シネマカリテで「プリンス ビューティフル・ストレンジ」を見てきました(この映画館での上映は既に終了しています)。
とは言っても、見に行ってからだいぶ日が経ってしまいましたが…こちらも公開を知った時から楽しみにしていた映画です。私にとってプリンスは長らく謎の人、神秘の人でした。いったいどんなドキュメンタリーになるのだろう…と。しかも、なんとスガシカオさん×吉岡正晴さんのトークショーも開催されるということで、頑張ってチケットをゲットして行ってまいりました。
会場では拍手につつまれながら、スガさん&吉岡さんが登場…不肖わたくし、スガさんのファン歴四半世紀になりますが、こんなに近い距離でスガさんを拝んだのは初めてです。すごい、石投げれば届きそうな所にスガさんがいる…!(投げないけど)。やはり、オーラが出ていてかっこよかったですね。このトークで映画に関する衝撃の事実が明らかにされます。映画を撮るにあたり、監督はプリンス財団から、映画の冒頭にこの映画は財団とは一切関係がないというクレジットを入れること、プリンスの楽曲は一切使わないこと、という2つの条件を提示されたそうです。この状況でどうやって撮れっちゅうねん…というか、これはほぼほぼ撮ってくれるな、ということなのか?とすら思えてしまいます。スガさんは俺のドキュメンタリーが作られることになったら、絶対に監修する!と発言して会場の皆さんを笑わせていました。スガさん曰く、プリンスはアウトプットしていないと生きていけない人、とのこと。また、トークではこの映画にレニー・クラヴィッツが出ていない理由なども語られていましたね…。
映画が始まると早速例のクレジットが…(以下、ネタバレ気味です)。映画では主にプリンスの原点に焦点が当てられ、プリンスがいかにしてプリンスになっていったか、の過程を丹念に追っていきます。プリンスの少年時代のミネアポリスの状況も明らかにされていました。当時のミネアポリスは90%以上が白人で、深刻な人種差別問題がありました。ミネアポリスの黒人抗議運動の活動家であるスパイク・モスが設立したコミュニティ・センターが「ザ・ウェイ」で、ここでは音楽などのレクリエーションが無料で提供されました。プリンスは12歳の時からザ・ウェイに通い始め、さまざまな楽器の演奏を学んだことが、後にマルチ・ミュージシャンとなる礎となりました。少年の頃から練習の鬼だったプリンスですが、バンド時代は朝の10時から夜の10時までリハーサル、しかも帰宅後も練習、という証言もありました。あんな天才でもそんなに練習するのか…。そして、天才を花開かせる土壌の重要さにも気づかされます。
映画にはプリンスを慕うミュージシャン達も登場します。とりわけチャカ・カーンとの絆が深かったようです。プリンスがスライになりすましてチャカ・カーンを呼び出したという初対面エピソードはほんまかいっ、と思わず心の中で突っ込んでしまいましたが。それにしても、チャカ・カーンの姐さまぶりが本当に素敵…。彼女とプリンスの絆は深かったようですが、やはり越えられない壁があったようです。彼は私たちに愛させてくれなかった、という言葉が哀しく響きます。圧倒的な才能と壮絶な孤独…それが後の悲劇へとつながっていったのでしょうか。
映画を見終わっても結局、プリンスは謎の人のままでした…が、突然変異的な種子を育てた土があったこと、孤独ではあっても孤立はしていなかったことを知ることができたのはよかったのかもしれません。それでもやはり謎は深まるばかり…美しき謎です…。