aquamarine lab

アートネタなど日々のあれこれ

Mirage Future

2023-09-30 23:45:21 | 音楽
「NEO SYMPHONIC JAZZ at 芸劇-Mirage Future-」に行ってきました。

実際に聴きに行ってからだいぶ日が経ってしまったのですが、素敵なコンサートだったので、自分の心覚えのために…。このコンサートはジャズ作曲家・指揮者の挾間美帆さんが、ジャンルを超え、現代の音楽を牽引するアーティストたちと“ 幻想未来”を描くというもの。ライヒ、教授、メセニー…と選曲がツボすぎて、いそいそと行ってまいりました。BIGYUKIさんも生で聴いてみたかったし…。

コンサートはライヒの“Eight Lines”から始まりました。ライヒの曲っていつ聴いても不思議な近未来感がありますよね。ジャズのコンサートとしては意外な始まり方のようですが、ライヒは実はジャズとも浅からぬ縁があるのです。次は教授の“0322_C#_minor”。教授がクリスチャン・フェネスと共作したアルバムに収録されている曲で、京都での即興演奏が元になっています。挾間さんによるアレンジですが、教授のような響きに感無量…。カマシ・ワシントンの“The Space Travelers Lullaby”は、パトリック・バートリーのサックスをヒューチャーしていましたが、みごとなソロを聴かせてくれました。そして、パット・メセニーの“Minuano”。この曲、大大大好きなんですよね…これまでいったい何度聴いたことか。オケバージョンを聴くのは初めてでしたが、やはり感無量…本当に時代を超える名曲です。

後半はBIGYUKIさんが登場。彼のオリジナル3曲を演奏していました。ユニークな曲が挾間さんのアレンジでさらにカラフルに。BIGYUKIさんは繊細なピアノ演奏と奔放なキーボードプレイ、鍵盤奏者としても魅力的な方ですよね。続いてロバート・グラスパーの“Let It RIde”。この曲もソリストのお二人が素晴らしかった。そして、最後にAwichさんが登場。表現したいものがあふれてくるような、独特の声と存在感。彼女の故郷、沖縄を歌った曲を聴いて、もはや感無量…。

ジャズ、現代音楽、ヒップホップ…自在にジャンルを越境しながら描く“Mirage Future”。壮大なテーマをみごとにまとめ上げた挾間さんの手腕にほれぼれしてしまいます。彼女が率いるm_unitの公演も楽しみ…。
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ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン

2023-09-25 22:25:33 | 美術
アーティゾン美術館「山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン」を見てきました。

こちらも開催を知った時から楽しみにしていた展覧会です。画伯がジャム・セッション・シリーズでいったい何をするのか…と、否が応でも期待が高まります。そして、期待に違わず、いろんな意味でこれまで見たことない感じの展覧会でした。ネタバレにならないよう詳しいことは書きませんが、のっけから思いっきり感覚を揺さぶられます!また、これほど文字情報が多い展覧会は見た記憶がなく、画伯の文才の方も堪能できます。

画伯がジャム・セッションの相手として選んだのは主に雪舟とセザンヌです。巨匠中の巨匠といえる二人とどうセッションするのか…。今回、画伯の解説で雪舟の凄さをあらためて認識…見る者の脳だか心だかに、がっと入り込んでくる絵。また、セザンヌの絵は「見える」ということ自体を凄まじく実感させられる絵、と。描くべきなのは「見ている対象」なのか、「見ている感覚(サンサシオン)」なのか。そもそも、見るとは、描くとはどういうことなのか。現象の再現にとらわれず、絵に永続的な時間を流すこと…。近代絵画に連なる伝統を持たない国では「サンサシオンを内発し、愚直に続けること」が唯一無二の戦法かもしれず…「ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン」なのかもしれません…。

この日は以前から気になっていたカフェにも寄っていきました。白桃ジャスミンティーを頼みましたが、甘味と酸味のバランスが絶妙で、美味しゅうございました。飾りつけも綺麗だったなぁ…。

また、同じ日に日本橋三越で開催されていた「第70回伝統工芸展」の方にも行ってきました(展示は既に終了しています)。テレビの「日曜美術館」で見た、ある作品をどうしても生で見たくなり…日本工芸会総裁賞を受賞した「彫漆箱『遥かに』」です。夜の海の煌きのような不思議な色合い。見ていると暗い海を漂っているような心地に…。染織の受賞作「波に魚」「みなも」「蒼晶」はいずれも海や水を思わせる作品。さらさらと涼しげな青色を見ていると、今年の夏の過酷な暑さを忘れるようでした…。
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Continuum 想像の語彙

2023-09-24 14:39:29 | 美術
東京オペラシティアートギャラリーで「野又穫 Continuum 想像の語彙」を見てきました。

こちらも開催を知った時から楽しみにしていた展覧会です。2004年にオペラシティアートギャラリーでの展覧会を見た時からずっと気になる作家さんでした。あの世界の果てを見たような独特の世界観…あれから20年近く経つのですね。今回は個展ですが、展示方法も独特な感じでした。章構成にもなっておらず、時系列も入り乱れ、解説のキャプションもなく…自由にイマジネーションを遊ばせて、ということなのかもしれませんが、作品の世界観そのままに、迷宮のなかをさまようような心地で鑑賞しました。船、風車、気球、そして不思議な建造物の数々。実在するようなしないような光景を描いた作品の数々を見ていると、何とも言いようのない感情が湧き上がってきます…。ユートピアのようなディストピアのような世界は唯一無二。この世のものとは思えないような美しい空に向かって、ノスタルジーとファンタジーが同時に解き放たれていくのです…。

この日は同時開催の「寺田コレクション ハイライト(後期)」も見てきました。東京オペラシティビルの共同事業者でもあった寺田小太郎氏のコレクションです。寺田氏の収集活動は難波田龍起氏との出会いをきっかけに、「東洋的抽象」「ブラック&ホワイト」「幻想絵画」など、独自のテーマによって進められました。展示は難波田父子をメインに、日本の近現代作家の作品ですが、コレクターの独特の世界観がひしひしと伝わってくるような展示でした。静謐、幻想、異界…。寺田氏は野又作品のコレクターでもあり、1980年代から毎年、収集を続けていたそうです。やはり通じるものがあったのでしょうね…。

そして、「projectN 小林紗織」も見てきました。渋谷公園通りギャラリーで開催された「語りの複数性」で作品を見て以来、気になっていた作家さんです。彼女は音楽を聴いたときに浮かぶ色彩や形、情景を五線譜の上に描く「スコア・ドローイング」の作品を制作しています。五線譜の上に楽しげに踊るカラフルなモチーフの数々。見ているだけで心楽しくなってくるような作品は絵楽譜のようでもありますが、小林さんにとっては「ただの音の視覚化ではなく、自分の内側の世界の記録」なのだそうです。自分のなかにある美しい世界が、誰にも知られないまま失われていくことを惜しむ気持ち…絵画も音楽も、あらゆるアートはそうして生まれてきたのかもしれませんね…。


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あの世の探検

2023-09-23 22:51:05 | 美術
静嘉堂@丸ノ内で「あの世の探検-地獄の十王勢ぞろい-」を見てきました。

あの世の探検…タイトルからして心惹かれますよね…珍しくも地獄の十王が勢ぞろいするとあって、「鬼灯の冷徹」のファンとしてはいそいそと行ってまいりました。第一章は「極楽浄土への招待」。中国・朝鮮、そして日本の仏画が並びます。さすがの優品揃い。久隅守景筆の「釈迦十六善神図」も。ゆるふわ(?)な「納涼図屛風」のイメージが強いですが、こちらは打って変わって緻密で端正な作品。「千手観音二十八部衆像」 も神秘的…。「如意輪観音像」は月に浮かぶような観音様が美しい。「当麻曼荼羅」は修理後の初公開だそうですが、金色も鮮やかに…。かと思えば、河鍋暁斎「地獄極楽絵図」も。そういえばこの作品のレプリカが販売されていましたね。第二章は「あの世の探検-十王図の世界-」。地獄の十王勢揃い…人は死ぬと地獄の十王に順番に裁きを受けるのです。極彩色の地獄絵図。地獄の責苦には残酷な場面もあるのにどこかユーモラスな趣が。十王のなかでもやはり閻羅王(閻魔大王)がさすがの貫禄でした。足元には浄玻璃の鏡がありますが、人の生前の行いがこの鏡に映し出されるのだそうです…なんかいろいろ気をつけよう…。十王図の中央には「地獄菩薩図」が。地獄に仏とはこのことです。「十二霊獣図巻」は魔除けとして子供の部屋に飾られたものだそうですが、「呪術廻戦」を思い出します。第三章は「昇天した遊女」。「普賢菩薩図」が雅やか。お隣には円山応挙の「江口君図」が。遊女の江口君の幽霊を普賢菩薩に見立てたのだそうですが、透けるような美しさ。そして、最後には「曜変天目茶碗」がひっそりと、変わらぬ輝きを放っていました…。そんなわけで、地獄と極楽を行ったり来たりするような展覧会でしたが、チラシの言葉が今さらながら身にしみます…「誰でもいつか、あの世に行きます」

さて、アートといえば美味しいもの…ということで、この日は美術館の近くにある「ローズベーカリー」でランチにしました。マッシュルームのオープンサンドをオーダーしましたが、ローストしたマッシュルームがてんこ盛りで、卵をのせて食べたら、さらに美味しゅうございました…。


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