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Music in the Universe

2023-10-08 00:29:43 | 音楽
Music in the Universe@サントリーホールに行ってきました。

サントリーホールサマーフェスティバル2023のプロデューサー・シリーズ「ありえるかもしれない、ガムラン」のプログラムの一つです。行ってから、かなり日が経ってしまいましたが、心覚えのために…。今回のプロデューサーは作曲家の三輪眞弘氏ですが、企画の趣旨はガムランの実践を通して、音楽や人間世界の未来を考える、ということだそうです。コンサートホールでのコンサートのほかにもプロジェクト型コンサートEn-gawaも開催されていて、ケージのミュージサーカスの回を思い出しましたね…。

さて、Music in the Universeの1曲目は藤枝守「ピアノとガムランのコンチェルトNo.2」でした。このピアノはミニピアノ(トイピアノとは違う)で、ガムランの旋法に基づいて調律されており、不思議な響きです。ステージの中央にピアノが置かれ、その周りにガムランの楽器が円環上に配置されています。メロディのパターンには植物の電位変化のデータを変換する「植物文様」の手法が用いられており、非常に繊細な響きの曲でした。2曲目は宮内康乃「Sin-ra」。Sin-raは森羅万象を意味し、世界を構成する五大要素のうち「水」「風」「地」の3つを曲にしています。始まり方も実にユニークです。観客がいくつかのグループに分かれて舌打ちなどの小さな音を出すことから曲が始まるのですが、暗闇の中で聴いていると、東南アジアの森の中にいるような心地に…。曲はガムラン音楽のルールベースで作られていましたが、途中で踊りも加わり、音楽、踊り、祈りが渾然一体に…タイトルにふさわしい、夢幻的で壮大なスケールの曲でした。3曲目はホセ・マセダ「ゴングと竹のための音楽」。氏は音楽民族学者でもあります。昔、著書を読んだこともありましたね…。この曲は1997年の作品ですが、当時、氏にガムランの新作を委嘱したところ、ガムランは権力者の楽器だからと、最初は断られたそうです。しかし、ガムラン音楽の解体を提案したところOKが出たのだとか。そのため、ガムラン以外の楽器も加わり、指揮者も存在しています。そして、合唱のテクストには俳句が引用されています。ガムランに対してもいろいろな考え方があったことを知る機会ともなりました。4曲目は小出稚子「Legit Memories(組曲 甘い記憶)」。曲名は松田聖子さんの名曲のもじりだそうですが、ジャワの甘味の名がついた五つの小品からなる組曲です。白玉入りの甘い生姜スープ、チョコレート入りホットサンド、椰子の実ジュース、果物入りのかき氷、揚げバナナ…お品書きを眺めているだけで何だかうっとりしてしまいます。スイーツを思い浮かべながら、ゆるーい感じで楽しめる曲でしたね…。最後は野村誠「タリック・タンバン」。何と、だじゃれ、相撲、綱引きなどが登場するシアトリカルな作品。サントリーホールのステージでお相撲さんが四股踏んだり、人々が綱引きをしたりしている図が見られる日が来るとは思いもよりませんでした…たしかに夏祭りのフィナーレにふさわしい作品でしたね…。

そんなわけで、お腹いっぱいガムランを堪能…ガムランという楽器からこんなにも多様な響きが生まれるということを目の当たりにしました。それにしても、ガムランって不思議な楽器ですよね…宇宙を象徴するような不思議な響き…その魅力がこれからも音楽の新しい可能性を拓いてくれるのかもしれません。

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