環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

原発は持続可能な社会の電源としてふさわしいか  ⑨原発と持続可能な社会―その2

2012-06-30 15:32:10 | 原発/エネルギー/資源
私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック         持続可能な国づくりを考える会のブログは、ここをクリック
お問い合わせはここをクリック   アーカイブ(公開論文)         持続可能な国づくりを考える会のホームページは、ここをクリック
 


          
                                                                                   理念とビジョン:「全文」   「ダイジェスト版」



原発と持続可能な社会―その2  (2007-04-18)

 大量生産・大量消費・大量廃棄に代表される現在の産業経済システムが将来(2030年、2050年、2100年)も続けられるという見通しがはっきりしているのであれば、「安全性、核廃棄物の処理・処分、労働者被ばくなどに十分配慮する」という前提で、現在の産業経済システムを支えている原発へのさらなる依存も選択肢の一つだと思います。

 しかし、この議論には、21世紀最大の問題であるはずの「環境問題」の視点がすっぽり抜け落ちていることを忘れてはなりません。

 また、「お前の言うことはわかるが、子供や孫の将来のことなどかまっていられるか。どうせ人生は一度だけなのだから、今日を楽しく生きることが大切だ。なぜ、それがいけないのか。江戸時代へ戻れというのか! 持続可能な社会など構築できるはずはない。自分の生きている間だけどうにかなれば、あとは野となれ山となれだ」と人生を悟り切ってしまったような利己主義者には原発へのさらなる依存は有力な選択肢です。

 そうでない人は次の図をご覧ください。これは1995年5月7日の朝日新聞の記事です。


 この新聞記事は朝日新聞社の坂本修さんが電気事業連合会の原子力部長である早瀬佑一さんと原子力資料情報室の西尾漠さんに「日本に核燃料リサイクルは、本当に必要なのか」を聞いたという構成になっています。10年以上前の記事ですが、今でもこの記事が十分新鮮に感じられるのは、日本の原発議論が堂々巡りしており、あまり進展していないからだと思います。私が注目したいのは早瀬さんの議論の出発点です。早瀬さんはこの記事の最初のところでなぜ原発なのかを次のように明確に説明しています。

× × × × ×
 日本はリサイクル路線が必要です。石油はあと40~50年で枯渇の危機を迎えるといわれます。液化天然ガス(LNG)、石炭も無限ではありません。だから石油危機以降、化石燃料に頼る発電を見直し、原子力を推進してきました。しかし、ウランもまた、70年程度でなくなるといわれています。新しいエネルギー源として何があるかといえば、燃えかすの核燃料から抽出したプルトニウムの有効利用なのです。
× × × × ×

 そして、後半で、「電力業界の最も大きな責任は、電力の供給力をいかに確保するかです。需要はのびますから、準備は絶対に必要です」と述べ、最後に「利用者がある以上、供給責任はゆるがせにできず、原子力発電に費用をかけています。それが国民の理解につながっていないとすれば、説明のしかたが悪いのかも知れません」と結んでいます。

 この発言で重要なことは、電力会社は「1964年の電気事業法」で「供給の義務」を負わされていることです。この規定は社会が要求する需要に対して電力会社は供給の義務があり、「供給を断ることができない」ということです。高度経済成長期に「経済の拡大」を促進する目的で制定された法律が現在も、そして将来さえも規定するのはおかしいのではないでしょうか。

 電気事業法も21世紀前半の「経済のあり方」や「社会のあり方」を十分考えて、新法につくりかえるべきではないでしょうか。

 電気事業連合会という組織の立場だけで原発を考えれば、私は早瀬さんの主張に全く同感です。環境問題や日本のような工業社会を支える資源の問題を十分に考慮せず、現行の産業経済システムの下でさらなる経済の拡大をしていくために電源の確保だけを考えれば、私も原発と化石燃料による発電が最適だと思います。そこで、次の図をご覧ください。


 早瀬さんの議論の出発点はこの図の少し前のバージョンにあることは間違いありません。私は早瀬さんの主張に対して全く同感だと言いましたが、それは「電気事業連合会という組織の立場で電力の供給だけを考えれば」という条件付きでの話です。私の環境・エネルギー問題に対する視点から見れば、早瀬さんのお考えには大いに異論があります。

 私の考えでは、2050年の世界は現在の産業経済システムの下で、経済活動を拡大した状況ではありえないということです。早瀬さんが個人として、あるいは電気事業連合会が組織として、2050年頃の社会をどのようにイメージしているのかぜひ伺いたいと思います。

 あまり難しい議論はこの際必要ありません。基本的な考え方は次のとおりです。

 「現行の産業経済システムの下で経済の持続的な拡大が今後少なくとも50年以上は続くということが確実であり、環境問題にはあまり配慮しないというのであれば、現行の産業経済システムを支えているエネルギー体系を構成する火力発電と原発の増大はそれなりに合理性があると思います。けれども、そうではなさそうだというのであれば、3月11日のブログ「新しい経済発展の道をめざして」に書きましたように、「火力発電と原発の増大はますます持続可能な社会への軟着陸を難しくすることになる」ということです。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿