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アートネタなど日々のあれこれ

スガ+森でつくった名曲の数々を、ストリングスで味わう会

2024-04-29 11:19:13 | 音楽
スガ+森でつくった名曲の数々を、ストリングスで味わう会@東京ドームシティホールに行ってきました。

と言っても、行ってからはや2ヶ月経ってしまいました。この間、当社比でめっちゃ忙しかったからですが、思い出のために書いておこうと思います。これくらい時間が経つと、細かいことは思い出せなくなり、エッセンスのようなところだけが残っていくのですが…。

歌+鍵盤+弦カルテットという異色の編成で行われたこのライブ、スガさんのライブ史上でも記憶に残るライブの一つになりました。1曲目、「アイタイ」が始まった時、この曲をオープニングにもってきたか~、と鳥肌立ちました。弦の艶やかな響きが妖艶。「これからむかえにいくよ」はこの曲、ベース抜きでやるんかい…と思わず心の中で突っ込みましたが、さすがは森さん、みごとに決めてくださいました。「愛について」は、いつもはエレピだけど今日はピアノ、こちらの響きも素敵。「木曜日、見舞いにいく」は森さんのレゲエオルガンが控えめに言って最っ高でした…そして、20数年前にこの曲の歌詞から受けた衝撃がまざまざとよみがえります。かと思うと、「気まぐれ」の歌詞の意味が今になって明かされる場面も…この曲の歌詞にはずっと違和感があったのですが、長年のもやもやがようやく晴れました。そういうことだったのか…。「夜空ノムコウ」は今野均さんのバイオリンが素晴らしく…初めて聴くような美しさを引き出してくださいました。「アストライド」もひときわ壮大に響き、「ストーリー」も弦のあやうい響きがスリリング。「坂の途中」では萩田光雄先生の思い出話も。先生のスコアが生の弦で再現されるという喜び…なんというか、滋養あふれるスープみたいな響きですよね。ラストは新曲「あなたへの手紙」。新境地を開かれたのか…最後のピアノの低音は地の底から響いてくるようでした…。

掛け合い漫才のようなスガさんと森さんのトークも楽しく、終始和やかな雰囲気のライブでした。やはりスガさんと森さんの出会いって運命だったんだ…とあらためて思いました。ミュージシャンの絆と業、をみたような気すらします。陰の立役者、今野均さんとも長いおつき合いだそうです。凄腕ミュージシャンって諸刃の剣みたいなところがあって、歌の添物になってしまっては勿体ないし、かと言って、主役である歌を食ってしまっては本末転倒。お二人ともその匙加減が本当に絶妙でした。そして、名曲とは何ぞや、についても、あらためて思いを馳せました。名曲って大木みたいなものだなぁ…と。長い時を経てもそこに立っている、そして多くの人がその下で憩うことができる…。

そんなわけで、夢のような一夜でした。何年経っても、あの時あのライブに行けてよかったなぁ…としみじみするのだろうと思います。そして、今さらながら27周年おめでとうございます…これからもひっそりと草葉の陰から応援させていただきますよ…(いや、まだ死んでないけど…)。

INNOCENT TOUR

2023-12-30 23:39:35 | 音楽
スガシカオ@LINE CUBE SHIBUYAに行ってきました。

・・・とは言っても、なかなか感想を書けずにいるうちに、一か月半も経ってしまいました。今さらですが、自分の思い出のために。この日は諸事情あって開演に間に合わないという事態に陥り、会場に辿り着いた時は心身ともにヘロヘロ…最後まで体力もつだろうか、という状態だったのですが…。

私が会場に着いた時は、「夕立」を演奏していました。その後のリサーチによると、おそらく5曲くらい聴き逃したものと思われ、その中に「おれ、やっぱ月に帰るわ」が含まれていたことを知り、地団駄を踏むことに…。スガさんは直前に秋の花粉症が勃発したらしく、MCはガラガラ声でしたが、歌の方は大丈夫でしたね。MCでちゃんと歌詞を聴いていれば、ライブの後に盛り上がって飲みに行こー、みたいなことにはならず、どよーんと重い気持ちになって帰ることになると言っていましたが…でも、暗くて重い歌詞でも根本的なところでは前向き、そして、言葉の強さが謎のエネルギーを放つのです。

スガさんはステージ狭しと飛び回り、バンドも相変わらず献身的。一番変わったと思ったのがFUYUさんのドラムですかね…一段と力強くなったような…新しい彼女でもできたのか?と一瞬、思いましたが、全米デビューされたということだったので、そのせいでしょうか。坂本さんはパンツ事情を暴露され、ハナブサさんもやはりいじられてましたね。DURANはやはりDURANでしたが、「覚醒」のソロがかっこよかったな…。JUDYさんのソウルフルな声も素敵。そして、お客さんも素晴らしかった。終盤になると、パフォーマーとオーディエンスが一体になって生まれた、大きなエネルギーの塊が中空に浮かぶのが見えたような気が…やっぱりライブってエネルギーの交感だったんだよなぁ…としみじみ思ったのでした。

そんなわけで、ライブがにんにく注射(やったことないけど)並みの効果を発揮し、帰る時にはスキップしそうなくらい(しないけど)元気になっていました。スガライブのパワー、おそるべし。来年の2月にはスガ+森で作った数々の名曲をストリングスで味わう会が開催されるそうですが、こちらも楽しみです(チケット取れるかなぁ…)。



オルガ・ノイヴィルト

2023-10-09 01:26:03 | 音楽
オルガ・ノイヴィルト オーケストラ・ポートレイト@サントリーホールに行ってきました。

こちらもサントリーホールサマーフェスティバル2023のプログラムの一つです。今年のテーマ作曲家はオルガ・ノイヴィルト。1968年生まれ、ウィーン国立歌劇場150年の歴史上、初めて新作を委嘱された女性作曲家。その「オルランド」を再構成した「オルランド・ワールド」が世界初演されるということで、行ってきました。

コンサートの1曲目はヤコブ・ミュールラッド「REMS(短縮版)」。ノイヴィルトが選んだ作曲家ですが、合唱音楽で頭角を現し、ジャンル横断的な活動も行っています。タイトルのREMSとはレム睡眠を意味しており、夢と睡眠のもつ「謎めいた、心震わせるような側面」を探求したそうですが、まさに夢幻的な響き…そして、東洋的な幽玄も感じる曲です。今回は短縮版でしたが、いつかフルバージョンを聴いてみたい、魅力的な曲でした。2曲目はオルガ・ノイヴィルト「オルランド・ワールド」。「オルランド」はヴァージニア・ウルフの小説を原作とするオペラですが、原作よりジェンダー解放的な意味合いが濃くなっています。「オルランド・ワールド」はオペラの前半部分を中心に再構成し、声とオーケストラの作品に改作しています。メゾ・ソプラノが男性と女性を演じ、ドラムやエレキギター、プリペアドピアノなども加わる異色の構成、クイーンやレディ・ガガの引用も加わるという、いろいろな意味で尖った作品。この曲もいつかオペラ版を生で聴いてみたい…。3曲目はオルガ・ノイヴィルト「旅/針のない時計」。マーラー生誕百年記念のための曲ですが、ある日、夢のなかに祖父が現れたことを創作を通じて焼き付けておこうとしたのだそうです。東欧的な響きも感じるいくつもの旋律があらわれては消え、あらわれては消え…時間そのものが溶解する…針のない時計となるのです。最後はスクリャービンの「法悦の詩」。なぜにここでこの曲?という疑問も湧きますが…ノイヴィルトは元々、ジャズ・トランペッターを目指していたそうなので、もしかしたらラッパつながりということかもしれません。この曲でもマティアス・ピンチャーの指揮がみごとでした。自身が作曲家なだけあって、作曲者の意図が実に明晰に提示されるという感じです。高解像度の音楽…。

プログラムには彼女のインタビューも掲載されていましたが、こちらも興味深いものでした。実は日本での滞在歴があり、黒澤明のファンだったのだとか。また、クラッシック界における女性作曲家の扱い、ノーベル賞作家のイェリネクとの共闘、12年にわたって心血そそいだオペラがキャンセルになった辛い経験についても語っていました。「何の賭けにも出ず、みずからを超える一線を踏み出さないならば、退化してしまう」…その果敢な精神からあのアグレッシブな音楽が生まれてくるのでしょう…。

Music in the Universe

2023-10-08 00:29:43 | 音楽
Music in the Universe@サントリーホールに行ってきました。

サントリーホールサマーフェスティバル2023のプロデューサー・シリーズ「ありえるかもしれない、ガムラン」のプログラムの一つです。行ってから、かなり日が経ってしまいましたが、心覚えのために…。今回のプロデューサーは作曲家の三輪眞弘氏ですが、企画の趣旨はガムランの実践を通して、音楽や人間世界の未来を考える、ということだそうです。コンサートホールでのコンサートのほかにもプロジェクト型コンサートEn-gawaも開催されていて、ケージのミュージサーカスの回を思い出しましたね…。

さて、Music in the Universeの1曲目は藤枝守「ピアノとガムランのコンチェルトNo.2」でした。このピアノはミニピアノ(トイピアノとは違う)で、ガムランの旋法に基づいて調律されており、不思議な響きです。ステージの中央にピアノが置かれ、その周りにガムランの楽器が円環上に配置されています。メロディのパターンには植物の電位変化のデータを変換する「植物文様」の手法が用いられており、非常に繊細な響きの曲でした。2曲目は宮内康乃「Sin-ra」。Sin-raは森羅万象を意味し、世界を構成する五大要素のうち「水」「風」「地」の3つを曲にしています。始まり方も実にユニークです。観客がいくつかのグループに分かれて舌打ちなどの小さな音を出すことから曲が始まるのですが、暗闇の中で聴いていると、東南アジアの森の中にいるような心地に…。曲はガムラン音楽のルールベースで作られていましたが、途中で踊りも加わり、音楽、踊り、祈りが渾然一体に…タイトルにふさわしい、夢幻的で壮大なスケールの曲でした。3曲目はホセ・マセダ「ゴングと竹のための音楽」。氏は音楽民族学者でもあります。昔、著書を読んだこともありましたね…。この曲は1997年の作品ですが、当時、氏にガムランの新作を委嘱したところ、ガムランは権力者の楽器だからと、最初は断られたそうです。しかし、ガムラン音楽の解体を提案したところOKが出たのだとか。そのため、ガムラン以外の楽器も加わり、指揮者も存在しています。そして、合唱のテクストには俳句が引用されています。ガムランに対してもいろいろな考え方があったことを知る機会ともなりました。4曲目は小出稚子「Legit Memories(組曲 甘い記憶)」。曲名は松田聖子さんの名曲のもじりだそうですが、ジャワの甘味の名がついた五つの小品からなる組曲です。白玉入りの甘い生姜スープ、チョコレート入りホットサンド、椰子の実ジュース、果物入りのかき氷、揚げバナナ…お品書きを眺めているだけで何だかうっとりしてしまいます。スイーツを思い浮かべながら、ゆるーい感じで楽しめる曲でしたね…。最後は野村誠「タリック・タンバン」。何と、だじゃれ、相撲、綱引きなどが登場するシアトリカルな作品。サントリーホールのステージでお相撲さんが四股踏んだり、人々が綱引きをしたりしている図が見られる日が来るとは思いもよりませんでした…たしかに夏祭りのフィナーレにふさわしい作品でしたね…。

そんなわけで、お腹いっぱいガムランを堪能…ガムランという楽器からこんなにも多様な響きが生まれるということを目の当たりにしました。それにしても、ガムランって不思議な楽器ですよね…宇宙を象徴するような不思議な響き…その魅力がこれからも音楽の新しい可能性を拓いてくれるのかもしれません。

Beyond Orbits

2023-10-02 00:33:25 | 音楽
というわけで、挾間美帆m_unit@文京シビックホールに行ってきました。

このコンサートは挾間さんのデビュー10周年と5年ぶりのニューアルバム“Beyond Orbits”の発売を記念したコンサートということです。“Beyond Orbits”の収録曲を中心に、過去のアルバムの曲も数曲演奏していました。

1st setの1曲目はNHK-FMで挾間さんが担当している番組、“Jazz voyage”のテーマ曲にもなっている“Abeam”。風変わりなイントロが印象的な曲ですが、実演で聴くとよりエキゾチックに響きます。次は“Portrait of guess”。アンニュイな響きの曲で、雨に濡れた景色のよう。「月ヲ見テ君ヲ想フ」。この曲すごく好きです…美しい曲。マレー飛鳥さんのソロもかっこよかった…。続いて“Time river”。時の流れやうねりを感じさせ、哲学的な趣もある曲。“From Life Comes Beauty”は資生堂のイメージフィルムに使われていた曲ですが、美しさと切なさと懐かしさとが入り混じったような、不思議なニュアンス…。

2st setの1曲目は“Amonk in Ascending and descending”。エッシャーの絵をイメージしたそうですが、幾何学的な面白さがある曲。そして2曲目はエクソプラネット組曲。エクソプラネットとは太陽系外惑星のことらしいですが、組曲の2番目、“Three sunlights”がは、3つの星と見えたものが実は顕微鏡についたホコリだったということが後に発覚し、挾間さんは頭を抱えたそうです…。それはさておき、妖しい響きから始まる壮大なスケールの曲でした…しかも、ソリスト一人ひとりに見せ場が与えられます。なんというか、もう最高…で、終わった後も拍手が鳴りやまず…。

アンコールは“can’t hide love”。挾間さんによると、この曲の歌詞は俺のことを好きなのは隠せないんだぜ、みたいな男性の上から目線な内容なので、それに対する女性の反撃をアレンジで表現したとのこと。大人のラブソングのはずの曲がとんでもない展開に…挾間さん、面白すぎる…。

そんなわけで、挾間さんの音楽のユニークでマジカルな響きを堪能してまいりました。本当に聴き手を飽きさせないというか、音の玉手箱が次々と開いていくのを眺めるような楽しさが彼女の曲やアレンジにはあります。軌道を超えて宇宙に飛び出していくようなスケールの大きさも魅力的。世界で活躍する挾間さんですが、このアルバムがグラミー獲ったら嬉しいな…。

Mirage Future

2023-09-30 23:45:21 | 音楽
「NEO SYMPHONIC JAZZ at 芸劇-Mirage Future-」に行ってきました。

実際に聴きに行ってからだいぶ日が経ってしまったのですが、素敵なコンサートだったので、自分の心覚えのために…。このコンサートはジャズ作曲家・指揮者の挾間美帆さんが、ジャンルを超え、現代の音楽を牽引するアーティストたちと“ 幻想未来”を描くというもの。ライヒ、教授、メセニー…と選曲がツボすぎて、いそいそと行ってまいりました。BIGYUKIさんも生で聴いてみたかったし…。

コンサートはライヒの“Eight Lines”から始まりました。ライヒの曲っていつ聴いても不思議な近未来感がありますよね。ジャズのコンサートとしては意外な始まり方のようですが、ライヒは実はジャズとも浅からぬ縁があるのです。次は教授の“0322_C#_minor”。教授がクリスチャン・フェネスと共作したアルバムに収録されている曲で、京都での即興演奏が元になっています。挾間さんによるアレンジですが、教授のような響きに感無量…。カマシ・ワシントンの“The Space Travelers Lullaby”は、パトリック・バートリーのサックスをヒューチャーしていましたが、みごとなソロを聴かせてくれました。そして、パット・メセニーの“Minuano”。この曲、大大大好きなんですよね…これまでいったい何度聴いたことか。オケバージョンを聴くのは初めてでしたが、やはり感無量…本当に時代を超える名曲です。

後半はBIGYUKIさんが登場。彼のオリジナル3曲を演奏していました。ユニークな曲が挾間さんのアレンジでさらにカラフルに。BIGYUKIさんは繊細なピアノ演奏と奔放なキーボードプレイ、鍵盤奏者としても魅力的な方ですよね。続いてロバート・グラスパーの“Let It RIde”。この曲もソリストのお二人が素晴らしかった。そして、最後にAwichさんが登場。表現したいものがあふれてくるような、独特の声と存在感。彼女の故郷、沖縄を歌った曲を聴いて、もはや感無量…。

ジャズ、現代音楽、ヒップホップ…自在にジャンルを越境しながら描く“Mirage Future”。壮大なテーマをみごとにまとめ上げた挾間さんの手腕にほれぼれしてしまいます。彼女が率いるm_unitの公演も楽しみ…。

イノセント

2023-07-23 00:44:23 | 音楽
スガシカオ「イノセント」を聴きました。発売直後にCDをゲットしていたにもかかわらず、その後、公私ともどもにいろいろなことが起こってしまい、長らく感想を書けずにいました。そうこうしているうちに、約半年が過ぎ去ってしまい…。

1曲目はヤバい歌詞とMVが物議を醸した「バニラ」。不肖わたくし、この手の歌詞に関してコメントできる語彙も知識も経験も持ち合わせておりませんがゆえに、もっぱら音の話を…。不穏なイントロ、微妙な音のズレが眩暈のような感覚。いい感じに汚れたギターとシャープでタイトなドラムが曲の世界観に絶妙にマッチしています。「さよならサンセット」はアレンジが実に秀逸。冒頭のテープの再生音も素敵。爽やかなサウンドと切ない歌詞が言いようのない感情を引き起こします。「叩けばホコリばっかし」は謎のファンク集団、ファンクザウルスの曲。歌詞はなんて言うかですね…たぶんこの方、後ろから刺されたりしないように気をつけた方がよさそうな感じですかね…。「痛いよ」は、聴いているだけで胸が痛くなってくるような歌詞が生々しい。「獣ノニオイ」はむわっとする空気感、やるせない感情が淡々と歌われ…青春ですなぁ…。「バカがFUNKでやってくる」、タイトルはアレですが、プリンスのようなP-FUNKのようなサウンドがかっこよいです。「覚醒」はファンクとUKロックのミックス具合が斬新。Bメロで鳴ってる乾いたギターの音も好きな感じ。「東京ゼロメートル地帯」は、サウンドはお洒落なシティポップ風ですが、歌詞は下町シリーズ。このギャップがスガさんらしいのかも…。「灯火」はあたたかい曲…高田漣さんのペダルスティールも素晴らしい。「メルカリFUNK」はイントロ最高(?)。歌詞はなんかもう身も蓋もない感じです。それにしても、しばらく頭の中でサビがぐるぐる回って困りました…。「国道4号線」は「黄金の月」のアンサーソングのような歌。時を経てわかること、言えることってあるのかもしれません…。「おれのせい」はベースがかっこいいのですが、しばらく頭の中でAメロがぐるぐる回って困りました…。「モンスターディスコ」はヒャダインさんとのコラボですが、スガさん、こういう曲も意外に似合うのね…。

というわけで、全13曲があっという間に過ぎ去っていきました…春風が駆け抜けていくみたいに。季節に例えるなら、春というか早春みたいなアルバムだと思いましたよ…。「イノセント」というタイトル自体は公募だそうですが、たしかにイノセント。秋からはツアーも始まるようで、こちらも楽しみです…。

ボンクリ・フェス2023

2023-07-11 00:05:16 | 音楽
ボンクリ・フェス2023に行ってきました。ボンクリ・フェスに行くのは今回で3回目です。昨年は開催時期が変わっていたのに気が付かず、うっかり見逃してしまいました。一日じゅうでも入り浸っていたいようなイベントなのですが、今回は都合により2日目の午後から参加しました。

まずはボンクリ・ビデオ・アーカイブの部屋へ。私が行った時には挾間美帆さんの「颯」が上映されていました。サックスカルテットの曲をボンクリのために弦楽四重奏に編曲したそうで、ポストクラシカルのような美しい曲。挾間美帆さんの曲はジャズのビッグバンドの曲しか聴いたことがなかったのですが、こういう曲も書いていらしたのですね。それから、アトリウムに移動して、大石将紀さんのアトリウム・コンサートへ。テナーサクソフォンと電子音が融合した曲で、サクソフォンの音色が実に多彩。吹き抜けの空間で聴いていると宇宙空間に漂っているような…。その後はPLANKTONの部屋へ。ここではインスタレーション作品から教授の音楽だけを独立して再生しています。生命の起源の音楽。極上のサウンドシステムで再現された音に身を浸していると、海中に潜るような感覚に…。ディレクターの藤倉大さんは、教授が亡くなる4日前まで、この部屋についてやり取りをしていたのだそうです。そう、この部屋のなかにも教授は生きているのですね…。

そして、スペシャル・コンサートB面を聴きに行きました。1曲目はヤスナ・ベリチュコヴィッチのRemote me。2つのリモコンと3つのコイルのための音楽です。藤倉さんがテレビのリモコンをひたすらフリフリし、聴衆は普通なら聴こえないはずのリモコンの音を聴くという不思議な作品。2曲目はアレックス・パクストンのモア・クラシカル・ミュージック。彼は元々、幼稚園の先生をしていたらしいです。演奏にはノマドキッズも登場。ピアノの中川賢一さんはやはりキレッキレのピアノを弾いていらっしゃいました。3曲目はスティーヴ・ライヒのグランド・ストリート・カウンターポイント。女性ファゴット奏者のレベッカ・ヘラーさんが登場。彼女とライヒは何とご近所さんなのだそうです。この曲はライヒの難曲、チェロ・カウンターポイントをレベッカさんが編曲し、ボンクリで世界初演ということになりました。ハイパーな演奏でファゴット観が変わりましたよ…。4曲目は大友良英さんの新作。ミュージシャン達がホールのあちこちから現れ、呼応するかのように音を交わします。5曲目も大友良英さんの新作ですが、こちらはノルウェーのアーティストたちとのライブ・リミックス。エレクトロニカのような、クールでスタイリッシュな音楽。大人の音楽、という感じで本当にかっこよかった…。

最後は電子音楽の部屋へ。今年は共産国(時代)の電子音楽がテーマでした。去年、亡くなったエドゥアルド・アルチェミフの「惑星ソラリス」のサントラを聴きました。私が映画を見たのは高校生の時だったので、どのシーンの音楽だったのかはほとんど思い出せなかったのですが、音楽自体の重量のようなものはひしひしと伝わってきます。そういえば、教授のasyncは、タルコフスキーの架空の作品の映画音楽、というコンセプトもありましたね…。

本当は夜の大人ボンクリも聴いていきたかったのですが、用事があったため断念…トータル数時間ほどの鑑賞でしたが、本当に楽しかった。これだけ充実したプログラムを無料または低価格で楽しませていただけるのですから、本当にありがたいことです。藤倉大さんと東京芸術劇場、関係者の皆様に感謝…。



Last concert

2023-05-07 22:46:13 | 音楽
109シネマズプレミアム新宿で「Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 2022+」を見てきました。

昨年12月に世界に向けて配信されたコンサートに1曲を加えた特別版です。これまで教授のライブやコンサートには何度となく足を運んできたものの、常に遠くから拝んでいる状態でしたが、今回は一番前の席で見ました。この109シネマズプレミアム新宿は教授自身が音響を監修しています。想像以上の音環境で、まるで教授が眼の前でピアノを弾いているような気すらしました。これが本当のコンサートだったら、と思うと切なかったですが…。

この音環境のおかげで、教授のピアノの特徴である、残響音の美しさを心ゆくまで味わうことができました。一音一音ひもとくような作曲家のピアノですが、あの残響音の美しさは本当に比類のないものでした。消えゆく響きを聴いていると、最後の輝きを放ちながら海に沈んでいく夕陽を眺めているような感覚を覚えます…。

このコンサートはおそらく最後のコンサートになると教授自身も思っていたのでしょう。一音一音いつくしみながらも、そのピアノは自然に還るような音でした…雨粒がピアノの上に落ちたら、雪片がピアノの上に舞い降りたら、風がピアノの上を吹きわたったら、期せずして美しい音楽が生まれたというような。ずっとずっと教授には音だけが広がるクリアで美しい世界が見えていたのだと思います。そんな音世界を残して、教授自身は違う世界へと旅立ちました。

アンコールしたくともその相手はもうこの世にいない…その事実は寂しいですが、教授が遺した音は聴く者の心の中で美しく響き続けるのでしょう…。







Ars longa, vita brevis

2023-04-09 00:05:05 | 音楽
2023年3月28日、坂本龍一氏が亡くなりました。

数年前から末期癌で闘病中ということだったので、この日が来ることは覚悟していたし、怖れてもいました。大腸癌は比較的進行が遅いということに一縷の望みを託していたのですが、ついにその日が来てしまいました。教授の死を知ってから一週間ほど経ちますが、いまだに心にぽっかり穴が開いたままです…。

私が教授の音楽を初めて認識したのは8歳の時、エレクトーン教室のお姉さんたちとアンサンブルで「テクノポリス」を演奏した時でした。子供心にも不思議でかっこいい音楽だなぁ…と。一番チビだった私は当時まだ珍しかったシンセサイザーを弾かせてもらったのですが、こんな楽器を使って音楽を作っている人ってどんな人なんだろう、と思いましたよね…。本格的にハマるきっかけになったのは15歳、高校の放送委員会の先輩から「G.T.」を聴かされた時でした。放送室の大きいスピーカーからパンで振られた車の衝撃音が聴こえた瞬間から教授の音楽にどっぷりハマることになりました。「音楽図鑑」「未来派野郎」「Media Bahn Live」「Neo Geo」「Beauty」あたりは聴き倒しましたよね…。教授の影響でYMO関係者の音楽のみならず、現代音楽や民族音楽、前衛的なジャズも聴くようになりました。人生初ライブはbeautyツアー、人生初の大人向け映画はラストエンペラーでした。教授のアカデミー&グラミー受賞は嬉しかったですよね…本当に世界を股にかける音楽家なんだ、と…。人生初デモテープ(?)も放送室で友達と録音した耳コピの「千のナイフ」でした。大学ではジョン・ケージで卒論を書きましたが、これも教授の影響です…教授の真似をして「民族音楽か現代音楽の研究をしたい」と指導教官に相談したら、「民族音楽はフィールドワークしないと意味ないよ」と言われ、そんなお金はなかったので、現代音楽を選ぶことになったのですが…。

教授からは音楽以外にも大きな影響を受けました。教授と村上龍氏、ゲストの鼎談を収録した「Ev.Café」という本が高校時代のバイブルでした。私は元々、音楽と本にしか興味がなかったのですが、この本をきっかけにアートや映画にも目を開かされることになりました。大江健三郎氏や中上健次氏の作品も読むようになり、現代思想の本を訳も分からないまま読んだりもしましたね…。私の父は音楽好きでアートや映画にも多少は関心がありましたが、好みはベタなものでした。仕事柄、大量の本を読んでいましたが、現代文学や現代思想にはあまり興味はなかったようです。母は小説はよく読んでいましたが、音楽やアートには関心がありませんでした。私の趣味嗜好の70%くらいは教授経由と思われますが、そういう意味では、実の親以上に影響を受けた人なのです…。

こうして10代後半~20代初めくらいにかけて教授の影響をどっぷり受けていた私ですが、大人になり、社会人となり、現実の世界に揉まれていくなかで、いつしか距離が離れていくことになります。それでも、アルバムが出れば買っていたし、コンサートやライブにも時折行っていました。離れていても常に心のどこかでは教授の音楽や言動が羅針盤になっていたのです…。

そんな私ですが、一度だけ教授に遭遇したことがあります。シュトックハウゼンの曲をシュトックハウゼン自身のPAで演奏するというなかなか珍しいコンサートでした。席に腰をおろすと何と眼の前に教授が…何年も何年も憧れ続けた人が眼の前にいる…と、音楽の方はすっかり上の空になってしまいました。コンサートが終わった瞬間、足早に出口に向かう教授に私は思わず手を差し出していました。プライベートでこういうことをされるのは大嫌いな人だと分かっていたはずなのに、手が勝手に動いてしまいました…。教授は一瞬、しかめ面をしましたが、しょうがないなぁ…という感じの苦笑いをして握り返してくださいました。大きな温かい手でした。この手だったら9度や10度も無理なく届くだろうなぁ、と思った記憶があります。もちろん、その日は一日、右手を洗わずに過ごしましたよ…。もう、あの手が新しい音楽を紡ぎ出すのを聴くことはできない…でも、Ars longa, vita brevis。彼の創り出した音楽は生き続けるのです…。

12

2023-01-30 00:03:34 | 音楽
坂本龍一「12」を聴きました。

大きな手術をし、音を出すどころか音楽を聴く体力すらなくなっていたという教授が、ふと「音を浴びたく」なったのをきっかけに、日記を書くようにスケッチした中から12曲を選んだというアルバム。このアルバムの感想を言葉にするのはなかなか難しいです…。癒しというよりは浄化されるような音楽。曲はほぼ日付順に並んでいるのですが、前半は環境音楽、後半はピアノの小品集のような趣です。前半は聴いているとこの世ならぬ光景を見ているような心地に。美しい、そして少し怖さもあるような…。天上の光、海底の闇を感じさせるシンセの音、雨の雫、氷のきらめきを感じさせるピアノの音。生命の息吹を感じさせる呼吸音。後半になるとようやく人心地ついたように…美しさと哀しさをともに感じさせる小曲たち。最後は風を感じさせる音が、いつしか消えていきます…。

極めてシンプルで美しいこのアルバム…今の教授にはどんな光景が見えているのでしょうね…願わくば、この日記がまだまだ続いていきますように…。

25周年大感謝祭

2022-10-22 23:21:50 | 音楽
そんなわけで、スガシカオ@東京国際フォーラムに行ってきました。

スガさんの25周年ツアーです。25周年大感謝祭…って、何やらどこぞのデパートとかのイベントを彷彿とさせるタイトルですが、いやはやめでたいことです。不肖わたくしも、ファン歴四半世紀近くになりますが、ここまで長いお付き合いなるとは(あくまで一方的ですが)、さすがに予想していませんでした…それにしても時の経つのって早いものですね…(しみじみ)。

まだツアーは続いているので、具体的な曲名とかは書かずにおこうと思いますが…けっこうアグレッシブな選曲だったかもしれません。25周年ということで、定番曲で固めるのかと思いきや、そうはいかないところがスガさんらしいというか(笑)。え、そっち行くの?みたいな展開もあり、全体的に未来へ向かう意志を感じる曲が多かったような。○○○○○メドレーとか、企画モノも面白かったです…まさか、タオルぶん回しながらロックナンバーを熱唱するスガさんを見る日が来ようとは…昔の自分が知ったらびっくりするだろうな…(笑)。でも、今にして思えば、コアな部分は残しつつも、時に応じて変わってきたというのが、スガさんがシビアな世界でサバイブしてきた要因だったのやもしれません。そういえば、ダーウィン先生もおっしゃってましたね…生き残る種とは、最も強いものではない。変化に最もよく適応したものである、とか。そして、新曲のお披露目もありました…バックグラウンドの映像も斬新でかっこよかったな…。

サポートのミュージシャンも素晴らしかったです…ファミシュガの演奏はエキサイティングですが、今回のバンドは不思議な安心感がありました。支えるベース、パワフルなドラム、厚く伸びるコーラス、寄り添うキーボード、そしてDURANはDURAN…(笑)。スガさんの歌は本当にストレートというか、伝えたいという思いがこれまで以上に強く伝わってくるものでした。何かあったのかな…と思ったら、やはり何かあったということが後のMCで判明。歌うこと、聴くことも、あらゆることが一期一会…そう思うと、大きな会場を埋め尽くす5000人の人々とスガさんの歌を共有したこの夢のような2時間半がどれだけ大切なものだったか…。

さて、この日は素敵なおみやげが用意されておりました…ええ、これ聴くためにヘッドフォンをリケーブルしましたよ(笑)。そういえば来年、発売されるアルバムのタイトルはイノセントに決まったようです。今から楽しみ…。

Shikao&The Family Sugarふたたび

2022-02-28 00:37:53 | 音楽
そんなわけでShikao&The Family Sugar@中野サンプラザに行ってまいりました。

実に15年ぶりのファミシュガです。再びこのバンドをライブで聴ける日が来るなんて夢のようだよ…と、いつになく上機嫌な母を不審に思ったのか、出かける間際に息子に「ママ、いったいどこへ行くの」と詰問され…「コンサートだよ」「何のコンサート?」「J-popだよ」「J-popっていうのはジャンルでしょ、誰なの?」「スガシカオ」「ママはボクとスガシカオ、どっちが好きなの?」「もちろん○○君よ!」とアホな問答を繰り広げた後、いざ、中野へ…。

そんなこんなで中野サンプラザにたどり着くと、そこには入場待ちの長~い列が。この状況下、これだけの人がスガさんのライブを待っていたんだなぁ…と、しみじみしてしまいます。ホールの中に入ると、スガさんのライブ独特のざわざわした空気が…私、この空気感がけっこう好きなんですよね…そして、メンバーの皆さんが登場すると、一気にタイムスリップしたような感覚に…。

音が鳴り出した途端、このバンドならではの腰にくるグルーヴが…。そう、私はこういう音を本当に聴きたかったんだよ…と感無量でした。凄腕の皆さんは15年の歳月を経ても、相変わらず凄腕でした。特にドラムの沼沢尚さんはジェフ・ポーカロみたいで、ドラムだけでもご飯のおかわり三杯いけそうな勢いでした。そして、スガさんはもはや大歌手みたいな風格です。まだ、大阪の公演が残っているので、あまり詳しいことは書けませんが、セットリストは新旧の曲を取り混ぜ、踊れる曲が多めでした。あの曲のキーボードソロは相変わらずグルーヴィーだった、とか、あの曲のサビ前のドラムのフィルがやっぱりかっこいい!とか、あの曲のコーラスは変わらぬ美しさだったなぁ、とかいろいろあるのですが…。あの名曲も素晴らしかったです…あの曲をライブで聴くと、魂がどこかにふわふわ飛んでいっちゃう感じがするんですよね…で、幽体離脱して大海原の上空にかかる満月を見てるっていう…。そして、アンコールではよもやよもやのあの曲も。ラストの曲で満場のお客さんのワイパーを眺めていると、ふたたび感無量に…。

思い返すと、15年前のこの日も武道館でこのバンドのライブを見てたんですよね…その後、不肖わたくしも二児の母になったり何だりかんだりで、音楽そのものからけっこう遠ざかってしまったりもしました。でも、音楽って不思議なもので、時を一気に引き戻してくれるのですよね…。そして、スガさんもデビュー25周年。私とスガさんの音楽とのお付き合いも四半世紀近くになります。もちろん、前提としてスガさんの作品が素晴らしかった、とか、お人柄が面白かったとかいろいろありますが、ここまでくるともはや一種の御縁のようなものだろうと思ってしまいます…。これからも変な曲(?)を書き続けであろうスガさんをひーっそりと応援させていただきますよ…。

笙づくし

2022-01-30 01:43:46 | 音楽
サントリーホールブルーローズで「笙づくし」を聴いてきました。

笙奏者、宮田まゆみさんのリサイタルです。実はわたくし、笙の音が大好きで、一時期お稽古に通っていたこともあるくらいです。今回のリサイタルでは何と豊英秋氏、石川高氏との夢の共演が実現…笙好きにとってはもうたまりません…ということで、世情騒がしいなかですが、いそいそと行ってまいりました。

今回のプログラムは中世の古譜を元にした「調子」と「入調」の全曲と、笙族のための現代曲との二本立てになっていました。前半は「甦る古譜」で、平調と双調の「調子」と「入調」を演奏していました。平調の調子は最初に習う曲なのですが、今回は古譜を元にしています。ひさびさに笙の生音を聴くと、何だかもうすっかり夢見心地に…。宮田さんの笙の音は細くてしなやかな強い糸のようです。途中、ご本人のMCも入りました。宮田さんが出演されたコンサートは何度か見ているのですが、いつ拝見しても年齢不詳のお綺麗な方、佇まいもとてもチャーミングです…。

後半は「現代の笙」です。最初の曲は芝祐靖作曲「笙独奏のための匏竹のたわむれ」。途中、わらべうたのようなフレーズもあり、心がなごむ曲でした。二曲目は近藤譲作曲「舞曲」。この曲は宮田さんの委嘱によって作曲された作品だそうです。この曲から豊氏の笙と石川氏の竽が加わります。笙族の三重奏を見るのは初めて…三本の光の柱が天に向かって立ち昇るような曲でした。最後の曲は川上統作曲「魂交」。この曲で宮田さんが「モ(たけかんむりに母)」に持ち替えます。ずいぶん大きな楽器です…笙の2オクターブ下の音域を持つこの楽器は深海のような音色の印象から「モ」と名付けられたそうです。先の二曲は比較的穏やかな曲でしたが、この曲は現代音楽らしい響きの曲です。魂交というのはハタ科の最大の魚の名前だそうですが、スケールの大きな曲…奏者の方々の演奏も素晴らしく、終演後もなかなか拍手が鳴りやみませんでした。結局、アンコールはなかったのですが、皆、アンコールを聴きたかったんだろうな…私自身もこんなに生音に飢えていたということをあらためて思い知りました。笙のお稽古もいつか再開したいのですが、子育てが一段落したら、と思っているうちにいつの間にか長い歳月が過ぎてしまいました。それにしても子育てが一段落するのっていったいいつなんだろう…。

さて、例によって、鑑賞後はほっと一息、ということで近くの「HARIO CAFÉ」に寄ってきました。ドリップコーヒーをいただきましたが、苦味と酸味のバランスがよく、美味しゅうございました。その後、しばらくあたりを散歩しながらふと見上げると空が青みを増していたような…春の兆しですかね…。

ボンクリ・フェス2021

2021-10-08 00:02:52 | 音楽
「ボンクリ・フェス2021」に行ってきました。

昨年に引き続き二回目の参加です。今回は昼のスペシャル・コンサートから聴きました。1曲目は藤倉大「芯座」。筝の独奏の曲ですが、雅な響き…。山崎阿弥「粒と波」は「声」で構成された作品。毎日、あたり前のように発している声ですが、こんなにも多様な響きを生み出せるものだったとは。東野珠美「円環の星筐」は笙と尺八の合奏の曲で、豊かな響きの作品。東野さんの笙の音からは立ち昇る光の柱が見えるよう…。ヤン・バング&藤倉大「Night Poles River」は電子音楽の作品。作曲者も演奏者も不在の状態で演奏される、ある意味ボンクリらしい作品です。ジョージ・ルイス「Shadowgraph5」では藤倉さんもリモートで参加、そしてノマド・キッズも登場。自由な響きの曲です。八木美知依「桃の実」は粋な作品。女性4人による筝と歌の曲ですが、奏者たちが女神さまのように見えましたよ…。マリオ・ディアス・デ・レオン「2匹の蛇の祭壇」はアルト・フルート2本の絡みが2匹の蛇が絡み合うさまを想起させます。大友良英さんの新作では再びノマド・キッズが登場。「あまちゃん」のテーマのような賑やかでシアトリカルな曲。最年少と思わしきお嬢ちゃんが鍋蓋シンバルを一生懸命、叩いていて、勢いあまって落っことしちゃったりする様子がとても可愛らしかったです。大友さん曰く子どもを投入することで不確定な要素を持ち込めるのだとか。最後は藤倉大「infinite string」。ザ・現代音楽みたいな強度のある作品です。アンサンブル・ノマドの演奏もみごと…。

その後は「ノルウェーの部屋」へ。アイヴィン・オールセット、ヤン・バング、ニルス・ペッター・モルヴェルがパンデミックで来日できなくなったため、ライブ映像の公開です。私の大好物のECMっぽいサウンド…とりわけニルス・ペッター・モルヴェルのトランペットはケニー・ホイラーを彷彿とさせるサウンドで、いつまでも聴いていたい感じ…ですが、途中で移動して本條秀英二さんのアトリウム・コンサートを聴きにいきました。「涅槃」を演奏していましたが、三味線がシタールのように響く不思議な曲。終わった後は芸術劇場の中にある「ベル・オーブ」で早めの晩御飯(東京Xのグリルが美味しかった)の後、「筝の部屋」へ。八木美千依さんの筝と本田珠也さんのドラムのセッションですが、これがめちゃめちゃかっこよかった。エレクトリック筝ってあんなにいろいろな音を出せるものだったのですね。荒れ狂う海の深みはしんと静か…というような、激しさと安らぎを同時に感じる演奏でした。最後は「大人ボンクリ」。大ホールで電子音楽をガチで聴くというのは初めての体験でしたが、ホールも楽器、ということを思い知らされましたよ…。全8曲でしたが、牛島亜希子「屈折光線」のギターの響き、マヌエラ・ブラックバーン「Ice breaker」の氷の響き、ハリス・キトス「アヴァリス」のコインの響きなどが印象的でした。ラストの及川潤耶「Bell Fantasia」はドイツで収録した鐘の音による祈りのシンフォニー。この作品を平和への祈りとして共有できたら、という作者のメッセージも。大ホールが一瞬で伽藍になりました…。

そんなわけで、今年も新しい音に耳をひらかれる体験を目いっぱい楽しみました。こういう楽しみがあるのも平和があってのことですよね…願わくばこういう日々がこれからも続いていきますように…。