の混乱にたじろぐ四人の姿が赤裸々に映し出されていて、面白かった。被災地の現状を直接描くというより、主に被災者に話を聞いたり、現況を目の当たりにする取材者の動揺を通じて、震災にあうこと、震災に遭わなかったことの意味があぶりだされる。

私の場合、2月から7月まで北極にいて震災の情報からほとんど遮断されていたので、正直に言うと、被災地に行けていいなと思った。自分もまた地震の時に日本にいたら、人生が今とは変わっていたのかもしれないと、今でもよく思う。その後の四人のトークセッションでは、被災しなかったことの後ろめたさが主なテーマになったが、私の場合、後ろめたさを感じられなかった後ろめたさみたいなのがある。今でも地震の話は、私の中では避けたい話題である。

その後の飲み会にも参加させていただいた。森さんは以前、「kotoba」で『雪男』の書評を書いてくださっていたので、お礼ができてよかった。もともと森さんの本のファンなのだが、すごくソフトな人で、またいっそうファンになった。同世代の松林さんは『空白の五マイル』を読んでくださっているそうで、それもうれしかった。

『311』は3月3日からユーロスペースで公開開始。
http://docs311.jp/index.html


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神保町×2

2012年02月01日 14時43分09秒 | 雑記
たとえば私は、次のようなことをしばしばしでかす。

今日は夕方に神保町で打ち合わせがある。それまで家で原稿書いてようと思っていたが、今書いているのは過去の原稿のリライトだし、たまには外で書くか、と素敵なことを思い立ち、かばんにパソコンをつっこんで、意気揚々と家を出る。天気もいい。

椎名町の定食屋で昼飯を食べ、西武線と丸ノ内線と半蔵門線を乗り継ぎ、目的地である神保町のドトールに到着。時刻は1時半。約束まで4時間はあるので、ブレンドのLサイズをたのむ。二階に上がり席に座るが、テーブルががたついていて仕事がしにくいので、別の席に移動してパソコンを開く。すると窓際のゆったりと座れる席が空き、そっちのほうが仕事がしやすそうなので、再び席を移る。

パソコンを起動させる。原稿の入っている、外付けHDのアイコンをダブルクリックする。開かない。あれ、どうして開かないんだろう、と思い、首をかしげる。しばらくして、ようやく気づく。あ、ここに外付けHDはない……。せっかく、パソコンを持ってきたのに、仕事ができないではないか!

約束まで4時間以上。くそ、おれは何をやっているんだ、そして約束まで何をしよう……。ついさっき、おれは今から仕事をするぜ、と誇示するかのように開いたばかりのパソコンを、隣の人に気づかれないように静かにしめて、かばんにしまう。今から家に帰って、また神保町に戻るのもアホくさい。しょうがないから、読書でもするか、と鞄の中から本を取り出す。

すると悪いことに持ってきたのは、山崎正和『世界文明史の試み』。意識がどうしたとか、身体がどうしたとか、言語がどうしたとか、難しいことばかり書いてある。隣の人は、なんでこの人、パソコン開いてすぐ閉じたんだろうなあ、とか思ってるんだろうな。今から帰ると、二時間は仕事ができるな。でもコーヒーはLサイズだし、こんなに残して席を立つと、隣の人に不振がられるだろうな、とかなんとか余計なことばかり考えて、全然落ち着かない。こんなに難しい本、さっぱり内容が頭に入らない。

という訳で、結局、10分ぐらいで、席を立ち、神保町を後にした。家に帰って来たのは14時半。さて、二時間仕事するぞとパソコンを開いたが、どういうわけか、ブログなんか書いている。

二時間後には、また神保町に行かなくてはならない。あー、もうやんなっちゃう。


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