環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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進化してきた福祉国家⑧  「福祉国家」スウェーデンを理解するために

2007-08-30 20:43:16 | 社会/合意形成/アクター

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ジャーナリスト、専門家、評論家、大学教授などスウェーデンの社会、特にスウェーデンの福祉制度や福祉政策等を紹介したり、論評される方々が多くおります。しかし、私はその紹介の仕方にある種の疑問を感じています。日本のジャーナリストや専門家の多くの方々のものの見方があまりにも狭すぎるという感じがするからです。

通常、福祉の話をする方は福祉の話だけしかしませんし、環境の話をする方は環境の話を、エネルギーの話をする方はエネルギーの話だけしかしないと言ってよいでしょう。紙面の制約や時間的な制約はあるでしょうが、話の多くは断片的で、現象面の解説が多く何故そうなのかといった背景の説明がほとんどありません。

福祉、環境、エネルギーは私たちが生きていく上で誰にとっても大切なことですから、それぞれを個別に考えるのではなく、それぞれが直接的に、あるいは間接的に関連し合っているというように幅広い見方をする必要があります。

日本には、日本の考え方があるし、日本の土壌があり、その土壌の上に日本は日本に適したと思われる福祉制度やエネルギー体系を持った社会システムを作ってきたわけですから、これらを考える際には日本の歴史を考慮に入れて考える必要があります。同じように、スウェーデンには、スウェーデンがめざした「福祉国家」というものがあります。

それぞれの国がそれぞれのめざした目標に対して努力してきた結果を現時点で比較してみた時に、両者に大きな相違が生じていたことがわかったのです。この相違はそれぞれの国の価値観とそれに基づく考え方の相違、そして国内外の諸問題に対する対応の相違によるものだと思います。

そして、両国は今、それぞれが築き上げてきた社会システムに修正を加える必要があることに気付いたところです。スウェーデンはすでに10年以上前から社会システムの修正に踏み出しました。

私たちは、便宜上、ものごとを事象別に考えますが、「現実の社会」はそうではなく、様々な事象が相互に影響しあっているのです。ですから、ですから、システマティックな考え方が必要です。

環境政策、エネルギー政策などの国の重要な政策の出てくる背景には、核になるその国の社会というものがかならず存在します。次の図はこれらの関係を示したものです。

ですから、エネルギーの話をするときにも、政治とか行政、法制度などの社会の基本的な要素を考慮に入れた社会システム全体を考える必要があります。私たちはこのような当たり前のことをすっかり忘れて、エネルギーの供給や研究開発と言う狭い枠の中で議論しがちです。

このことは何も外国を理解するときばかりではなく、日本の事象を理解するときにも言えます。特に、スウェーデンを考える場合には、上の図の中央にある社会システムが「福祉国家」になっていることに注意しなければなりません。
 
その場合の「福祉国家」はもちろん、昨日検証した「すべての国民を対象とし、一定の生活水準を保証する」スウェーデンの福祉国家であって、日本国憲法第25条が規定する「健康で文化的な最低生活」や「日本の福祉制度によるもの」ではないことは言うまでもありません。

私が言いたいことは、これまでの日本のジャーナリストや専門家がスウェーデンの事情を考えるときに、あまりにも「日本の頭」で、つまり「日本の視点」だけでスウェーデンを考えていたということです。ですから、スウェーデンの様々な事象を理解するには、日本の視点を越えた幅広い視点が求められますし、そのような幅広い視点を持つことがこれから日本の考え方を変えることに通じると思います。

これまでの日本の伝統的な考え方である「ものごとを細かく分けて分析するような方式」では福祉問題や環境問題、あるいはエネルギー問題などのように国民生活すべてにかかわってくるような問題には対応できないと思います。私たちは、どうも、ものごとを小さく狭く考える傾向があります。

日本で、現在、社会問題となっている「働き過ぎ」の話にしても、労働時間の短縮にばかり意識が集中しているように感じます。私はもっと幅広く見なければいけないと思いますし、労働の問題も社会とのつながりの中で考える必要があると思っています。特にスウェーデンの労働問題を考えるには、福祉国家との関連で理解するよう努める必要があります。



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