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永遠の歌声

2021-02-28 13:47:26 | 映画
ル・シネマで「甦る三大テノール 永遠の歌声」を見てきました(この映画館での上映は既に終了しています)。

1990年から十数年にわたり、一世を風靡した三大テノールの活動の軌跡を追ったドキュメンタリーです。当時、批判はありつつもずいぶんと話題になっていましたよね。日本にも何度か来てはいたものの、不肖わたくし、あの高額チケットにはとても手が出ず、ついぞ足を運ぶことはなかったのですが…(以下、ネタバレ気味です)。

1990年、第14回FIFAワールドカップの前夜、ローマのカラカラ劇場でのコンサートが三大テノールのスタートですが、このコンサートは三人のサッカー愛と、白血病で闘病していたカレーラスの復活祝いで実現したものでした。客が集まらないだろう…と思っていたパヴァロッティは地元モデナで招待券を2000枚配っていたくらいですが、予想に反してこのコンサートは8億人が視聴、レコードは1600万枚の売り上げという一大ヒットになりました。この時のリハの映像がありましたが、最初はぎくしゃくしていた彼らが歌を通して次第に打ち解けていく様子が記録されています。パヴァロッティとドミンゴは元々あまり仲が良くなかったらしく、そのせいなのか何なのか、いつもカレーラスが真ん中という並びになっています。この映画では、指揮者のズービン・メータの果たした役割の大きさも明らかにされています。彼はユーモアもあり、バランスの取れた人柄の方のようですが、2回目のワールドカップの時にはまともに譜読みもしていない3人に業を煮やし、呼び出してみっちり練習させるという一幕もあったとか。編曲担当のラロ・シフリンの貢献も明らかにされていました。最初の大成功を受けて、その後10年余にわたって続く彼らの活動の間には感動的なシーンがいくつもありました。アメリカの公演では彼らの歌う「マイ・ウェイ」を聴いて感極まるフランク・シナトラの姿も。その一方で、関係者の思惑も入り乱れ、活動はいつしか一大ビジネスの場とも化していました。そんななかで、しっかり高額ギャラを要求するドミンゴ、収益を白血病の財団につぎ込むカレーラス、料理も楽しむパヴァロッティ(カレーラスのお弁当用サンドイッチを作ったり、インド系のズービン・メータのために激辛パスタを作ったりしたこともあったとか!)。しかし、三大テノールの活動も、パヴァロッティの死によって終わりを告げることになります。

それにしても、この時代にこの三人がめぐり合ったというのは、本当に奇跡だったんだな…と、あらためて思わざるをえません。いずれも素晴らしいテノールでありながら、みごとにキャラの棲み分けができているというか…。深くドラマティックな声のドミンゴ、明るく豊潤な声のパヴァロッティ、繊細かつ憂いのある声のカレーラス。その後、三大ソプラノとか三大カウンターテナーといった試みもあったものの、いずれもぱっとせずに終わったようです。パヴァロッティの死後、別のテナーを加えて三大テノールを復活させては、という提案もあったようですが、ドミンゴとカレーラスは断りました。そりゃそうですよね…パヴァロッティの声は文字通り不世出のものですから…。

ところで、この日のル・シネマの予告編に気になるラインナップが…そう、アレサ・フランクリンのドキュメンタリーです。予告編だけでも鳥肌ものでしたよ…5月末に公開らしいですが、これは行かなくちゃです…。