環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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財政再建に成功したスウェーデン②

2007-08-11 07:18:59 | 政治/行政/地方分権
 

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スウェーデンの経済政策に詳しい専門家は、スウェーデンがとった不況対策は日本の不況対策とは異なり、「総需要の喚起を重視するケインズ政策」や「総供給量を重視する新古典派政策」ではなく、「資産重視政策」だったと評価しています。スウェーデンは福祉の向上のために、福祉の基盤である「経済」と「環境」を重視したのです。

昨日紹介したように、財政再建の方法は、理論的には「景気回復(による歳入増)」「歳出削減」「増税」の3つ、あるいはその組み合わせしかないのだそうです。次の図は1990年代前半にスウェーデンが実施した財政再建政策をまとめたものです。

私はこの分野の門外漢ですので、この内容の分析の概要は神野直彦著「二兎を得る経済学 景気回復と財政再建」(講談社+α新書 2001年8月)のp84~90に委ねます。


なお、以下の文中、●や○、関連記事は理解を深めるために私が追加したものです。また、文中の「二兎」とは、 「景気回復」「財政再建」という2つの政策課題を指しています。


経費削減と増税は不況を招くか

●1994年9月の総選挙で政権に復帰した社民労働党は、国民が「共同の困難」として一致協力して、財政再建に取り組むことを訴える。ここで社民労働党政権は、何のために財政再建をするのかという目的を明確に国民に説明している。

○「ストロング・ウェルフェア(強い福祉)」のために、「ストロング・ファイナンス(強い財政)」を築こう。それが合言葉である。つまり、福祉を充実させるためには、財政を再建するのだという目的を明確に、国民に対して説明したのである。

●国民に対する福祉を強めるためには、財政を強くしておく必要がある。そのために財政を再建するとすれば、経費を削減しなければならない。ところが、経費を削減すれば、必ず貧しい人々にダメージを与えてしまう。

○そこで豊かな国民は、租税で痛みを分かち合って欲しい。つまり、貧しい国民は経費で、豊かな国民は租税で、痛みを分かち合い、協力して国民の「共同困難」である財政を再建しようと訴えたのである。そして、1995年に高額所得者に対する所得税の税率を、20%から25%へ引き上げる増税を実施する。

●日本で、このように経費削減と増税とを履行して財政再建に取り組めば、必ず不況を深刻化させるという批判が巻き起こる。しかし、スウェーデンではこのように財政再建に取り組むと同時に、景気回復のために経費の中身を大きく転換させたのである


二兎を得た秘訣

●スウェーデンが景気回復のため、経費支出でもっとも重視したのは教育投資である。経済成長と雇用確保と社会正義、つまり所得の平等な分配という3つの政策課題を、同時に達成しようとすれば、教育投資しかないと、スウェーデンは主張している。

●スウェーデンが経済活性化のために、第二に重視した経費支出は環境政策である。経済活性化には教育投資によって人間が能力を高めるだけでなく、人間が健康で活動できなければならない。人間が健康に活動できるためには、環境が保全されていなければならない。

○しかも環境を保全することは、「技術革新の宝庫」ともなり、「市場開拓の宝庫」ともなる。つまり、環境を保全しようとすれば、それに新たなイノベーションが起こり、新たな市場も開けてくると、スウェーデンは考えたのである。

●第三に重視した経費支出はIT(情報技術)である。つまり、スウェーデンは「世界最強のIT国家」になることを合言葉に、「情報社会への参加(participation in the information)」を目指したのである。

○もちろん、「世界最強のIT国家」を目指そうとすれば、ITのハードウェアの整備に力を注がなければならない。しかし、スウェーデンは同時に、ソフトウェアを担うヒューマンウェアの育成も重視したのである。

○というのも、ITのハードウェアの整備のみを重視すれば、アメリカのようなデジタル・デバイドが生じ、ITにアクセルできる能力のある者と能力のない者との間で、格差が拡大してしまうからである。

○そこでスウェーデンは、ITを教育するスタッフを6万人雇用する計画を立てた。国連はITを教育するスタッフが、世界で100万人不足していると指摘しているが、スウェーデンはいち早く教育スタッフの養成に着手した。その結果としてストックホルムは、「ヨーロッパのIT首都」とまで称えられるようになったのである。

●スウェーデンが四番目に重視した経費支出は、 「強い福祉」である。とくに育児サービスに重点を置いた福祉の強化を図ったのである。

●スウェーデンは増税をも実施して財政再建を目指すとともに、経費支出を以上のように、大きく変更しながら経済活性化を図った。こうした財政運営によってスウェーデンは、「二兎を追い二兎を得た」のである。

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