aquamarine lab

アートネタなど日々のあれこれ

アートなんかいらない!

2022-09-26 00:30:40 | 映画
ヒューマントラストシネマ渋谷で「アートなんかいらない!」を見てきました。

なかなかに刺激的なタイトルの映画です。この作品の監督である山岡信貴氏は縄文文化にハマる8年間を過ごすうちに、いつしか「アート不感症」に陥っていたのだとか。アートに接しても何も感じない、それどころか何を面白いと思っていたのかすらわからない…。監督にいったい何が…と半ば好奇心に駆られて行ってまいりました(以下、ネタバレ気味です)。

パンデミックの中、アートについて考えてみたというこの映画は2部作になっています。Session1は「惰性の王国」。映画はモーツァルトのレクイエムをBGMに何やらものものしくスタートします。そして、荒川修作氏の天命反転住宅を俯瞰で撮っているのですが、これが美しい…。このSessionではおもに日本でのアートをめぐる諸問題の考察と荒川氏がアートを捨てた理由の検証とが行われています。大地の芸術祭やあいちトリエンナーレの関係者などがインタビューに答える一方で、アートは必要とされているのか、という監督の問いが繰り返されます。アートはもはや○○○引越センターよりも、○○○ネイチャーよりも必要とされていないのではないか、という突っ込みが切ない…(さすが関西の方です)。そして、一緒に暮らすならモナ・リザよりも○○○○○と暮らしたい、と天命反転住宅の住人の驚愕の正体が明かされます…。

Session2 は「46億年の孤独」。今度は清らかなアリアの調べにのせて長崎の平和公園の光景からスタートします。なまはげ、蜂の巣アート(?)…いわゆる「アート」の周縁にあるものを「あーと」と呼び、あーと>アートの構図が示されます。ラスコーの洞窟絵画から縄文土器、さらには人工知能によるアートの可能性…などなど、めまぐるしく話は展開します。宗教学者の鎌田東二氏や理論物理学者の佐治晴夫氏も登場し、壮大な話へ…ローカル、グローバルを超え、もはやユニバーサルな展開です。結局、アートとは何だったのか…人間の自意識が創りあげた虚像なのか…かのドビュッシーは芸術とは最も美しい嘘、という言葉を残していたそうですが。あーとは常に人類とともにある存在なのかもしれませんが、一部をアートと呼び美術館の中に閉じ込めた時に何かしら違うものになっていったのやもしれません…。

そんなわけで、いろんな意味で刺激的な映画でした。そういえば私も展覧会を見るのは大好きなのですが、思えば年々、見る数は減っていました。展覧会に行くこと、心を動かされることさえ気が付けばルーチンになりつつあったような気すらします。恐ろしいことに…。アートを美術館で見られるようなものに限定すれば、いずれ飽和状態(お腹いっぱい)になるのは自明だったのかもしれませんが。それでもいまだ見たことのないものを見てみたい、という衝動は残っているのです…AIか宇宙人か、はたまた知られざるアーティストか市井の人によるものかはわかりませんが…。
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バグダッド・カフェ

2022-09-23 14:51:33 | 映画
目黒シネマで「バグダッド・カフェ」を見てきました。

かの名曲“Calling you”…私もめちゃくちゃ好きな曲です。もはや神曲といってもいいこの曲、私はホリー・コールのバージョンで知ったのですが、原曲ももちろん素晴らしい。何度も何度も何度も聴きました…が、肝心の映画の方を見たことがなく…長年、ずーっと気になっていたのですが、何かとタイミングが合わず、今回、ようやく見に行くことができました。

私にとっては長らく幻の映画だったこの映画、いつしか妄想によるストーリーができあがっておりました。主人公は翳りのある中東系のスレンダー美女。砂漠に突如、蜃気楼のように現れたカフェで働く彼女のことを最初は警戒していた地元の人々。しかし、寡黙な彼女には不思議な魅力がありました。人々も次第に心を開き始め、交流が生まれるようになったさなか、彼女の驚きの過去が明らかに…みたいな展開かと勝手に想像していましたが、だいぶ違ってました…(以下、ネタバレ気味です)。

いつも不機嫌でガミガミと怒ってばかりいる黒人女性のブレンダ、スレンダーの反対みたいな白人女性のヤスミン…という、およそ映画の主人公とはかけ離れたタイプの女二人の友情物語…。それにしても、本当に不思議な映画でした。砂漠ではいろんなものがこんな風に見えるんだろうな、という独特の色彩、傾いた画面。そして音楽…オープニング、砂漠の映像とともにcalling youが流れた時の感動…あの歌詞の意味がこの映像とセットになって、ようやく腑に落ちたという感じでした。この映画にしてこの音楽あり(そしてその逆も)、映画と音楽のマッチングでこれ以上のものってなかなかないような…。随所で音楽が効果的に使われていました。コミカルな場面で流れるユーモラスな曲、そしてブレンダの息子が弾くバッハの平均律。おんぼろピアノから流れる平均律は最後、夢のように響いてましたね…。音楽だけなく絵画も魅力的。元ハリウッドの背景担当の老画家が描いたヤスミンの絵はまんまボテロのよう…。

この映画の不思議な浮遊感と世界観は本当に唯一無二…そして、ひさにびさに映画を見て泣きましたよ…映画を見てうるうるくることはあるのですが、泣くことは滅多にないし、そもそも最後に泣いたのがいつだか思い出せないくらいなのですが…。気がついたら、あるシーンで勝手に涙が出てました。ストーリーも演技も映像も音楽も、全てが魔法のようなこの映画、見終わった後、今は亡き水野晴郎さんのあの名ゼリフがしばし頭の中で鳴っておりました…。
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アザー・ミュージック

2022-09-19 22:24:55 | 映画
シアター・イメージフォーラムで「アザー・ミュージック」を見てきました。

2016年に閉店したNYの伝説的レコードショップ「アザー・ミュージック」の波乱万丈の21年間の歴史を追ったドキュメンタリーです。「アザー・ミュージック」とは、「その他の音楽」のこと。大手レコードチェーンのタワーレコーズの斜向かいにあるこのレコードショップは、メインストリームの音楽とは異なる音楽を紹介していました。店はいつしか音楽好きの人々が集うコミュニティーとなり…(以下、ネタバレします)。

パワフルなジョシュ・マデルとシャイなクリス・バンダルー。ともに音楽好きながら対照的な性格の二人が1995年にアザー・ミュージックを創業しました。当時のNYにはインディペンデントな音楽を扱うショップがあまりなく、そういう音楽を若い人々に紹介したい、というのが動機だったようです。「音楽の見方を変えたい」ということも言っていましたね…。このショップは品揃えも分類の仕方も独特でした。海外の音楽、古い音楽なども扱い、普通のショップなようなジャンルごとの分類はせず、「In」「Out」「Then」といった分類の仕方をしていました。ちなみにInはインディーズ、Outは実験的な音楽、Thenは古い音楽のことでした。もっとユニークなのは店員たち。変人っぽいものの、驚きの音楽知識と音楽愛を持つ彼らの接客に押しつけがましさは微塵もなく、実にフレンドリーにおすすめの音楽を紹介しています。

アザー・ミュージックは、2000年頃にはインディーシーンの拠点の一つとなってシーンに影響を与えるようになります。当時はインストアライブも行われ、リスナーとの交流の場にもなっていました。バンドのメンバーが店員だったことも。しかし、2001年の同時多発テロを経て街の雰囲気が変わり始め、さらにネットの普及がレコードの売上にも影響を与えるようになります。そして、タワレコが倒産。これがアザー・ミュージックの客足にも響きました。一時、オンラインショップにも手を出しましたが、あまりうまくいかず…(やめる時はルー・リードから困るんですけど、というメッセージがあったそうですが)。元々、フィジカルメディアを好むタイプの客が多かったのです。店が苦境に陥ると、経営者の二人は店員たちに給料を払うため、自分たちは無給で働き、妻たちの稼ぎでしのいでいました。しかし、ついに閉店を決断…。閉店の時に、アザー・ミュージックのトップセラーのリストが書き出されていました。1位はベル&セバスチャン。Boads of Canadaとかもランクインしてましたね…。フェアエル・コンサートにはオノ・ヨーコさんも登場。相変わらず元気にシャウトしてましたね…。

お金を払わずに音楽を聴くのが当たり前の時代になったことが、アザー・ミュージックの息の根を止めることになったかと思うと切ないですが…。自分も無償で聴ける音楽の恩恵を多々受けていますが、一方で、レコード屋で運命の出会いをはたしたミュージシャンもいるのです…。これからは創り手と聴き手がダイレクトにつながることが増えてきそうですが、それでも、形は変われど音楽と人とをつなぐ仕事は続いていくのだろうし、そのありがたみを忘れずにいたいものです…。
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アメリカン・エピック

2022-09-18 10:26:34 | 映画
角川シネマ有楽町で「アメリカン・エピック①②③」を見てきました(上映は既に終了しています)。

この映画も「Peter Barakan's Music Film Festival 2022」で上映されていました。1925年に電気による録音が可能になったことで、アメリカで各地の音楽を記録したレコードが製作されるようになったプロセスを辿るドキュメンタリーです。エピソード1から3まではアメリカ各地の音楽の歴史、4は当時の機材を用いて現役のミュージシャンが当時の曲を演奏する姿を記録しています。私は時間の関係で、今回、1~3まで見ました(以下、ネタバレ気味です)。

エピソード1は「ザ・ビッグバン 元祖ルーツ・ミュージックの誕生」で、主にフォークやカントリー、ジャグバンドの歴史を描いています。アメリカ白人バンドの元祖・カーターファミリーが登場しますが、当時の映像がけっこう残っているのですね。サラの天使のような歌声と姿に一目惚れしたセールスマンのアルヴィンが彼女と結婚、音楽活動を始め、いとこのメイベルも加わって…という映画のような展開ですが、元々は生活に根ざした音楽だったということが分かります。彼らを見出したのはプロデューサーのラルフ・ピアですが、彼はその後レコーディングの歴史において重要な役割を果たすことになります。続いてメンフィス・ジャグ・バンドが登場しますが、彼らもラルフ・ピアに見出されています。ジャグ(水差し)やら洗濯板やらを楽器にしてしまうストリート・ミュージシャン根性、今見てもやはり凄い…。

エピソード2は「「血と土」過酷な労働から生まれたブラック・ミュージック」で、ブルーズやゴスペルの歴史を辿ります。チャーリー・パットンやロバート・ジョンソンも登場。個人的にはディジー・ガレスピーとゴスペルのつながりの話がツボでした。炭鉱夫たちの歌の記録も残されています。ブルーズじーちゃんたちのぼやきの場面も。「最近の若いもんはブルーズ分かっちゃいねえ」「テンポ早すぎだし」「音詰め込みすぎだし」「ラバ引いたことない奴にブルーズなんてやれっかよ」。思わずラバとロバの違いさえ分からないわが身を省みてしまいましたよ…。

エピソード3は「多民族国家アメリカ」で、ケイジャンやネイティブ・アメリカン、ハワイアン、テノハの音楽などが取り上げられおり、アメリカの多民族っぷりを目の当たりにさせられます。ホピ族が彼らの秘儀を公開することによって、その存続が認められたという痛ましい場面もありました。ミシシッピ・ジョン・ハートの素朴な佇まいにも心を打たれます。かと思えばハワイアンのスティール・ギター誕生秘話も。最後は宇宙に送られたレコードの話で終わります。そのレコードに録音された音楽は…。

エピソード1~3を通して見て、あらためてアメリカという国の広大さ、ルーツの多様さを思い知らされました。そこから生まれた多様な音楽がレコードという媒体を得たことで、世界中に拡散していく…そのダイナミズムは大河ドラマを見るかのようでもありました。人はなぜ音楽を必要するか、ということの原点を見たようでもあり…。それにしても、エピソード4を見られなかったのが残念…と嘆いていたら、11月に再開する恵比寿ガーデンシネマで上映されることになったようです…ありがたや、ありがたや…。
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ママ・アフリカ

2022-09-17 17:01:06 | 映画
角川シネマ有楽町で「ミカ・カウリスマキ/ママ・アフリカ ミリアム・マケバ」を見てきました(上映は既に終了しています)。

「ママ・アフリカ」と呼ばれた南アフリカの歌手、ミリアム・マケバのドキュメンタリーです。今回、「Peter Barakan's Music Film Festival 2022」で上映されていました。彼女のことは映画「ソウル・パワー」で知ったのですが、ミカ・カウリスマキがドキュメンタリーを制作していたとは…ということで、行ってまいりました(以下、ネタバレします)。

この映画はミリアム・マケバの波乱万丈の人生を丹念に追っていきます…ミリアム・マケバは南アフリカで祈祷師をしていた母親の元に生まれましたが、生後まもなく密造酒の販売で逮捕された母とともに数か月を刑務所で過ごすことになります。この母親も歌を歌っていたらしく…かの地では歌と祈りがセットになっているようです…ミリアムの歌唱力は母譲りなのかもしれません。それにしても天性の歌声ですよね…彼女の歌声を聴いていると目の前にぱーっとアフリカの草原が開けてくるようです。ミリアムはジャズ・グループのメインボーカルを経て、女性だけのグループで活動した後、ソロ活動で成功を収め、ドキュメンタリー映画「カムバック、アフリカ」に密かに出演して国際的な評価を得ます。そして、「パタ・パタ」が大ヒット…もっとも彼女自身は「歌詞に意味がない」と言って、あまり気に入ってはいませんでした…歌詞の意味を重視するタイプだったのかもしれません。その後、反アパルトヘイトの活動をしていたことで国外追放されてしまい、長らく祖国の地を踏むことが叶いませんでした。南アフリカの人々は隠れて彼女のレコードを聴いていたのだそうです。ミリアムはアメリカで成功を収めますが、活動家のストーク・カーマイケルと結婚したことで、仕事を干されてしまいます。この時、当時のギニアの大統領が救いの手を差し伸べたため、夫婦でギニアに移住し、演奏活動を続けました。

ミリアム・マケバは「政治のことは歌わないが、事実は歌う」というスタンスを貫いていました。一方で、国連でスピーチをして南アフリカの窮状を訴え、パン=アフリカ的な理想郷を実現するべく、アフリカ各国の大統領と懇意にし、彼らとのネットワークも築いていました。31年に及ぶ国外追放の後に、ネルソン・マンデラの招きにより、母国への帰還が叶いますが、いつしか時代は変わり、アフリカ各国が独立するスタンスへと変わっていき、彼女の夢は実現しませんでした…。

素晴らしい歌声と人柄で多くの人に慕われた彼女のことを、娘のギボンは単なる母ではない、アフリカの母だと言っていましたね…。いつでも客に料理をふるまえるよう冷蔵をいっぱいにしていたというミリアム。若手のミュージシャンの育成にも熱心だった彼女は、彼らとステージに立った後、突然倒れ、その生涯を終えます。享年76歳。ママ・アフリカは去り際もまた、みごとでした…。
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ベルベット・クイーン

2022-09-12 22:41:53 | 映画
K‘s cinemaで「ベルベット・クイーン ユキヒョウを探して」を見てきました。

夏の疲れも出てきた今日この頃、涼しげな映画で癒されたい…と思い、行ってきました。この映画は、野生動物写真家のヴァンサン・ミュニエと作家で地理学者でもあるシルヴァン・テッソンが野生動物の保護区であるチベット高原を旅する姿を追ったドキュメンタリーです。絶滅したと思われていたユキヒョウを追う二人の前に現れたのは…。そして、この映画では世界的ユニット、ニック・ケイヴ&ウォーレン・エリスが音楽を手がけています。彼らはこの映像を見て、全編をオリジナル・スコアで手掛けることを決めたのだそうです(以下、ネタバレ気味です)。

チベット高原を横断する二人の前にはさまざまな動物が現れます。ノヤク、バーラル、チルー、チベットスナギツネ、マヌルネコ、タイリクオオカミ、ナキウサギ、クチグロウサギ…ノヤクがこっちに向かって走ってきた時は怖かったし、スナギツネはやっぱり○○をしていたし、マヌルネコは愛らしい見かけによらず意外に獰猛だし…ナキウサギやクチグロウサギはやはり可愛かったし。動物たちの楽園のような地でもやはり食う・食われるの関係は存在していますが、そういうシーンは最小限に抑えられています。雪に覆われたチベットの荒野に隠しカメラを仕掛け、二人はユキヒョウが現れるのを待ちます。一度、通りがかりのユキヒョウがあーんとあくびをする姿が映るのですが…ひたすら待ち続ける彼らにはたして奇跡は訪れるのか…。

映像も音楽も素晴らしく、想像していた以上に繊細で美しい映画でした。チベットの雄大な自然、行きかう野生動物たち、地上にはまだこんな地が存在していたのですね…。二人の旅を綴るテッソンの言葉は哲学的な趣すら帯びています。神と人と動物と…その輪からいつしか外れてしまった人間たち。この映画では人間たちも動物たちから観察されています。そして、厳寒のチベットでユキヒョウを待ちながら、「待つことは祈り」と…本当に出会いたいものを待つ時は、待つことすら幸せなのかもしれません…。

この日は新宿伊勢丹の近くの「coffee lounge lemon」に寄ってきました。スノウモンブランというケーキとアフリカン3というコーヒーを頼みましたが、どちらも美味しゅうございました。本当に美味しいコーヒーを飲んだ時って、日頃の疲れがぶっとぶような心地を覚えるものですが、こちらのコーヒーもそんな一杯でした…。
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約束の旅路

2022-09-03 21:16:51 | 映画
TOHOシネマズシャンテで「ブライアン・ウィルソン 約束の旅路」を見てきました。

ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンのドキュメンタリーです。彼の長年の友人でローリング・ストーン誌の編集者だったジェイソン・ファインと西海岸をドライブしながら人生を振り返るという映画ですが、ドライブミュージックはブライアン・ウィルソン自身が選曲しています。インタビューにはブルース・スプリングスティーン、エルトン・ジョン、ドン・ウォズ、ジェイコブ・ディランなども登場…(以下、ネタバレ気味です)。

ブライアン・ウィルソンも今年で御年80歳…ぱっと見、普通のアメリカのおじいちゃんのようにも見えるのですが、インタビューからはかなり繊細なお人柄がうかがえます。インタビュアーのジェイソン・ファインのことは本当に信頼しているようで、だからこそ、この映画が成立したのかもしれません…。

映画に登場しているミュージシャン達も称賛を惜しみません。ブルース・スプリングスティーンは「ビーチ・ボーイズはロックンロール史上最高の音楽」と言い、エルトン・ジョンは「まったく新しい音楽で別世界へいざなった」と。もっともエルトン・ジョンはピアノを売られそうになったことがあるらしいですが…。ドン・ウォズは「これまでにない音の組み合わせを編み出した」と。彼が「神のみぞ知る」の各コーラスパートの音を確認しながら参った、みたいな顔をしているシーンもありましたね…。

今聴いても、ビーチ・ボーイズの音楽は天上の音楽のように響きます。とりわけ、あの摩訶不思議なハーモニーは唯一無二。生きる喜びそのもののような音楽を創った彼自身の人生は苦難の連続でもありました。父親との確執、二人の弟の死、離婚、薬物中毒、精神疾患と洗脳騒動…。生きてるのが不思議、みたいな人生でもあります。それでも音楽を続け、この年齢になっても「ロックンロールをやりたい」「いいアルバムつくりたい」と言うブライアン・ウィルソン。彼にとってのロックンロールとはチャック・ベリーやリトル・リチャードのことなのだそうです…。リンダ・ペリーは「ミュージシャンには二通りいる。現れては消えていくミュージシャンと、本物のミュージシャン」と言っていました。ミュージシャンとは職業の場合もあるかもしれないし、生き方でもあるかもしれない…が、最後はもはや体質なのでは、とすら思えてきます。天才ブライアン・ウィルソンはおそらく最期まで音楽とともに生きていくのでしょう…。
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