aquamarine lab

アートネタなど日々のあれこれ

私はマリア・カラス

2019-01-28 01:02:58 | 映画
ル・シネマで「私はマリア・カラス」を見てきました。

言わずと知れた「ザ・歌姫」。その生涯を本人の手紙や関係者の証言、数々のプライベート映像から浮き彫りにしたドキュメンタリーです。それにしても、ドラマティックという言葉がこれほど似つかわしい人生って、他にないのでは・・・。ちなみに、カラスの手紙を朗読するのは「永遠のマリア・カラス」でカラスを演じたファニー・アルダン。時折、カラス自身の声を聴いているかのような錯覚に陥ります・・・(以下、ネタバレ気味です)。

スパルタ母の教育、よき師との出会い、持って生まれた美貌と才能、超人的な努力・・・成功するべくして成功したのだな、ということが実によくわかります。それだけでなく、率直でチャーミングな女性でもあったのですね。一方で、オナシスにメロメロになったあげく、散々振り回されたりもしています。それにしてもオナシス・・・悪い男だよ(笑)・・・でも、彼女にとっては運命の男だったのでしょう・・・。

でも、歌姫としてはとんでもなく凄かったということをあらためて思い知りました。特に、全盛期の凄さは圧倒的です。音楽のドキュメンタリーって、意外に音楽自体がどこかに行ってしまうことが少なくないのですが、この映画は音楽の映像も豊富でした。「トスカ」に「ノルマ」、「蝶々夫人」、「椿姫」に「カルメン」・・・何を歌っても歌そのもの、歌の化身みたいになるのですよね。「トスカ」は本当に鳥肌物でした。こんな歌手はもう二度と出てこないのかもしれない・・・そんな気すらしてしまいます。

一方で、頂点を極めた歌姫“カラス”と、一人の女性である“マリア”との間で常に揺れ動いていた人生でもありました。マリアとして生きるにはカラスは重すぎるの・・・芸術家は幸せになれないの・・・という言葉には胸を衝かれます。結局、女性としては幸せになり切れないようでもありましたが・・・。そして、53歳での若すぎる死。「歌に生き、恋に生き」そのままの人生でした。今となっては彼女の心の内を知る由もありませんが、歌姫様の輝きは永遠に・・・。
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廃墟の美術史

2019-01-16 00:29:31 | 美術
松濤美術館で「終わりのむこうへ:廃墟の美術史」を見てきました。

廃墟の美術史、というタイトルにつられて行ってまいりました。廃墟という言葉には、なんだか心惹かれる響きがありますよね。会場も思いのほか、お客さんが入っていました。世の中、案外、廃墟好きって多いのかも・・・。

会場に入ると、ホーホの「廃墟の風景と人物」が。一気に廃墟ワールドに引き込まれます。そして、廃墟といえばこの人、のユベール・ロベール「ローマのパンテオンのある建築的奇想画」も。独特の淡い光。ピラネージのローマシリーズも出ていましたが、このtoo muchな感じがたまりません。かと思うと、アンリ・ルソーの「廃墟のある風景」が。廃墟の絵なんて、描いてたんですね・・・。一方で、日本人の描いた廃墟の作品もありました。不染鉄の「廃船」も出ていましたね。木造建築の国、日本は廃墟とは無縁のような気もしていましたが、実は廃墟を描いていた画家もいたんだな、ということを初めて知りました。

廃墟といえば過去のこと、と思ってしまいますが、幻想のなかにも廃墟はありました。シュールな、時間軸の失われた世界。デルヴォーの「海は近い」は、独特の空の色に見入ってしまいます。マグリットやキリコの作品もありましたね。そして、最後は未来の廃墟。大岩オスカールの不思議な動物園。元田久治の細密画は廃墟となった渋谷。見慣れた風景が、いつかはこうなる、という静かな衝撃が。最後の野又穫の「Imagine」の前では、ずっと立ち尽くしてしまいました。うまく言葉にできないのですが、こういう絵をみたかったんだ、という作品です。終わりのむこうの世界・・・。

それにしても、なぜ、こうも廃墟の姿に心惹かれるのでしょうね。滅びの美、に惹かれるのでしょうか。世界の果てを、世界の終わりを見てみたい、という願望は、心のどこかに眠っているのかもしれません・・・。

さて、例によって、鑑賞後には甘いものを・・・ということで、「ガレットリア」でおやつにしました。ひさびさに塩バターキャラメルのクレープをいただきましたが、塩味と甘味のバランスが相変わらず絶妙で、美味しゅうございました・・・。
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