昨夜教えてもらったサイトに「
翻訳作品集成」がある。簡素なトップページながら、その中身は唖然としてしまうほどの神サイトだった。
メインは、作家別の翻訳作品リスト。主にSFやミステリーとなってはいるが、主流文学などに至るまで多数の翻訳作品が取り上げられている。出版年や翻訳家はもちろん版ごとの細かな情報が記載され、更には雑誌掲載作品などもチェックされている。
出版社別のリストや各賞受賞作リストなども見応えがあり、リンクによって使いやすくまとめられている。「ペリー・ローダン」「宇宙大作戦」「クトゥルー神話」「ワイルドカード」に関しては、著者が多岐に渡るためまとめページも用意されている。
作家メインで読む本を選ぶタイプの読み手にとってこれほどありがたいサイトはない。インターネットがこれほど普及していても、実は著作リストは日本人作家であっても手に入れにくい。本人や熱烈なファンサイトを除くとWikiくらい。それらも、発表年やシリーズごとの分類などがきちんとされていなかったりする。その作家に関心を持っても、どれから読むかの判断材料に乏しいのが現状だ。
このサイトでも、作家や作品に言及したコメントは少数で、あくまでもデータベースとして接することとなる。また、著者リストがABC順でアイウエオ順がないのがやや不便に感じる。しかし、そうした些細な欠点は欠点のうちに入らない。それほどまでにこのデータベースは素晴らしい。
開設から10年以上経過しているというが、1日のアクセス数は80~120件だと書いてある。これほどのサイトが世に知られないという事実に驚愕する。アクセス数の多寡がサイトの価値ではないのは当然だが、これほどのサイトをネットの海に埋もれさせているというのはもったいない話だ。
これだけのサイトを目にしてしまうと、今度はその日本版が欲しくなる。先述したように、日本人作家の作品リストさえ満足なものは少ない。情報量から考えて、とても一つのサイトで全てをカバーすることはできないだろうが、ある程度のジャンルごとの作品データベースはないものか。
そう考えて検索したところ、ライトノベルについては、「
ラノベの杜」が非常に優れている。最新情報のほか、レーベルごとの作品リストやDB検索が充実している。BL、JPもそれぞれ別にデータベース化している。作品への評価がアンケート結果程度なのが残念だが、データベースとしての機能は抜群と言っていいだろう。
ミステリでは「
Aga-Search」。国内より海外ものがメインに感じられるが、コメントが充実していて、作品リストも情報量が多く利用しやすい。
SFに関しては意外にもこれというものを見つけられなかった。他のジャンルでもデータベースと呼べるものは見当たらない印象。個別ジャンルより幅広いエンターテイメントという枠だと更に見つけられそうにない感じだ。
作家に興味を持つとまずは
Wikipediaにあたる。信頼性はともかく、発表年が書かれてなかったりと作品のデータベースとしての機能はあまり期待できない。著名作家であればファンサイトが充実してはいるが、ネタバレの危険性も孕む。
データベースとしては図書館が優秀だ。私は専ら地元の図書館での検索を利用するが、「
国立国会図書館」などの検索機能も充実している。ただし、シリーズものなどの把握が困難だし、ジャンルもタイトルなどから類推するしかない。
しっかりしたデータベースの土台があって、その上に読んだ人たちの感想が寄せられる、そんなシステムに最も近いのは、「
Amazon」や「
読書メーター」である。特に小説に限らない多種多様さにおいてはAmazonが抜きん出ている。その現状には哀しく感じる。利便性を越えて、大衆文化のデータベース化は大切なことだと思うのだけれど。