ユーロスペースで「音響ハウス Melody-GO-Round」を見てきました。
1974年、銀座に設立され、昨年創立45周年を迎えたレコーディング・スタジオ「音響ハウス」のドキュメンタリーです。映画はこのスタジオを愛するミュージシャンたちへのインタビューと、コラボ新曲“Melody-GO-Round”のレコーディング風景とで構成されています。この映画の予告編で坂本教授が「東京に音響ハウスがあるっていうのは贅沢なことなんです」と語っていましたが、ここではまさに夢のような、至福の時間が流れているのだな、ということが伝わってきます。今となっては、腕利きのミュージシャンたちが東京のど真ん中でせーの、で音を出すということ自体が贅沢になっているのかもしれませんね。全体的に音楽好きのツボを心地よく刺激してくれる映画なのですが、企画・監督の相原裕美さんはレコーディングエンジニアの出身なのだそうです・・・(以下、ネタバレ気味です)。
この映画、登場するミュージシャンたちも凄いです・・・教授、高橋幸宏、佐野元春、矢野顕子、松任谷夫妻、大貫妙子、綾戸智恵、葉加瀬太郎、デヴィッド・リー・ロス・・・。この顔ぶれを見ていると、J-popの歴史は音響スタジオで作られたといっても過言ではないと思えてきます。ミュージシャンたちのコメントも尋常じゃない“音響愛”にあふれています。ここに住んでたという教授、家みたいなもんだしという綾戸さん、僕にとってはアビーロードより意味があるという葉加瀬さん。矢野さんがかつて子連れでレコーディングに来て、子どもに出前のカツ丼を食べさせたり、ドラムのミュート用の毛布で寝かせたりしていたというエピソードには思わず笑ってしまいました。
“Melody-GO-Round”のレコーディング風景も興味深いです。これを見ていると音響ハウスの各スタジオの特性も何となくわかります。弦向きの1st、ホーン向きの2st、地味だけど正確な音の6st・・・。錚々たるミュージシャン達の演奏シーンも。幸宏さんのドラム、井上鑑さんのキーボード、佐橋佳幸さんのギター・・・ヴァイオリンの葉加瀬さんもノリノリで弾いてました。ヴォーカルは13歳のHANAさん。大貫さんによく似たウィスパーボイスだなぁと思っていたら、なんと大貫さんが歌唱指導をつけていました。指導のポイントがさすがです。このコラボの発起人でもある佐橋さんとレコーディングエンジニアの飯尾さんが終始、楽しそうにレコ―ディングを進めている様子が印象的でした。こうして生まれた“Melody-GO-Round”は言うまでもなく、素敵でハッピーな曲です。
そしてこの映画、最後に「いい音とは?」という問いにミュージシャンたちが答えているのですが、これが面白かったです。自分がいいと思う音という大貫さん、自分を鼓舞してくれる音という矢野さん、ハイファイだったらいい音というわけじゃなくて(以下、長い解説が続く)の教授・・・そして、佐野元春さんの回答が絶妙でした。さすがです(笑)。そんなわけで、豊かな音と贅沢な空間、贅沢な時間を堪能したのでした・・・。