これまでさんざ書いてきたが、まとめとして感想を。
シナリオ、フリートライ全てノーマルでクリアし、ハードモード出現までプレイした上でいろいろと述べてみたい。
○ストーリー
繰り返される5日間というシチュエーションは、主人公が徐々に強くなる様を表現するのに適していた。初めはプレイヤー同様何も分からない主人公リレだが、2度目の初日にはそれまでの経験によってもう初心者とは呼べない域に達している。その実力を知ることで周りの反応も変わっていく。プレイヤー自身の成長と周りの反応の変化の表現は巧みだった。
非常に練られたストーリーであることは間違いない。それを支えたのは主人公リレの頭の良さだった。彼女は最初の5日間で起こる破滅を体験し、その知識を持ったまま5日前に戻る。そこで、彼女はその体験を学長のガンメルに話すが、それが破滅の回避に繋がらずむしろ更なる悲劇を生み出したことを知り、次に時間が巻き戻った時にはそのことをガンメルに話さない。彼女はその時々で最善の判断をして、それでも繰り返される破滅にもたじろがず前へ前へと進んでいく。彼女のこうした賢明さや勇気は彼女を魅力溢れるキャラクターにしているものの、一方でプレイヤーを置き去りにしてしまった部分もある。
ストーリーに対しプレイヤーは一切の関与ができない。ただリレの行動を追い掛けるのみだ。練ったストーリーと細部にまで行き渡った演出のために分岐をすることはできなかったと考えられる。一部に分岐やマルチエンディングを求める声もあるが、実際のところそれをしたらストーリーの密度や精度にマイナスだっただろう。ストーリー自体がゲーム部分の根幹ではないため、一本道の展開を採用したことは悪い判断だとは思わない。ただ、リレがもう少し迷ったり悩んだりすることで、プレイヤーとの共感できる余地を入れた方が良かったようには思う。余りにもリレは正解を導きすぎる印象は拭えない。いちおう、描かれたループ以外にも実際には数多くのループがあり、それが彼女を強くしたという設定は語られているが、もう少し描きようがあったのではないかという感想を持った。もちろん、それでもゲームとしては最上等の部類に入るストーリーであるのだが。
○キャラクター
登場人物はみな裏の顔を持っている印象だ。少なくとも最初に会った時の姿がごく一面に過ぎないのは確かだ。短いストーリーの中でキャラクターの描き方は見事と言うほかない。演出の巧みさと相まってそれぞれのキャラクターの魅力は強く印象付けられた。しかし、それだけにストーリーの短さが惜しく感じられてしまう。仕方ないことだがストーリーはリレが破滅を救う話に限られている。個性的なサブキャラクターたちもリレのその物語の流れの中でしか関わってこない。おまけ要素として、彼ら彼女らのサブストーリーが語られる部分があってもよかったのではと思ってしまう。
○演出
シナリオでのキャラの表現は一見の価値ありだ。立ち絵での会話だが細部の動きがキャラクターの個性をうまく描き出している。無名の声優陣だがいい仕事をしている。見せるということに無駄が無く、ロード画面なども素晴らしい出来だ。
戦闘でも使い魔たちの声やセリフがとても印象的だ。たった一言のセリフだけで使い魔の個性が表現し切れているとまで思えてしまう。
私の知る限り演出という基準だけで言えばこれを越えるゲームはない。ゲームにおいて演出を評価するのならこのゲームをプレイしてから言うべきだと思うだけのものを持っている。
○戦闘
リアルタイムシミュレーションというジャンルのために二の足を踏んだ人が多いのだろう。戦闘自体の難易度は抑えられているし、マップごとに難易度を設定できるといった親切な作りになっているのでクリアすることは難しくない。問題はこの戦闘を楽しめるかどうかだ。
ネット上での評価を見ると7:3くらいで評判は悪い。その理由はいくつか挙げられる。力押しで容易に勝てるマップが多い。マップ背景が全て同じで新鮮味がない。作戦目的がほとんど一緒。敵のパターンも一緒。これらは否定しようのない事実だ。
これらの批判は十分に納得できるものだが、それでもなおこの戦闘システムを気に入っている。安直にSRPGにしなかったことを高く評価している。この評価の違いにはゲーム観の差があるのだろう。ストーリーやキャラクターの魅力を堪能したいプレイヤーにとってはこの戦闘は面倒なノルマに過ぎない。シナリオを進めるために仕方なくプレイしているのだから楽しめるはずがない。私にとってはストーリーやキャラクターの方がツマに過ぎない。それはゲームの本質に関わっていないからだ。あくまでもこの戦闘を楽しむためのオマケであって、極端な話、無くても構わないものだ(もちろんそれに代わるものが必要となるが)。このように、主客をどちらに置くかで評価が変わってくる。
いつの頃からか、ストーリーやキャラクターがゲームの本質より評価される風潮が生み出された。そういう評価があってもいいし、そうしたゲームがあっても構わない。しかし、私はそうしたゲームを全く評価しない。このゲームもストーリーやキャラクターを評価しないわけではないが、それはこのゲームの本質とは離れたものとなっている。この戦闘システムとストーリーやキャラクターが十分に密接な関連があるとは言いがたい。そういった面での緊密さがもっとあれば更に高い評価を与えられたのにと思うが。
改めて戦闘自体の評価をしてみよう。繰り返すが欠点は少なくはない。それでも、自分なりに思い描く戦術を表現できる点にこの戦闘の面白さがあると思う。SRPGで失われた自由度がそこにあると言い換えてもいいだろう。自由度とはフリーシナリオや分岐、マルチエンディングを指す言葉ではない。あくまでゲーム内で自分の望む表現ができるかどうかだ。とってつけられたようなマルチエンディングなどは自由度とは対極の存在だ。こんなプレイをしたいという望みがゲーム内で叶えられるか。その点でこの戦闘システムは評価できる。
○欠点
既に数多くの欠点を述べた。いくつかはこのゲームの仕様上、仕方ないものだろう。最大の欠点はボリューム不足と言わざるを得ない。メインストーリーはあれで十分だが、サブストーリーなどもう少し追加できなかっただろうか。また、戦闘ではもっと多様な戦闘スタイル、作戦目的を用意してほしかった。戦闘マップ数は50と少なくはないが、似たようなものが多いのは確かだ。見た目なども含め、戦闘に多様性が乏しかったことが戦闘への低評価を招いたことも間違いない。
○その他
いま初回生産版同梱のサントラCDを聞きながら書いているが、音楽は悪くない。新規タイトルで、リアルタイムシミュレーションというジャンルで、作り手の意欲、志を強く感じるが、残念ながら今のゲーム界、特にそれを支えるファンに、これに応える気運が感じられないのがとても残念だ。
ストーリーやキャラクターの評価が高いこのゲームだが、あえて戦闘を楽しんで欲しいと思っている。例えばノーマルの難易度でクリアできないマップをスイートでクリアしてコツを掴み、改めてノーマルでプレイすれば意外とすんなり勝てたりする。プレイすればするほど上達できると実感できるゲームだ。力押しでプレイしていた人は、違った戦術でやってみれば、また別の面白さが見えてくると思う。単純だけどそうした懐の深さを持ったシステムだ。こうしたゲームが評価されないとしたらそれはとても寂しいことだ。
シナリオ、フリートライ全てノーマルでクリアし、ハードモード出現までプレイした上でいろいろと述べてみたい。
○ストーリー
繰り返される5日間というシチュエーションは、主人公が徐々に強くなる様を表現するのに適していた。初めはプレイヤー同様何も分からない主人公リレだが、2度目の初日にはそれまでの経験によってもう初心者とは呼べない域に達している。その実力を知ることで周りの反応も変わっていく。プレイヤー自身の成長と周りの反応の変化の表現は巧みだった。
非常に練られたストーリーであることは間違いない。それを支えたのは主人公リレの頭の良さだった。彼女は最初の5日間で起こる破滅を体験し、その知識を持ったまま5日前に戻る。そこで、彼女はその体験を学長のガンメルに話すが、それが破滅の回避に繋がらずむしろ更なる悲劇を生み出したことを知り、次に時間が巻き戻った時にはそのことをガンメルに話さない。彼女はその時々で最善の判断をして、それでも繰り返される破滅にもたじろがず前へ前へと進んでいく。彼女のこうした賢明さや勇気は彼女を魅力溢れるキャラクターにしているものの、一方でプレイヤーを置き去りにしてしまった部分もある。
ストーリーに対しプレイヤーは一切の関与ができない。ただリレの行動を追い掛けるのみだ。練ったストーリーと細部にまで行き渡った演出のために分岐をすることはできなかったと考えられる。一部に分岐やマルチエンディングを求める声もあるが、実際のところそれをしたらストーリーの密度や精度にマイナスだっただろう。ストーリー自体がゲーム部分の根幹ではないため、一本道の展開を採用したことは悪い判断だとは思わない。ただ、リレがもう少し迷ったり悩んだりすることで、プレイヤーとの共感できる余地を入れた方が良かったようには思う。余りにもリレは正解を導きすぎる印象は拭えない。いちおう、描かれたループ以外にも実際には数多くのループがあり、それが彼女を強くしたという設定は語られているが、もう少し描きようがあったのではないかという感想を持った。もちろん、それでもゲームとしては最上等の部類に入るストーリーであるのだが。
○キャラクター
登場人物はみな裏の顔を持っている印象だ。少なくとも最初に会った時の姿がごく一面に過ぎないのは確かだ。短いストーリーの中でキャラクターの描き方は見事と言うほかない。演出の巧みさと相まってそれぞれのキャラクターの魅力は強く印象付けられた。しかし、それだけにストーリーの短さが惜しく感じられてしまう。仕方ないことだがストーリーはリレが破滅を救う話に限られている。個性的なサブキャラクターたちもリレのその物語の流れの中でしか関わってこない。おまけ要素として、彼ら彼女らのサブストーリーが語られる部分があってもよかったのではと思ってしまう。
○演出
シナリオでのキャラの表現は一見の価値ありだ。立ち絵での会話だが細部の動きがキャラクターの個性をうまく描き出している。無名の声優陣だがいい仕事をしている。見せるということに無駄が無く、ロード画面なども素晴らしい出来だ。
戦闘でも使い魔たちの声やセリフがとても印象的だ。たった一言のセリフだけで使い魔の個性が表現し切れているとまで思えてしまう。
私の知る限り演出という基準だけで言えばこれを越えるゲームはない。ゲームにおいて演出を評価するのならこのゲームをプレイしてから言うべきだと思うだけのものを持っている。
○戦闘
リアルタイムシミュレーションというジャンルのために二の足を踏んだ人が多いのだろう。戦闘自体の難易度は抑えられているし、マップごとに難易度を設定できるといった親切な作りになっているのでクリアすることは難しくない。問題はこの戦闘を楽しめるかどうかだ。
ネット上での評価を見ると7:3くらいで評判は悪い。その理由はいくつか挙げられる。力押しで容易に勝てるマップが多い。マップ背景が全て同じで新鮮味がない。作戦目的がほとんど一緒。敵のパターンも一緒。これらは否定しようのない事実だ。
これらの批判は十分に納得できるものだが、それでもなおこの戦闘システムを気に入っている。安直にSRPGにしなかったことを高く評価している。この評価の違いにはゲーム観の差があるのだろう。ストーリーやキャラクターの魅力を堪能したいプレイヤーにとってはこの戦闘は面倒なノルマに過ぎない。シナリオを進めるために仕方なくプレイしているのだから楽しめるはずがない。私にとってはストーリーやキャラクターの方がツマに過ぎない。それはゲームの本質に関わっていないからだ。あくまでもこの戦闘を楽しむためのオマケであって、極端な話、無くても構わないものだ(もちろんそれに代わるものが必要となるが)。このように、主客をどちらに置くかで評価が変わってくる。
いつの頃からか、ストーリーやキャラクターがゲームの本質より評価される風潮が生み出された。そういう評価があってもいいし、そうしたゲームがあっても構わない。しかし、私はそうしたゲームを全く評価しない。このゲームもストーリーやキャラクターを評価しないわけではないが、それはこのゲームの本質とは離れたものとなっている。この戦闘システムとストーリーやキャラクターが十分に密接な関連があるとは言いがたい。そういった面での緊密さがもっとあれば更に高い評価を与えられたのにと思うが。
改めて戦闘自体の評価をしてみよう。繰り返すが欠点は少なくはない。それでも、自分なりに思い描く戦術を表現できる点にこの戦闘の面白さがあると思う。SRPGで失われた自由度がそこにあると言い換えてもいいだろう。自由度とはフリーシナリオや分岐、マルチエンディングを指す言葉ではない。あくまでゲーム内で自分の望む表現ができるかどうかだ。とってつけられたようなマルチエンディングなどは自由度とは対極の存在だ。こんなプレイをしたいという望みがゲーム内で叶えられるか。その点でこの戦闘システムは評価できる。
○欠点
既に数多くの欠点を述べた。いくつかはこのゲームの仕様上、仕方ないものだろう。最大の欠点はボリューム不足と言わざるを得ない。メインストーリーはあれで十分だが、サブストーリーなどもう少し追加できなかっただろうか。また、戦闘ではもっと多様な戦闘スタイル、作戦目的を用意してほしかった。戦闘マップ数は50と少なくはないが、似たようなものが多いのは確かだ。見た目なども含め、戦闘に多様性が乏しかったことが戦闘への低評価を招いたことも間違いない。
○その他
いま初回生産版同梱のサントラCDを聞きながら書いているが、音楽は悪くない。新規タイトルで、リアルタイムシミュレーションというジャンルで、作り手の意欲、志を強く感じるが、残念ながら今のゲーム界、特にそれを支えるファンに、これに応える気運が感じられないのがとても残念だ。
ストーリーやキャラクターの評価が高いこのゲームだが、あえて戦闘を楽しんで欲しいと思っている。例えばノーマルの難易度でクリアできないマップをスイートでクリアしてコツを掴み、改めてノーマルでプレイすれば意外とすんなり勝てたりする。プレイすればするほど上達できると実感できるゲームだ。力押しでプレイしていた人は、違った戦術でやってみれば、また別の面白さが見えてくると思う。単純だけどそうした懐の深さを持ったシステムだ。こうしたゲームが評価されないとしたらそれはとても寂しいことだ。