環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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原発問題はなぜウソがまかり通るのか

2007-10-18 22:48:56 | 原発/エネルギー/資源
 
 
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10月11日のブログ「同じ情報を与えられても解釈は異なることがある」、武田邦彦著「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」(洋泉社 2007年3月)をとりあげました。武田さん流に表現すれば、今日のテーマは「原発問題はなぜウソがまかり通るのか」です。

次の図をご覧ください。これは日本原子力文化振興財団という原子力推進団体の最新の広告です。



この広告の中で私が問題にしたいのは、最後の2行、「スウェーデンも脱原子力政策を転換し,既設発電所の出力増強を進めることとしています。」というところです。

この部分は完全に事実に反しており、誤りです。この財団の主な任務が日本の原子力推進の広報活動であること考えれば、単に事実を誤認したというだけではなく、 「意図的にウソを書き、世論をミスリードしようとしている」と言わざるを得ません。

問題の部分は2つの主要な部分から成っています。ひとつは「スウェーデンも脱原子力政策を転換し、」という部分、もうひとつは「既設発電所の出力増強を進めることとしています。」です。

前者は「いつ脱原子力政策を転換したか」ということが明示されていませんが、広告全体の文章から推察すると、最近の(この数年の)世界の原子力の動向を背景に書いているようですので、そうであれば明らかに誤りです。

1980年6月にスウェーデン国会が決めた「脱原子力政策」では、「2010年までに12基の原子炉をすべて廃棄する」としていましたが、その後、紆余曲折を経て、1997年6月10日に国会で承認された「1997年のエネルギー政策」で、2010年までにすべて廃棄するという最終期限は公式に撤廃されました。しかし、 「12基の原発をすべて段階的に廃棄する」という国会決議は現在でも堅持されています。

1999年11月30日にバルセベック原発1号機(出力約60万キロワット)が、2005年5月31日にバルセベック原発2号機(出力約60万キロワット)が廃棄されました。2002年3月15日、スウェーデン政府は新たなエネルギー政策方針を策定しました。この新方針により事実上、スウェーデンの「脱原発政策」は「政治主導」から「電力会社主導」に変わりましたが脱原発政策そのものは変わっていません。ですから、既存の原発は従来通り段階的に廃棄する方向にあり、原発の新設の計画は現時点でありません。

もう一つの「既設発電所の出力を進めることとしています」も完全に誤りです。この文章は素直に読めば、「現在はまだ出力の増強を進めていないが、今後は出力の増強を行う計画がある」ということになるのでしょうが、実はそれは誤りで、すでに2基の原発を廃棄した時以来、既設発電所の出力増強は行われています。

つまり、この広告に書かれているスウェーデンに関する記述は事実を正しく伝えておらず、完全に間違っており、「ウソを書いて、日本の世論をミスリードしようとしている」と断定せざるを得ません。私は1988年6月から89年10月までの1年半にスウェーデンの「脱原発政策」について、多くの事実誤認とミスリードに悩まされました。もういい加減に世論をミスリードしないように・・・・・


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