環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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進化してきた福祉国家① 「世界の最貧国」から「世界で最も豊かな福祉国家」へ 

2007-08-13 06:09:46 | 政治/行政/地方分権

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今日から数回にわたって、福祉国家を建設し、維持してきた「20世紀のスウェーデンの歩み」を大雑把に振り返ってみたいと思います。私のブログの「スウェーデンに関する基本的なテーマ」が、20世紀の「福祉国家」から21世紀の「緑の福祉国家」へ、だからです。

100年以上前、日本の明治20年代中頃、スウェーデンはヨーロッパで最も貧しい国(もしかしたら世界の最貧国?)でした。あまりにも貧しいがゆえに、当時の人口350万人のうち3分の1くらいが移民として米国(主にミネソタ州)に渡ったといわれています。
 
なぜ貧しかったのでしょうか。スウェーデンは地理的に自然条件が厳しい上に、産業活動に必要な石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料が国内で採れなかったからです。外国から買いたくても、当時は輸送手段がないために、輸入もできませんでした。このために、ほかのヨーロッパ諸国に比べて、工業化が遅れたのです。化石燃料が採れないことは、現在も同じです。

しかし、この40年間でスウェーデンは、現在のような国際社会が認める福祉国家になりました。私なりにその主な理由を考えてみると、つぎのようになります。




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6 コメント

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スウェーデンの原発について (ヨウスケ)
2007-08-14 17:43:47
いつも興味深く拝見させて頂いています。
数年前に小澤先生の著作を読んで以来、持続可能な社会建設へのスウェーデンの取り組みについて少しずつ学び、日本でどう活かせるのかを一国民として模索しています。
ただ、スウェーデンの政策で一つ賛同できないのが、原発に電力の半分以上を依存している体制です。スウェーデンはCO2の削減に成功している数少ない国の一つであると紹介されますが、生物にとってCO2よりも放射性廃棄物のほうが有害であることには、議論の余地が無いでしょう。
そこで、スウェーデンは原発が持続可能な社会のあるべきインフラであると考えているのか。また小澤先生はどのようにお考えなのか、お教えいただければと思います。
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スウェーデンの考え、私の考え (小澤)
2007-08-15 12:52:23
ヨウスケさん、コメントとおたずねありがとうございます。

スウェーデンは原発が「持続可能な社会」のインフラとは考えていません。なぜなら、スウェーデンも現時点では「持続不可能社会」だからです。ですから、スウェーデンは持続可能な社会をめざしてエネルギー政策の転換を図っています。

http://blog.goo.ne.jp/backcast2007/e/51855a5cf0007844c0e07947960867ca
および関連のブログ記事を参照ください。

私の原発に対する意見はこのブログで明らかにしています。4月に「原発を考える」という記事を12回にわたって掲載しました。とりあえずは、次の記事を参照してください。

http://blog.goo.ne.jp/backcast2007/e/08358e1ee749d39f3988af0f4909b1e1

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スウェーデンの原発について(続) (ヨウスケ)
2007-08-15 23:40:19
失礼致しました。

4月の連載、拝見させていただきました。

小澤先生、及びスウェーデンの原発に対する考え方は、確認させていただきました。
しかし、実際はもっと悪戦苦闘の様ですね。

スウェーデンは、「2010年までに原発廃止」の目標を1997年にいったんあきらめた(期限を撤廃した)ようですし、
2005年までに廃止できた原発は12基中2基のみ。
しかもそれにかわる電力供給の開発が進まず、
ヨーロッパ域内からの輸入でまかなっている(その中には原発からの供給も含まれる)という、
苦しい状況だと認識しています。

また、電力の消費量については、インターネットの普及により、
とくにWebサーバーによる24時間のWebサービスが、今後ますます普及すると考えられることから、
増加はしばらくは止められないのではないでしょうか。

小澤先生のブログを拝見したり、こうして書き込ませていただいたりできるのも、
gooのサーバーが、24時間電力を消費しながら稼動してくれているおかげでもありますし。


(参考)
原子力百科事典 ATOMICA 「スウェーデンの原子力政策および計画(1988年以降)(14-05-04-02)」
http://atomica.nucpal.gr.jp/atomica/14050402_1.html

環境文明21 会報 環境と文明 2005年8月号 「スウェーデンのエネルギー・環境事業」
http://www.neting.or.jp/eco/kanbun/kaze/0508.html
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ながくなりましたが、 (小澤)
2007-08-16 11:44:12
ヨウスケさん、ご返事ありがとうございます。

「原発に対する私の考え」と「原発に対するスウェーデンの考え」を確認していただきありがとうございます。私個人の原発に対する考えは今後も当分変わらないと思いますが、スウェーデンの考えはわかりません。

スウェーデンは20世紀につくりあげたエネルギー体系というインフラを21世紀に向けて転換しようとしていますので、ユウスケさんの言葉を借りれば“悪戦苦闘”、90年頃は日本の原子力関係者の一部には、スウェーデンはそのエネルギー政策で“苦悩あるいは迷走”しているという表現を好む向きがありました。

私に言わせれば、順調に稼働し、しかも自国の原発技術に対して政府や国民がかなりの信頼を寄せている原発を廃棄し、しかも自然破壊の原因となる水力発電のこれ以上の拡張を禁止し、さらに、環境の酸性化の原因とされる化石燃料の使用に厳しい規制を要求する国民各層の意見を反映して策定された「国のエネルギー政策」を、そのような判断基準を持たない日本の視点で現象面だけを見れば、「苦悩しているように見える」のは当然でしょう。

①私は、自然科学が明らかにした「地球の有限性(限界)」を基礎として論理的に考えれば、「原発を新設しない+脱化石燃料」というスウェーデンの現行のエネルギー転換政策は方向性としては合理性があり、現実的であると考えます。

この政策は少なくとも2010年(次の国政選挙選挙)までは変わらないと思いますが、スウェーデンのエネルギー政策を決めるのはスウェーデンの国民と政治家ですから、その後のことはわかりません。選挙で選ばれた政治家が国民の合意を取り付けて、「国会で原発を推進する」という政治的な転換を決定すれば、現行のエネルギー再策は変わります。

②97年までのスウェーデンの脱原発政策は冷戦体制下におけるスウェーデン1国のエネルギー政策でした。スウェーデンは95年1月1日からEUに加盟しました。2年後の97年には「電力自由化のEU指令」が発効しましたので、スウェーデンのエネルギー政策はスウェーデンの事情だけででは決定できなくなりました。
http://blog.goo.ne.jp/backcast2007/e/35530a2e865dceb2c8d9f44daeba6830

ヨウスケさんが参考にされた2つの資料はこのような国際状況の変化に一言も触れていません。

③ヨウスケさんが参考にした2つ目の資料の中にある「しかし不足した電力を、ヨーロッパ域内からの輸入電力に依るという政策を取らざるを得ず、その輸入電力の中にはドイツやフランスなど原子力に依っている国からの電力も入っている。そのため、国民の間からは原子力を一基廃止した替わりに原子力による電力を輸入するという政策のちぐはぐさが批判されたという」というような記述を読み、日本の発想で考えると事態を見誤ると思います。

電気に色が付いていないので、スウェーデンが輸入する電力のどれほどがドイツやフランスなど原子力に依っている国からの電力かわかりませんが、スウェーデンの電力の輸出入の大部分は北欧諸国内で行われております。一部分ポーランドとドイツの間でも行われています。スウェーデンは電力の輸入だけでなく、電力の輸出しているのですよ。

④「なぜ環境に熱心な国であるスウェーデンがプラス4%かといえば、それは原子力発電所の閉鎖を前提にして当面は火力発電に依存せざるをえないという事情からだという。しかし、このプラス4%は、あくまで京都議定書上のEU域内でのスウェーデンの法的責務であり、国内の政策目標としてはマイナス4%を目指している。そして現状ではおおむね、プラスマイナス0ということで、京都議定書上の目標責務は達成できそうだが、国内目標の達成は微妙な状況である。」

この記述も2007年の今日の段階で検証すれば、誤りと言ってよいでしょう。スウェーデン政府が2007年1月4日に公表した資料「Sweden and the Challenge of Climate Change」によりますと、スウェーデンは1990年と2005年を比較すると、温室効果ガスを7%減少させ、この間36%の経済成長を遂げたそうです。そして、スウェーデンは、長期目標を達成するために、すべての部門で化石燃料を再生可能エネルギーに転換していかなければならないとしています。
  
⑤日本では専門家も一般の人も原発を止めたら、止めて失われた分だけ別のもので補うと考えがちですが(例えば日本でいえば、柏崎刈羽原発が中越沖地震で7基止まったのでそれを補うために火力発電所を稼働させるというように現状確保を大前提としますが、)、スウェーデンがめざしているのはまず電力の使用量を圧縮すること、その上で徐々に再生可能エネルギーにシフトしていくという考えです。これこそが、持続可能な社会をつくる基礎だと思います。

⑥次の記事をご覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/backcast2007/e/3bbd4a956fb14d109552b312afdf6f9b

⑦「ITと環境問題」というテーマを4月に9回とり上げました。ご覧ください。
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ありがとうございました (ヨウスケ)
2007-08-19 10:25:45
丁寧なご返答、ありがとうございます。
「ITと環境問題」拝読させていただきました。

結局のところ、原発にしてもITにしても、技術を活用してどのような社会を目指すのか、という根本の考え方によって、結果が異なるということなんですね。

日本が、スウェーデンとは逆の方向、すなわち、経済規模の拡大、消費の増大によって社会を良くしようという発想で進んでいることが、問題なのだということを再確認させていただきました。

どうすれば、スウェーデンの良いところを日本に取り入れられるのか。逆に、日本で同じことをしようとすると問題は無いのか、などといった点について、小澤先生のブログや著作を含めて勉強させていただき、自分のできることから行動を起こしていきたいと思います。

どうもありがとうございました。
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関連の図 3枚 (小澤)
2007-08-19 21:33:17
参考になるかどうかわかりませんが、今日のブログに関連の図を3枚掲載しました。

日本のビジョン「持続的な経済成長」が可能性があるかどうか考えてみてください。この件に関する私の考えは次のとおりです。
http://blog.goo.ne.jp/backcast2007/e/ec63f2407953aded329f328511415d0a
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