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オルガ・ノイヴィルト

2023-10-09 01:26:03 | 音楽
オルガ・ノイヴィルト オーケストラ・ポートレイト@サントリーホールに行ってきました。

こちらもサントリーホールサマーフェスティバル2023のプログラムの一つです。今年のテーマ作曲家はオルガ・ノイヴィルト。1968年生まれ、ウィーン国立歌劇場150年の歴史上、初めて新作を委嘱された女性作曲家。その「オルランド」を再構成した「オルランド・ワールド」が世界初演されるということで、行ってきました。

コンサートの1曲目はヤコブ・ミュールラッド「REMS(短縮版)」。ノイヴィルトが選んだ作曲家ですが、合唱音楽で頭角を現し、ジャンル横断的な活動も行っています。タイトルのREMSとはレム睡眠を意味しており、夢と睡眠のもつ「謎めいた、心震わせるような側面」を探求したそうですが、まさに夢幻的な響き…そして、東洋的な幽玄も感じる曲です。今回は短縮版でしたが、いつかフルバージョンを聴いてみたい、魅力的な曲でした。2曲目はオルガ・ノイヴィルト「オルランド・ワールド」。「オルランド」はヴァージニア・ウルフの小説を原作とするオペラですが、原作よりジェンダー解放的な意味合いが濃くなっています。「オルランド・ワールド」はオペラの前半部分を中心に再構成し、声とオーケストラの作品に改作しています。メゾ・ソプラノが男性と女性を演じ、ドラムやエレキギター、プリペアドピアノなども加わる異色の構成、クイーンやレディ・ガガの引用も加わるという、いろいろな意味で尖った作品。この曲もいつかオペラ版を生で聴いてみたい…。3曲目はオルガ・ノイヴィルト「旅/針のない時計」。マーラー生誕百年記念のための曲ですが、ある日、夢のなかに祖父が現れたことを創作を通じて焼き付けておこうとしたのだそうです。東欧的な響きも感じるいくつもの旋律があらわれては消え、あらわれては消え…時間そのものが溶解する…針のない時計となるのです。最後はスクリャービンの「法悦の詩」。なぜにここでこの曲?という疑問も湧きますが…ノイヴィルトは元々、ジャズ・トランペッターを目指していたそうなので、もしかしたらラッパつながりということかもしれません。この曲でもマティアス・ピンチャーの指揮がみごとでした。自身が作曲家なだけあって、作曲者の意図が実に明晰に提示されるという感じです。高解像度の音楽…。

プログラムには彼女のインタビューも掲載されていましたが、こちらも興味深いものでした。実は日本での滞在歴があり、黒澤明のファンだったのだとか。また、クラッシック界における女性作曲家の扱い、ノーベル賞作家のイェリネクとの共闘、12年にわたって心血そそいだオペラがキャンセルになった辛い経験についても語っていました。「何の賭けにも出ず、みずからを超える一線を踏み出さないならば、退化してしまう」…その果敢な精神からあのアグレッシブな音楽が生まれてくるのでしょう…。
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