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アートネタなど日々のあれこれ

HOKUSAI UPDATED

2019-03-27 19:17:32 | 美術
森アーツセンターギャラリーで「新・北斎展 HOKUSAI UPDATED」を見てきました。
(この展覧会は既に終了しています)

北斎研究の大家、永田氏の2000件を超えるコレクションからセレクトした作品で構成された展覧会です。永田氏の遺志により今後は島根県のみでの公開となるため、東京でみられるの今回が最後・・・ということで、慌てて行ってまいりました。

展覧会は「春朗」に始まる北斎の6つの落款ごとの章で構成されていました。画風の変遷を追えるだけでなく、まさに一人で六人分生きたんだな・・・ということが実感できます。落款ごとの画風の変化は、あらためて見てみると思いのほか大きかったのでした・・・。

試行錯誤を重ねた「春朗」期。「宗理」期は洗練された画風でスレンダー美女を描いています。「津和野藩伝来刷物」は今見ても色鮮やか。打って変わって劇画チックな「北斎」期。馬琴とのコンビは、運命だったんだろうな、としか言いようがありません。「椿説弓張月」の残酷美。かと思うと「円窓の美人図」のような嫋やかなものも。「戴斗」期は何といっても北斎漫画です。「鯉亀図」のような瀟洒な一品も。そして、ザ・北斎な「為一」期。北斎といえばこれ、の「富嶽三十六景」。「千絵の海」にも心惹かれました。一方で、「百物語」のような面白系も。そして、最後は「画狂老人卍」期。最後の展示室が圧巻でした。八十八歳の時に描かれた「向日葵図」は西洋絵画のよう。「富士越龍図」も、北斎も最後はこの龍のように天に昇ったのだろうなと思うと、ひとしお感慨深いです。そして、ラストの「弘法大師修法図」。バロック絵画のような迫力。一心に念仏を唱える低い声や、けたたたましい犬の叫びが聞こえてきそうです。背後の闇はどこまでもどこまでも深い・・・。

名を変え、所を変えしながら、死ぬまでUPDATEし続けたその人生。最後の言葉は「あと10年、いや5年の命があれば本物の絵師になれたのに」だったそうですから、天晴です。この執念こそが才能、なのかもしれません。執念といえば、集めた側の執念もひしひしと感じさせられました。才能と才能の出会い、という僥倖を堪能した展覧会でした。永田氏もあの世から多くの観客でにぎわうこの光景を見ているのでしょうか・・・。

帰りにヒルズの中の「ジョエル・ロブション」に寄って、クロックマダムとミートパイを買いました。クロックマダムは卵がしっかり、ミートパイはお肉も香ばしく、美味しゅうございました。
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