aquamarine lab

アートネタなど日々のあれこれ

イノセント

2023-07-23 00:44:23 | 音楽
スガシカオ「イノセント」を聴きました。発売直後にCDをゲットしていたにもかかわらず、その後、公私ともどもにいろいろなことが起こってしまい、長らく感想を書けずにいました。そうこうしているうちに、約半年が過ぎ去ってしまい…。

1曲目はヤバい歌詞とMVが物議を醸した「バニラ」。不肖わたくし、この手の歌詞に関してコメントできる語彙も知識も経験も持ち合わせておりませんがゆえに、もっぱら音の話を…。不穏なイントロ、微妙な音のズレが眩暈のような感覚。いい感じに汚れたギターとシャープでタイトなドラムが曲の世界観に絶妙にマッチしています。「さよならサンセット」はアレンジが実に秀逸。冒頭のテープの再生音も素敵。爽やかなサウンドと切ない歌詞が言いようのない感情を引き起こします。「叩けばホコリばっかし」は謎のファンク集団、ファンクザウルスの曲。歌詞はなんて言うかですね…たぶんこの方、後ろから刺されたりしないように気をつけた方がよさそうな感じですかね…。「痛いよ」は、聴いているだけで胸が痛くなってくるような歌詞が生々しい。「獣ノニオイ」はむわっとする空気感、やるせない感情が淡々と歌われ…青春ですなぁ…。「バカがFUNKでやってくる」、タイトルはアレですが、プリンスのようなP-FUNKのようなサウンドがかっこよいです。「覚醒」はファンクとUKロックのミックス具合が斬新。Bメロで鳴ってる乾いたギターの音も好きな感じ。「東京ゼロメートル地帯」は、サウンドはお洒落なシティポップ風ですが、歌詞は下町シリーズ。このギャップがスガさんらしいのかも…。「灯火」はあたたかい曲…高田漣さんのペダルスティールも素晴らしい。「メルカリFUNK」はイントロ最高(?)。歌詞はなんかもう身も蓋もない感じです。それにしても、しばらく頭の中でサビがぐるぐる回って困りました…。「国道4号線」は「黄金の月」のアンサーソングのような歌。時を経てわかること、言えることってあるのかもしれません…。「おれのせい」はベースがかっこいいのですが、しばらく頭の中でAメロがぐるぐる回って困りました…。「モンスターディスコ」はヒャダインさんとのコラボですが、スガさん、こういう曲も意外に似合うのね…。

というわけで、全13曲があっという間に過ぎ去っていきました…春風が駆け抜けていくみたいに。季節に例えるなら、春というか早春みたいなアルバムだと思いましたよ…。「イノセント」というタイトル自体は公募だそうですが、たしかにイノセント。秋からはツアーも始まるようで、こちらも楽しみです…。
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風景の音 音の風景

2023-07-18 00:21:11 | 音楽
神奈川県立近代美術館鎌倉別館で「吉野弘 風景の音 音の風景」を見てきました。
1970年代初めから環境音楽の分野で活躍した吉村弘氏の個展です。環境音楽の先駆け的な存在である氏の活動は音楽のみならず、ドローイング、パフォーマンス、サウンドオブジェの制作、執筆と多岐にわたりました。私も昔、「都市の音」を読んだ記憶が…。ちなみに葉山館で流れているサウンドロゴは吉村氏の作曲だそうです。

展覧会は5章で構成されていました。「Ⅰ.音と出会う」は初期の活動の紹介です。吉村氏は高校時代のエリック・サティの音楽に出会い、独学で音楽を学びました。初期の作品の楽譜が展示されていましたが、手書きとは思えないような端正な譜面。イラストもシンプルで美しい。「Ⅱ.音と出会う」には図形楽譜が展示されていました。線はさらに緻密になり、デザイン性の高い絵楽譜も。「Ⅲ.音を演じる」はパフォーマンスの紹介。70年代後半から、吉村氏の活動はより身体性を増し、さらに音具の創作なども手がけるようなり、活動はサウンド・パフォーマンスからサウンド・インスタレーションへと展開していきます。70年代のパフォーマンス関係のチラシの中に若かりし頃の教授の姿もあって、思わずしみじみ。音具の数々はデザインも面白いです。ロビーにはサウンド・スカルプチャーの実物が展示されていて、実際に触れるようになっていました。試しに振ってみたら、本当に気持ちよかったです…。「Ⅳ.音を眺める」にはRain,Tokyo Bay,May,Clouds,Summerの5本の映像作品が展示されていました。撮影、音楽、演奏ともに吉村氏によるもので、撮影場所は有栖川宮記念公園、東京湾、白金の自然教育園、広尾の吉村氏の自宅です。いつまでも眺めていたいような、ここちよい映像とここちよい音楽。音楽が自己主張しないというか、自然物の一つとして存在している感じです。サティの家具の音楽になぞらえて、空気に近い音楽、ということを言っていたそうですが、空気のように透明な音楽…。「Ⅴ.音を仕掛ける」は環境音楽の紹介。吉村氏は音を風景として捉え、サウンドスケープと呼んでいました。環境にひそかに作用し、いつの間にか空間をここちよいものに変えていく、音楽というか音。吉村氏は「私の音楽は私の音楽ではない、私の音(楽)でないものはまた私の音楽である」という言葉を残していました。音と風景とが作り手の自我さえ超えた空間で溶け合うような、そんな不思議な感覚を味わった展覧会でした。

ところでこの展覧会、パンフレットも秀逸でした。無料でいただくのが申し訳ないくらい充実したもので、編集もきっと大変だったと思われます。空色の線で描かれた絵楽譜「Flora」が表紙のカバーになっていて、綺麗でしたね…。
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水ー巡るー

2023-07-17 01:35:18 | 美術
郷さくら美術館で「水-巡る―」を見てきました。暑い日々が続く今日この頃、涼しげな絵でも見たいなぁ…と思っていたら、この展覧会が目にとまりました。この美術館、小さめですが、独特の雰囲気があって、けっこう好きなんですよね…ひっそりと絵を楽しむにはうってつけの場所なのです。

会場に入ると千住明「ウォーターフォール」が。これで一気に涼しくなりました…マイナスイオンを浴びているような心地です。米谷清和「雨・朝」は憂いを含んだような青が印象的。そして、メインビジュアルにもなっている、野地美樹子「Uneri」。これを生で見たくて来たのです…鳴門の渦潮をモチーフにしながらも、人間の感情を渦潮の波になぞらえた作品なのだそうです。涼しげな青に吸い込まれていくような不思議な感覚を覚えます。那波多目功一「さゞ波」は湖面のさざ波と揺らぐ光の描写が美しい。清水信行「朝の渓」は鮮やかな緑のグラデーションが瑞々しい。神韻縹渺とした風情が漂う吉田舟汪「心象 那智」。村居正之「驟雨」は降りしきる冷たい雨に滲む灯が暖かく…。杉村眞悟「映ろう」は水面の表現が写実的というか個性的。平松礼二「モネの池、夏」はカラフルでポップな趣。佐藤晨「蛍川」はファンタジックな作品。ちょこんと描かれたフクロウが愛らしい。同じ作家による「冬の月」は陸前の海を描いたそうですが、凍るような月が海に浮かぶさまが幻想的。桜を描いた作品では坂本藍子「たゆたう」にとりわけ目を惹かれました。桜花が舞い散る川面、ゆらめく光、躍動する小魚…生命の連環…。

雨~沢~滝~湖~川~海…この展覧会は姿を変えながら巡る水を意識して構成されたそうです。地球上を巡るだけでなく、人間の身体の中をも巡る水。あらゆる命の源…。

この日は中目黒の駅近くにある「豆虎 中目黒焙煎所」にも寄ってきました。ここは豆を100g以上買うと、コーヒーを一杯サービスしてくれるのです。暑い日だったので、アイスコーヒーをいただきました。水出しコーヒーゼリーもテイクアウトしましたが、独特のふるふるの食感で美味しゅうございました…。


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アクロス24ナイツ

2023-07-12 00:21:31 | 映画
ヒューマントラストシネマ渋谷で「エリック・クラプトン アクロス24ナイツ」を見てきました。1990年から91年にかけてロイヤル・アルバート・ホールで行われたエリック・クラプトンの42回にわたる公演から、ベスト・パフォーマンスを選び抜いた映像です。演奏はフルオーケストラ、ブルース、ロック…と、さまざまな編成で行われました。クラプトンの円熟期の演奏が多様なフォーマットで展開されます…(以下、ネタバレします)。

イントロに続いて「クロスロード」。マイケル・ケイメンが率いるロイヤル・フィルハーモニーとの共演ですが、指揮者ももうノリノリ。次はバンド編成で「I shot the sheriff」。この曲もクラプトンが歌うと内省的に響きます。「ホワイト・ルーム」はギターソロが凄かった…何か降りてきちゃった系のソロ。うつむいてギターを弾いていたクラプトンが一瞬、白い歯を見せてニヤリと笑うのが見えました。きっと、本人にとっても会心の出来だったのでしょう…。「天国の扉」はフィル・コリンズのドラムがかっこいい。「レイ・ダウン・サリー」の軽妙なプレイも不思議と心に残ります。ブルース・ナイトではアルバート・コリンズが登場。圧巻のパフォーマンスでオーディエンスを湧かせます。続いて、バディ・ガイも登場しますが、もうやりたい放題。男女の修羅場を朗々と歌い上げ、キレッキレのギターソロを聴かせ、クラプトンを呼び出してかけ合い、挙句の果ては次も呼んでくれ、とステージ上でお願い…。ワイルドな二人の後ろで、クラプトンがひときわ生真面目な顔をしながら、三歩下がって師の影踏まず…といった風情でギターを弾いているのが何ともいえない感じでした。「ホリー・マザー」はあまりに悲しくも美しい曲…。「コカイン」の叫びも切ない。「ワンダフル・トゥナイト」はオケとの共演で一層リッチに響きます。「いとしのレイラ」はもう大盛り上がり。客席で踊り狂っている人もけっこういましたね。前半はバンドで演奏し、後半からオケが入ってきましたが、あのリフがオケで演奏されるのを聴いてみたかった気も。クラプトンはギターにタバコを挟んでいましたが、あれは大丈夫なのだろうか…。ラストはまさかというかやはりというかのあの曲。これをオケ入りでやるとは何ともオツです。それにしてもクラプトン、白いスーツが似合うなぁ…。

というわけで、クラプトンの多様なギターを堪能しました。さまざまなスタイルで演奏しながらも、根底にはクラプトンの「歌」が流れているのを実感…。そして、クラプトンがギターを弾く姿はどこか求道者のようにも見えます。このストイックな熱がたまらんのでしょうね…。この後、約30年の紆余曲折を経て、クロスロード・ギターフェスティバル2019につながっていくのかと思うと、感慨深いです…。
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ボンクリ・フェス2023

2023-07-11 00:05:16 | 音楽
ボンクリ・フェス2023に行ってきました。ボンクリ・フェスに行くのは今回で3回目です。昨年は開催時期が変わっていたのに気が付かず、うっかり見逃してしまいました。一日じゅうでも入り浸っていたいようなイベントなのですが、今回は都合により2日目の午後から参加しました。

まずはボンクリ・ビデオ・アーカイブの部屋へ。私が行った時には挾間美帆さんの「颯」が上映されていました。サックスカルテットの曲をボンクリのために弦楽四重奏に編曲したそうで、ポストクラシカルのような美しい曲。挾間美帆さんの曲はジャズのビッグバンドの曲しか聴いたことがなかったのですが、こういう曲も書いていらしたのですね。それから、アトリウムに移動して、大石将紀さんのアトリウム・コンサートへ。テナーサクソフォンと電子音が融合した曲で、サクソフォンの音色が実に多彩。吹き抜けの空間で聴いていると宇宙空間に漂っているような…。その後はPLANKTONの部屋へ。ここではインスタレーション作品から教授の音楽だけを独立して再生しています。生命の起源の音楽。極上のサウンドシステムで再現された音に身を浸していると、海中に潜るような感覚に…。ディレクターの藤倉大さんは、教授が亡くなる4日前まで、この部屋についてやり取りをしていたのだそうです。そう、この部屋のなかにも教授は生きているのですね…。

そして、スペシャル・コンサートB面を聴きに行きました。1曲目はヤスナ・ベリチュコヴィッチのRemote me。2つのリモコンと3つのコイルのための音楽です。藤倉さんがテレビのリモコンをひたすらフリフリし、聴衆は普通なら聴こえないはずのリモコンの音を聴くという不思議な作品。2曲目はアレックス・パクストンのモア・クラシカル・ミュージック。彼は元々、幼稚園の先生をしていたらしいです。演奏にはノマドキッズも登場。ピアノの中川賢一さんはやはりキレッキレのピアノを弾いていらっしゃいました。3曲目はスティーヴ・ライヒのグランド・ストリート・カウンターポイント。女性ファゴット奏者のレベッカ・ヘラーさんが登場。彼女とライヒは何とご近所さんなのだそうです。この曲はライヒの難曲、チェロ・カウンターポイントをレベッカさんが編曲し、ボンクリで世界初演ということになりました。ハイパーな演奏でファゴット観が変わりましたよ…。4曲目は大友良英さんの新作。ミュージシャン達がホールのあちこちから現れ、呼応するかのように音を交わします。5曲目も大友良英さんの新作ですが、こちらはノルウェーのアーティストたちとのライブ・リミックス。エレクトロニカのような、クールでスタイリッシュな音楽。大人の音楽、という感じで本当にかっこよかった…。

最後は電子音楽の部屋へ。今年は共産国(時代)の電子音楽がテーマでした。去年、亡くなったエドゥアルド・アルチェミフの「惑星ソラリス」のサントラを聴きました。私が映画を見たのは高校生の時だったので、どのシーンの音楽だったのかはほとんど思い出せなかったのですが、音楽自体の重量のようなものはひしひしと伝わってきます。そういえば、教授のasyncは、タルコフスキーの架空の作品の映画音楽、というコンセプトもありましたね…。

本当は夜の大人ボンクリも聴いていきたかったのですが、用事があったため断念…トータル数時間ほどの鑑賞でしたが、本当に楽しかった。これだけ充実したプログラムを無料または低価格で楽しませていただけるのですから、本当にありがたいことです。藤倉大さんと東京芸術劇場、関係者の皆様に感謝…。


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クロスロード・ギター・フェスティバル2019

2023-07-01 10:28:07 | 映画
ヒューマントラストシネマ渋谷で「クロスロード・ギター・フェスティバル2019」を見てきました(上映は既に終了しています)。

クロスロード・ギター・フェスティバルはエリック・クラプトンが設立した中毒患者施設「クロスロードセンター」のためのベネフィット・コンサートとしてスタートしました。この映画はその5回目となる2019年のコンサートを収録したドキュメンタリーです。出演しているギタリストは、クラプトンを始め、ジェフ・ベック、バディ・ガイ、ジョン・メイヤー、ボニー・レイット、シェリル・クロウ…とゴージャスです(以下、ネタバレします)。

コンサートはクラプトンの「ワンダフル・トゥナイト」から始まります。アコースティックバージョンで、いい感じに枯れた味わい。グスターボ・サンタオラヤのことは初めて知りました。ブエノスアイレスのミュージシャンですが、美しく幽玄なギター…。シェリル・クロウ&ボニー・レイットは仲の良い母娘みたい…シェリル・クロウの心からのリスペクトが伝わってきます。バディ・ガイはさすがの貫禄。ピーター・フランプトンの熱演も光ります。そして、ジェフ・ベック降臨…まさに圧倒的なオーラです。演奏はもはや仙人の域…バックのタルちゃんは相変わらず可愛い。ロス・ロボスもノリノリ。ジョン・メイヤーはやはり爽やか&かっこいい。クラプトンとの共演でレイラも演奏していたのですが、胸熱になってしまいましたよ…。テデスキ・トラックス・バンドはもう大盛り上がり。リアン・ラ・ハヴァスのことも初めて知りました。「小さな願い」を歌っていましたが、独特な声質で不思議と心に残ります。ラストはクラプトン&アンサンブルのパープル・レイン。クラプトンの歌になってましたよね…プリンスはもうこの世にはいませんが、名曲はこうして歌い継がれていくのだな…と感じ入りました。

というわけで、世代もジャンルも幅広い、ギターヒーロー(&ヒロイン)の演奏を堪能してまいりました。これだけのギタリストをまとめて見たのは初めてでしたが、本当にギターのもつ声も歌も人それぞれでみな素晴らしかった…そう、ギターって人の声とか歌に近い楽器という気がします。自分はギターを全然弾けないのですが、弾ける人がしみじみ羨ましくなりましたよ…。ところで、このギターフェス、今年は9月にロスで開催されるそうで、ゴージャスな出演者たちが発表されています。ジェフ・ベックの名をもう見られないのは寂しい限りですが…。
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