aquamarine lab

アートネタなど日々のあれこれ

Sky Blue

2020-02-16 18:40:24 | 音楽
マリア・シュナイダー・オーケストラ“Sky Blue”を聴きました。

このアルバムは2007年の作品です。1曲目は“The 'Pretty' Road”。爽やかな初秋の空のイメージ(以下、イメージは私の勝手な妄想です・・・)。泣けるピアノソロのテーマに始まり、フリューゲルの飛翔感のあるソロを経て、フリーな展開に。まるで天上の光景のようです。2曲目は“Aires De Lando”。この曲だけ、異色です。クラリネットをフィーチャーした、変拍子のタンゴ(?)のような曲ですが、三谷幸喜の映画とかが似合いそうなイメージ・・・。3曲目は“Rich' Piece”。冬の夕暮れ~夜の空のイメージ。テナーをフィーチャーした曲ですが、壮大な蒼い空が目に浮かぶようです。4曲目は“Cerulean Skies”。夏の夜明けの空のイメージです。1曲目の“The 'Pretty' Road”にどこか似ているかな・・・。こちらもやはりどこか懐かしい感じのするテーマに始まり、テナーの妖しいソロを経てフリーな展開に。アコーディオンとピアノのかけ合いは鳥のさえずりと風のそよぎのようです。そしてアルトの泣けるソロから壮大なアンサンブルに。こんな曲をこの世に残すことができたら思い残すことはないだろな、という曲です。ちなみにこの曲はグラミーも受賞しています。ラストは“Sky Blue”。春は曙の空のイメージ。ソプラノ・サックスをフィーチャーした曲ですが、ラストのクールダウンにふさわしい穏やかで綺麗な曲です。

一枚でいろいろな空の色が見えてくるようなアルバムでした。そういえば、マリアさんはバード・ウォッチングが趣味らしい・・・楽器の音が鳥になり、風になり、光になるのでしょうか・・・。

オブジェが語りはじめると

2020-02-11 12:18:12 | 美術
ワタリウム美術館で「フィリップ・パレ―ノ展 オブジェが語りはじめると」を見てきました。

フィリップ・パレ―ノの展覧会は日本初です。彼は個々の作品の意味というより、展覧会を一貫したひとつのメディアと捉えているのが特徴なのだとか。この展覧会は1994年から2006年にかけて制作された作品のプレゼンテーション、あるいは再構成です。1995年にワタリウム美術館が開催した「水の波紋」展のために制作された「リアリティー・パークの雪だるま」も再登場。「水の波紋」か・・・あの時は青山じゅうを歩き回ってアートに会いに行ったなぁ・・・私の「記憶に残る展覧会10選」には間違いなく入る展覧会でした。あれから四半世紀も経ってしまったのですね・・・。

2階には「花嫁の壁」「ハッピー・エンディング」「しゃべる石」「リアリティ・パークの雪だるま」の4作品が展示されています。4つの作品が一つのインスタレーション作品のようにも見えました。作品どうしが互いに会話を交わしているかのよう・・・。そして、作品はカメラを通して、美術館周辺の気圧や風の方向などに反応しているらしいです。「しゃべる石」がぶつぶつ言っているのを聴いていると何だか笑えてきます。トークの内容は・・・すみません、私の理解の範疇を超えておりました(笑)。アートは歩く死体であり、しゃべる石なのだそう。リアリティ・パークの雪だるま」は半分くらいが溶け残っている状態でした。3階の展示は「マーキー」一つのみ。マーキーとは20世紀初頭に登場した映画館や劇場のエントランスに設置された広告用の看板のことらしいですが、音といい光といい、賑やかな作品です。4階は「吹き出し」と「マリリン」の組み合わせ。緑の空間の中で吹き出しの雲の下にいると漫画の中にいるかのような不思議な感覚を覚えます。作品は全部で7つ。人によってはあっさりと感じるかもしれませんが、私にとってはこの抜け感?が逆に心地よかったです。このところ、いろいろと疲れることが多かったもので・・・。

この日はon Sundaysにも寄っていきました。安藤裕美さんの個展「光のサイコロジー」が開催されています。相模原を描いた色鮮やかな絵画が網膜に焼きつくよう。モノクロのアニメーション作品はさりげなく中毒性のある作品でした。小腹も空いていたので、カフェでリンゴのインビジブルガトーと自家製キャラメル・ラテを注文しました。ガトーはなんだかほっとするお味、ラテはラテアートが綺麗で、どちらも美味しゅうございました。

未来と芸術

2020-02-09 12:44:12 | 美術
森美術館で「未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命」を見てきました。

最先端のテクノロジーとその影響を受けて生まれたアート、デザイン、建築を通して社会や人間のあり方を考える・・・という展覧会ですが、来世紀の展覧会を見ているような心地になる展覧会でした。展覧会といえば、古今東西の泰西名画を鑑賞、という従来のイメージを覆されるようでもありました。

この展覧会は「都市の新たな可能性」、「ネオ・メタボリズム建築へ」、「ライフスタイルとデザインの革新」、「身体の拡張と倫理」、「変容する社会と人間」という5つのセクションで構成されています。最初は未来の都市計画などの紹介です。「マスダール・シティ」はアブダビで建設中の再生エネルギーで稼働する都市ですが、このデザインがとてもスタイリッシュ。「球体」はアメリカのネバダ州で発表された大きな球体ですが、宇宙の光景のようです。ネオ・メタボリズムの章には、ミハエル・ハンスマイヤーの「ムカルナスの変異」が。イスラムの伝統的な幾何学パターンをコンピュータでシミュレートしてデザインしたというインスタレーションですが、美しいとグロテスクの中道を行くような作品で、今まで見たことないものを見てしまった・・・という衝撃が走りました。ライフスタイルの章で面白かったのが「バイオ寿司」。なかなかにフォトジェニックなお寿司です。眺めている分には楽しいですが、これ実際に食べたいかと言われるとうーむ・・・。身体の拡張と倫理の章にはバイオ・アトリエがありました。「シュガーベイブ」はゴッホの耳を親族のDNAから再現、話かけると反応するという作品ですが、けっこう不気味・・・。「ヒューマン・スタディ」は5台の似顔絵ロボット。これに描いてもらいたいな、とちょっと思ったのですが・・・。変容する社会と人間の章には看取りのロボットがありました。ロボットが腕をさすりながら「ご家族も友人も来られず残念でしたが、快適な死をお迎えください」と慰めて(?)くれるというもの。仮に一人で死を迎えることになったとして、これに看取られたいかな~、というとちょっと考えてしまうのですが・・・。「ズーム・パビリオン」も面白かったです。展示室に入ると入場者どうしをコンピュータ同士がマッチングするというもので、現代の監視社会を意識させます。「深い瞑想」はビッグデータに基づいた色とりどりの写真。やはり地球は美しい。ラストの「データモノリス」は高さ5メートルの直方体にトルコの遺跡に刻まれた文様をAIで抽象化して映し出すという作品。未来の芸術作品はこういうことになるのでしょうか・・・。

そんなわけで盛りだくさんの展示でした。とてもじゃないけど消化しきれません・・・(笑)。それにしても22世紀、あるいは23世紀の社会はどんなことになっているのでしょうね・・・美術館やアートもあり方も変わっているのでしょうか、もしかしたら、美の概念すら変わっているのかも・・・。見てみたいような、見るのが怖いような・・・。

Bodyscore-the soul signature

2020-02-02 12:13:56 | 美術
シャネルネクサスホールで「ヤコポ バボーニ スキリンジ展 Bodyscore-the soul signature」を見てきました。

ヤコポ バボーニ スキリンジは1971年生まれのパリの現代音楽作曲家。ブーレーズの弟子であり友人だそうです。2007年から実験的に人体に楽譜を書き始め、これが新しい作曲法に変わりました。

さまざまな属性を持つモデルたちを撮ったモノトーンの写真の数々は、耽美的と言いたいような美しさです。SEALのアルバムジャケットを思い出すような写真も。スキリンジ自身が書いたという楽譜がモデルたちの肌を埋め尽くしていますが、楽譜自体もフォトジェニック。中央にあるインスタレーション作品に対峙すると彼自身が書いた弦楽四重奏曲が流れます。どことなくブーレーズやヨハン・ヨハンソンの曲を彷彿とさせます。

スキリンジは「自分の感情の動きをあまさず伝えたい」と語っています。人間の身体に直接楽譜を描きこむという行為は、デジタルミュージック全盛の時代へのアンチテーゼでもあるようです。これによって「バイブレーションが私の手に戻ってきた」のだとか。それにしてもこれらの楽譜を実際、どのように演奏するのか、興味は尽きません・・・。