環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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菅内閣の柳田法相更迭: 改めて思う「建前と本音」という日本社会の伝統的な特質(?)

2010-11-26 05:28:57 | 政治/行政/地方分権
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「前日まで続投に意欲を示していた柳田稔法相が首相官邸で菅直人首相と面会し、発言の責任をとって辞表を提出し、辞表が受理され、辞任した」と、今週の月曜日(11月22日)の夕刊各紙が報じました。私のところに配達された朝日新聞の夕刊の一面トップには「柳田法相を更迭」と見出しがついていましたが、新聞によっては「柳田法相辞任」という見出しもありました。 「更迭」と「辞任」では、かなりニュアンスに差があります。ですから、朝日新聞の夕刊は「今年度補正予算の速やかな成立を図るため、首相が野党の辞任要求を踏まえて事実上、更迭したものだ」という記事となっていたのでしょう。 

ところで、次の図は辞任前に参院予算委員会で自らの発言で謝罪する柳田法相です。写真の神妙さに添えられた発言があまりに明快で、写真と対称的です。


柳田法相がこのような発言をしている場面が幾度となく各局のテレビで放映されていましたので、多くの方はご存じだと思いますが、そこに映っていた法相は、この神妙な謝罪の姿とはまったく別で、喜々としてにこやかに、そして楽しそうに、まるで、漫談のような雰囲気を醸し出していました。問題とされた発言は、広島での大臣就任祝いの会での発言だそうですから、仲間内での本音の発言ということでしょう。ここに、久しぶりに「建前と本音」という日本社会の1つの典型的な現象を見た感があります。「建前と本音」はどこの国にも少なからずある普遍的な現象ではあると思いますが・・・・・


私のこのブログでは、これまでに2回、柳田前法相を取り上げました。17年前に私が衆議院環境委員会の中央公聴会の公述人として柳田さんの質問を受け、それに答えるという機会があったからです。次の2つの記事が当時の中央公聴会の模様と、当時の私の「日本の環境アセスメントに対する認識」についての発言の一端を伝えています。



スウェーデンは「予防志向の国」です。問題が起きてから対処するより、事前に策を講じて、問題を未然に防ごうとする傾向があります。ですから、環境関連法もこれまで、「人間の活動は基本的には汚染活動である」と認識し、「問題を起こす可能性があるものは何か」という予防的視点でつくられてきました。

1969年に制定された環境保護法は「環境に有害な活動」を規制する包括的な法律で、いわば、「環境アセスメント法」とも言うべき性格の法律で、20世紀のスウェーデンの環境法体系の中心をなすものでした。この法律は98年の「環境法典」に統合されました。

一方、スウェーデンの「環境保護法」より2年早くつくられた67年の日本の「公害対策基本法」はその名が示すように、「問題を起こしたものは何か」という治療的視点でつくられ、再発防止が主な目的となっていました。

公害対策基本法の運用により、日本では排煙脱硫装置や排煙脱硝装置のような大気汚染防止装置に代表される終末処理技術(いわゆる「End-of-Pipe Technology」)が非常に発達しましたが、反面、将来の「持続可能な社会」に必要とされるクリーンな生産技術(いわゆる「CP Technology」)の発達には目覚ましいものが見られませんでした。逆に、スウェーデンの環境保護法は「クリーンな生産技術の開発」に大きな貢献をしたのです。

日本とスウェーデンの環境問題を考える際に理解すべきことは、環境問題に対する基本認識の相違とその相違に基づいた法体系により、極論すれば、日本は社会の中に「汚染」をスウェーデンは社会の中に「汚染防止ネットワークのシステム」と「そのシステムを支える技術」を蓄積してきたことです。



そして、1993年の「環境基本法」の成立から遅れること4年、97年にやっと日本でも「環境アセスメント法」が成立することになるのですが、次の記事が示しますように、この成立したばかりの「環境アセスメント法」も国際社会ではすでに出遅れであることがわかります。97年と言えば、その12月に気候変動枠組み条約締約国会議(COP3)が京都で開催され、「京都議定書」が成立した年でしたね。


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この機会に、改めて当時の「環境委員会公聴会議録 第1号」を見てみました。



新たな発見がありました。すでに亡くなられている方もおりますが、私が17年前に議論した菅内閣の柳田 稔さんに加えて、岡崎トミ子さん(現国家公安委員長、消費者・食品安全 少子化・男女共同参画担当相)および高木義明さん(現文部科学相)、つまり、今年9月に発足した菅内閣の3人の閣僚が当時の中央公聴会に環境委員として同席しておられたのです。

なお、この環境委員会の議事録の全文をPDFで読むことができます。ご関心のある方はどうぞ。


       

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