ひさびさに東京国立博物館で展覧会のはしごをしてきました。
最初に向かったのは東京国立博物館。本館で聖林寺十一面観音菩薩立像を見てきました。一目見た瞬間に息を吞むような、流れるような美しさ。この美しさは3Dじゃないと伝わりませんよね…。和辻哲郎「古寺巡礼」に人間のものならぬ美しさと書かれ、白洲正子をして世の中にはこんなに美しいものがあるのかとまで言わしめたというのも納得の美しさです。東京で展示されるのは初めてのことだそうですが、本当に見られてよかった…。展覧会では明治時代の神仏分離で離ればなれになっていた法隆寺蔵の菩薩立像、正暦寺蔵の日光菩薩・月光菩薩の三輪山信仰のみほとけたちも感動の再会。いろいろな意味でありがたい展示でした。
続いて平成館で「聖徳太子と法隆寺」を見てきました。この展覧会は聖徳太子の1400年遠忌を記念して開催されましたが、聖徳太子の展覧会の決定版ともいえそうな充実した内容でした。国宝・重文も数多く出ていましたね。会場に入るとまずは美しき如意輪観音菩薩半跏像がお出迎え。国宝の聖徳太子座像、薬師如来坐像、四天王立像も。そしてなんと天寿国繍帳が…。色も鮮やかな浄土の光景。それに橘夫人念持物厨子まで…。他にも愛らしくも賢げな太子の二歳像、釈迦の遺骨という南無仏舎利、止利仏師系のアルカイックな菩薩立像などなど、見どころがたくさん…長きにわたって脈々と続く太子信仰の世界を概観できる展覧会でした。昔読んだ「日出処の天子」をなつかしく思い出しながら見ていましたが、やはり聖徳太子って今も昔も日本史上最も神秘的な存在なのかもしれませんね…。
最後に東洋館で「イスラーム王朝とムスリムの世界」を見ました。マレーシア・イスラーム美術館の全面協力で実現した世界規模のイスラム美術の展覧会。9世紀頃から現代に至るまでの作品が幅広く紹介されています。日本で暮らしているとイスラム圏は比較的なじみの薄い世界ですが、広大な世界だったのだなとあらためて目を見張らさせられる思いでした。ウマイヤ朝とかアッバース朝とか、高校時代の世界史の授業の記憶がうっすらよみがってきたりも…イスラムの歴史を一気通貫で学ぶことはなかなかないので、いい機会でもありました。全体的にきらびやかな作品が多かった(特にジュエリー!)ですが、面白かったのがイスラーム書道芸術。いろいろとお作法がある世界のようですが、作品は複雑精緻。イスラム書道芸術の展覧会とかもいつか見てみたい気がします…。