aquamarine lab

アートネタなど日々のあれこれ

絵の鬼

2017-07-31 22:46:12 | 美術
損保ジャパン日本興亜美術館で「吉田博展」を見てきました。

去年、千葉市美術館で開催されていた展覧会を見逃してしまい、残念に思っていたのですが、思いのほか早くリベンジの機会が訪れ、いそいそと行って参りました。混雑というほどではないですが、思っていたよりお客さんが多かったですね。お客さんは比較的、若い方が多いという印象でした。口コミとかで評判が広まっているのでしょうか・・・。

会場前のロビーで、吉田博の生涯を追った「痛快!吉田博伝」という映像を流していたのですが、これがけっこう面白くて・・・話が漫談調なんですよね。おかげで、会場に入る前からすっかり吉田博ワールドに引き込まれ・・・。

作品はほぼ年代順に並んでいるのですが、やはりこの方、子どもの頃から巧かったんですね。絵そのものが本当に巧い・・・さすがに黒田清輝に喧嘩を売った(?)だけのことはあります。巧くて、しかもわかりやすいというところが外国人(特にアメリカ人)に受け、今もなお、若い人を引きつけているのでしょうか。どの絵にもぽやんと見とれてしまうのですが、とりわけ惹かれてしまうのが、山、そして光を描いた作品。「雲海に入る日」の空の輝き。穂高山を描いた作品も素晴しい。そもそもアングルが違います。実際に登る人でなくては描けない作品ですよね・・・。

吉田博は、初期には水彩、その後、油彩を経て、木版画の世界へ足を踏み入れます。不同社時代の仲間には「絵の鬼」と呼ばれていたそうですが、ここでも鬼っぷりを発揮します。江戸時代の浮世絵は十数回、刷りを重ねていたそうですが、吉田博は数十回、ものによっては百回くらい刷りを重ねていたそうですから、恐れ入ります。

そんなわけですから、木版画の作品も肉筆、あるいはそれ以上に繊細です。「嶮山の朝」の山の頂のグラデーション。ダイアナ妃のお気に入りだったという「光る海」などの瀬戸内海シリーズの海の描写も素晴らしく、瀬戸内出身の身としては何だか嬉しくなってしまいます。

吉田博は生涯に何度か、外遊を重ねています。そもそも成功のきっかけがアメリカでした。「ヴェニスの運河」は夏目漱石の「三四郎」のネタにもなりましたし。その他にもアルプス山脈のマッターホルン、米国のグランドキャニオン、エジプトのスフィンクス、インドのタジマハルなどなど・・・タジマハルを旅した時は、アグラで満月を迎えられるように計算して行ったそうです。恐るべし、画家魂・・・。

ところで、今回の展覧会では、スケッチ帳もいくつか、展示されていました。スケッチですら、けっこう描き込んであって、思わず見入ってしまうものも少なくありません。このスケッチ帳が全て、このペースで埋まっていたとしたら・・・ほんとに鬼だったんだな、としみじみ思ってしまったのでした。
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超ド級の日本画

2017-07-30 23:54:58 | 美術
山種美術館で「川端龍子 超ド級の日本画家」を見てきました。

何てったって超ド級ですよ、超ド級。ドがカタカナっていうのがさらに斬新。およそ山種美術館らしからぬ(?)キャッチフレーズにもびっくりですが、やはりそれだけのことはありました・・・。

会場に入ると、川端龍子の写真が。かわいらしいワンコを抱いています。その名も「クマ」。氏はクマのことをかわいがっていたようで、画室への出入りも許していたそうです。ある日クマが作品の上をとことこ歩いて足跡をつけてしまい、弟子たちが真っ青になっていたところ、龍子は足跡を洗って、また書き直したとか。何となくお人柄の偲ばれる話ではあります。

作品はほぼ年代順に展示されています。初期の作品でまず目を引かれたのが「火生」。「炎舞」を少々彷彿とさせます。それから「会場芸術」の章へ。ダイナミックな「鳴門」。青と白のコントラストも鮮やかです。そして「香炉峰」。戦闘機がなぜかスケルトン・・・と思ったら、これはどうやらバックの風景が迷彩柄に見えるように、ということらしいです。かなり、斬新。かと思うと「草の美」のようにサイズは大きくとも、繊細で美しい作品も。「爆弾散華」は、一見、何てことのない野菜の絵に見えますが、これは実は戦争の時に、龍子の家の畑に爆弾が落ち、野菜が被害を受けた時の有様だとか。ということは、この金箔は炎・・・。「金閣炎上」は実際の事件を題材にしたものですが、雨の中、燃え盛る炎の表現がみごとです。「八ツ橋」は淋派にインスパイアされた作品ですが、ここでは白い花が咲いています。「夢」は中尊寺のミイラ調査から想を得た作品で、幻想的な世界・・・これも少々「炎舞」を彷彿とさせます。

そんなわけで、「会場芸術」を堪能してまいりました。「会場芸術」は芸術と民衆を結ぶものとか。かつては宗教と民衆が結びついていた。その後、芸術が権力と結びつき・・・それを民衆に取り戻すということのようです。やはり、芸術はある意味宗教に近いポジションにあるのだな・・・と、なぜかそんなことを思いました。批判もあるようですが、「大衆」の一員としては、大型の作品って、それはそれでありがたいな、と。ミュシャのスラヴ叙事詩を見に行った時も思ったのですが、大型の作品ならば、美術館が混んでいても、皆で見ることができるし(←そっちかい)。「大きさ」から生まれるパワーというものは、やはりあるのかも、とも思います。

ところで、山種美術館といえば「Café椿」。暑い日だったので、冷たいお抹茶でも飲みたいな、ということで寄ってきました。今回は龍子作品にちなんだ和菓子が登場。どれもこれも綺麗で美味しそう。さんざん迷った挙げ句、「八ツ橋」が元になっているという「東下り」をセレクトしました。一番細工が凝っていたので。ほんのり柚味で本当に美味しゅうございました。ここのお菓子はそれなりのお値段ではありますが、それだけのことはあるんですよね。冷抹茶も冷え冷えで、疲れが癒されました・・・。
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不染鉄

2017-07-29 11:55:30 | 美術
東京ステーションギャラリーで「不染鉄展」を見てきました。

不染鉄。そもそも国籍不明な感じのその名前。不肖わたくし、氏のことはまったく知りませんでしたが、このところアートブロガーさんたちの間で話題になっているらしく・・・展覧会のメインビジュアルになっている富士の絵にも惹かれて、ひさびさにステーションギャラリーに行ってきました。

それにしてもお名前同様、変わった経歴のお方です。若くして日本芸術院会員になるも、写生旅行に行った式根島で漁師同然の生活を送ったかと思えば、3年後には京都市立専門学校の特待生となり、帝展に入選。しかし戦後には画壇を離れ、校長先生になったり・・・と、何ともつかみどころのない感じです。

3階の会場は比較的、初期の作品で、院展風だったり、南画風だったり。しかし、2階に入ると俄然、作風が変わります。「薬師寺東塔の図」の何とも言いようのない郷愁。そして、メインビジュアルの「山海図絵」。こんな富士の絵、これまでもなかっただろうし、これからもなさそうです。富士の絵だけれど蓬萊山のようにも見える、不思議な絵。現実を超えた光景のようです。2階の「富士&海」の間の作品が魅力的で、思わずぐるぐると何周かしてしまいました。「南海之図」を眺めていると、大海を漂っているような錯覚に陥ります。暗い海を描いた「海」にも思わず見入ってしまいました。漁師(?)でなくては描けない絵なのかも・・・。その他の作品では、いちょうを描いた作品も印象的でした。いちょうは不染鉄にとっては幸せの象徴でもあったようです。この絵に添えられたキャプションには不染鉄のこんな言葉が添えられていました。「幸せがあふれ出ると美しい絵が描ける」「この世のものとは思えないほど美しい絵を描きたい」。

この作品、この言葉・・・きっと心も綺麗な人だったんだろうなぁ・・・と、思っていたら、ギャラリーに不染鉄の写真がありました。童話に出てくる小人のおじいさんみたいで、まさに・・・という感じでした。そういえばこんな言葉もありましたね。「芸術は心を写す鏡である」

そんなわけで、ひさびさの東京ステーションギャラリーでした。それにしても、こういう画家さんの作品ってこのギャラリーに似合いますよね。以前、小山田二郎の展覧会を見た時も思ったのですが・・・、何ていうか、ちょっとマニアックな感じの近代日本の画家。また、こういう展覧会を開催していただけるといいなぁ・・・。
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メットガラ

2017-07-28 00:28:15 | 映画
ヒューマントラストシネマ有楽町で「メットガラ」を見てきました。(この映画館での上映は既に終了しています。)

美術館が舞台になっているとはいえ、お洒落女子向け映画かな・・・と思いつつ見に行ったのですが、ファッション好きも、アート好きも楽しめそうな映画でした。元気の出るお仕事映画という見方もできそうです(以下、ネタバレ気味です)。

舞台はNYのメトロポリタン美術館。ここでは年一回、服飾部門の資金集めのためのパーティーを開きます。その名もメットガラ。ファッション界のアカデミー賞とも言われています。主な登場人物はといえばヴォーグ誌の名物編集長、「プラダを着た悪魔」アナ・ウィンターと服飾部門の主任キュレーター、アンドリュー・ボルトン氏。その他にも、芸術監督に映画監督のウォン・カーウァイ。ガリアーノなど著名なデザイナー達も登場。そしてゲストには超有名セレブたちが・・・。

華やかな登場人物たちの中で唯一、地味なのが、ボルトン氏。しかし、実にいい味を出しています。オタク系の色白メガネ男子、しかし、メガネを取ったらけっこうイケメンなのでは、と思わせるこの風情は誰かに似ている・・・と思ったら、そう、「みんなのアムステルダム美術館」に出ていた東洋部門のキュレーターさんでした。こういうキュレーターさん、多いんだろうか。彼は、思春期にニューウェーブの影響を受けてファッションに興味を持ち、METのキュレーターになるという夢を叶えています。

関係者達の思惑が交錯する中で、黙々と展覧会の準備を続けるボルトン氏。彼は11年にアレキサンダー・マックウィーンの展覧会で大成功を収めましたが、それ以降、過去の成功のプレッシャーと闘う日々が続いています。今回の展覧会は「鏡の中の中国」。中国のアートと、中国に影響を受けたファッションをともに展示するという、大胆な企画です。この展覧会はマックウィーン展を超えられるのか?目玉のリアーナは出演してくれるのか?展覧会の準備は遅れに遅れ・・・見ている方がドキドキしてしまいます。最後の最後には、関わる者の思い入れの強さがものを言う、というのはどんなお仕事にも通じることなのかもしれません。

この映画は、ファッションはアートなのか、という永遠の課題(?)にも言及しています。いまだにファッションを排除する美術関係者も多いのだそうですが、広くとらえれば、人の心を動かすものはすべてアートとも言えるのかもしれず・・・というか、美術館というハコにとらわれなければ、その区別にさえ意味がなくなるのかもしれないとか、そんなことを思ってしまうくらい、この映画に出てくるドレスの数々は、問答無用に美しいのです。

そして、メットガラ当日、華やかに着飾ったセレブ達がレッドカーペットを彩ります。満を持して登場したリアーナは黄色いドレスを着て、まるで中国のお姫様のよう。しかし、ドレスからステージ衣装に着替えて歌い踊るリアーナにはやっぱりかなわん、と思ってもみたり(笑)。というわけで、いろんな意味で元気をもらえた映画でした。それにしても、「鏡の中の中国」展、見てみたかったな・・・。
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静かな水の物語

2017-07-27 00:00:47 | 映画
角川シネマ有楽町「ターシャ・テューダー 静かな水の物語」を見てきました。
(この映画館での上映は、既に終了しています。)

スローで心穏やか、丁寧な暮らし・・・日頃、慌ただしくも殺伐とした、雑なことこの上ない暮らしを送っている私めからすると、何とも羨ましい生活です。いつかおばあちゃんになった暁には、あんな生活をしてみたいものだなぁ、と映画を見に行ったのですが・・・。

そこに繰り広げられていたのは予想を遥かに上回る世界でした。この映画を見終わった後、まぁ、羨ましい人生だこと、と呟いたお客さんがきっと何人もいたに違いない、と確信していました。広大なお庭には色とりどりの花が溢れ、まるで楽園のよう。そして、一つ一つの家事を丁寧に、楽しみながら行うターシャおばあちゃん。「必要なものを全部自分の手で作るなんて素敵じゃない」なんて、無精者の私めからすると気の遠くなるような話です。「自分の人生に不満は全くない」「生まれ変わっても同じ(生き方が)いいわ」死ぬ時にこんな風に思えたら、誰が何と言おうと成功者だろう、と思います。

素晴しい絵本の数々を世に送り出し、美しい自然に囲まれてあたたかい家族とともに心豊かな生活を楽しみ、90過ぎて大往生・・・って、こんな完全無欠な人生ってあるんかい、と思わず突っ込みを入れたくもなりますが・・・調べてみると、ターシャの両親は彼女が幼い頃に離婚していたり、また、自身も2度離婚していたりと、いろいろ苦労もあったようです。まあ、そうですよね・・・そんな完全無欠な人生なんてあるわけないですよね・・・と思うと、彼女の名言が重く響いてきます。「人生は短いから不幸になっている暇なんてないのよ。」

幸不幸は心の持ちよう、とはよく言われることですが、やはり意思の力が必要なんだな、とあらためて思いました。そう言えば「幸せは自分で創り出すのよ」とターシャも言っていましたね。そして、自分があんまり幸せじゃないな、と思う時はそんなこと考える暇もないくらい忙しくしてしまえばいいのかも。そんなわけで、スローで心穏やか、丁寧な暮らしを送るおばあちゃんの根底にある、静かな迫力に感じ入った映画でした。タイトルどおり、静かな水のようです・・・。
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はらぺこあおむし

2017-07-26 00:06:34 | 美術
世田谷美術館で「エリック・カール展」を見てきました。(この展覧会は既に終了しています。)

こちらも開催を知った時から楽しみにしていた展覧会です。絵本好きの娘を連れて行こうと思っていましたが、ネット上の混雑報告に怖れをなし、結局、一人で行くことに。やはり、一人で行って正解でした。行ったのが最終日だったということもありますが、もう混み混みで、人垣の後ろからひょいひょいのぞき込むことに・・・これ、子ども連れて行ってたら、大変だったわ・・・。

とはいえ、あのカラフルな世界を生で見られるというのはとても楽しいことでした。Part1は「エリック・カールの世界」。有名な作品の原画がたくさんでしたが、やはり「はらぺこあおむし」の原画を見られたのが嬉しかったです。グラデーションが綺麗な、立派なあおむし。動物を描いた作品が多いのですが、とりわけ「家族」のセクションにあった、動物の親子の絵がほほえましく、何だかじーんとしてしまいました・・・。見ているだけで幸せになるような作品の数々。Part2は「エリック・カールの物語」。エリック・カールに影響を与えた作家の作品も展示されています。レオ・レオニはいかにも、という感じですが、アンリ・マティスやパウル・クレー、フランツ・マルクなどの影響もあったようです。自由に絵を描く喜びに溢れた『えを かく かく かく』はフランツ・マルクへのオマージュだったのですね・・・。

人混みにもまれた後は、のんびりと絵を見たくなり、コレクション展へ。今回は「それぞれのふたり 淀井彩子と淀井敏夫」でした。チラシにのっていた、彩子氏の《土地の名・土地の色・土地の時間2015-3》に眼を惹かれ・・・以前、旅行で行ったコロンビア大氷原を連想したのですが、エジプトのイメージで描かれているようです。色鮮やかな南国を思わせる作品が多かったですね。一方、敏夫氏の作品はジャコメッティを想起させられるような彫刻。このお二人、ご夫婦なのかと思いきや、実は父娘だったのですね。というか、彩子氏は若林奮氏の奥様でした・・・で、ちょっとびっくり。もうひとつのコレクション展は濱田能生氏のガラス作品展でした。涼しげな青いガラス作品。暑い夏はやっぱりガラスですよね。ちょっとデイル・チフーリを思わせるような作品も。そして、濱田能生氏は濱田庄司氏の五男でいらっしゃるとか。やっぱり血の力ってあるのかなぁ、と思わされもした二つのコレクションでした。

というわけで、ひさびさに世田谷美術館を堪能しました。やっぱりこの美術館、好きだなぁ・・・。ところで、この展覧会の後、美術館はリニューアルに入るようです。そういえば、もうできてから30年経つのですものね。どんな風に生まれ変わるのか、楽しみです。
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アルチンボルド

2017-07-22 23:27:19 | 美術
国立西洋美術館で「アルチンボルド展」を見てきました。

アルチンボルドがメインの展覧会は日本初なのだそうです。というわけで、開催を知ったときから楽しみにしていました。会場前のロビーには噂の「アルチンボルド・メーカー」が。既に人が並んでいたので、帰りに寄ってこ・・・と思いながら、会場内へ。

会場に入ってまず眼を惹かれたのが、「紙の自画像」。この時代に、紙で自分の顔を表現するというアイデアはかなり斬新。額の皺は当時の年齢だそうな。ちょっとエッシャーを思い出したりも(って逆か)。そして、アルチンボルドに影響を与えたということで、レオナルド・ダ・ヴィンチの素描もいくつか。なかなかに贅沢です。

何と言っても圧巻だったのは、今回の大目玉(←って意味が違う)、四季&四大元素の揃い踏み。華やかな春、涼しげな秋、実りの秋、枯淡の冬。大気の鳥、火の武器、大地の獣、水の魚。森羅万象が集った濃密な空間・・・これもまた一生忘れられなさそうです。その他も「ソムリエ」「司書」「法律家」など風刺の利いた職業絵、「庭師/野菜」「コック/肉」といった上下絵なども出ていましたね・・・。

今回、アルチンボルドのフォロワーの作品も多く出ていましたが、やはりアルチンボルドの作品は格別です。フォロワーの作品が2Dだとしたら、アルチンボルドは3Dだという気がするのですよね。日曜美術館でアルチンボルドの「春」の制作過程を検証している場面がありましたが、実際に花を置いて描いたのではなく、頭の中のコンピューターで組み立てていたのだろうということでした。もちろんコンピューターなどない時代です。想像力、発想力に加え構成力が飛び抜けていたのですね・・・。

ところで、アルチンボルドといえば奇想の画家、さぞかし異端な存在だったのかと思いきや、実はハプスブルグ家三代にわたって仕えた「ザ・御用絵師」みたいな存在でした。けっこう異端な作品を描きながら絶対君主三代の世を生き延びたわけですから、彼がよほどクレバーだったのか、皇帝様達の懐が深かったのか。展覧会にはハプスブルグ家のコレクション室のクンストカンマー(芸術と驚異の部屋)のパネルもありましたが、まさに森羅万象・・・。この世のすべてを手にしようとする皇帝と、この世のすべてを描こうとする(そしてそれだけの技量をもつ)芸術家の思惑が一致したのやもしれません。

そんなわけで、お腹いっぱいになって会場を後にしましたが、本物のお腹の方は空いていたので、上野公園の中の「韻松亭」でランチにしました。花籠弁当を頂きましたが、お上品で美味しゅうございました。とりわけ豆ご飯と茶碗蒸しがおいしかったな・・・。

面白い絵においしいご飯。すっかりいい気分になった帰り道、ふと気づいたことがありました。そう、アルチンボルドメーカーのことを忘れていたことに・・・。相変わらずお間抜けさんです。自分の野菜顔を見られる、(たぶん)一生に一度のチャンスだったのに・・・(爆)。
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