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今年1月1日にこのブログを開設して以来、今日は306本目の記事となります。8月13日の「進化してきた福祉国家① 世界の最貧国から世界で最も豊かな福祉国家へ」を掲載してから昨日まで、何か一つ最も重要なことを書き忘れていたのではないかと思い続けてきました。
それは、「福祉」という言葉の意味が、スウェーデンと他の国(特に欧米諸国および日本)では質的に大きく異なるということです。
今思えば、この質的相違をもっと早く皆さんにお知らせすべきであったと反省しています。この相違が理解できないと昨日のブログのテーマであった「官庁の地方分散と福祉」の内容を十分にご理解いただけなかったかもしれません。
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8月21日のブログで紹介した訓覇法子(くるべのりこ)さんの著書『スウェーデン人はいま幸せか』 (NHKブックス 1991年))に続いて出版されたもう一つの著書『現地から伝えるスウェーデンの高齢者ケア:高齢者を支える民主主義の土壌』(自治体研究社、1997年1月5日発行)の中にその質的な相違が実に明確に記述されています。
欧米諸国は上の図の①~③のいずれかに分類され、「社会保障国家」と呼ばれています。私たちが「福祉国家」と認識しているデンマークも訓覇さんの定義にしたがえば、「社会保障国家」で、福祉国家ではありません。 先進工業国の中で 「福祉国家」 と呼ばれるのは、スカンジナビア3国(スウェーデン、フィンランド、そしてノルウェー)ということになります。
スウェーデンのマルメ大学総合病院リハビリテーリングセンターで作業療法士をされておられる河本佳子さんはスウェーデンと日本の相違を次のように考えておられます。
★日本はどこに
ところで、訓覇さんの分類には日本が登場しません。④ではないことは確かですので、①~③のどこかにということになるのでしょう。①でしょうか。再確認しておきたいのですが、訓覇さんの本が出版されたのが1991年ですから、この本で使われたデータは90年頃まで、つまり、15年前の欧米の状況を示していると考えられます。
以下の日本の事例は訓覇さんの本の出版以後の日本の状況を示すものです。
「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利がある」という憲法第25条の規定を具体化したのが1950年制定の「生活保護法」だとのことですが、以下に示した行政の対応や事例をみると憲法が求める条件を法律制定後50年近く経った現在でさえも満していないといえるのではないでしょうか。 「すべての国民を対象とし、国民最低生活保障ではなく、一定の生活水準を保障する」というスウェーデンの考え方と日本の考え方の開きの大きさに愕然とするのは私だけではないでしょう。
なお、この事例は埼玉県の場合ですが、なんと1日で行政の決定を翻しています。
「生活保護にも人間の視点を」という投書に示された日本の状況と、訓覇さんが定義する 「福祉国家」スウェーデンの状況(すべての国民を対象とするスウェーデン型福祉国家の強みは、保障の普遍性やレベルの高さだけでなく、人々に受給者、貧困者、社会的脱落者などという烙印を社会が押さないことにある。すべての人が同等の価値を有する民主主義が、社会の重要な価値観に据えられているからである。)との質的相違はとてつもなく大きいと思います。
20世紀の「生活保護の状況」に加えて、21世紀に新たに生じた「少子高齢化」に伴う年金・医療・介護など福祉全般にわたる、スウェーデンと日本の落差は、たんに「国民負担率」で示される差以上のものがあります。この10年間で日本の状況はどの程度改善されたのでしょうか。それとも悪化しているのでしょうか。
1999年に100万人を超えた生活保護受給者数は2005年には142万人に増加したそうですから、事態は改善されていないものと思われます。
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欧米諸国は上の図の①~③のいずれかに分類され、「社会保障国家」と呼ばれています。私たちが「福祉国家」と認識しているデンマークも訓覇さんの定義にしたがえば、「社会保障国家」で、福祉国家ではありません。 先進工業国の中で 「福祉国家」 と呼ばれるのは、スカンジナビア3国(スウェーデン、フィンランド、そしてノルウェー)ということになります。
スウェーデンのマルメ大学総合病院リハビリテーリングセンターで作業療法士をされておられる河本佳子さんはスウェーデンと日本の相違を次のように考えておられます。
★日本はどこに
ところで、訓覇さんの分類には日本が登場しません。④ではないことは確かですので、①~③のどこかにということになるのでしょう。①でしょうか。再確認しておきたいのですが、訓覇さんの本が出版されたのが1991年ですから、この本で使われたデータは90年頃まで、つまり、15年前の欧米の状況を示していると考えられます。
以下の日本の事例は訓覇さんの本の出版以後の日本の状況を示すものです。
「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利がある」という憲法第25条の規定を具体化したのが1950年制定の「生活保護法」だとのことですが、以下に示した行政の対応や事例をみると憲法が求める条件を法律制定後50年近く経った現在でさえも満していないといえるのではないでしょうか。 「すべての国民を対象とし、国民最低生活保障ではなく、一定の生活水準を保障する」というスウェーデンの考え方と日本の考え方の開きの大きさに愕然とするのは私だけではないでしょう。
なお、この事例は埼玉県の場合ですが、なんと1日で行政の決定を翻しています。
「生活保護にも人間の視点を」という投書に示された日本の状況と、訓覇さんが定義する 「福祉国家」スウェーデンの状況(すべての国民を対象とするスウェーデン型福祉国家の強みは、保障の普遍性やレベルの高さだけでなく、人々に受給者、貧困者、社会的脱落者などという烙印を社会が押さないことにある。すべての人が同等の価値を有する民主主義が、社会の重要な価値観に据えられているからである。)との質的相違はとてつもなく大きいと思います。
20世紀の「生活保護の状況」に加えて、21世紀に新たに生じた「少子高齢化」に伴う年金・医療・介護など福祉全般にわたる、スウェーデンと日本の落差は、たんに「国民負担率」で示される差以上のものがあります。この10年間で日本の状況はどの程度改善されたのでしょうか。それとも悪化しているのでしょうか。
1999年に100万人を超えた生活保護受給者数は2005年には142万人に増加したそうですから、事態は改善されていないものと思われます。
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現代の富裕者の行動、B.ボルグの場合(3/22)
日本の国づくりを混乱させる2つの指標「国民負担率」と「環境効率」(3/16)
対照的な日本とスウェーデンの「債務残高」と「国民負担率」(3/18)
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http://blog.goo.ne.jp/backcast2007/e/c17fab8edccb2c23c847ed6becdeeba7
そして、「これまでの日本は、目先のコスト(税金)の上昇はたいへん気にするが、社会全体のコスト(税金の無駄遣い、不適切使用など)社会全体のコストにはあまり関心がなかったようである。90年代後半になって日本の社会制度から次々に発生する膨大な社会コストん『治療』に、日本は今、追いたてられている」という私の主張もご理解いただけるでしょう。
http://blog.goo.ne.jp/backcast2007/e/663115726ca8c623105dc7e0b4d963ad
ブログたまに拝見しています。
一週間に一度ぐらいしかパソコンを開かないので
8月分読みこなすのに、苦労してます。
(テレビをだらだら見るのをやめられれば良いんですけど)
なるほど日本の福祉は、ケーキのイチゴなんですね。
河本さんの福祉の定義は、なんだか心に響きました。
生活保護の方の投稿を読んで、少し涙が出てきてしまいました。どうやら日本はますます市場原理主義の道を進んでいるようです。
そして、自分も働けない体になったら、同じように苦しむのでしょう。
日本の舵を正常な方向に戻さなきゃいかんと改めて感じました。
ニュートンを買って、温暖化について理解が深まりました。ありがとうございました。
20世紀のスウェーデンは他のほとんどの先進工業国と同じように、豊かさの向上、貧困や格差などの社会問題は経済が成長することで解決できると考え、フォアキャスト的手法で、福祉国家(人にやさしい社会)を建設し、維持してきました。
1972年にローマクラブが「成長の限界を」発表したちょっと前、1968年ごろに環境問題に気づき、
72年には「第1回国連人間環境会議」のホスト国に
なりました。
http://blog.goo.ne.jp/backcast2007/e/2dae1755e7d2e7227412251ed6960a4b
1980年代後半から「持続可能な社会」の模索を始め、以後、地球の限界が科学的に明らかになってくると、他の先進工業国に先駆けてバックキャスト的手法を用いて「生態学的(エコロジカル)に持続可能な社会」への道筋を考え、96年に「緑の福祉国家」(環境に十分配慮した福祉国家)を建設しようという新たなビジョンを掲げたのです。
いつも緻密な論の展開、感心、敬服しております。