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音楽堂のEIC

2021-09-04 23:58:20 | 音楽
アンサンブル・アンテルコンタンポラン@神奈川県立音楽堂に行ってきました。

アンサンブル・アンテルコンタンポラン(EIC)は現代音楽をやらせたら世界一なのではという凄腕集団です。彼らのコンサートに行くのはこれで3回目。1回目は1995年のブーレーズ・フェスティバル、2回目は2013年のラ・フォル・ジュルネ。今回は8年ぶりの来日ですが、サントリーホールのコンサートはチケット取れない&都合が合わないで、ひさびさに神奈川県立音楽堂まで行ってきました。音楽堂は木のホールで、比較的デッドな音になるのですが、ここでキレッキレの彼らの演奏を聴いたら果たしてどういうことに…。

プログラムは前半が比較的最近の曲、後半が現代音楽のクラッシック(?)で、アラカルト的な構成でした。指揮は作曲家でもあるマティアス・ピンチャー。大らかで表情豊かな指揮です。そして木のホールのデッドな音のおかげで演奏のクリアさがより際立って聴こえていました。1曲目はグリゼイの「2つのバスドラムのための「石碑」」。舞台の両端には2台のバスドラム。聴こえないような振動から始まり、一方のドラムの振動がもう一方のドラムを鳴らすようにして、不思議な響きが連続します。不肖わたくし、生音を聴くのは約9か月ぶり、その間はもっぱら配信やら動画やらで音楽を聴いていたのですが、音楽は空間を震わすものであり、耳だけでなく肌でも聴くものだったということをあらためて思い出しました。2曲目はアンナ・ソルヴァルズドッティルのHrim(霜)。彼女は今、アイスランドで「ビョーク以来」という評価を受けている作曲家だそうです。タイトルどおり、霧に包まれた風景を思わせるような幽玄な曲。EICならではの弱音の素晴らしさに圧倒されます。3曲目はミケル・ウルキーザの「さえずる鳥たちとふりかえるフクロウ」。1998年、スペイン生まれの作曲家の曲です。これが本当に面白い曲でした。おもちゃ箱をひっくり返したような楽しさで、終わった時に思わず笑みがこぼれてしまいます。こういう曲をこの精度で演奏できるのは世界広しといえどもEICだけなのでは…。

後半はブーレーズの「アンセム1」から。ヴァイオリンのソロの曲です。ソリストはジャンヌ=マリー・コンケー。精緻でありながら余裕のある演奏です。5曲目は一柳慧の「タイム・カレント」。各楽器がさまざまなタイミングで動きながら独特のうねりを感じさせる曲。最後はリゲティの「13人の器楽奏者のための室内協奏曲」でしたが、これが白眉でした。とりわけ最後の楽章では、全ての楽器の凄腕ぶりが明らかに…。鍵盤のお二人も凄かったですね…出番は多くはないのですが、ピアノのディミトリ・ヴァシラキスの演奏はこんなピアノ聴いたことない、という感じでした。結局、お客さんたちも大盛り上がりでなかなか拍手も鳴りやまず…短いアンコールもありましたね…。

そんなわけで、ひさびさの生音を世界最高水準の演奏で楽しんでまいりました…そう、楽しかったんですよ…EICはいつ聴いてもうまいのですが、今回が一番楽しそうだったような気がします。現代音楽というと眉間にしわ寄せて聴くイメージですが、めちゃうまの人たちが演奏するとこんなに楽しいんだ、としみじみ思いました。何より演奏している側が楽しそうだし…。コロナ禍のなか、風のように駆け抜けていったEICの皆さん、また近いうちに来てくれないかな…。


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