白夜の炎

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リビアで今「神々は渇く」のか?

2011-03-04 14:36:56 | 国際
 アナトール・フランスに『神々は渇く』という作品がある。フラン革命後の混乱と破局の中で、殺戮と破壊が生み出されることを描いた作品である。もちろん今でも岩波文庫などですぐ手に取ることができる。

 実際革命は多くの地と独裁・専制を生みだしてきた。

 ピューリタン革命の後はクロムウェルの専制。フランス革命後はジャコバン主義による血の粛正とナポレオンの台頭。さらには王政と共和制の絶えざる交代。それはヨーロッパ全域の政治変革と連動していく。

 ロシア革命後にはスターリン主義。中国革命ののちには毛沢東の専制-そのもとでの反右派闘争・文化大革命等絶えることのなかった政治的変動があった。

 日本の明治維新もそののちに「有司専制」体制を生み、それに対する反発は士族反乱から西南戦争へと続いて多くの血を流し、同時に民衆的変革を求める人々の自由民権運動も激しい弾圧のもとで多くの犠牲を出したのである。

 その結果生まれた明治憲法体制としての大日本帝国体制も、その中での大正デモクラシーの戦いも、結局は政治を人民のものにすることができないまま、破局的な戦争で自己崩壊し、第二次大戦後はアメリカの属国としてその管理下に置かれている。

 カダフィの体制も元々は欧米の石油権力と結合していた旧王制をクーデターによって打倒するという「革命」によって生み出されたものである。その革命の成果は一個のカダフィ専制体制に結果し、今やその体制そのものがリビアの人々にとっての桎梏と化している。

 今反カダフィ派は、貧弱な武装と統率のとれない寄せ集めの武装集団をかき集めつつ、カダフィの軍事勢力と戦っている。勝利するか否かは現時点で不明であり、仮に勝利できるにせよその道は多くの地に染められたものになるほかない。

 そしてその後はどのような国家を生みだすのか?

 カダフィの「緑の書」を私は読んだわけではないが、結局カダフィは体制としての国家建設に失敗したということではなかったのだろうか。

(なお『緑の書』は、http://www.mathaba.net/gci/theory/gb.htm、で英語ではあるが自由に全文を閲覧できる)

 それは毛沢東が建国後の中国に混乱と専制をもたらしたことによく似ている。

 リビアの今後がどうなるかは予測できないが、カダフィ後の体制と理念をどのように築くのか。現状では全く展望がないように思えるのだが…。