シアター・イメージフォーラムで「ルードボーイ トロ―ジャン・レコーズの物語」を見てきました(上映は既に終了しています)。
レゲエの誕生に大きな影響を与えながらも数年で表舞台から消えた、伝説のレゲエ専門レーベル「トロ―ジャン・レコーズ」の軌跡を辿るドキュメンタリーです。不肖わたくし、トロ―ジャン・レコーズのことはよく知らなかったのですが、楽しめました。映像もなにげにスタイリッシュ…(以下、ネタバレ気味です)。
時は1956年に遡ります。ジャマイカの西キングストン地区の酒場、トレジャー・アイルの名物は巨大なサウンド・システム「トロ―ジャン」でした。R&Bやブギのレコードに合わせて夜な夜な踊り狂う人々…。やがて、店主のデューク・リードは地元のミュージシャンを集めて、オリジナルのレコードの制作を始めます。デリック・モーガンの“Lover Boy”が大ヒット、その後も快進撃を続け、スカ、ロックステディ、そしてレゲエが誕生します。ジャマイカ人が多く移住したイギリスでは、1967年にアジア系ジャマイカ人実業家リー・ゴブサルがレゲエレーベル「トロ―ジャン・レコーズ」が開業、レゲエはイギリスのスキンヘッズに受け入れられ、1970年のレゲエ・フェスでは1万人を超える観客を集めますが、その後、まもなく事業が傾き始め…。
音楽の熱さと儚さを両方、味わえる映画でした。音楽に熱狂する人々が抱える鬱屈…音楽は抑圧される人々にとっての救いでもありました。ソウルやモータウンを押しのけ「トロイの木馬のように」進撃したトロ―ジャンの音楽。レゲエ・フェスはそのハイライトでした。1万人を超える観客には白人と黒人が入り混じり、フェスは人種を超えた連帯の象徴ともなりました。しかし、栄光を極めたトロ―ジャン・ミュージックは転落するのも早かった…音楽を量産するようになったこと、甘さを足すために曲にストリングスを加えるようになったことが売れなくなった原因とされていますが…。あらためて音楽って水物だと思いましたよ…。それでも、彼らの蒔いた種は世界中で生き続けているのです…。