シネマート新宿で「ZAPPA」を見てきました。
フランク・ザッパ初の遺族公認ドキュメンタリーです。ザッパの人生を追ったドキュメンタリーはこれまで存在していなかったようなのですが、監督のアレックス・ウィンターはザッパ・ファミリ―の協力により、膨大なアーカイヴへの独占的アクセス権を得て、5年以上の歳月をかけてこの映画を作成しました。それにしても、まさかザッパのドキュメンタリーを日本の映画館で見られる日が来ようとは…(以下、ネタバレ気味です)。
この映画ではザッパの子供時代まで遡ってその人生を追っています。少年の頃からゾンビ映画?を撮ったり、高校を爆破しようとしたり、と変人ぶりを発揮していたザッパが、オーケストラの曲を書き始めたのはエドガー・ヴァレーズのアルバムがきっかけでした。ザッパって、実は根は現代音楽家だったのでは、とすら思えてきます…よりによってエドガー・ヴァレーズだし。後年、「Valley Girl」が思わぬヒットをとばした時も、その収益をロンドン交響楽団とのオーケストラ・アルバムにつぎ込んでいました。前立腺癌の末期に行われたThe Yellow Sharkのオーケストラコンサートの時には見たことのないような感無量の表情を浮かべていましたね…。
ザッパの音楽に対するスタンスは商業主義とは常に一線を画していました。ヒット曲を書くことは眼中になく、音楽業界がやっていることは音楽ではない、とまで言っていました。そして、彼の願いは実にシンプルでした…作った曲全てのいい演奏といい録音をする、そしてそれを家で聴く、聴きたい人がいたらすばらしい…。とはいえ、ザッパの活動は音楽にとどまるものではなく、PMRCによる音楽の検閲の問題に関しては主要な論客として公聴会にも臨んでいます。また、チェコスロバキアの革命も影響を与えていたらしく、かの地では熱烈に尊敬されていたようです。映画でもチェコスロバキアでのライブのシーンが使われていましたね…。
ザッパに関しては天才かつ奇人変人、というイメージしかなかったのですが、この映画を見て、人間的な面もある程度は知ることができました…が、まだまだ謎が多い人物です。結局、真実はザッパの遺した音楽にあるということでしょうか…。複雑怪奇だけど、一瞬、天上の世界を垣間見せてくれるような音楽。ザッパの音楽を熱愛していたルース・アンダーソンがピアノで弾いたBlack pageの美しかったこと…。
さて、例によって、鑑賞後は甘いもの…のはずだったのですが、この日は時間がなく、お向かいの伊勢丹の地下にある「メゾン・ランドゥメンヌ」のクイニ―・アマンを買って帰りました。外はカリカリ、中はしっとりで甘いシロップがいい感じに染み込んで美味しゅうございました。