東京ステーションギャラリーで「大阪の日本画」を見てきました。
この展覧会は近代大阪の日本画の史上初の大規模展ということです。不肖わたくし、大阪の日本画については、数年前の「あやしい絵」展で甲斐荘楠音、北野恒富、島成園などをようやく認識したくらいなのですが、この展覧会は楽しみにしておりました。展覧会は北野恒富と門下の作品から始まります。北野恒富の「風」はスタイリッシュかつ艶めかしい。同じ画家の「宝恵籠」は打って変わって初々しさが漂います。木谷千種の「吉澤あやめ」は毒のある妖しさ。中村貞以の「失題」は丸っこいフォルムが面白く…女性が猫みたいに見えます。浪花風俗画の章には菅楯彦、生田花朝の作品が並びますが、生田花朝の「浪花天神祭」が細密描写が軽やかで清々しい。新南画の章には矢野橋村、矢野鉄山の作品が出ていましたが、矢野橋村の「湖山清暁」が見事…金地に広がる雄大な山景はとても右腕一本で描かれたとは思えません。船場派の作品は商家の床の間を飾った絵ですが、穏やかな画風です。深田直城の「水中游鯉図」は澄んだ水の中で鯉が泳ぐ涼しげな作品、いつまでも見ていたいような気すらします。平井直水の「梅花孔雀図」は華やか、孔雀の羽の描写に目を奪われます。大阪の日本画は女性画家の活躍も目立ちます。大阪では当時、商家の女性や子供たちが教養として絵を習う習慣があったようです。島成園の「祭りのよそおい」は問題作でもあり…着飾った女の子三人と、少し離れたところに一人ぽつんと佇む質素な身なりの女の子…見ていると胸が痛くなってくるような光景です。高橋成薇の「秋立つ」は匂い立つような不思議の魅力のある作品。彼女は中村貞以と結婚した後は画業から退きましたが、師の島成園はその才を惜しんだとか。ラストは池田遙邨「雪の大阪」。一面の雪に覆われた大阪のパノラマ、目にも鮮やかな白が眩しい…。
というわけで、大阪の日本画を堪能してまいりました。確かに東京とも京都とも違う独特の魅力がありますよね…鷹揚で淡泊。時には妖しくもあり…。大阪画壇の人々は公募展などに作品を出すこともなく、船場派などはもっぱらパトロンのオーダーによって描いていたため、競争とは無縁だったことが影響しているのかもしれません。この無縁ぶりが今となっては、新鮮なのかもしれず…。大阪画壇が今、密かにブームになりつつあるような気がしますが、ステーションギャラリーでは次に甲斐荘楠音の展覧会が開催されるようで、こちらも楽しみです。
さて、例によって、アートといえば美味しいもの…ということで、この日は八重洲北口の「釜たけうどん」に寄ってまいりました。大阪讃岐うどんのお店です。名物らしき「ちく玉天ぶっかけ」をいただきましたが、柔らかめのうどんに甘めのつゆ、サクサクのちくわ天に半熟トロリのたまご天…で、美味しゅうございました。さすが大阪発です…。