aquamarine lab

アートネタなど日々のあれこれ

海からの贈りもの

2020-06-30 01:02:16 | 美術
松濤美術館で「真珠 海からの贈りもの」を見てきました。

この展覧会は古代から近代までヨーロッパで制作された真珠のアクセサリー、そして日本の明治以降の真珠のアクセサリーを紹介しています。松濤美術館で真珠の展覧会ってハマりすぎ・・・ということで、いそいそと行ってきました。

地下1階の第一会場はヨーロッパの真珠の展示です。古代のものは紀元前にまで遡ります。1600年頃のペンダント「ライオン」は今でも通用しそうなスタイリッシュなデザインです。バロックパールのブローチ「双頭のアザラシ」はかなりユニークなデザイン。本格的にジュエリーが花開いたのは19世紀のことのようです。展覧会のメインビジュアルにもなっている「パール&エナメル、サファイア、ダイアモンドネックレス」は流れるような美しさに溜息が出そうです。19世紀中期のブローチ「ロイヤルブルー」は色鮮やかな青が映えるデザイン。今回、シードパールというビーズのような細かいパールで作られた作品も展示されていました。驚くほど稠密な作品の数々は、気の遠くなるような作業の賜物なのでしょう。ティアラもネックレスも華麗だったな・・・。

2階の第二会場は日本の真珠の展示です。意外だったのですが、日本では明治時代に御木本幸吉が真珠の養殖に成功するまでは、真珠が装飾具として用いられることはほとんどなかったのだそうです。ミキモト作の真珠のアクセサリーは桜や藤、菊などをモチーフにした、いかにも日本らしいデザイン。雅です。とりわけ花車の帯留めは華やかでしたね・・・。

というわけで、真珠の装身具の歴史を堪能してまいりました。文字通り、珠玉の展覧会でしたね・・・。家で思い出に浸りながら展覧会のチラシをしみじみと眺めていると、「ママ~、これ欲しい~」と横から小さな魔の手が・・・5歳の娘です。いや、これ欲しいって言われても、ちょっとというか、かなりお値段が・・・(爆)。そういえば、真珠のアクセサリーって、人生の節目で母から娘に贈られることが多いですよね。ところで、この展覧会、パール(人造可)を身に着けていくと通常料金から2割引きで入館できるそうです。そうと知っていたら、母から貰ったパールのアクセサリーをつけていけばよかったな・・・(笑)。
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ときに川は橋となる

2020-06-29 01:08:26 | 美術
東京都現代美術館で「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」を見てきました。

ずいぶん前から楽しみにしていた展覧会です・・・もう見られないかと思っていましたが、ありがたいことに会期延長してスタートしました。これから何が起こるかわからないし、早めの方がいいかなと思い、早速、行ってきました。

「日曜美術館」の特集を見たりして、何となく展覧会を見たつもりになっていましたが、やはり生で見ると違いますよね・・・作品が放っているオーラがすーっと体に入ってくるような気がします。会場入ってすぐの「あなたの移ろう氷河の形態学」は氷河の氷で描かれた水彩画。淡い色彩が体に染み入ってくるような心地がします。「クリティカルゾーンの記憶」は二酸化炭素の排出を抑えるため、作品を鉄路で輸送した際の振動で自動的に描かれたドローイング。やることが徹底しています。「太陽の中心への探査」は今回、一番楽しみにしていた作品。虹色に光る大きな多角形のインスタレーションです。いわゆる映える作品ですが、キラキラ光る星の間近に降り立ったような不思議な気分に。これは美術館の中庭にあるソーラーパネルが作り出した電力で動いているのだとか。「あなたに今起きていること、起きたこと、これから起きること」も楽しい作品。鑑賞者の動きに連れてカラフルな影が動きます。ついつい子どもみたいにあれこれやりたくなってしまいます。「サンライト・グラフィティ」は二人一組で鑑賞する作品で、手のひらサイズの花形のライト「リトルサン」を動かすとスクリーンに光の線が描かれます。「ときに川は橋となる」は最新作。暗幕に覆われた空間の中央に大きな水盤があり、上部の12のスクリーンに水の波紋が映し出されます。ときに川は橋となる、という言葉の意味を考えてしまいます。水の生物にとっては、川は橋になるのかも・・・。ところでこの後、不肖わたくし、とんでもないポカをやらかしてしまいました。暗幕からの出口を間違え、よりによって「Beauty」を見逃してしまいました。初期の代表作だというのに、お間抜けさんです・・・仕方ないので、展覧会サイトの動画で、作品を見た気になることにします(涙目)。「溶ける氷河のシリーズ」は、1999年と2019年の氷河の状態を比較した写真シリーズですが、本当に氷河、溶けてきているんだな・・・ということが如実に伝わってきました。

オラファー・エリアソンといえば、2005年の原美術館の展覧会を見に行った記憶があります。当時はひたすら美しい光がうつろう作品の数々、というイメージでしたが、今回の展覧会を見て、明確に環境問題を全面に出すようになったのだなと思いました。コロナで展覧会が延期になった時はがっかりしましたが、今となってはこの時期にこの展覧会が開かれたのはやはり運命だったのかも、と思うようになりました。この状況では否が応でも大量生産・大量消費の見直し、持続可能な世界について考えざるを得ないからです。そういえば、オラファー・エリアソンは日曜美術館のインタビューで「アートの民主化」ということにも言及していました。これもこれからのアートを考えるうえでのキーワードになるのかもしれませんね・・・。
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奇才

2020-06-18 01:34:12 | 美術
江戸東京博物館で「奇才―江戸絵画の冒険者たち―」を見てきました。

いやもう、ひさしぶりの美術館です・・・これまで自己都合で数か月の間、美術館に行けなかったことは何度かありますが、外的な要因で行けなくなるというのは初めての経験でした。美術館で生の作品を見ることができる、ということのありがたみを身をもって思い知ることとなりました。

さて、この展覧会ですが、北は北海道から南は九州まで、全国35人の奇才絵師の作品を集めた展覧会です。奇才の絵師を既成の枠を打ち破った絵師ととらえ、有名無名問わず新しい表現に挑んだ絵師を紹介しています。若冲、芦雪、蕭白といった奇想の有名どころだけでなく、宗達、光琳、応挙などの王道系、絵金など地方発の絵師たちの個性的な作品が一堂に会していて見応えがありました。

展覧会は「京」の章から始まります。冒頭は俵屋宗達のしゅっとした「墨梅図」。狩野山雪の「寒山拾得図」は不気味な迫力。「竜虎図屏風」は虎のみ登場ですが、何だか可愛いトラです。若冲は水墨画のみ。「鶏図押絵貼屏風」のコロンコロンとした鶏たちも愛らしい。円山応挙の「淀川両岸図巻」は、応挙がこんな絵描いてたんですね・・・という作品。不思議なアングルの俯瞰図です。曽我蕭白の「楼閣山水図屏風」は華麗。与謝蕪村の「奥の細道図巻」は珍しいものらしく・・・。次は「大阪」。雰囲気が少々変わります。どこか飄逸。中村芳中の「人物花鳥図巻」は一見琳派風ですが、なんか違う。なぜにこんなにキンキラキンなのか。耳鳥齋の「別世界巻」は笑える地獄絵図。墨江武禅の「月下山水図」は幻想的で綺麗。お次はようやく江戸。北斎の天井絵の「女浪」が凄い。迫力の波濤。加藤信清は一見、普通(?)ですが、実はとんでもない絵師でした。谷文晁の「李白観瀑図」は心が洗われるよう。歌川国芳の「水を呑む大蛇」は何じゃあこりゃあ、な作品。そして、最後は「諸国」。北からです。蠣崎浪響の「イコトイ」は色鮮やかなアイヌ絵。田中訥言の「日月図屏風」はめちゃクールでスタイリッシュ。そして絵金。激しい絵です。そして4点も。「播州皿屋敷」はとりわけ怖い・・・。片山楊谷の「竹虎図屏風」の虎も凄い。剛毛の表現がみごと。傍で見ていたお客さんも感嘆の声を上げていました。

そんなわけで、奇想ともゆるかわとも微妙に違う、奇の世界を楽しんでまいりました。有名な絵師が実はこんな絵を描いてた、聞いたことないけどこんな面白い絵を描く絵師がいた、という発見も多々。ところで、この展覧会、「ニコニコ美術館」で監修の安村敏信氏と橋本麻里さんによる解説動画を見ることができるのですが、これがまた凄いです。なんと展示中の全作品の詳細な解説が。本音ベースのトークがちらちら混じるのもまた一興。トータル2時間半の長尺ではありますが、これを見ておくと、その後の日本画の見方も変わりそう・・・。
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