すみだ北斎美術館で「筆魂-線の引力・色の魔力-」を見てきました(この展覧会は既に終了しています)。
すみだ北斎美術館にはこれまでなかなか訪れる機会がなく、今回が初めての訪問です。この展覧会のことも当初ノーマークだったのですが、ネットでけっこう話題になっていたので行ってみることにしました。オール肉筆画の浮世絵展もわりと珍しいですしね。にしても、筆魂、って攻めてる感のあるタイトルですよね…何となく「ひっこん」と読んでいたのですが、「ふでだましい」でした…。ちなみに私が伺ったのは会期の後期です。
この展覧会は浮世絵300年にわたる浮世絵の歴史を、浮世絵の源流である肉筆画によってたどるというものです。解説なども丁寧で、浮世絵の歴史を系統的に追うことができるようになっていました。展覧会は3章で構成されていました。1章は浮世絵の黎明から18世紀の前期まで。浮世絵の先駆、岩瀬又兵衛の作品から始まります。菱川師宣の前に岩瀬又兵衛がいたという位置づけなのですね…。もちろん、浮世絵の始祖、菱川師宣の作品も出ていました。作者不詳の寛文美人図にも眼を惹かれるものがありましたね…。宮川長春の流麗な作品も。2章は浮世絵の繁栄。鳥居派、勝川派、そして歌麿に写楽。やはり歌麿は圧倒的に線が美しいです。最後の3章は幕末を彩る領袖 葛飾派と歌川派です。歌川派の作品はいかにも浮世絵らしい華やかさですが、やはり最後は北斎にもっていかれますね。毒の強さが違うというか…。メインビジュアルにもなっている「立美人図」の渋みのある艶やかさ。「生首の図」と最晩年の「雲龍図」の並びには言葉を失いました。生首の図は実際に死刑になった人間の首を見て描いたらしいです。それまでの眼福ムードがここで一気に吹っ飛ぶという…(爆)。「雲龍図」も強烈な気が漂ってくるかのようです。企画展の後、常設展の方も見てきました。展示で北斎の一生を時系列で追うことができます。半ばゴミ屋敷と化した北斎の画室の再現展示もありました。北斎とお栄の人形も中にいるのですが、北斎の人形が微妙に動いた時は思わず声が出そうになりました…。
この日は帰りに駒込にある東洋文庫ミュージアムにも寄ってきました。知り合いからご招待券をいただいていたのです…。こちらに伺うのも初めてでした。文庫の名にふさわしく、天井までぎっしり本で埋まった書架に圧倒されます。ここでは「大清帝国展 完全版」の展示を見てきました。高校時代の世界史の時間を思い出しながら…。完全版というだけあって、盛りだくさんの展示でした。面白いところでは殿試策(科挙の答案)も。書道のお手本のようなみごとな答案なのですが、解説には科挙の成績上位者に限って実務では使えなかった的なことが書いてあって、昔からよくある話なのだなぁ…と、しみじみしてしまいました。あと、西太后が描いたという花の絵もありました。繊細で綺麗な花の絵。彼女の恐ろしさを考えると、ほんとに本人が描いたのか?とも思ってしまうのですが、作品と性格とが必ずしも一致するとは限りませんしね…。そんなわけで、ひさびさに歴史のお勉強を楽しんでまいりました。ところでこの東洋文庫、併設のレストランが何だか美味しそうなんですよね…この日は時間がなくて寄れなかったのですが、いつか行ってみたいものです…。