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アートネタなど日々のあれこれ

LISTEN リッスン

2016-06-10 20:34:34 | 映画
アップリンクで「LISTEN リッスン」を見てきました。

「聾(ろう)者の音楽」を視覚的に表現したアート・ドキュメンタリー。ある意味、今までに見た「音楽映画」の中で最も衝撃的な作品だったかもしれません。それどころか、「音楽」の概念すら覆してしまいそうな映画でした。(以下、ネタバレ気味です)

映画館では、鑑賞前に耳栓が配られました。耳が聞こえない状態でこの映画を鑑賞するという、実に斬新な趣向です。今まで見たことのないタイプの耳栓をむぎゅむぎゅと耳に押し込むと、何ともいいようのない不安を覚えました。何だか息苦しくなるような感覚です。耳の聞こえない方たちは、日々こういう不安を感じているんだろうか・・・。

「ろう者の音楽」といっても、彼らが楽器を奏でたり、歌を歌ったりするわけではありません。自身の手や指、顔の表情から、体の動き、さまざまなものを駆使して「音楽」を奏でます。一見、ダンスのようですが、何かが違います。そして、音は出ていないのにもかかわらず、不思議なくらい音を感じます。これは歌だな、これはチェロかな、はたまた、これはきっと合唱、これはバンドだろう、とか・・・。

映画では、耳の聞こえない人たちは音楽をどう感じているのか?についても触れられていました。指揮者や奏者の動きや表情から音楽を感じるという人もいました。「心のなかから溢れ出す何か」と、とらえている人もいるようです。

これまで、音楽は好きでそれなりに聴いてきたつもりでしたが、こんな「目で視る音楽」が存在する、ということを知ったのは、それはそれは衝撃でした。実際に音が出ていなくても、「音楽」。いったい音楽って何?という根本的な問いに至ります。究極のところ「あまりに人間的な」営みというしかないのかもしれませんが・・・。

私が行った日には、上映後に音楽家のササマユウコさんと監督の牧原依里さん、映画に出演されていた舞踏家、雫境(DAKEI)さんのパネルディスカッションがありました。ササマさんはもともとミュージシャンとして活動されていたのですが、5年前の震災を機に演奏活動を休止し、音楽について考えることを始められたそうです。ディスカッションでマリ・シェーファーの名をひさびさに聞きました。なつかしや。そして、ササマさんも、音楽とダンスの違い、について言及されていました。このあたりにも音楽とは何か?を考える鍵があるのかもしれませんね・・・。