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アートネタなど日々のあれこれ

The Beatles ~Eight days a week~

2016-10-30 01:02:07 | 映画
ル・シネマで「ザ・ビートルズ Eight days aweek」を見てきました。(この映画館での上映は既に終了しています。)

ビートルズのリバプール時代から63年に始まったツアーの様子、そして彼らが最後に観客の前で演奏した66年の公演まで、バンドの全盛期を描いたドキュメンタリー。ビートルズといえば私からすれば親の世代で、半ば伝説みたいな存在ですが、彼らが生きて動くさまをみて、生身の人間だったんだなあ・・・という感慨に耽ってしまいました。

リバプールでの下積み時代から、世界を舞台に活躍するミュージシャンとなったものの、ツアーに疲弊して、レコーディングミュージシャンになっていくまでの過程が描かれています。あらためて思ったのは、今さらながら、やっぱり曲がよかったんだなあ・・・というか、本当に捨て曲がない感じ。あと、けっこうブルーノートを多用してたのね、とか(笑)。ライヴ映像も収録されてましたが、とにかく黄色い声が凄くて・・・(笑)。まるで見せ物みたい、と、ツアーに嫌気がさしていったというのも、何だかわかるような気もします。ツアーをやめてレコーディングに専念するようになった彼らが、レコーディングにハマっていく姿も興味深かったです。けっこうなオタクぶりも発揮されていました。そりゃ、ミュージシャンですもんね・・・そういえばジョンも「音楽だけが大事」と言ってました・・・。

その後、ジョンの舌禍事件やら、メンバー間の不協和音などで、活動は終息へと向かうのですが・・・。解散近くに、彼らがアビーロードスタジオの屋上で行ったゲリラライブも収録されていましたが、見ていてなんだかうるうるきてしまいました。音楽好きのやんちゃな青年たちが、時代の寵児となり、いつしか音楽好きの大人となってシンプルに音楽を楽しんでいる、そのさまが感動的でした。

映画の最後に、スタジオでのコンサートが収録されています。やはり黄色い声がいっぱい(笑)。けっこうビートルズのコンサートってあっという間に終わっちゃってたんですね。やっぱり、一度は生で聴いてみたかったな・・・。なんも聴こえなかったかもしれないけれど(笑)。

朝顔

2016-10-28 00:03:51 | 美術
サントリー美術館で「鈴木其一 江戸琳派の旗手」を見てきました。

不肖わたくし、けっこう長い間、美術館巡りをしてきたつもりですが、鈴木其一のソロ展覧会を見るのは初めてです。琳派の展覧会では何度となく作品を眼にしてきたわけですが・・・。琳派の他のお歴々の方々の影に隠れがちな存在ですが、まとめて見るとどんなことになるんだろう、と興味津々出かけてきました。が、行ったのは、六本木アートナイトの日。500円で見られるのはありがたいのですが、当然、館内は混み混み・・・ということで、人垣の後ろからひょいひょい覗き込む、という鑑賞になってしまいました。とほほほほ・・・。

今回、其一の兄弟子にあたる蠣潭の作品を見られたのも収穫でした。其一の作品でまず眼を惹かれたのが「蓮に蛙図」。可憐です。そして「群鶴図屏風」。スタイリッシュな鶴さん達。若冲の鶴の図をちょっと思い出します。「夏秋渓流図屏風」は清冽な作品。勢い良く流れる水の音が聴こえてきそうな。「猩々舞図」も小品ながら、衣装の赤が眼にも鮮やか。かと思うと、「風神雷神図襖」も。他の御大の風神雷神図と比べて、余白の生かし方、独特の空間感覚が印象的でした。そして、今回最大のお目当ての「朝顔図屏風」。青い花々が織りなすリズム。生の輪舞・・。

そんなわけで駆け足の鑑賞になってしまったわけですが・・・師の抱一が生きていた頃は、渋めかつお上品な作品を描いていた其一が、その死後、はっちゃけたように、鮮やか、かつデザイン的な作品を描き始めたということがよくわかりました。その極みがあの朝顔だったのでしょう。これまで何とはなしに地味な存在と思い続けてきた其一の面白さを知らしめてくれた展覧会でした。

ジャニス リトル・ガール・ブルー

2016-10-27 00:03:29 | 映画
シアター・イメージフォーラムで「ジャニス リトル・ガール・ブルー」を見てきました。

1970年、27歳で亡くなったジャニス・ジョプリンのドキュメンタリー。言わずと知れた「ザ・歌姫」。そう言えば、この間見た「Amy」のエイミー・ワインハウスも亡くなったのは27歳の時でした。この二人の人生はオーバーラップするようですが・・・(以下、ネタバレします)。

とはいえ、「Amy」を見た時のような、どうにもやりきれない後味の悪さは、今回はそれほど味わわずにすみました。これは、ジャニスと関わりのあった男性たち(いや、女性もいた)が、今となっては比較的いい感じのロマンスグレーの方々だったということが大きいかもしれません。エイミーに関しては、このあたりがもう・・・(以下略)。

容姿をからかわれ、いじめられていた高校時代。バンド活動もなかなかうまくいかず、いくつかのバンドを遍歴。それにしても、ジャニスの活動期間って実質4年くらいのものだったんですね。それだけの間で世界に名を残すシンガーになったのは、ひとえにその圧倒的な歌声のゆえ・・・。魂の叫びって、言葉にするといかにも陳腐な感じですが、まさにそのまま。とりわけ「サマータイム」が凄かった・・・。

歌声を称賛される一方で、常に孤独に苛まれていた人生でもありました。「ライヴはセックスと同じ。イリュージョン。」ライヴが終われば皆は家路につくのに、と。結婚を考えていた男性もいたようですが、彼からの電報がホテルの受付で見つかったのは、皮肉にも彼女が亡くなった翌日でした。

たぶん、自分が死ぬとは思っていなかったんだろうな・・・。ちょっと寂しさを紛らわすためのドラッグでうっかり死んでしまったとしか、思えません。ドラッグと酒が重なった時の恐ろしさをあらためて思い知らされました。でも、電報があと一日早く届いていたら・・・と思わずにはいられません。

彼女の人生は短かったけれど、歌声は永遠。彼女は野心家でもあったけれど、本当に望んでいたのは「幸せになること」だけだったんだろうな、と思うと切ないです。「ねえ、次はきっとうまくやるわ」という声が、いつまでも耳に残るようです。

チリの闘い

2016-10-25 23:15:54 | 映画
ユーロスペースで「チリの闘い」を見てきました。(ここでの上映は既に終了しています。)

「真珠のボタン」「光のノスタルジア」のグスマン監督の作品ということで、かなり期待して見に行きましたが・・・期待に違わぬ凄い作品でした。3部構成、約4時間半という長尺の作品ですが、圧倒的な熱量。「史上最高のドキュメンタリー」とまで言われるだけのことはあります。(以下、ネタバレします)

舞台は1970年頃のチリ。選挙によって成立した世界初の社会主義政権が誕生し、サルバドール・アジェンデが大統領に就任しました。労働者を中心とする民衆からは圧倒的な支持を得ていたものの、ブルジョアや保守層、共産主義国家の存在を恐れるアメリカ妨害を受け、チリの社会・経済は混乱。そして、1973年9月11日、CIAの支援を受けたピノチェト将軍がクーデターを起こし、アジェンデは自殺・・・。

第一部は、1973年の3月の選挙から、6月のクーデター未遂まで、第二部はそれから9月のクーデターと政権崩壊まで、第三部は、時を遡って、ソビエト式の社会主義を目指す民衆の姿を描いています。

第一部はクーデターの空爆の映像から始まり、選挙の時点に遡ってから、クーデター未遂に至るまでの過程ですが、一度見たら忘れられないような衝撃的な幕切れです。亡くなったカメラマンはまだ33歳だったとか。第二部は、アジェンデ政権がアメリカと組んだ右派に追いつめられ、ついには軍によるクーデターが勃発。大統領府が空爆を受け、アジェンデが自殺(諸説あり)するまで。アジェンデの最後の演説は涙なくして聞けず・・・。

第三部は、時を遡り、労働者や農民が「民衆の力」という地域別グループを組織し、社会主義政体を目指す姿を描いています。

時系列的には3→1→2なのですが、映画的には1→2→3となっています。映画を見てからしばらく、この並びの理由を考えていました。2で終わったのでは、あまりに悲惨すぎるからなのでしょうか・・・この後にピノチェトによる大量虐殺があり、「真珠のボタン」や「光のノスタルジア」の荒廃がやってくるのかと思うと、なおさらです。あの、白い布にくるまれ、上空のヘリから海に投げ落とされた遺体の中には、この時の民衆も含まれていたのでしょうか・・・。

「アジェンデ、アジェンデ、あなたを守る」というシュプレヒコールをあげ、団結する民衆の姿は感動的ですが、それはアメリカをバックとする資本の力の前には結果的には無力でした。そして、その後のピノチェトによる身の毛もよだつような暴挙。いつの世でも理想は暴力によって簡単に打ち砕かれてしまいます。が、アジェンデは賛否はあっても、史上初の選挙によって選ばれた社会主義政権の大統領という名を残し、ピノチェトは大虐殺を行った独裁者として名を残すこととなりました。最後の決着は歴史がつけてくれるのでしょう・・・。

この映画を見てかなり日が経ってしまっているのですが、いまだに感想をうまくまとめることができません。今でも目に焼き付いているのは、人々の顔、顔、顔・・・。労働者は労働者の、ブルジョアはブルジョアの、インテリアはインテリの、軍人は軍人の・・・そして、独裁者は独裁者の顔をしているのです。そして、人々の渦、熱気、民衆の力・・・。あまりにも過酷だった現実の果てに、なおも光を見ようとする意思の力を見た映画でした。