渋谷シネクイントで「ワッツタックス/スタックス・コンサート」を見てきました(上映は既に終了しています)。
1972年8月にロサンゼルスで開催された伝説の野外コンサートのドキュメンタリーです。ソウルの名門レーベル、スタックス・レコードのアーティストたちがほとんど出演したというコンサートは6時間にわたり、10万人の観衆を動員したそうです。このコンサートは1965年にカリフォルニア州ワッツ地区で起こった暴動事件に端を発するもので、「黒いウッドストック」とも呼ばれているのだとか…(以下、ネタバレします)。
この映画は当時のワッツの黒人たちの生活、人気コメディアンのリチャード・プライヤーのトーク、スタックス・コンサートの映像とで構成されていました。トークが長めではあったのですが、コンサートの方もツボは押さえていた感じです。コンサートはキム・ウェストンが歌う国歌から始まります。ソウルフルな国歌に続けて、ジェシー・ジャクソンのスピーチ。大観衆に向かって“I’m somebody”と力強く訴え、キムが黒人のための国歌“Lift Every Voice & Sing”を歌います。そして、ステイプル・シンガーズが登場。“Respect yourself”を熱唱します。サイケな衣装で現れたバーケイズは、まさに元祖ファンクな演奏。エモーションズは教会でゴスペルを歌う映像が流れますが、神がかりの歌にトランス状態になる人の姿も。一方で、アルバート・キングが渋~いブルースを聴かせてくれます。全身ピンクの衣装で登場したルーファス・トーマスは、熱狂してスタジオになだれこむ観客たちをさすがの貫禄で鎮めます。そして、トリはアイザック・ヘイズ…リムジンをステージに横付けにし、大歓声の中、降臨する姿はまさにカリスマ…。
音楽ドキュメンタリーというには音楽は少々短めで、むしろ当時の黒人たちの姿を伝えるのがこの映画のメインの目的なのかもしれません。彼らの口から語られる差別の状況は生々しく…その鬱屈と対をなすのが、あのコンサートでの熱狂だったのかと…。それを知らずして、本当にこういう音楽を聴けるのか?ということを、半世紀経った今になって突き付けられたかのような映画でした…。