aquamarine lab

アートネタなど日々のあれこれ

DONT LOOK BACK

2017-06-28 23:34:42 | 映画
K’s cinemaで「Dont look back」を見てきました。(この映画館での上映は終了しています。)

音楽ドキュメンタリーの金字塔、というキャッチフレーズのこの映画、1965年、英国ツアー中のボブ・ディラン(当時24歳!)を追ったドキュメンタリーです。(以下、ネタバレ気味です。)

若くて才能あるってこういうことなのね・・・と、溜め息をつくしかない、という感じの映画でした。おまけにけっこうイケメンだし。冒頭のシーンからしてかっちょよかったです。ディランが歌詞の書かれたカードを放り捨てながら歌うシーンは世界初のPVとも言われるらしく・・・このシーンを見ながら頭にぼんやり浮かんだことといえば、やっぱり言葉の天才っているんだなぁ、と。そりゃ、ノーベル文学賞ですもんね・・・。

コンサート、インタビュー、プライベートなどなど、見どころもたくさん。特に、インタビューのシーンは見ている方がどきどきしてしまいました。舌鋒鋭く突っ込みを入れるディランに、顔面蒼白になるインタビュアー達。人によっては傲慢と見る向きもあるかもしれませんが、私はそこまでの不快感は覚えませんでした。この人は頭よすぎて正直すぎるんだろうなあ、と。だから相手の痛い所を突いてしまうし、ほどほどのところで矛を収めることもできない。なかでもタイム誌の記者とのやりとりが凄まじかった。世界のタイムに向かって「活字の中に真実なんてない」「タイムにはアイデアがない」なんて、いやはやもう・・・。

かと言って、お高くとまったミュージシャンだったかというとそれは違う、自分のファン達は楽しみに来ている、ということをよく知っています。そして、彼らはタイムなんて読まないだろうということも。でも、インタビュアー達が難解だという歌詞を、ファン達は理解しているだろうとも思っている。それにしても、この頃のディランって凄い人気だったんですね。しかし、大観衆の待つステージ向かうディランの後ろ姿は、何だか孤独なサムライのようにも見えてしまいます・・・。

この映画で個人的にツボだったのがドノヴァンとの交流のシーンです。当時、イギリスで人気だったドノヴァン。ホテルの一室みたいなところで、ディランに自分の歌を聴かせます。いい歌、いい声、そしてこの人きっといい人なんだろう、と思わせる歌。そして、歌い終わるとディランにも一曲歌ってよ、と頼むドノヴァン。おもむろにディランが歌いだすと、笑みを浮かべつつも不安げな表情を隠せません。本当にこういう時、音楽って残酷ですよね・・・。

そんなわけで、持てる人の持てるぶりをたっぷりと堪能させられた映画でした。あまりにもそのまんまな感想ですが。やっぱり、若くて才能あるってこういうことなのね・・・(爆)。
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約束の地、メンフィス

2017-06-18 23:37:30 | 映画
K's cinemaで「約束の地、メンフィス」を見てきました。

アメリカのテネシー州、メンフィス。この地は、生ける伝説と呼ばれる世界的ミュージシャンを輩出してきました。この映画は、彼らを今一度この地に呼び戻し、世代を超えた新たなレコーディングを行い、メンフィスとの音楽と精神を現代に再び送り出すというプロジェクトを追ったドキュメンタリーです。(以下、ネタバレ気味です。)

ブッカー・Tとか、オーティス・クレイとかの大御所に加え、スヌープ・ドッグみたいな今どきの売れっ子、さらには孫世代にあたるような若手がセッションを繰り広げます。オーティス・クレイとまだ子どものピーナツ君との掛け合いとか、見どころもたくさん。“Hold on”が生まれたきっかけ、とか小ネタもいろいろ。この地から生まれた音楽の素晴しさをあらためて思い知らされました。エネルギッシュでソウルフル、そして暖かい・・・。

音楽家たちのサンクチュアリのようなメンフィスでしたが、この地で起こったキング牧師の暗殺をきっかけに、歴史は暗転します。アイザック・へイズは白人メンバーをかばいながら、スタジオ入りしていたとか。その後、スタックス・レコードも倒産・・・。

それでもやはり、素晴しい音楽は生き続けるのですね。ヒップホップのルーツにはソウルやR&Bがあるわけだし。スヌープ・ドッグもそんなこと言ってましたね。映画の後半では、レジェンドたちが、若手に音楽の秘訣を伝授するシーンがあるのですが、これが感動的でした。こうして音楽は継承されるのだなぁと。ピーナツ君に声の使い分け方を教えるオーティス・クレイ。大御所が某ラッパーにPC経由の音源ばかり使っているとネタが尽きると苦言を呈する場面も。あと、印象深かったのが、若手に60年代以前の音楽も学ばせろ、という言葉。基礎があれば時代が変わっても通用するからと。思わずうむむと唸ってしまいました・・・。

この映画では元気な姿を見せていたレジェンド達ですが、その後、亡くなってしまった方も何人かいました。中にはこのレコーディングが最後のレコーディングになってしまった者も。彼らの肉体はなくなってしまっても、そのソウルが若手に伝わって、また新たな音楽を生み出してくれるのでしょう・・・音楽の伝統ってそういうものなのかもしれませんね・・・。
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神の値段

2017-06-17 11:22:53 | 
一色さゆり「神の値段」を読みました。

第14回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作です。一色さんのことは何も知らなかったのですが、実家のミステリー好きの母にお薦めされ、読んでみました。現代アートとギャラリーが絡むミステリーということで、アート好きにも楽しめる作品でした。

主人公は、現代アートのギャラリーでアシスタントを務める田中佐和子。このギャラリーで扱っているのが、墨を使ったインクアートで世界に知られる現代芸術家、川田無名の作品です。彼はマスコミはもちろん、関係者にも姿をあらわさず、生死すらおぼつかない状況なのですが、その作品には高値がついています。そして彼と長年、二人三脚で仕事をしてきて、その正体を知る唯一の人物だったのが、ギャラリーのオーナーで、佐和子の上司である永井唯子。彼女がある日、作品を収めている倉庫で何者かに殺されてしまいます。

現代アートがネタになっているという珍しさに加え、ギャラリーの仕事の裏側も描かれていることもあって、とても興味深く読みました。美術ミステリーで現代アート&ギャラリーの組み合わせってなかなかないですよね・・・少なくとも個人的には初めて。文体も読みやすくて、さくさく読めました。謎解きそのものはわりとあっさりしていましたが、作品の梱包の結び目が事件解決のヒントになるなんていかにもではないですか・・・。

ところで、姿を現さない川田無名がどうやって作品を制作しているのか。月に一度、パソコンのメールで彼からの指示書(数字の羅列!)が送られてきて、それをもとに工房のスタッフが作品をつくりあげるというシステムになっています。彼にはモデルと思わしきアーティストが。その名は河原温。また、この作品はアートとビジネス、アートのお値段という領域にも踏み込んでいます。アートとビジネスのスタンスという点でも川田無名のモデルと思わしき人物が・・・その名は、村上隆・・・。

そんなわけで、このミステリーにはプライマリー・ギャラリーの仕事とか、アートビジネスの実態とか、一般人にはなかなか窺いしれないネタがたくさんでした。で、作者の一色さゆりさんってどんな方なんだろうと調べてみたら・・・東京芸大を出て、香港中文大学の美術研究科を修了、東京のギャラリーに3年ほど勤務されていたそうです。写真で見てもなかなかの美人さん♪現在は東京の美術館に勤務しつつ、京都の陶芸をテーマにした第二作を執筆中とか。こちらも楽しみですね・・・。



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マリア・シュナイダー

2017-06-14 00:20:29 | 音楽
そんなわけで、マリア・シュナイダー・オーケストラ@Blue Note Tokyoに行ってきました。

だいぶ前から興味を持っていた方なのですが、やっと生で聴くことができました。マジカル&スリリング&エモーショナルな音世界を堪能。世の中にはこんな美しい音楽があったんですね。サンクチュアリが見えてきそうな音楽です。そして、そのスケールの大きさは、ジャコパスビッグバンドを彷彿とさせます。プレイヤーさん達も素晴らしかったし。何より、背筋を伸ばして指揮するマリア御大が、本当にかっこよかったです。めっちゃ憧れます・・・。

ところで、ブルーノートの広報誌にマリア・シュナイダーのインタビュー記事が載っていたのですが、そこに面白いことが書いてありました。彼女はデヴィッド・ボウイが亡くなる1年前に発表したシングル、“Sue”でボウイと作編曲をともにしたのですが、その後、自分のアルバムがとてものどかに聴こえてしまったらしく、焦ってボウイにそう言ったら、「ということは、僕との経験が君を真っ逆さまの新しいどこかへ誘ったんだね。それなら僕の仕事は大成功、完了だ」と返信があったのだそうです。とてつもなく羨ましい話です・・・新曲は、この経験が反映されていたのかな・・・。
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設置音楽展

2017-06-06 00:39:52 | 美術
ワタリウム美術館で「坂本龍一|設置音楽展」を見てきました。(この展覧会は既に終了しています。)

長年の教授ファン&ワタリウムファンにとっては、夢みたいな企画です。というわけで、開催を知った時から楽しみにしていました。ところでこの展覧会、教授のニューアルバム“async”を聴いてから見るか、見てから聴くかという問題があり・・・私としては聴いてから見るつもりだったのですが、アマゾンで頼んだ輸入版が待てど暮らせど届かない・・・そうこうしている間に会期末が近づいてきて、結局、見てから聴くことに・・・。

が、これが結果的には正解だったように思います。初聴がワタリウムのこの空間、5.1chサラウンドというのは圧倒的な体験でした。私が行った時にはオルガンの曲がかかっていましたが、カテドラルにいるような荘厳な空間。高谷史郎氏の映像もクールかつスタイリッシュでした。音の海に身を浸しながら、何ともいえない感情が流れて行くのを感じておりました。

2階には他に、制作過程にインスピレーションを与えたという書籍などが展示されていました。その中にタルコフスキーの「映像のポエジア」を発見して、何だか無性に嬉しくなりました。私もこの本、高校生の時からずっと大事にとってあります・・・。

3階は、Zakkubalanとのコラボレーション。映像と環境音、アルバムの音素材で構成されたインスタレーション。私が行った時は、ハンマーのような金属音がずっと流れていました。映像はナチュラルで綺麗。4階は、アビチャッポン・ウィーラセタクンとのコラボレーション。夢の中のような映像・・・そして、この方の映画はいつか見てみようと思いました。ずっと気になっていたのですが、まだ見たことなかったので。

地下にはアナログ盤の視聴コーナーもありました。レコードプレーヤーで音楽聴くのなんて、何年ぶりだろうか・・・やはり響きが柔らかい。

1階には、教授へのメッセージを貼っておくことのできるコーナーがありました。一瞬、おやっと思いましたが・・・あんまりファンの言うことを聞くようなタイプの方ではなかったような気が(笑)。でも、せっかくなので、お手紙を書いて貼ってきました。

そんなわけで、いろんな意味で感無量な展覧会でした。ワタリウムさん、ありがとう・・・。この展覧会を見て、ずっと教授のファンをやってきてよかったな、とあらためて思いましたよ。やっていることはいろいろ変われども、coolなのにemotionalな教授は、たぶん変わっていない・・・。

ところで、今日になっても、アマゾンに頼んだasyncが届かない・・・今頃、どこでどうしているのだろう・・・。
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