aquamarine lab

アートネタなど日々のあれこれ

アートのお値段

2019-08-30 19:26:52 | 映画
ユーロスペースで「アートのお値段」を見てきました。

アートのお値段・・・なかなかに刺激的なタイトルですが、アートとお金の関係について、アーティスト、オークショナー、ギャラリスト、評論家、コレクターといった関係者へのインタビューを通じて探るというドキュメンタリーです。タイトル同様、刺激的な内容の映画でした。ところで、この監督さん、ルイス・カーンの息子さんだったんですね・・・(以下、ネタバレ気味です)。

この映画ではアートに関わるさまざまな職種の人々が登場します。にしても、同じくアートを扱いながらも、その立ち位置によってこうも考え方が違うのか・・・というのが、驚きを超え、半ばブラックユーモアのような様相を呈しています。著名なアーティストも登場。最初は600ドルで売った作品が、その後、高騰し、「せめて花でも送らんかい」、と買い手に詰め寄るラウシェンバーグ。「俺の作品は家じゃない、金なんて汚い」と言い切るゲルハルト・リヒター。作品が多すぎると希少価値が、と言われて「モネやピカソにも作品創りすぎるなって言うのかよ」と反論するジョージ・コンド。なかにはマーケットを睨みながら制作しているアーティストもいるようですが、この映画に登場していたアーティストは大方、違う次元で生きているようです。ゲルハルト・リヒターは作品が美術館に収められることを望んでいました。が、オークショニアは美術館に収納されて陽の目を見なかったら?墓場みたいなものよ、と言います。アーティストにとって、そして作品にとって幸せなのは、はたしてどちらの道なのか・・・。

アートとは何なのか?アートのお値段って?そして、アートの価値とは?いずれも、永遠の謎だろうと思います。にしても、自分がこれまで好んで観てきた現代アートに、「安く買って、高く売る」というビジネスモデルがちゃんと確立していたことを目の当たりにしてしまうと、何だか複雑な気分でした。資本主義の世の中にあっては、アートは作品でもあり、商品でもあったのですね・・・。所有することは関与すること、株を買うのも関与、と言っているコレクターもいました。関与すること、にはえも言われぬ刺激があるのかもしれません。とはいえ、最終的には、ある登場人物のこんな言葉がやはり心に残りました。「アートは尊い」と。アートの価値って結局、プライスレスかもよ・・・と、どこぞのCMを思い出したりもしたのでした。
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フランス人がときめいた日本の美術館

2019-08-21 19:57:10 | 
今さらですが、ソフィー・リチャード「フランス人がときめいた日本の美術館」を読みました。

以前、日曜美術館にソフィーさんが出演していたのを見て、素敵な方だなぁ、とは思っていたのですが、この本を買ったのは、テレビで偶然、「フランス人がときめいた日本の美術館」を目にしたのがきっかけです。可愛い女優さんが出てくるお洒落アート番組かと思いきや、実は取材がしっかりしていて、思わず見入ってしまいました。それにしても、この番組、オープニング&エンディングテーマまでユーミンの曲のフランス語バージョンという手の込みようです。番組を見ているうちに、やはり原作本(?)を読んでみたいと思うようになり・・・。

さて、この本、何やらとある片づけ本を想起させるようなタイトルではありますが・・・不肖わたくし、こんまりさんの本にはこれまでさんざんお世話になっており・・・興味深く読みました。私も美術館巡りを始めてけっこうな年月が経ちますが、この本に取り上げられていた地方の美術館には行っていないところがまだまだありました。東京圏の美術館は行き尽くしたような気がしていましたが、なかには存在すら知らなかったところも。それにしても、かの美術大国フランスの美術史家であるソフィーさんに「日本の美術館はワクワクがとまらなくなっちゃうの、本当よ」とか言われると、何だか嬉しくなってしまいますよね。

この本の何より素敵なところは、ソフィーさん独自の感性が、最後まで貫かれていることです。よく、フランス人は個性を重んじるということがいわれますが、こういうことかと思いました。個性的に一本、筋が入っているというか。ソフィーさんの場合は、地に足のついた洗練という言葉がふさわしいような気もします。また、この本を通じて日本や日本の美についてあらためて知ることが多々ありました。その渦中にいると表層だったり、先端だったりについつい目を奪われてしまうのですが、土地や歴史に根差したものに目を向けることも大切ですね。私の場合、美術館に行っても、あれも見た、これも見た、と情報収集に走ってしまいがちなのですが、その空間や時間を味わうということも大事だったな、としみじみ思いました。

これまで行ったことのある美術館でも、この本を読んでいけば新たな魅力を見出せそうですし、行ったことのない美術館は、ますます行くのが楽しみになります。いつか、子育てが一段落ついた暁には、この本片手に遠方の美術館めぐりも楽しんでみたいものです。にしても、一段落つくのっていつのことやら・・・(爆)。
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Allegresse

2019-08-02 19:49:43 | 音楽
マリア・シュナイダー「Allegresse」を聴きました。

いろいろあって、マリア・シュナイダーの音楽のおさらいをしております・・・。「Allegresse」は1曲目の“Hang gliding”がめちゃめちゃ素晴らしいのですよね・・・。4分の11拍子みたいな変則的な構成になっているのですが、それが独特の浮遊感を生み出します。本当に大空を飛翔しているみたいです。フリューゲルホーンやテナーのソロも絶妙で、曲をさらに盛り上げています。“Nocturne”はタイトルから連想されるイメージとは裏腹のメランコリックな曲。何かが壊れているかのような感じで、いったい作者に何があったのか?と思ってしまいます。“Allegresse”は光が射し、生命の兆しが動き始めるような、スリリングな曲。“Dissolution”はその名の通り、混沌とした大曲。“Journey home”もとても好きな曲。Hang glidingとイメージは似てるかな・・・。ベン・モンダ―の柔らかいギターの音に包みこまれるよう。“Sea of tranquility”は大海を大型魚がゆったり回遊しているようなイメージ。そしてバリトンがひたすらおいしい曲です。

このアルバムを制作していた頃、マリア・シュナイダーは激しいスランプに陥っていたそうです。もう自分は作曲家として終わってしまったのかもしれない、とまで思っていたのだとか。そんな時に友人に誘われたブラジル旅行で心機一転したらしいです。Hang glidingもその時の体験のようです。闇から光へと向かう、転換期の作品ともいえるのかもしれません。ある出来事がとても重要な意味を持っていたことに後から気づく、それが時を重ねることの素晴らしさとも、彼女は語っています。なにか希望を持てる言葉です・・・。
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