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アートネタなど日々のあれこれ

琉球

2018-08-28 19:03:23 | 美術
サントリー美術館で「琉球 美の宝庫」を見てきました。

不肖わたくし、けっこうな沖縄好きで・・・子どもが生まれるまでは、毎年のように通っては離島めぐりなどもしていたのですが、子どもが生まれてからとんとご無沙汰しております。今年も行けそうにないので、せめて気分だけでも・・・ということで、いそいそと行ってまいりました。

展示室入ってすぐのところに「黒塗菊花鳥虫沈金丸外櫃」が。漆黒に浮かぶ金色が美しい。沖縄のものというと色鮮やかなイメージですが、こういう作品もあったのですね。琉球の衣装はどれも華やか。南国らしいモチーフも見ていて楽しいです。琉球絵画をまとまった形で見るのは初めてですが、思いのほか日本画というか、中国絵画のよう。そんな中で孫億の「花鳥図巻」はサンクチュアリの光景のようでした。赤と青の対比も鮮やか。琉球絵師たちにとっては「永々の手本、国用の宝物」だったとか。かと思うと、北斎の「琉球八景」が。いかにも北斎な感じの作品ですが、北斎自身は琉球に行ったことはないらしい・・・。尚家の遺物はハイクラスな雰囲気が漂います。メインビジュアルになっていた宝冠もみごと。衣装も鮮やかかつシックに。「美御膳御揃」(お膳のセット)も美しゅうございました。琉球漆芸は、大型の作品も出ていて、見ごたえがありました。「黒漆雲竜螺鈿大盆」は龍の鱗のきらめきまで貝で表現されていて、思わず見惚れてしまいます。それにしても、貝でかっ・・・南の海では夜光貝も急成長するのだろうか。そんなわけで、つかの間、沖縄気分を味わってまいりました。そろそろまた沖縄にも行きたいな・・・。

その後、21_21Design Sightの「音のアーキテクチャー展」も見てきました。小山田圭吾さんの音楽と9人のアーティストによる映像がシンクロする作品です。クールな音楽にスタイリッシュな映像。大きなスクリーンの前の台に観客が座れるようにもなっていて、そこに座ってみると自分が作品の一部になったような錯覚が。とりわけ水尻自子さんの映像がツボだったかな・・・。そんなこんなでinto the musicなひとときを楽しんでまいりました。

千代田線の旅

2018-08-27 19:33:55 | 美術
千代田線沿線で展覧会のはしごをしてきました。

最初は二重橋駅近く、三菱一号館美術館の「ショーメ」展です。不肖わたくし、ハイジュエリーとはまったく無縁の人生を送っておりますが、見るのは大好き(笑)。この展覧会は240年に及ぶショーメの伝統と歴史を紹介する日本初の展覧会ということです。いやもう、華麗な空間・・・ディスプレイも相当工夫されていましたし。ショーメの歴史を紹介するセクションには、ジュエリーの展示に加え、ショーメのジュエリーを纏ったナポレオンやジョゼフィーヌの肖像画も。ナポレオンがローマ教皇に贈ったという豪華なティアラもありました。ジョゼフィーヌの麦の穂のティアラも綺麗・・・。そしてティアラといえば、ティアラの間が圧巻でした。20 点のティアラと300 点のニッケル・ティアラが大集合・・・あまりにもきらびやかで、茫然と見とれるほかありませんでした。また、自然を模したジュエリーも数多く・・・面白かったところでは、タコのネックレス。なにゆえタコ?かと思うと、パーツを取り外して、別の用途に使用できるようになっているジュエリーも。日本での展示にちなんで、日本のモチーフを使ったジュエリーも展示されていましたが、ここには雷神のブローチが。最後は今年のモデルで締めです。ルビーの紅が鮮やかだったな・・・。

次に向かったのは乃木坂駅近く、国立新美術館の「ルーヴル美術館展」です。行こうかどうしようか迷っていたところ、運よく招待券をいただき、行ってまいりました。迷っていてよかった(笑)。いろんな意味で「ルーヴルの顔」で構成されたこの展覧会、国立新美術館のホワイトキューブの壁面が、深紅のビロードのような布で覆われ、いつになくシックな雰囲気です。最初は「記憶のための肖像」。ここでは何といっても「ブルボン侯爵夫人(以下略)」の印象が強烈でした。メメント・モリとは言うけれど・・・生前はきっとお綺麗な方だったと思うのですが、このような形で後世に残るとは思ってもいなかったかも・・・。そして、こちらも強烈な「マラーの死」。背景の黒が眼に焼き付くようです。次は「権力の顔」。ここではやはりイケメンのナポレオンでしょうか。きっ、とこちらを睨みつけるクレオパトラも怖かった。最後は「コードとモード」。ここには目玉作品のヴェロネーゼ「美しきナーニ」が。肌の白と服の青の対比が鮮やか。ゴヤの子供の像も可憐。なぜか、変顔代表のメッサ―・シュミット「性格表現の頭像」も。作者は精神を病んでいたらしいのですが・・・うむむむむ・・・。最後はアルチンボルドの「春」と「秋」で締めです。古来、最も奇想が展開されたのは、実は肖像画だったのだそうです。そんなわけで、人生いろいろ、お顔もいろいろ、な展覧会でございました・・・。

最後は表参道駅近く、ワタリウム美術館の「理由なき反抗」展です(この展覧会は既に終了しています)。第1章は「レジスタンス」。会場入口入ってすぐのところにはオノ・ヨーコの真っ白いチェスが。かと思うとジョン・ケージの「マルセルについて何も言いたくない」が。竹川宣彰の作品は鬼に金棒のような作品ですが、この金棒でお仕置きされるのは・・・。ホワン・ヨンピンの「避難はしご」は見ているだけで怖くなるような作品。自由への避難が危険を伴うということでしょうか。第2章は「デザイン革命」。ここにはバックミンスター・フラーのデザイン画が。私が行った時には、スタッフがギャラリートークもしていました。俯瞰で見ることの大切さ、そしてこの展覧会も4階、3階、2階の関連性を考えてほしい、ということをお話しされていました。第3章は「理由なき反抗」。アレン・キンズバーグ、キース・へリング、ウォーホル、ギルバート&ジョージ、メイプルソープといった現代アートのビッグネームたちの作品が。キース・へリングのお習字(?)が面白かったです。ギルバート&ジョージの映像作品もかっこよかったな・・・。自由へ向かうエネルギーをプッシュしてきたワタリウムの歴史を振り返るような展覧会でもありました。

さて、例によって鑑賞後には甘いものを・・・ということで、ワタリウム近くの「ヴェジェラート」に寄ってきました。農家から直送した野菜とハーブを使用したジェラートのお店です。野菜ジェラートもおいしそうだったのですが、今回はハイビスカスのジェラートをチョイス。すりおろしのリンゴも入ったやさしいお味で、おいしゅうございました。

アディオス

2018-08-21 23:17:16 | 映画
シャンテシネで「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ アディオス」を見てきました。

前作が公開されてからはや18年。映画も見たし、ライヴだって行きましたよ・・・たしか、世界中でブームみたいなことになっていましたね。あの時、自分が見た/聞いたものは何だったのか、を、この映画を見て、あらためて振り返ることとなりました(以下、ネタバレします)。

現メンバーのアディオス・ツアーを追いながら、これまでのメンバーの人生を振り返り、さらにはキューバの歴史、ソンの歴史をも伝えるドキュメンタリーでした。一見(聴?)楽天的な音楽のようにも聞こえますが、キューバの音楽はつねに革命とともにあったのですね・・・。そして、この映画からは何よりも「死ぬまで音楽家であること」はどういうことかを教えられました。メンバーはブレイク当時に既に高齢だったわけですから、その後、多くは鬼籍に入りました。亡くなる2週間まで演奏していたコンパイ・セグンドは、素晴らしい音楽のみならず数々の名言も遺してくれました。「(人生のコツは)やりすぎないこと」「人生の花は誰にでも必ず訪れる。つぼみを見逃さないことだ」。歩くのもやっとというくらい体が衰えてしまっても、舞台に立つとノリノリのピアノを弾いていたルベーン。指が少々おぼつかなくなっても、タイム感は失われていないのに驚きました。「最後の音は墓の中で弾くよ」と。イブライムは亡くなる4日まで舞台に立っていました。文字通りのスワンソングとなった映像を見ていると泣けてきます。オマーラはいまだ健在ですが、「最後の瞬間まで歌っていたい」と・・・。

本当に、アディオス、です。悲しいことではありますが、音楽の種がどこかから運ばれ、芽を出し花を咲かせ、いつかは枯れ・・・でも、そこから運ばれた種がまたどこかで花を咲かせる・・・その繰り返しが続いていく、ということを確信させられた映画でした。

さて、例によって、鑑賞後はランチをということで、日比谷シャンテの中にある「ひつじや」に行きました。カレー2種セットを頼みましたが、カレーに加え、ナン、サフランライス、サラダ、デザート、ドリンクがついてなんと790円。カレーもおいしかったけれど、サフランライスがふかふかだったな。おやつに同じくシャンテの中にある「ル・プティメック」でパン・オ・ショコラも買いました。クロワッサンがちゃんと層をなしていて、美味しゅうございました。

ラスト・ワルツ

2018-08-13 10:19:28 | 映画
アップリンクで「ラスト・ワルツ」を見てきました。

スコセッシがザ・バンドの解散ライブの様子を収めた映画です。日本で初めて公開されてから何と40年の歳月が。ザ・バンドといえば、むかしむかしアルバムを聴いた覚えはあるのですが、この映画は見たことなかったです・・・ということで、いそいそと行ってまいりました。ゲストのメンツもめっちゃ豪華だし・・・。

ビリヤードの場面から始まるオープニングもかっこよかったのですが、もう1曲目からノリノリでしたよ・・・思わず体が動いてしまいます。他にも体が揺れてるお客さんがいましたね。アルバムもいいけれど、ライヴ見て聴いてなんぼでしょ、というバンドは存在しますが、このバンドはその典型なんだろな、とあらためて思いました。なんてったって、「ザ・バンド」ですし。ゲストも凄いです。ドクター・ジョンはゴリゴリのピアノを聴かせ、ニール・ヤングは熱唱、ジョニ・ミッチェルは相変わらず爽やかです。そして、とりわけ凄かったのがマディ・ウォーターズ。動いてるマディ・ウォーターズ見たのは初めてですが、こんなに凄かったとは。まさにキングの貫禄です。その後に出てきたクラプトンがこころなしかやりづらそう(笑)。そして、ラスト近く、ボブだよ、ディランだよ・・・いやもう白い帽子かぶってるし(笑)。ついにはリンゴ・スターまで。そんなわけで紅白歌合戦なみのビッグステージでした(何のこっちゃ)。ほんとに夢のような一夜だったんでしょうね。そして、スコセッシ監督の音楽映画って、音楽の持つ夢のような面を伝えるのが本当にうまい。合間に挟まれるメンバーの思い出話も笑えましたが、ツアーをやめることにした理由を語る、あるメンバーの言葉にどきりとしました。

私が行った日は、上映後にトークショーがありました。キーボーディスト谷口雄さんとシャムキャッツのドラマー藤村頼正さんのお二人です。このトークが面白かった。芸人さんみたい・・・というか、下手な芸人さんよりおもろいかも(笑)。谷口さんがツッコミ、藤村さんがボケという役割分担が自然とできていましたね。それにしてもお二人ともまだお若いのに、生まれる前に解散したバンドのことになんでこんなに詳しいんだ(笑)。そして、実際に音楽やってる人間でないと絶対できない話。こういう話を聞くのは大好きです。おまけに谷口さんお手製のポストカードまでついていました。表に「ラスト・ワルツ」に関わった人間の証言、裏に関連アルバム紹介が。証言の中ではレヴォン・ヘルムの一言が一番笑えました・・・「すべてがいかがわしい感じがする」。

さて、鑑賞後、小腹もすいたし、ということで「Viron」に寄ってきました。購入したのはパンオショコラとショコラサブレ。どちらもチョコレートのお味がしっかりで美味しゅうございました。

未来の蕾

2018-08-07 19:26:38 | 美術
パナソニック汐留ミュージアムで「河井寛次郎展 過去が咲いてゐる今、未来の蕾で一杯の今」を見てきました。

河井寛次郎の没後50年を記念した展覧会です。寛次郎の陶芸、木彫、書、調度、そして「言葉」の数々・・・その多面的な活動を知るよい機会となりました。

展示はまずは陶芸から。作品は概ね年代順の展示なっていましたが、素人目にも、この人は若い頃からむちゃくちゃうまかったんだな、ということが分かります。初個展では「天才は彗星のごとく現れる」と絶賛されたとか。初期のものでは、「青瓷鱔血文桃注」のつるんとしたフォルムや仄かの紅の色合いが魅力的。初期の作品は比較的オーソドックスですが、その後、柳宗悦などの影響を受けて作風が変化し、年を追うにつれアグレッシブになっていきます。メインビジュアルになっている「三色打薬双頭扁壺」は一度見たら忘れられない形、「呉洲泥刷毛目扁壺」は荒海のようです。木彫作品を作り始めたのは後期のようですが、どれもユニークな造形。両手を合わせ、中に珠を抱いた「木彫像」はよく見ると裏面にも顔が。猫の像は飼い猫の「熊助」が行方不明になってしまい、悲しむ一人娘のために造ったそうです。この時、寛次郎は熊助はいなくなっても生命体となっているから、と言って娘さんをなぐさめたそうとか。寛次郎がデザインしたという家具やキセルも展示されていました。キセルをデザインしてからは、煙草よりもキセルを楽しむようになったらしい・・・。

この展覧会では寛次郎の残した言葉も大きくフィーチャーされています。会場では、寛次郎の言葉が記された書や陶芸の展示に加え、井浦新さんによる朗読が流れています。身につまされる言葉の数々。「助からないと思っても助かってゐる」という言葉は、元は大山名人の言葉らしいですが、寛次郎も心を打たれたのでしょうね。今後、ピンチの場面ではこの言葉を思い出したいと思います。その他にも「この世は自分を探しにきたところ この世は自分を見にきたところ」「美しいものしかない みにくいものはまよい」などなど・・・。「井の中の蛙、大海を知らず」という言葉に対して、「されど空の深さを知る」というのを聞いたことがありますが、元ネタは寛次郎の「井蛙知天」という書だったらしいです。会場には寛次郎の遺愛の品も展示されていて、どれも大事に選ばれ使い込まれてきたものだろうということが分かるのですが、一方で寛次郎は「何もない世界ほどすばらしいものはない」という言葉を残しています。そして展示の最後にはパナソニック社のトランジスタラジオが。寛次郎は文化勲章は受け取らなかったけど、このラジオは受け取ったとか。新しいもの好きだったんですかね・・・。

そんなわけで、一粒で何度もおいしい展覧会でした。それにしても、寛次郎の言葉って不思議ですよね。背中を押される、というよりか、座り込んでしまったお尻をふと持ち上げてくれるような(←変なたとえ)、そんな心持ちがいたします・・・。

中世より愛をこめて

2018-08-02 19:16:22 | 美術
ポーラミュージアムアネックスで「野口哲哉~中世より愛をこめて~」を見てきました。

暑い日ではありましたが、鑑賞前にちょっと甘いものを・・・ということで、今回は京橋駅近くの「イデミ・スギノ」に寄ってきました。お目当てのアンブロワジーは売り切れだったのですが、代わりにシャルムをいただいてきました。チョコレートムースに洋酒漬けのダークチェリーという組み合わせが絶妙な、大人の味わいのケーキ。お酒がけっこう効いていたので、軽く酔っ払いながら鑑賞することに・・・。

鎧兜を着用した武者像で知られる野口氏の作品、約50点の展覧会です。会場に入るとしょっぱな、オルビスの口紅でハートを描いている武士が。かと思うと、おいおい大丈夫かい、と思わず声をかけたくなってしまうような、お疲れ武士も。イケてる鎧兜を着て佇む武士や、戦隊もののヒーローのようなポーズを決める武士もいましたね。名画に扮した武士を描いた作品もありました。フェルメール武士も笑えましたが、一番ツボだったのがレンブラントの自画像に扮した武士。本物のレンブラントもこんな目をしていたのかもしれないな、という、つぶらな瞳が印象的でした。野口氏の武士たちに漂う哀愁はどこか、今を生きるサラリーマンの姿にも通じます。会場で延々と流れていた何やら物哀しいBGMも、さらにその気分を盛り上げて(?)くれます。考えてみれば、武士たちだって戦国時代のサラリーマン、いくさの時以外は、今と変わらぬ日常もあったのかもしれませんね。不肖わたくし、このところいろいろあって、けっこう疲れぎみだったのですが、武士の皆さまもお疲れだったんだろうな、と思うと、なんだか脱力する思いでした。いや、命がかかってないぶん、こっちの方が全然ましかも・・・。

家に帰ってから、「イデミ・スギノ」で買った焼き菓子も食べてみました。名前は忘れてしまったのですが、パウンドケーキにパイナップルがのったお菓子。口に入れるとココナッツの味がふわ~っと広がって、美味でした。すっかり夏だなぁ・・・。