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アートネタなど日々のあれこれ

ボンクリ・フェス2020

2020-09-28 00:43:24 | 音楽
「ボンクリ・フェス2020」に行ってきました。

数年前から気になっていたイベントなのですが、なかなか都合が合わなかったため、今回が初参加です。ボンクリとは何ぞや、という感じですが、これは“Born creative”のことで、「人間は皆、生まれつきクリエイティヴだ」という意味らしいです。いい言葉ですよね。このイベントは今年で4回目、作曲家の藤倉大さんがアーティスティックディレクターを務めています。

この日はスペシャル・コンサートから参加しました。1曲目は藤倉さんのGliding Wings。空や雲、風を思わせる音楽。二羽の鳥が飛び交うイメージの曲だそう。2曲目は八木美知依さんの「水晶の夢」。筝の弾き語りです。静御前にまつわる曲だそうですが、いさぎよい演奏。八木さんのたたずまいも素敵です。3曲目はハイナー・ゲッベルスのサロゲイト。ピアノと打楽器、声のための曲ですが、ピアノもほぼ打楽器と化しています。声ではラッパーのダースレイダーさんが登場。さすがの存在感です。4曲目は牛島安希子さんのDistorted Melody。ジャズっぽい、複雑なリズムの曲ですが、アンサンブル・ノマドがノリノリで演奏。5曲目が蒲池愛&永見竜生〔Nagie〕のbetween water and ray。グラスハープとライブエレクトロニクスのための曲ですが、グラスハープの音と七色の光のアートがシンクロしてオーロラが舞う北国のような幻想的な空間が生まれていました。6曲目は大友良英さんの新作。子どもが指揮するユニークな曲です。ノマド・キッズがかわいかった。7曲目は教授のパサージュ。幽玄な弦の響きと詩の響き。最後は藤倉さんのLonging from afar。もともとリモート演奏のために作った曲を生演奏していますが、ここでもノマド・キッズが大活躍して大団円を迎えます。

その後、アトリウム・コンサートで笙の東野珠美さんと篳篥の山田文彦さんが演奏する「星筐Ⅵ~星合~」を聴いてきました。宇宙空間を漂うような曲。いつか静かな空間でも聴いてみたいです。それから、電子音楽の部屋へ。蒲池愛さんの筝の曲とアコーディオンの曲を上映していましたが、これがアグレッシブでかっこよかった・・・蒲池愛さんは今年の5月に急逝されたそうですが、本当に惜しまれます。最後に大友良英さんの部屋へ。笙の入った曲を流していましたが、やはり実験的。この後、大人ボンクリとかも聴いて帰りたかったのですが、子供たちの晩御飯を作るため、ここで退場・・・。

そんなわけで、半日間、まったりと楽しんでまいりました・・・現代音楽のコンサートというと、ついつい構えて聴いてしまいますが、このフェスは本当に肩の力を抜いて音を楽しめます。こんなに楽しいイベントならもっと早く来ておけばよかった、としみじみ思いました。今度はワークショップとかにも参加してみたいです。また、来年が楽しみ・・・。
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Interpretations

2020-09-22 00:22:49 | 音楽
「Interpretations: Celebrating the Music of Earth,Wind & Fire」を聴きました。

2007年に出たEarth,Wind & Fireのカバーアルバムです。このアルバムのことは知らなかったのですが、J-waveのスガさんのラジオ番組で紹介されていたのを聴いて買いました。今聴いてもかっこいいですよ・・・それもそのはず、錚々たるメンツがカバーしていますから・・・。

1曲目はチャカ・カーンがカバーする“shining star”。のっけから超パワフルなチャカ・カーン節(?)が全開です。“be ever wonderful”はアンジー・ストーンがしっとりとソウルフルに。“september”はカーク・フランクリンがカバーしていますが、これがむちゃくちゃかっこいい。あまりにもツボにはまったので、この曲ばかり10回くらいリピしてしまいました。分厚いコーラスアレンジが彼の名曲“Brighter day”を彷彿とさせます。“devotion”はledisiが切々と歌い上げます。“can’t hide love”は大好きな曲・・・特にベースライン(笑)。Bilalの粘っこい歌いっぷりがたまりません。後半、ラテンっぽいアレンジになるのがふた昔前っぽい感じですが、二周回ってかっこいい。“love’s holiday”はDavid Fosterっぽいsweetかつ壮大なバラードに。“that’s the way of the world”はsophisticateされたアレンジ。“After the love is gone”はmint conditionがカバーしていますが、原曲に近い感じで、がっつり歌い上げています。“reasons”もいい曲ですよね・・・musiq soulchildがカバーしてますが、ファルセットとはいえ、よくこんな高い声が出るなぁ。ラストは“fantasy”、ミシェル・ンデゲオチェロがカバーしてます。アルバム発売当時の流行りっぽいサウンドですが、このアレンジは好みが分かれそう・・・原曲とは相当イメージが違います。でもやはり彼女でなくてはできないfantasy・・・。

というわけで粒ぞろいの10曲を楽しみました。そういえば、Earth,Wind & Fireになって今年でちょうど50年なのですね・・・いまだ偉大なバンドです・・・。
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DATA LORDS

2020-09-21 09:53:59 | 音楽
マリア・シュナイダー・オーケストラ「DATA LORDS」を聴きました。

5年ぶりの新作はCD2枚組の大作です。“The Digital World”と“Our Natural World”の2枚で構成されており、デジタル界と自然界、この対照的な二つの世界を音楽で表現しています。ちなみにDATA LORDSとは「情報の支配者」のことらしく・・・。

“The Digital World”は終始、異様な緊張感に包まれています。1曲目の“A World Lost”は、イントロで既に勝負あった、みたいな曲。印象的なフレーズが不穏な世界のスタートを告げるかのよう。“Don’t be evil”でさらに世界が混沌としてきます。トロンボーンのダイナミックなソロに続く冷たい水のようなピアノソロが次第にヒートアップして収束へと向かいます。“CQ CQ,is anybody there?はもう最初からカオス・・・フリーのテナーソロに続くデジタルトランペットのソロは世界を飛び交うデータのよう。“Sputnik”は宇宙空間のイメージ、神秘的かつ壮大な曲です。“Data Lords”は何かに向かって前進していくような、崩壊していくようなエキサイティングな曲。音の粒子が舞い落ちるかのような終焉・・・。

一方、“Our Natural World”では緊張から解き放たれ、穏やかな安らぎに包まれるようです。“Sanzenin”はあの三千院です。幽玄な光を感じる曲。アコーディオンの音が踊る光のような、戯れる風のような。“Stone song”は飛び石をぴょんぴょん飛び跳ねるような、楽しげな曲。“Look up”はメロディアスな泣ける曲・・・トロンボーンの温かい音が心地よいです。“Braided together”は大切な何かを探す旅に出るようなイメージの曲。“Bluebird”は不安や怖れもありながら、飛翔する鳥を思わせます。ラストの“The sun waited for me”で世界はピースフルな光に満たされます。

一つの世界が終わり、新たな世界が始まるようなこの年に、このアルバムが発表されたということに不思議な暗合を感じます。アート、特に音楽って時に時代を予見することがありますよね・・・。
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ようこそ映画音響の世界へ

2020-09-20 00:13:43 | 映画
シネマカリテで「ようこそ映画音響の世界へ」を見ました。

ハリウッド100年の音響の歴史を映画人たちが語るドキュメンタリーです。著名人も多数登場・・・ジョージ・ルーカス、スティーヴン・スピルバーグ、ソフィア・コッポラ、デヴィッド・リンチ、バーブラ・ストライサンド・・・そして、これまであまり表には出てこなかったと思われる音響デザイナーのレジェンドたちも。この映画の監督さんも25年にわたって音響デザイナーとして活躍した女性です。

1927年に初めてのトーキー映画「ジャズシンガー」が登場して以降の映画音響の歴史を名画の数々を例にあげて紹介しています。「地獄の黙示録」「「ゴッドファーザー」「鳥」「スター・ウォーズ」などなど・・・ビートルズが映画音響に与えた影響についても触れられています。映画では、映画音響を音声・効果音・音楽の3つに分けて解説しています。基本的に分業制で音響を担当しているようですが、現場ではさまざまな工夫がされています。とりわけ面白かったのが効果音づくりの場面でした。「スパルタカス」のスペクタクルな戦闘シーンの鎧のガチャガチャ音が、実は車のキーをカチャカチャする音だった、とか。「映画の音は錯覚のアート」という言葉もありました

映画というと、ついつい絵面の方に注目してしまいますが、「映画は映像と音でできている」ということにあらためて気づかされた映画でした。映画の中で同じ映像にまったく違う音楽を当てている場面があるのですが、音楽次第で同じ映像がサスペンスにもコメディにも見えてしまう、ということを目の当たりに。そして「無音」の効果も・・・ヒッチコックの映画の怖さは実は無音によるものだったですね。彼は音楽をつけない方針だったらしいですが、たしかに音が無いことによって怖さが倍増・・・。映画において音楽は「救命ボートのようなもの」と語っている人もいました。他にも映画と音に関する趣深い言葉の数々・・・とりわけ心に残ったのは、「音は瞬間を永遠にする」という言葉でした。

それにしても、思いのほか女性が活躍している仕事だったのですね・・・この映画の監督さんも女性ですし。指先をちゃんとコントロールできれば男女関係ない、という人もいました。そして、皆さん、幸せそう・・・なかにはプレッシャーのあまり、心のバランスを崩してしまった方もいますが、そういった面も含め、皆さんやりがいを持って生き生きと仕事をされている姿が印象的でした。

鑑賞後は例によって甘いもの・・・ということで、新宿ルミネの中にある「Milk」でミルキーソフトクリームを食べてきました。ボリューミーかつクリーミ―なソフトクリームで、美味しゅうございました。

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INTENCITY

2020-09-19 09:19:26 | 美術
ポーラミュージアムアネックスで「INTENCITY」を見てきました。

光のアートやデザインワークを手がけるアーティスト、松尾高弘さんの展覧会です。松尾さんはプログラミングやシステムも自ら手がけているのだそうです。今回の作品は3点。“Phenomenon”は気流や炎などの流体を無数の点群のふるまいによって視覚化したインスタレーション、ということですが、光る砂嵐のようなイメージ・・・見ていると映像と自分が同化してしまうような、不思議な感覚を覚えました。この粒子群は実際の物理法則に基づいて、デジタルテクノロジーによって緻密にシミュレーションされているのだとか。“Flare”はメインビジュアルにもなっている作品で、光と透明なプリズム多面体によるライティングオブジェクトですが、キラキラと眩い花のような太陽のような・・・ふと、オラファー・エリアソンの「太陽の中心への探査」を思い出しました。“SPECTRA”は新作、世界初の技術を使った光と水のインスタレーションということです。光る水が雨のように降ったり、止んだり・・・光のスペクトルの色彩は見る角度と水の反射によって変化し続けます。会場では18:20~18:40の間はサウンドアーティストの高橋全さんが監修したオリジナルBGMを流しています。水の滴りのような、浮遊感のあるピアノサウンド。この音楽とこの作品の光が綺麗にシンクロしているようにも見え、しばし放心状態というか、時を忘れてしまいました・・・。

さて、アートといえば甘いもの(?)ということで、この日はギンザシックスの中にある「中村藤吉本店」に寄ってまいりました。パフェにもかなり惹かれたのですが、抹茶ゼリイ「深翠」をいただきました。濃厚なゼリイに加え、抹茶アイス、抹茶餡、白玉、小豆、甘栗・・・と盛りだくさんで美味しゅうございました。
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ひびきあうせかい

2020-09-14 00:45:03 | 映画
K’s cinemaで「ひびきあうせかい REZONANCE」を見ました。

LITTLE CREATURESの青柳拓次さんの旅に寄り添いながら進むドキュメンタリーです。行く先は沖縄、東京、ミュンヘン、ライプツィヒ・・・見る者も一緒に旅をしているような、はたまた白昼夢を見ているような不思議な感覚に陥ります・・・(以下、ネタバレ気味です)。

祖父も母もギタリストで、東京で生まれ育った青柳さん。やがて二人の娘の父となり、沖縄に移住、音楽をつかって国境を越えた調和を生み出すというアイデアに目覚めます。彼の中には日本人である自分が西洋の音楽を演奏してもそれは真似にすぎないのでは、という想いが常にありました。彼は世界を巡って、現地の音楽家たちと共に「サークルボイス」を創り出します。サークルボイスは人々が輪のようにつながって一緒に声を出す、のですが、その響きはどこか声明のようにも聞こえます。太古の音楽のような、自然、果ては宇宙にもつながっていくようなその響き。本当に音は神秘です・・・言葉の通じない人々、遠い時代を生きる人々をもつなぐことができる・・・。

この映画はさまざまな音が溢れています。ギターの音、人々の声、海の音、森の音、街の音・・・世界はさまざまなひびきで構成されているのだということを思い出します。時にはまどろみそうになりながら、音の海を漂うような不思議な時間を過ごしたのでした。

私が行った日には、上映後にトークセッションがありました。佐々木俊尚さんとヴィヴィアン佐藤さん、田中トシノリ監督はリモートで登場・・・音楽の原点、についてのお話でした。

その後、遅めのランチ、ということで、近くの「麺屋海神」に行ってきました。あら炊き塩らぁめんをいただいてきました。トッピングのつみれもつくねも美味しかったけど、やはり魚介の風味豊かな澄んだスープが絶品でした・・・。
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save the classics

2020-09-13 00:02:25 | 音楽
「SAVE THE CLASSICS FOR THE NEW ERA vol.2」を見ました。

ジャズ・ピアニストの林正樹さんが渋谷にあるライブハウス「公園通りクラシックス」を支援するためにオーガナイズしたイベントです。今回が2回目ということで、5時間にわたるライブが行われました。視聴はオンラインで、料金1000円のうち半分が必要経費、半分が支援金となります(9月13日23:59まで視聴可能)。

5組のアーティストが登場しますが、最初は「栗林すみれ&林正樹 2台ピアノ」です。とても美しいピアノで、しばし癒しの時間を過ごさせてもらいました。お二人は初共演ということですが、とても息の合ったコンビです。とりわけ栗林さんオリジナルの“Water flow”という曲が幻想的でした。「この道」のアレンジもしみじみした情緒があり・・・栗林さんの儚げなvoiceが綺麗でした。2組目は「三枝伸太郎&小田朋美 Duo」。小田朋美さんのことは初めて知ったのですが、驚きました・・・まさに才女、という感じの方ですが、芸大卒なのですね。矢野顕子さんを彷彿とさせる自由奔放な歌。詩人の詩に曲をつけて歌っているのですが、詩の世界観をみごとに表現。変幻自在な彼女の歌を三枝さんのピアノが絶妙にフォローしています。3組目は「高橋悠治&佐藤允彦 2台ピアノ」。まさかまさかの夢のマエストロ共演です。この演奏の感想を言葉で表わすのは難しいです。達人二人のこの世のものとは思えぬ神演奏・・・フリーのインプロビゼーションということが信じられないくらい、2台のピアノが一体となるような展開でした。孤高のピアニストに見えた高橋氏は、終演後のトークではお茶目な仙人様みたいでした。4組目は「梅津和時 ソロ」。フリーのインプロビゼーションです。途中から林さんのしなやかなピアノも絡みます。かと思うと、梅津さんの歌も。「東北」は震災の後に作られた曲だそうです。アグレッシブに始まった演奏は、しみじみと終わります。最後は「須川崇志Banksia Trio feat.角銅真実」。ラストということもあってか、終始リラックスした感じで、まったりと聴きました。角銅真実さんも独特な雰囲気が魅力的な歌い手さんですが、彼女も芸大卒なのですね・・・ウィスパーボイスがどことなく大貫妙子さんを彷彿とさせます。選曲もユニーク。寿限無の歌は面白かった・・・(笑)。

そんなわけで、素敵な5組の演奏を堪能しました。これで1000円はさすがに申し訳ないので、些少ではありますが、投げ銭もしてまいりました。3回目のイベントを年末あたりに開催するかも、ということらしいです・・・。
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クールの誕生

2020-09-12 14:30:43 | 映画
K’s cinemaで「マイルス・デイヴィス クールの誕生」を見てきました。

公開を知ったときから、ずっと心待ちにしていた映画です・・・なので、早々に行ってきました。マイルスの人生を駈足ながらも詳細に追ったドキュメンタリーです(以下、ネタバレします)。

昔、マイルスの自叙伝は何度も読んでいたので、大体のところは記憶にあったのですが、こうして映像で見て、あらためて壮絶な人生だったと思い知らされました。音楽的な充実期とクスリや事故で沈む時期を交互に繰り返し、その度に音楽が変貌します。本当にエピソードに事欠かない方ですよね・・・名門ジュリアード音楽院をやめる時の捨て台詞もかっこいい。名盤「クールの誕生」が生まれたのも、天才・チャーリー・パーカーの横で、プレッシャーのあまり吐きながら吹く毎日に耐え切れなくなり、違う方向に行くことにしたからだったとか。同じく名盤の「カインド・オブ・ブルー」にはわりと長い尺が割かれていました。“So what”の最初のテーマが終わった後の、闇を切り裂くようなラッパの音は今聞いても鳥肌が立つようです。第二期クインテットのメンバーでは、ロン・カーターとハンコック、ショーターが出演。ロン・カーターのしゃべりがけっこう面白い。彼らの若かりし頃の映像も。ハンコックは分厚い眼鏡をかけて田舎の秀才みたいですが、演奏でやってることは凄い・・・当時10代だったトニー・ウィリアムスのドラミングも凄まじいです。しかし、このクインテットもマイルスがエレクトリックに興味を示し始めたことで終わりを告げます。マイルスがエレクトリックに行くきっかけになったのが、スライだったというのが面白い。スライの音楽と稼ぎに眼が眩んだマイルスは、あっさりそっちに行ってしまいました・・・。いまだにジャズファンの間では賛否分かれる問題作「ビッチェズ・ブリュー」を発表。ファンクといえば、マイルスはプリンスのこともとても気に入っていたようで、運命の2人だった、という人も。さらにインド料理屋でかかっていたインド音楽に惹かれたのがきっかけで、ファンクにインド楽器を取り入れた「オン・ザ・コーナー」を発表。ファンクとインド音楽の融合って今聴いても斬新です。その後、長い沈黙期間を経て復活、フュージョンや、ロックやポップ、最後はヒップホップにも接近しますが、1991年、65歳で亡くなります・・・。

最後まで後ろを振り向かず、進化し続けた“帝王”でした・・・息子曰く、家には過去のレコードは置いていなかった、というから、徹底しています。今やっている音楽がすべてだった、と。「昔の曲をやるくらいだったら俺は死ぬ」という本人の言葉もありました。死の間際、盟友クインシー・ジョーンズのステージに出演した時のマイルスはそこはかとなく音を吹き鳴らすだけの状態になっていましたが、クインシーは、彼は40年走ってきた、もう、そこにいるだけでいい、と・・・。あれから約30年、後にも先にもマイルスはマイルス一人だけです・・・。
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真夏の夜のジャズ

2020-09-07 00:14:44 | 映画
恵比寿ガーデンシネマで「真夏の夜のジャズ」を見てきました。

1958年7月に開催された第5回「ニューポート・ジャズ・フェスティバル」のドキュメンタリーです。この映画が日本で公開されてから今年で何と60年なのだそうです。60年って、還暦・・・ですが、今回は4Kで色鮮やかに蘇りました。そして、この映画、なにげにお洒落なのですよね・・・監督さんは当時28歳の新進気鋭の写真家さんだったようです。(以下、ネタバレします)。

登場するミュージシャンも多士済々・・・セロニアス・モンクはこの頃、40そこそこかと思われますが、例のピアノと謎の貫禄。アニタ・オデイは綺麗でお洒落。変幻自在なスキャットでバックとオーディエンスを翻弄します。ジョージ・シアリングを映像で見るのは初めてですが、やはり端正なピアノ。ダイナ・ワシントンの“All of me”にも心を打たれます。間奏でバイブを弾いちゃうお茶目な面も。ジェリー・マリガンは数学とか化学とかの先生みたい・・・。ビッグ・メイベル・スミスは本当にビッグです。プリンセスみたいな格好して怒ってないよ~♪とか歌われてもめっちゃ怖いんですけど(爆)。チャック・ベリーはノリノリのステージ。サーフィンUSAの元ネタになった曲を披露しています。ルイ・アームストロングはさすがの貫禄。歌もラッパも本当に素晴らしく、圧倒的なパフォーマンスを繰り広げます。そして、トリはなんとなんと、マヘリア・ジャクソン!もう、歌の世界観が全然違うというか何というか・・・最後に歌った“Lord’s Prayer”はもはや神々しいという領域でした・・・。

そんなわけで、60年前にタイムスリップした気分で楽しんでまいりました。ニューポート・ジャズ・フェスといえば、ジャズファンにはよく知られているフェスですし、けっこう大規模なものを想像していたのですが、当時は意外に地方の祭り的な手作り感にあふれるものだったのですね。最近はいったいどんなことになっているのでしょうか、いつか一度は行ってみたいものです・・・。
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海の上のピアニスト

2020-09-06 17:11:31 | 映画
恵比寿ガーデンシネマで「海の上のピアニスト」を見てきました。

あの「ニュー・シネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレ監督とエンニオ・モリコーネの音楽、ということで、公開当時から気になっていた作品ですが、なぜかタイミングを逃したまま、今日に至り・・・そして、モリコーネもつい2か月前に亡くなりました。ひさびさにあの音楽を映画館で堪能したいと思い、行ってきました。ちなみに私が見たのはデジタル4K版です。

まだまだ再上映される機会も多い作品でしょうから、ネタバレになりませんように・・・。大西洋を巡る豪華客船ヴァージニアン号である日、籠に入れられた赤ん坊が見つかりました。両親はいずことも知れず・・・。黒人の機関士に拾われた彼は1900(nineteen-hundred)と名づけられ、荒っぽいながらも大切に育てられました。いつしかピアノの才能に目覚めた彼は船内のハウスバンドのピアニストとして活躍することになるのですが・・・。その半生が彼のバンド仲間だったトランぺッターのマックスによって語られます。

印象深いシーンはいくつもありました。まずは1900とマックスの出会いのシーン。恐ろしく揺れる船の中、床の上をスケートのように滑るピアノで1900が平然と、そして華麗に弾きまくります。最も印象深かったのは、1900とジェリー・ロール・モートンのピアノ対決シーン。1900が千手観音みたいなことになったり、漫画みたいな描写がけっこう笑えるのですが、とにかく熱い。ジェリー・ロール・モートンは実在するにもかかわらず、思いっきり嫌な奴に描かれているのですが、これ、大丈夫なんだろうか、とひとごとながら心配になってしまいます(笑)。そして、1900と魚屋の娘の出会いのシーン。この瞬間に1900の指先から世にも美しいメロディーがこぼれ落ちます。映画のテーマにもなっているあのメロディーです。彼女に出会った1900は生まれて初めて、船を下りる決心をするのですが・・・。

この映画のラスト、1900の下した決断にはおそらく賛否があることでしょう・・・無限の選択肢があるというのは幸せなことなのか、そうじゃないのか、本当のところは誰にも分からないのかもしれません。1900のような生まれ育ちの人間でなければ、あの行動は理解できないのかもと思いつつ、やはり切ない・・・。

そしてこの映画、音楽は言うまでもなく美しいです・・・音楽教育は受けていないと思われる1900の指先から生まれる音楽は、ジャズともクラシックともつかない不思議な音楽。例のテーマ曲はピアノで弾くと雨の雫の音のようにも、トランペットで吹くと大海原の波音のようにも聞こえます。もう、モリコーネの新たな音楽が聴けないと思うと、本当に寂しい限りです・・・。
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