aquamarine lab

アートネタなど日々のあれこれ

ZAPPA

2022-04-30 23:59:57 | 映画
シネマート新宿で「ZAPPA」を見てきました。

フランク・ザッパ初の遺族公認ドキュメンタリーです。ザッパの人生を追ったドキュメンタリーはこれまで存在していなかったようなのですが、監督のアレックス・ウィンターはザッパ・ファミリ―の協力により、膨大なアーカイヴへの独占的アクセス権を得て、5年以上の歳月をかけてこの映画を作成しました。それにしても、まさかザッパのドキュメンタリーを日本の映画館で見られる日が来ようとは…(以下、ネタバレ気味です)。

この映画ではザッパの子供時代まで遡ってその人生を追っています。少年の頃からゾンビ映画?を撮ったり、高校を爆破しようとしたり、と変人ぶりを発揮していたザッパが、オーケストラの曲を書き始めたのはエドガー・ヴァレーズのアルバムがきっかけでした。ザッパって、実は根は現代音楽家だったのでは、とすら思えてきます…よりによってエドガー・ヴァレーズだし。後年、「Valley Girl」が思わぬヒットをとばした時も、その収益をロンドン交響楽団とのオーケストラ・アルバムにつぎ込んでいました。前立腺癌の末期に行われたThe Yellow Sharkのオーケストラコンサートの時には見たことのないような感無量の表情を浮かべていましたね…。

ザッパの音楽に対するスタンスは商業主義とは常に一線を画していました。ヒット曲を書くことは眼中になく、音楽業界がやっていることは音楽ではない、とまで言っていました。そして、彼の願いは実にシンプルでした…作った曲全てのいい演奏といい録音をする、そしてそれを家で聴く、聴きたい人がいたらすばらしい…。とはいえ、ザッパの活動は音楽にとどまるものではなく、PMRCによる音楽の検閲の問題に関しては主要な論客として公聴会にも臨んでいます。また、チェコスロバキアの革命も影響を与えていたらしく、かの地では熱烈に尊敬されていたようです。映画でもチェコスロバキアでのライブのシーンが使われていましたね…。

ザッパに関しては天才かつ奇人変人、というイメージしかなかったのですが、この映画を見て、人間的な面もある程度は知ることができました…が、まだまだ謎が多い人物です。結局、真実はザッパの遺した音楽にあるということでしょうか…。複雑怪奇だけど、一瞬、天上の世界を垣間見せてくれるような音楽。ザッパの音楽を熱愛していたルース・アンダーソンがピアノで弾いたBlack pageの美しかったこと…。

さて、例によって、鑑賞後は甘いもの…のはずだったのですが、この日は時間がなく、お向かいの伊勢丹の地下にある「メゾン・ランドゥメンヌ」のクイニ―・アマンを買って帰りました。外はカリカリ、中はしっとりで甘いシロップがいい感じに染み込んで美味しゅうございました。



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見えるもの、その先に

2022-04-29 18:46:44 | 映画
ユーロスペースで「見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界」を見てきました。

不肖わたくし、ヒルマ・アフ・クリントのことは何も知りませんでした。それもそのはず…彼女は自分の革新的な作品を世に公表することはなく、死後20年間も世に出さないようにと言い残してこの世を去り、近年になって、突如、世界に発見されることになった画家なのです…(以下、ネタバレ気味です)。

ヒルマ・アフ・クリントは1862年にスウェーデンに生まれ、王立美術院で美術を学び、当時では珍しい女性の職業画家として、伝統的な絵画を描いて成功していました。若い頃から霊的世界や神智学に興味を持っていましたが、妹を亡くしたことでさらに神秘主義に傾倒、独自の表現を始めます。独自の表現…とは、カンディンスキーやモンドリアンより早く抽象画を描いていたということのようですが、いわゆる抽象画とも違う強烈なオーラを感じさせる作品です。抽象画とも宗教画とも違う、スピリチュアル絵画とでも言うべきか…。神智学の影響を深く受けていた彼女はオートマティスムによる作品制作も行っていたようです。独創的な絵画表現を目指した作品というよりは、神秘主義を絵画で表現したものが彼女の作品だったのでは、とすら思えてきます…。

彼女の絵画がなぜ近年まで受け入れられなかったのか?について、キュレーターや美術史家などがさまざまな考察を加えています。「女性の」作品が美術史を塗り替えたということが、美術業界には受け入れ難かったという結論のようですが、果たして彼女の作品が男性のものだったら違う結果になっていたのか?という疑問も残ります。実際、彼女の伝統的な絵画に関しては、評価は高かったようです。結局、早すぎた、そして異質すぎたということになるのかもしれません。彼女の死後、甥が作品を美術館に寄贈しようとしたところ、霊媒師の作品はいらない、といって断られたのだそうです…。

いずれにしても、彼女の作品は神秘的で美しい。そして彼女の遺した言葉もまた神秘的で美しい。その言葉の数々が映画の中でも紹介されています。自然を終生の友として独身を貫き、スピリチュアルな人生を送った姿に、ふと、レーチェル・カーソンのことを思い出したりもしました…。

さて、例によって、鑑賞後は甘いもの…ということで、東急本店の中にある「丸福珈琲店」に行ってきました。ブレンドとミニプリンを頂きましたが、ドリンクとデザートの相性もよろしく、美味しゅうございました。そういえば、東急本店も来年、閉店するらしいです。何やら時の流れを感じますね…。
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ブンミおじさんの森/光りの墓

2022-04-18 01:16:39 | 映画
シアター・イメージフォーラムで「ブンミおじさんの森」と「光りの墓」を見てきました。

アピチャッポン監督の映画は「世紀の光」を見ているのですが、他の作品もそのうちに、と思っているうちに、いつの間にか年月が過ぎていき…「世紀の光」は6月で上映権が切れるそうだし、他の作品も見られるうちに見ておこう…と意を決して行ってまいりました。

「ブンミおじさんの森」がカンヌでパルムドールを獲ってからはや10年以上過ぎていますが、今見てもやはり新鮮な作品です。腎臓の病で先の長くないブンミおじさんが、義妹とその息子と食卓を囲んでいると、亡くなった妻の幽霊や、異形と化した息子が現れて…という展開で、明確なストーリーがあるわけではないのですが、夢幻というか幽玄というか、見たことのないような、それでいて懐かしいような世界が立ち現れます。シークエンスのつなぎも絶妙で、何だかもう天才としか言いようのない感じ…鬱蒼とした森、降りしきる滝、暗く流れる川、仄暗い洞窟…。難解といえば難解な映画なのかもしれませんが、ほぼ何も考えずに見ましたね…人間と精霊がともに暮らす世界、この世もあの世も前世も来世もすべて地続き…この映画を見ているとそのことが不思議と腑に落ちるのです。

「光りの墓」はタイの東北部の病院を舞台にした作品です。設定といい雰囲気といい、「世紀の光」に似ていますが、続編的な位置づけなのでしょうか。主人公のジェンが原因不明の眠り病にかかった兵士の世話をする傍ら、前世の記憶を見ることができる若い女性と交流を始め…という展開ですが、こちらも明確なストーリーがあるわけではありません。この映画を見ていると夢と現の境界が曖昧になってくるような感覚に陥ります。病院の地下にはかつて王の墓があったという設定で、政治的な風刺も込められているようなのですが…。何よりもタイの自然がひたすらに美しい。そして、光の色合いが独特で、何とも不思議な懐かしさを感じさせます。この映画はアピチャッポン監督のタイ時代の最後の作品となりました。

ところで、この二本の映画、ともにラストにエモ~いポップソングが流れていました。「世紀の光」のラストはニール&イライザでしたが、今回の二曲は誰の曲だったのかなぁ…。
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ダイナソーJr./フリークシーン

2022-04-10 01:49:15 | 映画
シネマート新宿で「ダイナソーJr./フリークシーン」を見てきました。

オルタナティブ・ロックバンド、ダイナソーJr.の公式ドキュメンタリーです。不肖わたくし、ダイナソーJr.のことは何も知りませんでした。諸事情により近辺で時間をつぶさなくてはならなくなり、映画でも見るかな、と探してみたら、この映画がうまい具合にヒットし…轟音バンドは苦手なので少々不安だったのですが、思いのほか胸熱の展開に感動…(以下、ネタバレ気味です)。

ダイナソーJr.は1984年にマサチューセッツで結成されました。元々はダイナソーという名前でしたが、同名のバンドがあったため、バンド名を変更しなくてはならなくなり、最後にJr.をくっつけたんだとか。オリジナル・メンバーはJ・マスキス(G/Vo)、ルー・バーロウ(B)、マーフ(D)の3人ですが、天才肌のJ.マスキスが中心になっていました。そのJ・マスキスのギターの音量があまりにも大きかったため、他の2人もボリュームを上げざるを得なくなり、結果的にとんでもない轟音バンドに…クラブから出禁を食らうこともあったようです。轟音サウンドにダルいボーカルによって歌われるポップなメロディが乗るという何とも不思議な音楽ですが、彼らはあくまで「俺たちは客を襲うためにバンドをやっていた」のだとか。そんな彼らがソニック・ユースに見出され、ツアーを行うまでになるのですが、そのツアー中に3人の人間関係が崩壊、ルーとマーフはバンドを脱退することに…。

新メンバーを加えてダイナソーJr.は活動を継続しますが、以前のような勢いはなく、活動は後退していきました。フロントマンかつカリスマのあるJ・マスキスがいれば他のメンバーは替えがききそうにも思えますが、やはりそうはならなかったようです。音楽以外のコミュニケーションがほとんど成り立たない3人であっても、彼らが揃うことによって生まれるサウンドが確実にあったのでしょう…。その後、3人それぞれが人生の紆余曲折を経て、2005年に再集結することになりました。このシーンが何とも胸熱でしたよ…何だかんだいって家族のようなものだったんでしょうね…Jは機能不全家族に例えていましたが。にしても、バンドって不思議なもんですよね…仲違いしていようが、どれだけ年月を経ていようが、一緒に音を出すと瞬時に時を遡ってしまうという…。

若い頃には「楽しくてバンドをやっているわけじゃない」というメンバーもいましたが、歳を重ねて皆、人間丸くなったのか、悟りを開いたのか…とんがりまくっていたJも聴いてくれる人が幸せになってくれれば、と言っていました。音楽とアートは天からの贈り物、という言葉も。音楽があれば、歳を重ねるのも悪いことばかりじゃないかもですね…。
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ブルーノート・ストーリー

2022-04-09 18:20:40 | 映画
角川シネマ有楽町で「ブルーノート・ストーリー」を見てきました(上映は既に終了しています)。

なんとヴィム・ベンダースがプロデュースしたブルーノートの映画、ということで、いそいそと行ってまいりました。ブルーノートを扱った映画としては「ブルーノート・レコード」が数年前に公開されましたが、「ブルーノート・ストーリー」はレーベル創設者のアルフレッド・ライオンと写真家のフランシス・ウルフの二人を主人公として、インタビューやアニメーションによって構成されています(以下、ネタバレ気味です)。

映画は二人の生い立ちから始まります。ベルリンで生まれた二人はともに音楽好きで意気投合し、親友になりました。その後、ライオンはアメリカにわたり、ブルーノートを設立。ユダヤ系のウルフはナチスの迫害を逃れ、アメリカのライオンの元へとわたりました。ウルフの両親は後に処刑されたそうです…。白人の二人がある意味、黒人至上主義ともいえるブルーノートを率いたことを不思議に感じていましたが、ユダヤ人と黒人、ともに差別される側だった人間がジャズという音楽を通じて結びついたということかもしれません。そういえば、映画の中でハービー・ハンコックが「ジャズは差別する人間への最高の復讐」と語る場面もありましたね…。

映画にはハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、ソニー・ロリンズ、クインシー・ジョーンズといった錚々たるミュージシャンが登場、ブルーノートへの愛を語ります。ライオンとウルフには音楽の素養はなかったようですが、音楽を聴き分ける耳は確実に持っていました。彼らは音楽的なことに口を出すことは基本的にはありませんでしたが、ライオンは唯一、「シュウィング(swing)させて」という指示は出していたのだとか。絶対音感ならぬ絶対グルーヴ感みたいなものはあったのかもしれません。黒人の魂を持って生まれてきた、と評する人もいましたね。彼らの魂はある意味ミュージシャン以上にミュージシャンだったのかも…それぐらい、音楽に人生を賭けていました。ジャズの名盤を残すことしか頭になかったため、経営は常に苦しいものでした(後に倒産もしています)。また、子どもを望んだ妻に対してブルーノートが子どものようなもの、と答えたライオンは離婚もしています(後に再婚しましたが…)。歴史に残る名盤を創るのに必要なのは才能あるミュージシャンだけではない、ということを、この二人を見ていると痛感させられます。音楽を通して強く結びついていた二人でしたが、ウルフが極端に無口だったこともあり、不思議なことにお互いのプライベートのことはほとんど知らなかったようです。先に亡くなったのはウルフでしたが、彼の葬儀ではライオンも知らなかった衝撃の事実が発覚します…。

さて、例によって、鑑賞後にはランチということで、近くの「はまの屋パーラー」に寄ってきました。おすすめのスペシャル・サンドゥイッチをいただきましたが、和風の卵焼きがサンドされていて美味しゅうございました。今度、フルーツ・サンドゥイッチも食べてみたいな…。
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