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アートネタなど日々のあれこれ

オーケストラがやって来る

2016-03-18 19:01:24 | 映画
ユーロスペースで「ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る」を見ました(この映画館での上映は既に終了しています。)

この映画は、ロイヤル・コンセルトヘボウが2013年、設立125周年記念に、1年で50公演を行うワールドツアーを行った時の模様を収めたオーケストラ・ロード・ムービーです。(以下、ネタバレ気味です。)

とは言っても、鑑賞してからけっこう時間が経ってしまったため記憶が少々あいまいなのですが・・・映画は団員や観客へのインタビュー、演奏シーンによって構成されています。ブルックナーの交響曲第7番で、一時間に一度の出番のために待ち続ける打楽器奏者、ショスタコーヴィッチの交響曲第10番にてコントラバスがメロディーを奏でる件について熱く語るコントラバス奏者など、どちらかというと地味めなポジションにいるメンバーのことが取り上げられているのが興味深かったです。観客の立場はさまざまです。自分を守るために音楽を必要とするアルゼンチンのタクシードライバー、音楽だけが生きがいと語る南アフリカの少女、スターリンとヒトラーによって2度にわたり収容所を経験し、音楽を心の支えに生きてきたロシアの老人。マーラーの「復活」と老人の涙・・・。

映画にはオーケストラのリハのシーンなども。カメラが入っているというのもあるのかもしれませんが、思いのほか和やかな感じでした。もっとぴりぴりしてるのかと思ってましたが・・・何かやらかせば、ぴしーって冷たい視線がとんでくるような。メンバーも穏やかそうな方が多かったです。こういうのってやはり音にも出てくるものでしょうか。指揮棒の役割の説明とか、笑えたなあ・・・。

年齢も立場も、背負っているものもさまざまだけれど、音楽を愛する人々は世界中にいる・・・ことを、映像を通して確かめられたのは、音楽好きの端くれである自分にとっても、とても心強いものでした。ところで、この映画のキャッチフレーズは「聴く者が、人生を重ねる時、音は初めて音楽になる」。まさに言い得て妙ですね・・・。

書物の聖母

2016-03-12 23:27:45 | 美術
東京都美術館で「ボッティチェリ展」を見てきました。

去年、Bunkamuraza ザ・ミュージアムで開催されていたボッティチェリ展もゴージャスでしたが、今回は現存するボッティチェリ作品約100点のうち約20点がやって来るという何とも贅沢な展覧会・・・ということで、わが家からは少々遠い上野ですが、いそいそと行ってまいりました。

さて、例によって鑑賞前に腹ごしらえ・・・今回は時間もなかったので、上野駅構内の「たいめいけん」へ。少々並んでいましたが、回転が早いので、さほど待たずに入れました。お腹が空いていたので、ハンバーグとカニコロッケのセットのランチを。昔ながらの洋食でおいしかったです。50円でボルシチもつけられるのですが、こちらも美味。

お腹もいっぱいになったところで美術館へ。今回の展覧会は、ボッティチェリの師匠であるフィリッポ・リッピ、ボッティチェリ本人、フィリッポ・リッピの息子でありボッティチェリの弟子でもあるフィリッピーノ・リッピの3人に絞り、ほぼ時系列で展示するという構成でした。ボッティチェリだけでなく、リッピ親子の魅力を再発見する機会にもなっていたかと思います。

会場に入るといきなり、ボッティチェリの「ラーマ家の東方三博士の礼拝」が。ドラマティックな構図。思わずテンションが上がってしまいます。この中にはメディチ家の人々のみならず、ボッティチェリ本人も描かれているらしい。その後、ロレンツォのコレクションが続き、フィリッポ・リッピの作品の章へ。「玉座の聖母子と天使および聖人たち」に眼を惹かれます。ロシアのイコンのような神秘的な趣き。それにしても、フィリッポ・リッピの作品って、どこかエロい(笑)というか・・・お上品にいうと官能的。どこぞの女子修道院にて尼さん(フィリッピーノ・リッピの母)に手を出したという逸話があるようですが、さもありなん、と思われます。かと思うと「ピエタ」のような作品も。深い哀しみと絶望・・・。

そしていよいよボッティチェリの章へ。「バラ園の聖母」の聖母の初々しさ。ボッティチェリ作品はとにかく色彩が鮮やかで美しい。「書斎の聖アウグスティヌス」は迫力あるフレスコ画。そして何といっても「書物の聖母」ラピスラズリの深い青。透けるような金冠。愁いを帯びた聖母の眼差し。本当に魅力的な作品に出会った時って、動けなくなってしまいますよね。「美しきシモネッタ」も美人さん。ちょっと受け口気味だけど(笑)。しかしシモネッタと聞くと、つい米原万里さんの「ガセネッタとシモネッタ」を思い出してしまう私(爆)。後期の代表作「アペレスの誹謗」。ひとり天を差す「真実」の姿。「オリーブ園の祈り」の独特な色彩と世界観・・・。

最後は、フィリッピーノ・リッピの章です。「幼児キリストを礼拝する聖母」が綺麗。そしてボッティチェリの作品そっくり。ただ、全体的にボッティチェリの作品に比べると、若干詰めが甘い(?)気がします。そこが魅力なのかもしれませんが。しかし、「洗礼者聖ヨハネ」「マグダラのマリア」は打って変わった作風に。サヴォナローラの影響でしょうか・・・。

というわけで、三者三様の表現を堪能してまいりました。本当にいい時代だったんだな、と思います。かのお坊さんが出てくるまでは・・・。上野に一足早い春が来たようでしたね・・・。