aquamarine lab

アートネタなど日々のあれこれ

秋の上野めぐり

2018-10-26 14:46:27 | 
上野で展覧会のはしごをしてきました。

さて、例によって、鑑賞前に腹ごしらえ、ということで、さくらテラスの中にある「オイスターテーブル」に行ってきました。パスタもおいしかったけど、セットのかきスープが絶妙・・・。

最初に行ったのが、西洋美術館の「ルーベンス展」。やっぱり高カロリーな展覧会は体力あるうちに見ておかないとね・・・。予想通り、いや、それ以上のがっつり系の展覧会でした。こんな展覧会がよく日本で実現したなぁ、と感心してしまいます。まずは、「クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像」に眼を惹かれます。5歳の女の子、本当に賢げで可愛い。しかし、この子は12歳で亡くなってしまったとか・・・。「セネカの死」も印象深い。死を目前にして哲学者は何を思うのか。「聖アンドレの殉教」は、ルーベンスのドヤ顔が見えてきそうな作品。「パエトンの墜落」も、ザ・バロックな作品です。怖かったのは、「法悦のマグダラのマリア」。「死相」をこれほどまでに表現した絵画はほかにないかも。どの作品もいろんな意味でとにかく肉厚・・・力押しの展覧会のようでありながらも、一方で、ルーベンスとイタリアのかかわりを検証する、という筋を通すところが、さすが、国立西洋美術館さんです・・・。

その後に向かったのが、上野の森美術館の「フェルメール展」です。こちらも開催を知った時から楽しみにしていた展覧会です。フェルメールの全作品のうち4分の1が日本に集結!なんて凄いことですよね。日時指定&入場料2,500円という、なかなかに強気な設定ですが、行列に並ぶ時間やら芋の子洗い状態の会場のストレスやらを考えれば、プラス1,000円というのは充分ありだと思いました。おまけに無料の音声ガイドやら解説の小冊子もついてきます。時間枠の終了ギリギリに入場したら、けっこう快適に見られました。フェルメールの作品は再見の作品も多かったのですが、前回の来日時に見逃してしまった「牛乳を注ぐ女」を見ることができたのが最大の収穫でした。そして、実物は画像で見るよりもさらに素晴らしかった。この作品を見ると“完璧”という言葉が頭に浮かんでしまいます。一瞬のなかの永遠・・・。日本初来日の「ワイングラス」も精緻なのに、妖しげ。「赤い帽子の娘」もサスペンスドラマの一場面のようです。フェルメールの作品以外も粒揃いで、さながら17世紀オランダ絵画精選の趣です。ピーテル・デ・ホーホの「人の居る裏庭」もいつまでも見ていたくなるような作品。ハブリエル・メツ―の「手紙を読む女」も柔らかな光が印象的・・・。

ルーベンスとフェルメール、動と静、この二人の展覧会でも既におなかいっぱいですが、さらに向かった先は、東京国立博物館。ここで、小腹を満たすととともに頭を切り替えるために、まずは、鶴屋吉信へ(そっちかい)。抹茶オレと「本蕨 栗」をいただきました。本蕨はつるんとしたのど越しで美味しい。

頭の中も洋から和へと切り替わったところで、「快慶・定慶のみほとけ」展へ。快慶の「十大弟子像」と定慶の「六観音菩薩像」が揃い踏み!ご本尊の行快作「釈迦如来坐像」までお出ましになっていて、これでは大報恩寺本体の方は、相当、寂しいことになっているだろうな~、と思わず心配になってしまいます。とりわけ「十大弟子像」がみごとでした。圧倒的なリアリティ。露出展示なのでけっこう近くに寄って見ることもできるのですが、眼の表現とかも凄いです。「釈迦如来坐像」も、とってもイケメン。光背も実に華やか。この展覧会は会場の空間設計も素晴らしく、ライティングもかっこいい。展示のありがたみも増すというものです・・・。

そんなわけで、とても充実した展覧会めぐりでした。これで今年のメインイベントも半ば終わりと思うと、一抹の寂しさも。でも、今度はムンク展も見に行かないと・・・いつにしようかなあ・・・。
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真言密教の宇宙

2018-10-23 00:23:57 | 美術
サントリー美術館で「京都・醍醐寺 真言密教の宇宙」を見てきました。

こちらも開催を知った時から楽しみにしていた展覧会です。醍醐寺にはむかしむかし訪れており、霊宝館にも行ったはずなのですが、何を見たのか、もう、すっかり記憶が・・・(爆)。桜の季節に醍醐の花見としゃれ込んだつもりが、意外にきつい山道で、ぜはぜは登った記憶だけが残っており・・・。

この展覧会は会期もそこそこあるし、その内、行けばいいかな・・・と油断していたら、五大尊像の展示が前期で終わり、ということを知って、あわてて行ってまいりました。会場に入ってすぐのところに、「如意輪観音坐像」が。本当に綺麗な仏様。リラックスしてくつろぐ様子が印象的です。たしかに鼻歌とか聴こえてきそう。何となくですが、広隆寺の弥勒菩薩を思い出しました。「両界曼荼羅図」も精緻。そして「五大尊像」。揃い踏みすると壮観です。うわ、怒ってるよ、怒ってるよ~、な憤怒の形相。背後の燃え盛る焔からも、めらめらという音が聴こえてきそうです。彫刻の「五大明王像」も揃い踏み。こちらはポージングが華麗。

3階の展示室に降りると、「薬師如来坐像および両脇侍像」が。ご本尊までお出ましいただけるとは、ありがたい限りです。そして、思いのほか、でかい。ありがたく拝まさせていただきました。ご本尊だけでなく、障壁画まで展示されています。「柳草花図」は風にたたびく柳の描写が涼し気。俵屋宗達の「扇面散図屏風」もみごとです。かと思うと、秀吉が座主の義演に贈ったという金ぴかの茶碗も。秀吉、どんだけ金ぴか、好きやねん・・・。

そんなわけで、密教美術を堪能してまいりました。それにしても、なにげに国宝&重文ぞろぞろな展覧会でしたね。時の権力者の庇護を得た当時の威容をしのばされます。いつかまた、醍醐寺にも行ってみたいのですが、この次はいったい、いつの日になることやら・・・。

さて、例によって、鑑賞後は甘いもの・・・ということで、ミッドタウンの中にある「パティスリー・サダハル・アオキ」で、期間限定の「グラス・キャラメル・マロン・ラム」をいただいてきました。栗の入ったキャラメル味のアイスクリーム。けっこう濃厚です。お店の人にも警告された通り、お酒もけっこう利いていて、ほろ酔い加減に。大人味のアイスクリームで、美味しゅうございました。
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HYPER LANDSCAPE

2018-10-22 00:07:46 | 美術
ワタリウム美術館で「HYPER LANDSCAPE 超えてゆく風景展」を見てきました。

梅沢和木×TAKU OBATAの二人展です。お二人とも80年代のお生まれ。梅沢氏の作品は、インターネット上の画像をコラージュして印刷し、上からアクリル絵の具で加筆したという「絵画」です。美術館の壁一面を覆いつくす勢いの作品は、圧倒的な情報量から生まれたパワフルなカオス。3階にポツネンと置かれたパソコン型の立体作品も面白くて、思わず中を覗き込んでしまいました。TAKU OBATA氏の作品は、デフォルメされた衣服を着た巨大木彫です。「人のようでいて、人ではない」。モビールスーツを思い出してしまいました。映像作品もありましたね。四角い物体が浮遊するシンプルな作品なのですが、ついつい見入ってしまいました。この展示は、会期を追って姿を変えていくらしいです。まさに、「超えてゆく風景」ですね・・・。

ところで、私が伺った日には、某著名批評家の方がいらしてました。昔、氏の著作は読んでいましたが、こんなに近くでお姿を拝見するのは初めてで、思わず、横目でガン見してしまいました。4階では、フロアに他のお客さんもいなかったので、二人で映像作品を眺めるという妙な事態に。もう、それなりのお年のはずですが、ずいぶん、お若く見えましたね。館の方とは「顔たち、ところどころ」のお話をされてました・・・。
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黙ってピアノを弾いてくれ

2018-10-21 13:29:04 | 映画
シネクイントで「黙ってピアノを弾いてくれ」を見てきました。

ビョークやダフト・パンクが心酔するというミュージシャン、チリ―・ゴンザレス。名前には聞き覚えがあるものの、音楽は聴いたことなかったのですが、ビョークの名につられて行ってまいりました。この主人公にふさわしく、ドキュメンタリー映画としては、なかなかにユニークな作品になっています。

さて、この映画の感想はいうと・・・一言で言って、このタイトルに尽きます(笑)。ちなみに原題は“Shut up and play the piano”。近年、稀に見る秀逸なタイトルじゃないかと思いますよ、まったく。アグレッシブなラッパーであり、かつ、繊細なピアニストでもあるチリ―・ゴンザレス。エキセントリック、破天荒という言葉がこれほど似つかわしいミュージシャンも他にいないという感じですが、一方で、自分の二面性をどこか俯瞰しているような佇まい。なぜか、同じカナダ出身の偉大なピアニスト、グレン・グールドのことを思い出してしまいました(以下、ネタバレ気味です)。

映画はチリ―・ゴンザレスの生い立ちにさかのぼります。お兄さんもミュージシャンだったんですね。この兄がチリ―のミュージシャンとしてのあり方にも影響を与えているようです。商業的にも成功を収める兄に対して、自分は音楽を深掘りする方向に進んだのだとか。いや、深掘りしすぎてあらぬ方向に行っている気もしないではないですが(笑)。エンタテイナーを自認し、アーティストをdisるところも面白い。映画には、盟友であるピーチズやジャービス・コッカ―なども登場します。ダフト・パンクも覆面で出演。覆面でもなんだかかっこいい。チリ―と共演するシーンもあるのですが、キックの四つ打ちしてるだけでかっこいい(笑)。そして、何といっても、ラストのウィーン放送交響楽団との共演シーンが圧巻でした。壮大な音楽を奏でるオケをバックにラップをかまし、果てはピアノに寝そべるチリ―。ジョン・ケージもこんなん見たら頭抱えるんではないか・・・。

ラッパーとしてはうるさいことこのうえないチリ―ですが、ピアニストとしての彼が原点回帰してつくったという「solo piano」は静謐な美しさ。この二つの回路がどこでどうつながるのか、かなり不可思議なのですが、彼にとっては自分らしさを追求した結果なのでしょう。でも、やっぱり、こんな人が近くにいたら、普通の感覚の持ち主はこう言わざるをえない・・・“Shut up and play the piano!”
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