aquamarine lab

アートネタなど日々のあれこれ

ミスター・ダイナマイト

2016-07-19 00:00:34 | 映画
アップリンクで「ミスター・ダイナマイト」を見てきました。

ミック・ジャガーがプロデュースしたJBの映画・・・ということで、映画の公開を知った時から、ずっと楽しみにしてました。やはり、かなり濃ゆい映画となってましたね・・・(以下、ネタバレ気味です。)

4歳で母に捨てられ、9歳で売春宿を営む叔母の元に引き取られ、客引きをしながら育ったという壮絶な過去に始まり、JBの光も闇も描いた映画でした。そして、映画を見た後に、何とも表現しようない重さが残ります。個々のエピソードもかなり興味深いのですが・・・トリが自分じゃないことで不機嫌になったJBがキレッキレどころではない、狂ったようなステップを踏み、ミック・ジャガーが茫然としていた件、メイシオ・パーカーの兄弟と発砲沙汰になっていた件などが、とりわけ強烈でした。JBと公民権運動との関わりについても触れられていましたね。支持を表明していたニクソンに裏切られたこと、キング牧師暗殺後のライブで興奮した観客達に「冷静になれ」と呼びかけたこと・・・。

もちろん、音楽ネタにも事欠きません。“Cold sweat”が“So what”だった、というのも、面白い。そういえば、マイルス・デイヴィスとJBって、かなり私の中ではイメージがかぶります。強烈なプライドと頭脳、リーダーシップ。かたやモードの創始者、かたやファンクの創始者。たぶんどの世界に行っても成功していた人たちなんだろうと思う。でも、成功と裏腹の闇も抱えている・・・。あとは、“Funky Drummer”の生まれた事情とか(笑)。こういうわけで生まれた曲が、ヒップホップの元になってたんですね。あと、ブーツィーの若い頃の様子とかも。まだ、はたちそこそこの遊びたいさかりの若者なのに、彼のベースでサウンドがガラッと変わってしまう有様などは、けっこう衝撃的でした。

そして、JBが言っていた、「ショービジネス」じゃなくて「ショー」と「ビジネス」だ、という言葉も印象的でした。ある意味、音楽ビジネスの要諦とも言える言葉なんでしょうか。うむむむむ・・・。

私がJBを最後に生で見た日から、20年近く経ってしまいましたが、彼がメンバーにガン飛ばしながら指示出しする様子が今でも目に焼き付いています。あの時は、この人、永遠に死なないんじゃないかと思ったくらいですが、やっぱり死んじゃうんですね。もう、あのコテコテのパフォーマンスを生で見ることはかなわないんだな、ということをあらためて寂しく思いましたが、この映画で今まで知らなかったJBを映像で知ることができました。こんな映画をつくってくれたミック・ジャガーに感謝・・・!
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ソウル・パワー

2016-07-18 00:59:32 | 映画
アップリンクで「ソウル・パワー」を見てきました。

何年か前に公開されていたものの見逃してしてしまい、以来、どうも気になっていたのですが・・・モハメド・アリの追悼ということで再上映された今回、やっとこさ行ってきました。(上映は既に終了しています。)

1974年、ザイールで行われた、モハメド・アリとジョージ・フォアマンの奇跡の一戦「キンシャサの奇跡」に先駆けて行われた、音楽祭「ザイール’74」のドキュメンタリーです。諸事情により、34年もの間、お蔵入りとされてきたフィルムがよみがえったとか・・・(以下、ネタバレ気味です。)

参加ミュージシャンはといえば、ジェームス・ブラウン、B.B.キング、ビル・ウィザーズ、ザ・クルセイダーズなど、錚々たるメンツ。中でもJBは見た目も中身も、まさに脂ののった時期、という感じ。つい、「ゲロッパ!」に出ていた西田敏行のことを思い出してしまいました。

ミュージシャン達も、自分たちのルーツの地であるアフリカでの演奏ということで、ひときわ感慨深そうな様子です。キレッキレかつ圧倒的なパフォーマンスを繰り広げるJB、涙だか汗だかを流しながら熱唱するビル・ウィザーズにB.B.キング。アフリカ人でないとできない発音のことを誇らしげに語るミリアム・マケバ・・・。

映画では、音楽祭が開催されるまでの困難なプロセス、そしてモハメド・アリ自身の語りも混じえられています。自分はミュージシャン達よりも上だと思っている、というアリの言葉が印象的でした。彼らは白人を批判するようなことはしないけれど、自分は違う、ということらしい。まさに拳一つで世界を相手に闘ってきた男のプライドを見るようでした。

いろいろな意味で、夢のような音楽祭だったのだと思います。根底にあるのはブラック・パワー・・・でも、もしかしたら、それは抑圧の結果だったのかもしれない、と思うと、何やら複雑な心持ちにもなります。音楽自体が素晴らしいゆえ、なおさら・・・。その後、40年余りの年月が経った今、世界はどれだけ変わったのでしょうか・・・。

ところで、この映画では、最後にJBがこの映画を見た人にあることをやってほしい、という指示を出します。御大のおっしゃることですから、もちろんやってみましたとも。日本語だとちょっとこっぱずかしいので、小声で英語で(笑)。その瞬間、ちょっとうるっときました・・・。




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錆から出た実

2016-07-12 22:57:32 | 舞台
東京芸術劇場で映像芝居「錆から出た実」を見てきました。

生年月日も同じ、九州生まれ、三姉妹というのもの同じ・・・という束芋さんと森下真樹さんのコラボレーション。今回で第三弾だそうですが、私が見るのは初めてです。束芋さんの世界観は好きなので、楽しみにしてました。

束芋さんの映像作品をバックに、森下真樹さんが振り付けたダンスを、鈴木美奈子さんが踊る・・・のですが、さらに生演奏付き。この音楽もとても好きな感じでした。かつての渋谷系みたいな。かと思うと、後半は人力ミニマル音楽に変わり・・・この中には意外な演奏者も。

そして、今回のダンサー、鈴木美奈子さんもとても魅力的でした。中性的でキュートな雰囲気と、洗練されていながらもキレッキレのダンス。何だか、この方の踊りをずっと見ていたい、と思わされるものがありました。

束芋さんの映像世界を出たり入ったりするダンサー。鳥、畳、伸び続ける蔓・・・。「錆は、還元されて鉄が酸化して安定な状態がかえろうとする過程に生じる結果である」ということがチラシに書かれていましたが、私はこの作品からは、なぜか少女の成長物語、を連想していました。そういや、とおいとおいむかしむかし、あたしにも少女の頃があったなぁ、みたいな(笑)。死ぬまで自由でいたい、と願ったあの頃・・・(爆)。

そんなわけで、それはそれは楽しい時間を過ごしました。終わった時には、もう終わっちゃうの?と寂しくなったくらいです。夏休みの終わりの子どもみたいに(笑)。でも、このコラボレーション企画、まだまだ続いていきそうな予感もします。どんな実を結ぶのか、見てみたい・・・。


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幸福は日々の中に。

2016-07-08 00:45:26 | 映画
シアターイメージフォーラムで「幸福は日々の中に。」を見てきました。

鹿児島県吉野町にある知的障がい者施設、鹿児島しょうぶ学園の日々を追ったドキュメンタリー。この施設ではとてもユニークな活動が行われています。日本各地でも公演を行っている「otto&orabu」という音楽隊、利用者による刺繍のプロジェクト「nui project」。東京都美術館でも展覧会が行われた、アート、クラフト。その他にもカフェや、ベーカリー、蕎麦屋などなど・・・。

そして、この施設の園長さんもとてもユニーク。若い頃はやんちゃされていた方のようですが(笑)。この園長さんがおっしゃっていた「ノーマルって何?」という問いかけが、心に重く残りました。世の流れはノーマライゼーションですが、それは本当に障がいを持つ人にとって幸せなことなのか?その「ノーマル」はあくまで障がいを持たない人にとっての基準でしかないのではないか・・・。

施設での日々を、カメラは淡々と追っていきます。繊細で美しい映像。静かで幸せな生活。日々慌ただしく、利益やら効率やらを追求する浮き世とはまるで別世界のようです。そして、そこで生まれるアートは無心の果てのようにも見えます。最初は違和感を感じても、だんだん慣れてきて、そのうち、いわゆる健常者によるアートが何やら作為的なものに思えてくるから、不思議なものです。

映画には「otto&orabu」の演奏シーンもあります。彼らには練習という概念がほとんどない、のだそうですが、練習も本番も変わりないくらいパワフルな演奏でした。渋さ知らズや、ノー・スモーキング・オーケストラを彷彿とさせるような音楽です。ラスト近くのライヴシーンでは一瞬、鳥肌が立ちました。otto&orabuは「音」と「おらぶ(叫ぶ)」からきた名前のようです。音楽ってもともとはそういうものだったんじゃないか・・・そう思わされるパワーがこのバンドの演奏にはありました。

この前に見た「リッスン」に続いて、何らかの障がいを持つ人の活動によって、アートの本質が見えてきそうな映画でした。「アートって何?」という問いはまだまだ続きそうです。もっとも彼らにとっては、そんな問いすら無用なものなのかもしれませんが・・・。





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絵とともに生きる

2016-07-07 00:02:43 | 美術
国立新美術館で「ルノワール展」を見てきました。

ルノワールをまとまった形で見るなんて、いつ以来のことでしょう・・・。というか、印象派の展覧会自体、もう何年も見ていないかも。でも、今回のルノワール展は、かなり充実した展覧会になっているらしい、ということで、いそいそと行ってきました。

展覧会は、肖像画、風景画、現代生活、デッサン、子供、花、女性そして裸婦、といったテーマに沿って展示されていましたが、たしかに教科書に載っていたかも、あるいは載っていそう、な作品が目白押しでした。今回、とりわけ痛感したのは、ルノワールはやっぱり生で見てなんぼ、人描いてなんぼ、の画家さんだなあ、と。どんな印刷もこの生の色彩には絶対にかなわない。そして、人物画がとにかく魅力的!私は肖像画がやや苦手で、そそくさと通り過ぎてしまうことが多いのですが、ルノワールの肖像画は、つい立ち止まってしげしげと眺めてしまいます。とことん人が好きな人だったんですかね・・・。

名作揃いの展覧会の中でも、目玉が「ムーラン・ド・ギャレットの舞踏会」。むかしむかし美術の教科書で見た記憶があります。文字通り、幸福を絵に描いたような光景。これを見て、なぜかラ・フォル・ジュルネの頃の東京国際フォーラム前、が思い浮かんでしまいました。かと思うと、「田舎のダンス」と「都会のダンス」が揃い踏み。これも相当久しぶりのことらしいです。「ぶらんこ」に描かれた光と影。そして「ピアノを弾く少女たち」も。これもいつか生で見てみたいという、憧れの作品でした。「ジュリー・マネ あるいは猫を抱く子ども」も愛らしい。そりゃ、こんな絵を描いてもらったら、一生手放したくないでしょうよ。猫が喉を鳴らす声まで聞こえてきそう。そして、最後の作品「浴女たち」。よく見ると構図が変な気もするのですが、そんなのもういい、と思わせられてしまう作品です。天上の光景・・・。

この展覧会を見に行ってから、既に一ヶ月近く経ってしまっているのですが、思い出すだけで、ほわわわわ〜ん、と幸せな気分になってしまいます。でも、実際に見ている時には、この一点曇りのない明るさが逆に辛くなったりもしました。ルノワール以外の作品もいくつか展示されているのですが、その中に毒を感じる作品があると、思わずほっとしている自分がいたりして・・・。これまでルノワールのことは、綺麗なもの、美しいものが大好きな幸せな画家さんだと思ってきました。でも、光の方を向き続けるというのは、もしかしたら、闇に流れるよりも強靭さが必要なのかもしれない・・・。

展覧会の最後で、「絵は見るものじゃない。一緒に生きるものさ。」というルノワールの言葉が紹介されていました。私などは絵を見るのは大好きですが、自分では全く描けないので、どうしても「見るもの」になってしまいますが、「一緒に生きる」となると、どんな光景が見えてくるのだろう、それはやはり幸せな人生なのだろうか・・・と、つらつらと考えてしまいました。

帰りに、美術館の近くの「デンメアティーハウス」に行ってきました。紅茶の専門店ですが、「相棒」の撮影にも使われたことがあるようです。本当にたくさんの種類の紅茶。相棒オリジナル紅茶もありましたね。私はザツハトルテとザツハブレンドをいただきましたが、さすがにおいしゅうございました。店内にはクラシック音楽がかかっていて、気分はすっかりウィーン・・・のはずなのですが、私の頭の中では、ついつい「相棒」のテーマ曲が鳴ってしまったのでした・・・。






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Progress

2016-07-06 00:02:31 | 音楽
Kokua「Progress」を聴きました。

本当に大人のロック・・・というか、大人の音楽だな〜、と思いました。そして、大人の自由、を表した音楽なのかも、とも。

「夢のゴール」不肖私めも、憧れの職業には就けなかったクチゆえ、この曲の歌詞にはいろいろと考えさせられるところがありました。「砂時計」の歌詞なんて、親が子に対して抱く感情そのものですよね。これほんとに凄い歌詞だわ・・・。「BEATPIA」このバンドの力が遺憾なく発揮された曲。どこまでも広がっていくような世界。「Stars」この曲をスガさんが歌うとこうなるか。「Kokua's talk」この手のフュージョン好きなんですよねぇ。しかし、このお洒落サウンドに、渋谷でラーメンって・・・(爆)。「黒い靴」この歌詞も凄い。ある2行に心をわしづかみされました。「私たちの望むものは」途中までふむふむと聴いていたのですが、突然歌詞が反転する。この世界観を理解できる日がくるのだろうか・・・。

そして最後は、やはり「Progress」。この曲を聞いていて、ある日、テレビでこの曲をスガさんが歌っているのを初めて見た時の、息子の反応を思い出してしまいました。6歳の子どもは、腕組みをして仁王立ちしながらじっと聴いていたのですが、曲が終わるとやおら一言、

「これとってもいいおうた!」

子どもにも大人にも伝わる音楽、ってある意味理想型なのかもしれませんね。と思っていたら、テレビにKokuaが出てきました。さてさて・・・。




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